血液や尿などを採取して調べる検体検査分野を中心に、事業を展開しているシスメックス。「ヘマトロジー※」「⾎液凝固検査」「尿検査」の3つの分野で世界No.1のシェアを達成しています。グローバルで堅実な成長を続けており、新たな経営戦略に基づいて認知度アップにも取り組んでいます。
※血液中の赤血球や白血球などの数や種類、大きさを分析する検査。より精密な検査が必要かどうかの判断材料になります。
目標を達成するためのパートナーとして、アマナが戦略立案やメディア戦略、クリエイティブ制作などを担いました。2024年の取り組みについて、アカウントプロデューサーの由良浩樹、メディアプランナーの栗原拓也、ムービープロデューサーの五藤裕樹、プランナーの櫻井ノマドが語ります。
――シスメックスとはどのような経緯で協業することになったのでしょうか。
由良浩樹(以下、由良):2023年秋にアマナのイベントでシスメックスの方とご一緒する機会がありました。その後、BtoB企業のブランディングについて意見交換したところ、「企業認知度を上げたい」というお話を聞いたのです。
シスメックスさんは、「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」という長期ビジョンを掲げ、検体検査事業を中心に人々の健康を支えている企業です。創業後、早い段階でグローバルでのビジネスを展開し現在も成長を続けていらっしゃいますが、さらなる企業価値向上のために、広報活動にもっと力を入れるべきだとお考えになったようです。
2023年に長期ビジョンを打ち立て、BtoBのその先の個人にフォーカスしたBtoBtoCをスコープに、 企業認知度アップの中長期目標を設定。それに対して広報部を中心にいろいろな戦略を立てて施策を行いたいけど、どうやったら目標を達成できるか手探りで進めているとのことでした。
――その課題を受けて、アマナとしてどのような対応をしたのでしょうか?
由良:アマナは企業広報活動の支援ができます。企業認知を上げる、BtoBのブランディングをしていくにあたって限られた予算で効率を上げるには、広く浅く発信するよりも、たとえばYouTubeなどに集中投資して、エリアを絞って認知を取っていくのがおすすめです、と話しました。動画広告を作ってYouTubeで配信していくわけですね。また他にもメディア施策として、日本のソーシャル型オンライン経済メディアの『News Picks』でのコンテンツ展開なども提案しました。
シスメックスCM特設ページLPトップビジュアル。
――戦略立案の際には、クライアントとどのようなコミュニケーションをとったのでしょうか。
栗原拓也(以下、栗原):態度変容、意識変容を、広告を通して実現させるためのメディアプランが出せるのは、クリエイティブのエキスパートであるアマナの強み。企業ブランディング動画の見せ方のリファレンスや、オリジナルで動画制作を作る以外にもシスメックスさんが持っている既存の動画をどう活用するかなど、動画制作チームからさまざまなアイデアを出してもらい、合意を得ながら進めていきました。
――事例を踏まえて何をどのくらい行わなくてはいけないか、動画制作チームからリファレンスをお見せしたのですね。
栗原:その通りです。
ターゲットと予算を決めると、施策を実施した際にどのくらいのユーザーにリーチできるかをシミュレーションできるツールがあります。そうした予測を基に、適切な目標を設定し、検証スキームの設計を行いました。認知というのは指標設計に落としづらいものなので、なにがどうなると認知アップと言えるのか定義付けが重要になります。そうした予測に基づいた指標を出したり、極めて重要な検証スキームについては何をどう測るかの調査設計を行ったりしました。認知度アップのための検証項目を決め、そこから導いた指標を基にKPIの具体的な設定、たとえば指名検索やWebサイトへの流入数などを最初に決めておくことがポイントです。
由良:こうした戦略に基づいてメディア施策を実施していき、その中で動画をオリジナルで作りたいというご要望があって、ムービープロデューサーの五藤に相談しました。
アマナ制作の動画広告「ドラキュラとの出会い篇」30秒バージョン。
「ドラキュラとの出会い篇」15秒バージョン。
――クリエイティブ制作はどのようにスタートしたのでしょうか?
