Z世代が動かすB2Bマーケティング|“共感”が主役の時代へ

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新たな購買層が、B2B市場に本格的に参入しはじめています。Z世代が、B2B企業における意思決定のポジションに急速に就き始めているのです。米調査会社Forresterによる2024年のバイヤージャーニー調査では、高額なB2B取引に関わるバイヤーのうち、実に3分の2以上をミレニアル世代とZ世代が占めているという結果が示されました。

この世代交代は、B2B企業のコンテンツ戦略に抜本的な見直しを迫っています。Z世代は生まれながらのデジタルネイティブ。Z世代に対しては、長文のホワイトペーパーや、いかにも企業らしい語り口では関心を引きにくくなっています。

本記事では、Z世代の価値観を踏まえ、企業がどのように対応すべきかを考察します。求められるのは、自社のスタンスを明確に打ち出し、価値観に一貫性を持って発信すること。加えて、コミュニティを基盤としたリアルな体験の提供も重要になります。Z世代との持続的な関係構築に向けて、いまこそ従来のコンテンツ戦略を根本から見直すタイミングだと言えるでしょう。

Z世代に響く、親しみやすいコンテンツ表現とは

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従来型の企業パンフレットや、わかりづらく煩雑な製品デモでは、Z世代には響きにくくなっています。B2Bの世界でZ世代の関心を引きつけるには、彼らが日頃から親しんでいるB2Cブランドのような”楽しさ”や”親しみやすさ”を意識した表現が求められます。

Z世代は、スピード感があり、ユニークなコンテンツに日常的に触れている世代です。

これは、TikTokの急成長をけん引したのがZ世代であることを考えると、自然な流れと言えるでしょう。

こうした中で、多くのB2Bマーケターが、これまでの手法を見直し、時代に合った新たなアプローチの必要性を感じ始めています。とはいえ、それを実践に落とし込むには、表現の工夫やトーンの調整が欠かせません。ここからは、Z世代に響く表現を自然に取り入れているB2B企業の事例を紹介します。

ベストプラクティス事例:Rella Social と Chili Piper

Z世代の起業家、ナタリー・バーブ氏が立ち上げたRella SocialTikTokLinkedIn対面でのミートアップを通じて、オーディエンスとのつながりを築いている好例です。なかでも注目されているのが、彼女自身が出演するTikTokコント。SNS担当者とクライアントの一人二役を演じることで、ユーモアと観察眼を交えた親しみやすいコンテンツに仕上がっています。

こうしたアプローチは、コンテンツ制作にありがちな「かたさ」や「マンネリ」に対して、ユーモアと個性をもって応える姿勢を印象づけています。

続いて紹介するのは、B2B向けのデマンドコンバージョンプラットフォームを展開するChili Piperです。堅くなりがちなLinkedInで、今の空気感を捉えたユーモアを交えた投稿で注目を集めています。

たとえば、アメリカの人気ドラマ『The White Lotus』を題材にしたミームをシェアしたり、遊び心のあるアンケートを実施したりと、ポップカルチャーやブランドの個性を積極的にコンテンツへ取り入れているのが特徴です。

こうした感性を取り入れることで、B2B領域においてもエンゲージメントを高めることは「できる」──むしろ、「取り入れるべき」時代に来ていることを、Chili Piperは示していると言えるでしょう。なにしろZ世代は、インターネットと共に育ち、常に最新のエンタメやトレンドに敏感な世代。彼らは、企業にも同様のアップデートされた感覚やスタンスを求めています。

事例から見えてくること

たとえ高度で専門的な製品を扱っていたとしても、企業のコミュニケーションが過度に堅苦しくなる必要はありません。Z世代は、表面的な演出や、自分らしさを抑えたコミュニケーションに価値を見出しにくいと感じています。実際、この世代の約3人に1人が、自身のメンタルヘルスについてSNSで発信した経験があるという調査もあります。Z世代は、感情を無理に抑え込まず、自分の弱さも含めてオープンに表現する姿勢に自然体で臨んでいるのです。

そうした価値観に寄り添い、本音や誠実さを感じさせるメッセージを丁寧に織り込んでいくことで、Z世代との距離をぐっと縮めることができます。だからこそ、彼らが「これは自分たちのためのコンテンツだ」と感じられるような体験を用意することが重要です。エンタメ性があり、共感できて、過度にフォーマルでない表現が、より高いエンゲージメントにつながります。

たとえば、カジュアルなミートアップを開催したり、ウェビナーで双方向のやりとりを図ったりといった施策も有効です。決して派手である必要はありません。大切なのは、リアルで親しみやすい存在としてブランドを感じてもらうことです。

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価値観で選ばれる時代に──Z世代とつながるための姿勢とは

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Z世代と向き合ううえで忘れてはならないのは、彼らが「声を上げる」世代であるということです。PR会社Edelmanの調査によれば、Z世代の70%が社会的または政治的な活動に関与しているとされています。この世代は、ブランドに対して単に「商品を提供してほしい」とは考えていません。むしろ、社会に対してどのようなスタンスを持ち、どのような影響を与えるのかという点に強い関心を抱いています。

