和光|今ある資産を活かし、顧客との新しい関係性を拓く。特別な空間体験によるブランディング

和光|「記憶に残るポートレート」。体験で伝えるブランディングとは

銀座・和光のオリジナル撮影サービス「WAKO PICTURE YOURSELF」。象徴的な時計塔や歴史的価値の高い応接室など、普段立ち入ることができない非日常の「ここでしか撮れない」ロケーションを舞台に、和光とアマナが協働し、アマナ所属のフォトグラファーや国内外で活躍するアートフォトグラファーとともに、一人ひとりの物語を写すプロジェクトです。企画の発端やアートフォトグラファー起用の意図など、クリエイティブの力を活かしたプロジェクトの狙いを紹介します。


――どのような経緯で「WAKO PICTURE YOURSELF」が実現したのでしょう。

太田睦子(以下、太田。敬称略):きっかけは、和光さんからアマナにお声がけいただいたことでした。和光の「高品質な商品に加えて、今後は体験価値も提供していきたい」と相談いただきました。

銀座・和光の入るセイコーハウスには象徴的な時計塔や、普段は入ることのできない応接室など、他に代えがたい固有の資産があります。それらを「撮影体験」としてともにつくりあげることで、ブランドの美意識をお客様の「記憶に残る体験」へ翻訳できるのではないか。その可能性を和光と探ることからプロジェクトが動き始めました。

山本章夫(以下、山本。敬称略):和光は一対一の信頼関係を大切にする企業です。物販中心から、体験を通じて関係を育てる方向に進める上で、アマナが持つ撮影サービスの知見を和光の文脈に合わせながら、「写真館」モデルの組み立てをサポートしました。

応接室でのポートレート。絨毯や暖炉、壁面装飾が品位を演出し、落ち着いた表情を引き出す。

応接室でのポートレート。絨毯や暖炉、壁面装飾が品位を演出し、落ち着いた表情を引き出す。

特別なロケーションがもたらす体験価値

――応接室や時計塔など、特別なロケーションを使う意義はなんでしょうか。 運用上の工夫も含めて教えてください。

太田:銀座を象徴する存在でもある時計塔はもちろん、まるで映画のセットと見まごうような応接室といった替え難い資産があります。建物の中に入れば、時を感じさせる壁や床、調度品の設え、窓から差し込む自然光や柔らかな照明などが、歴史を感じる雰囲気を醸し出しています。その魅力は重層的です。

それらが被写体の気分を昂揚させる非日常を演出できますし、言葉にならない雰囲気を引き出す。場所そのものがストーリーテラーになるのです。

山本:一方で、運用ルールの明文化は必須です。歴史ある空間を使うため、撮影利用可否、撮影時間の調整、動線と安全、原状回復、機材の制限、周辺配慮といった運用上の注意点を確認しました。さらに撮影場所に応じた外光のコントロールや照明のセッティングなど、和光とともに世界観をつくりあげるため、綿密に打ち合わせを行っています。

アートフォトグラファーを迎える理由

――アートフォトグラファーを起用した狙いはなんでしょうか。

太田:お客様の嗜好に応えるには、複数の作家視点を用意することが有効と考えました。世界で活躍するアートフォトグラファーの起用はハードルが高い面もありますが、アマナのネットワークを和光とともに活かせる点も強みのひとつです。アマナ所属のフォトグラファー、アートフォトグラファー双方に撮影を依頼できる体制を整えることで、提案の幅が広がり、和光のお客様にとって特別な体験につながると考えました。

今回は一般の方のポートレート撮影に長けた野村佐紀子さんを起用できました。野村さんとはアマナのアートフォトマガジン『IMA』を通した信頼関係があり、和光のお客様に最適な体験を提供できると判断しました。

窓辺の柔光が柔らかな雰囲気をつくりだす。シーンによって被写体の関係性を物語る表情を捉える。

窓辺の柔光が柔らかな雰囲気をつくりだす。シーンによって被写体の関係性を物語る表情を捉える。

体験の前後まで設計するオペレーション

――受注から撮影・納品まで、大きな流れについてお聞かせください。

山本:サービスは和光の世界観を味わえるシンプルなパッケージと、場所や要望に合わせ柔軟にカスタムできる2つがあります。後者はアートフォトグラファー起用を前提に、和光と連携しながらお客様に提案します。

堀学(以下、堀。敬称略):受注から納品までのスケジュールを最初に共有しますが、事前ヒアリング→ ロケーション確定→ 撮影→ セレクト&レタッチ→ 出力仕様の決定→ 納品と、和光とポイントを一つひとつ確認します。特別な撮影場所では、安全や機材制限も含めて和光と運用を確認しながら進めています。