五藤裕樹(以下、五藤):認知度をアップさせる施策ということで、配信動画を作りたいという話が由良からありました。まず社内のディレクターに相談しましたが、企業認知といってもいろいろな手法があります。とにかく社名を連呼して覚えてもらう、どんな会社なのか概要をわかってもらう、事業内容を深堀りする、などですね。今回は社名と共に、どのような会社なのかが伝わる企画をセットでいくつか考えました。
シスメックスさんは血液検査機器のシェアが世界規模で大きく、血液から人間の健康についての未来を作る会社だと認識しています。そこでこの会社のブランドの強さはどこにあるのかとチームで会話をしていた時に出てきたのが、ドラキュラというキャラクターでした。これは櫻井の発案ですが、プランナー視点のおもしろい考えだと思い、このキャラクターを軸に動画制作を進めたのです。
櫻井ノマド(以下、櫻井):企画の段階で意識したことは2つあります。
1つめは、認知をどう作っていくかということ。企業認知度アップ目標は中長期の計画です。
一気にスパートさせないで段階的にどう作っていくか、継続的に一貫したクリエイティブで展開させる必要があり、そのためにストーリーやキャラ設定が大事だなと思っていました。
2つめは、認知の中でもどう記憶に残すか。記憶の装置となるトリガーになるものが必要です。BtoC企業のアプローチの場合は、商品があるためにその色や形、キャッチコピー、CMに登場する人物などを戦略的に繰り返し登場させる、という手法で記憶への定着を促すことができます。
でもシスメックスさんは一般市場に販売している商品はありません。では、商品に当たるものは何か?と考え、血液検査で実績を培ってきた企業なので「ドラキュラ」というキャラクターがいいのではと思いついたのです。
五藤:撮影の現場では研究所的な空間を作ってはいますが、シスメックスさんの血液検査の機械がちゃんと置いてあっても一般の人には他社との差異が伝わりません。同じような医療系BtoB企業の発信と差別化して一般視聴者に認知させるために、キャッチーなものを映像表現で生み出すのは難しかったので、ドラキュラというキャラクターを立てられたのはよかったですね。ディレクター、プランナーのそれぞれの視点で、クライアント企業のブランドメリット、ブランドの強さを見極めたうえで企画に落とした成果だと思います。
「ドラキュラとの空港篇」30秒バージョン。
「ドラキュラとの空港篇」15秒バージョン。
「ドラキュラとの公園篇」30秒バージョン。
「ドラキュラとの公園篇」15秒バージョン。
――企画に対するクライアントの反応はいかがでしたか?
五藤:とてもモチベーションが高くて、映像への出演希望で多くの方が手を挙げてくれました。広報担当者や研究職の方たちなど、本職の人が出てくれたことで試験管の持ち方や機械の操作も万全でした。
櫻井:ドラキュラの衣装やキャラ設定については、細かく設定しました。シスメックスさんは最先端の企業なので、ドラキュラであってもインテリジェンスやモードっぽさを打ち出したいと思い、ゆったりした白衣に蝶ネクタイ、メガネなど、スタイリストさんやヘアメイクさんと一緒に作り込んでいきました。怖い存在には見せたくなかったので、牙の大きさにこだわったり、黒マントはナシにしたり。明るいポジティブなドラキュラを、俳優さんが演じきってくれました。
CM特設ページのLPでは、シスメックスさんのコーポレートカラーのブルーとドラキュラを一緒に、登場する医者の服もブルーにして、統一感を持たせています。
ドラキュラの牙の大きさを細かく検証。
動画に出演された皆さん
神戸マラソンEXPOでのブース周りのクリエイティブ。
神戸マラソンEXPOでのブース周りのクリエイティブ。
神戸マラソンEXPOでのブース周りのクリエイティブ。
――現段階での成果はいかがでしょうか?