たとえば、業界の重要な課題に対して、ブランドがあいまいな立場を取っていると、その姿勢は見透かされてしまう可能性があります。Z世代は、メンタルヘルス、サステナビリティ、社会正義などのテーマを重視し、言葉だけではなく行動を伴った誠実な対応をブランドに期待しています。

ベストプラクティス事例:Talkspace

こうした価値観に共感し、具体的な行動へとつなげているブランドの一例が、オンラインセラピープラットフォームのTalkspaceです。ただし、同社が提供しているのは単なるデジタル上のセルフケアではありません。若年層向けに無料セラピーを提供したりメディケア(高齢者・障害者向けの公的医療保険制度)経由での利用を拡大したりBeMeのような団体と提携してティーンの支援に取り組むなど、メンタルヘルスに対する偏見の解消を目指す活動を積極的に行っています。

こうした実践は、単なるプロモーションを超えて、ブランドの姿勢や社会的責任を明確に示すものとなっています。Z世代が共感するのは、まさにこのような「本気の取り組み」なのです。

事例から見えてくること

Z世代の信頼を得るには、言葉だけでなく行動でスタンスを示すことが不可欠です。それも一過性ではなく、継続的かつ真摯な姿勢である必要があります。どれだけ丁寧な言葉を並べたとしても、行動にわずかな違和感があればZ世代は敏感に察知し、評価を下します。たとえば、草の根運動の支援や、目的あるコミュニティイベントへの参加・開催といった実行が伴う関わり方が有効です。

こうしたアクションを通じて、自社の立場や目指す世界観を明確に伝えることが重要です。メンタルヘルス、サステナビリティ、DEI(多様性・公平性・包括性)などの社会的テーマに対する価値観こそが、Z世代との本質的な関係構築の出発点になります。

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Z世代との信頼を育てる、「共創型」コミュニティの設計法

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Z世代は、企業プロモーションや、洗練されすぎたセールストークには、あまり信頼を寄せていません。彼らが求めているのは、マニュアル通りの言葉ではなく、透明性・誠実さ・そして“つながり”を感じられるコミュニケーションです。

Edelman社のトラスト・バロメーター(信頼度調査) で、Z世代の76%が、従来のブランドメッセージよりもユーザー生成コンテンツを信用しており、さらに85%がブランドは「共同体意識」を育てるべきだと考えていることが明らかになりました。

Z世代は、幼い頃からさまざまな世界観や文化に触れて育ち、多様な価値観や意見を自然に受け入れる力を身につけています。また、助けが必要なときには素直に支援を求める、柔軟でオープンな姿勢も特徴です。

ベストプラクティス事例:Nombase

Z世代の価値観に共鳴しながら信頼関係を築くには、ブランド側も「つながる姿勢」を持つことが重要です。その好例が、飲料業界メディアBevNetが立ち上げたNombaseです。Nombaseは、食品・飲料業界のプロフェッショナル向けに設計されたコンテンツハブ兼コミュニティプラットフォーム。新興ブランドから老舗企業まで、業界の実務者が集まり、質問や意見交換、経験の共有を通じて、ともに課題を解決する場を提供しています。

このような“横のつながり”を重視する設計は、一方的な情報発信やセールスを感じさせず、共感を土台にした本音の対話を促すものです。まさにZ世代が理想とする、自然体で本質的な関係性のあり方といえるでしょう。

事例から見えてくること

鍵は、企業プロモーションに頼るのではなく、本質的なエンゲージメントを育む場づくりに注力することです。Slackチャネルを立ち上げたり、オンライン座談会を開催したり、LinkedInのAMA(Ask Me Anything:なんでも聞いて!)を実施するなど。ここで大切なのは、ブランド側がすべてをコントロールしようとせず、オーディエンスに語りの主導権を委ねることです。ブランドが対話の「きっかけ」となり、そのなかに自然に溶け込んでいく。そのとき、より強く、深く響く「つながり」が生まれます。

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Z世代は、未来のバイヤーであるだけでなく、すでにマーケティングの現在に変化をもたらしている存在です。その関心を集め、関係を築き続けるには、従来の「無難」な方法から一歩踏み出す必要があります。

B2Cブランドの柔軟な姿勢に学びながら、親しみやすく、スピード感があり、共感を生むコンテンツを届けること。そして、ブランドの価値観に軸足を置き、Z世代が重視する社会的課題への姿勢を明確にすること。こうした実直な取り組みの積み重ねこそが、リアルな声が主役となるコミュニティの土台になります。固定観念にとらわれず、つながり方をアップデートすることで、Z世代との深く持続的な関係が生まれていくはずです。

この記事は、SpringboardのOlivia Tummilloが執筆し、Industry DiveがDiveMarketplaceを通じてライセンスを取得したものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。元記事「A New Wave of Buyers: To Win Over Gen Z, B2B Must Be Bold」は2025年4月16日にstudioID’s insights blog – springboardに掲載されました。また、日本におけるIndustryDiveパブリッシャーネットワークに関してはamana Content Marketingまでお問い合わせください。

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