山本:和光とお客様の合意形成をサポートし、短納期の突発対応に頼らないよう心がけています。和光と撮影可能な場所、時間などの事前確認が必要なので、お客様のスケジュール調整や撮影までの期間設定と合わせて、撮影体験を棄損しないよう、細かく調整しています。

――実際の撮影の反応や効果はどうでしょう。

山本:反応は上々です。特別な空間での撮影を通して、立ち会う和光の顧客担当者とお客様との間に会話が生まれ、距離がぐっと縮まります。和光の顧客担当者にとって、お客様との深い関係づくりのきっかけにもなったようです。

:イベント時に提供した、参加者向けの家族写真や夫婦の写真撮影サービスが好評でした。撮影を通して、家族の間に日常生活とは異なる会話が生まれ「家族と過ごす特別な時間」が自然に流れます。イベントでの撮影サービスの提供はお客様との接点づくりにもなり、和光社内での認知向上にもつながっています。

リラックスした表情が生まれる撮影現場。撮る/撮られるという共体験が、顧客担当者と被写体の距離を縮め、次の対話の扉を開く。

リラックスした表情が生まれる撮影現場。撮る/撮られるという共体験が、顧客担当者と被写体の距離を縮め、次の対話の扉を開く。

――撮影後の体験価値をどう高めていますか。

:写真をセレクトすることは「第二の撮影現場」だと考えています。目的に合うカットを和光と見極め、色・質感・サイズを詰める。プリントや額装、写真集化などの選択肢を用意し、「飾る/贈る/継ぐ」まで体験価値を設計しています。

和光の資産を活かしたブランディング

――サービスの手応えと今後の可能性について教えてください。

山本:和光内での認知は着実に広がり、価値理解も深まっています。イベントの撮影枠は早々に予約が入り、お客様と顧客担当者の関係構築に寄与するなど、試みの有効性が見えつつあります。

:継続可能性が鍵です。安全や法令順守を踏まえ、和光とともに学びながら常設や他拠点も視野に入れています。

「WAKO PICTURE YOURSELF」は銀座の中心地、歴史ある和光のロケーション資産をお客様一人ひとりの体験へと翻訳する取り組みです。

アートフォトグラファーの視点、丁寧なコミュニケーション、イベント連動による顧客との関係づくり、手元に残る体験設計。それらを統合し「記憶に残る体験」として結晶化させています。和光が描くブランド体験を広げる取り組みとして、ひとつの示唆を与えてくれる事例だと言えるでしょう。

<スタッフクレジット>(すべてアマナ)
ビジネスプロデューサー:山本章夫、堀学
クリエイティブディレクター:太田睦子

文・取材:桑原勲
写真:関口尚志

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PROFILE

山本章夫

株式会社アマナ
山本 章夫

株式会社アマナ
山本 章夫

企業ブランディングや商品ブランディング、グラフィック、CG、映像などのビジュアルコンテンツ開発やコミュニケーション施策などのプロデュースを担う。幅広い分野でのプロデュース業務を遂行する傍ら、企業の​インナーコミュニケーション活性化支援​・コンサルティング​業務・新規事業開発なども行う。アマナのクリエイティブナレッジを企業の人材育成に活かす取組みに注力。

堀学

株式会社アマナ
堀 学

株式会社アマナ
堀 学

2007年アマナ入社。法人営業部立上げに従事。法人営業部マネージャーとして、飲食、宝飾、医薬など様々の企業を担当。2012年ビジュアルを重視したPPT資料作成サービス「SCRREN」を立上げに従事、法人営業部とマネージャーを兼任し、マーケット拡大に努める。その傍ら、新規開拓プロジェクト立上げや、家族の時間を美しく豊かにするライフスタイル 雑誌『MilK』のセールスマネジャーを務める。2024年より、アマナの基幹ビジネスの知見を活かし、ART関連やLuxuryBrandのマーケット拡大に従事。

太田睦子

株式会社アマナ
太田 睦子

株式会社アマナ
太田 睦子

『IMA』エディトリアルディレクター。早稲田大学第一文学部卒業後、1991年サントリー広報部に入社。PR誌『サントリークォータリー』を担当した後、中央公論社(現・中央公論新社)『マリ・クレール』編集部を経て、『エスクァイア』『GQ』などに所属。その後、フリーランスの編集者となり、雑誌、書籍、アートブック、展覧会図録の制作やアートプロジェクトに携わる。2012年にアマナでアート写真雑誌『IMA』を創刊。エディトリアルディレクターとして、IMA photobooksのレーベルでの写真集刊行、イベントなどを手がけている。

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