由良:サイトへの流入と検索の量が増えたので、行動を促す効果は出たと考えています。さらなる認知アップを目指したいですし、結果を元に仮説検証や動画の内容の見直しを行うことで、より大きな成果につなげていきたいですね。
動画は好評で、ドラキュラを使って神戸マラソンのEXPOブースに設置するツールを作りたいとのリクエストがあり、ブース周りのクリエイティブをアマナが担当しました。こうした立体的な展開も増やしていけたらと思います。
シスメックスさんの広報部のミッション達成のためのパートナーとして、やるべきアクションをご提案しながら2025年もしっかりと伴走していきたいですね。
<スタッフクレジット(すべてアマナ)>
ストラテジックプランナー:佐藤勇太
メディアプランナー:栗原拓也
クリエイティブプランナー:櫻井ノマド
ムービーディレクター:榊原万琴
プロデューサー:五藤裕樹
プロダクションマネジャー:田口祥子・鈴木美咲
ビジネスプロデューサー:由良浩樹
<スタッフクレジット(アマナ以外)>
シネマトグラファー:花房遼
照明技師:海堂元
特殊メイク:小松義夫
メイク:白銀一太
スタイリスト:安藤慶次
美術:名嘉眞秀
キャスト:坂垣怜次・内田裕大
<記事制作>
取材・文:大橋智子
Top画像:中村圭佑
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株式会社アマナ
由良 浩樹
株式会社アマナ
由良 浩樹
2005年アマナに入社。 ビジュアル制作プロデュースからキャリアをスタートし、大手広告代理店への常駐経験も経て、クライアント業種を問わずコミュニケーション領域全般での課題解決プロデュースに従事。
株式会社アマナ
栗原 拓也
株式会社アマナ
栗原 拓也
メディアプランナー。前職は博報堂DYグループのデジタルマーケティングエージェンシーアイレップにて、主にSEM(サーチエンジンマーケティング)を担当。クリエイティブの可能性を追求するため2020年アマナにジョイン。以降、同社でメディアプランニング業務に従事。
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五藤 裕樹
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五藤 裕樹
2005年に株式会社アマナに入社。グラフィックのプロデュースからスタートし、大阪オフィスの立ち上げ・代理店への常駐を経て、アマナインタラクティブ&ワンダラクティブというクリエイティブブティックでメディアを横断してコンテンツをプロデュース。企業が抱える課題解決のために、オンライン・オフラインを問わずにコンテンツクリエイティブをプロデュースし、現在ムービー統括にてセクションマネージャーを務めている。
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櫻井 ノマド
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櫻井 ノマド
プランナー ・コピーライター。大学時代、神戸大阪でデザインを学び、現在はコミュニケーションの企画立案からディレクション制作までを行う。 CM・OOH・新聞・イベント・キャンペーン・コンテンツなど、様々なメディアを活用したPR視点での企画・展開を得意としている。 商品や企業のプロモーション、地域活性プロジェクトまで、多種多様なプランニングに従事している。
amana BRANDING
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共感や信頼を通して顧客にとっての価値を高めていく「企業ブランディング」、時代に合わせてブランドを見直していく「リブランディング」、組織力をあげるための「インナーブランディング」、ブランドの魅力をショップや展示会で演出する「空間ブランディング」、地域の魅力を引き出し継続的に成長をサポートする「地域ブランディング」など、幅広いブランディングに対応しています。
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TVCMやWeb用の動画、企業紹介ビデオなど、幅広い動画の撮影に対応。長年培ってきたスチル撮影の経験とノウハウを活かして、クオリティの高い動画を制作します。撮影スタジオはもちろんのこと、動画の編集・合成を中心に、ナレーション収録も可能な動画編集スタジオを完備。撮影、編集、ディレクションなど、専門性の高いスキルを持ったスタッフが、動画の制作をサポートします。
Advanced Marketing Service
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私たちの強みは、戦略的マーケティングとアマナのビジュアルコミュニケーションを組み合わせたアプローチです。このシナジーにより、キャンペーンを完璧に計画・実行し、ブランド価値と売上の向上を図ります。複雑な現代のマーケティングをナビゲートし、精度と創造性でビジネス目標の到達を目指します。