vol.72
偶然をつくりだす、オープンソースコミュニティのあり方を考える
業界としてはじめて、カメラボディのCADデータをオープンソースとして公開した、日本のカメラメーカー・シグマ。データの公開により、サードパーティやエンドユーザーが自由にアタッチメントを製作することを可能にしました。一方、米国・イスラエルの3Dプリンタの専門メーカーであるストラタシスは、「GrabCAD Community」というCADデータのオープンソースコミュニティを持ち、世界で870万人以上もの会員を誇ります。こうした、ユーザーを巻き込みながら自社のファンを増やしていく共創コミュニティの手法は、カスタマーサクセスのひとつとしていま注目を集めています。
日本のメーカーが抱える課題を背景に、シグマがオープンソース化にいたった戦略をひもときながら、これから加速する「モノ」のオープンソース化と、それにまつわるコミュニティ活性化の仕掛け方について、「シグマ」「ストラタシス」「アマナ」の3社で語るトークセッションを開催しました。
タジリケイスケ(株式会社アマナ「amanatoh」編集長/以下、タジリ):今回のセッションでは「偶然をつくりだす、オープンソースコミュニティを考える」をテーマに、3名のゲストにお話ししていただきます。
以前、アマナトのトークイベントでアーティストのAKIINOMATAさんとデザイナーの亀井潤さんにご登壇いただきました。「先行きの見えない世界のなかで、どのように“正解”を見つけていくのか」というテーマでお話をいただいたのですが、今回はその続編的なトークになると思います。つまり、価値あるソリューションにたどり着いた後、それをどのように世に送り出していくかというのが今日の主題です。ブランド戦略やコミュニティ戦略と言われる分野ですが、今回は「オープンソースコミュニティ」をキーワードに、時代の戦略的可能性について探っていきたいと思います。
ご登壇いただくのは株式会社シグマの若松大久真さん、株式会社ストラタシス・ジャパンの竹内翔一さん、そしてアマナより鈴木陸の3名です。まずは自己紹介も含め、各社のオープンソースコミュニティの取り組みについてお話しいただけますか?
若松大久真(株式会社シグマ 商品企画部/以下、若松):私はシグマの商品企画部に所属しておりまして、新製品の企画開発やマーケットへの投入、PRに携わっています。シグマの製品ラインナップは大きく分けて、カメラ、レンズ、シネレンズの3つです。ビジネスの中心になっているのはレンズで、現在40種以上のラインナップがあります。2016年から「SIGMA CINE LENS」というプロダクトラインがスタートして、映像制作の分野にも参入しています。徐々に認知度も上がってきて、今年公開のハリウッド映画ですとか、amazon primeやNetflixの作品でも多数の使用実績があります。
そして今日のお話のメインになってくる、私が商品企画として携わった「SIGMA fp」シリーズについてご紹介します。世界最小最軽量フルサイズミラーレスカメラとして2019年に発売されたシリーズです。このカメラは、3つのコンセプトを掲げています。ひとつ目は「Pocketable Full-frame」、小さなボティにフルサイズセンサーを搭載しています。ふたつ目は「Scalable」、変幻自在の拡張性ということで、この点が今日のテーマにも大きく関わってきます。3つ目が「Seamless」、プロの現場で通用するレベルでPCと繋いてWebカメラとして使用できるなど、本格的で自由な撮影機能を備えています。
SIGMA fpの拡張性を担保するためには、アクセサリーの充実が欠かせません。しかし、必要なアクセサリーを全て自社で生産するというのは難しい。照明や三脚など、各専門メーカーとのタイアップをよりアクティブに行っていけるように、弊社ではSIGMA fp外観の3Dデータを公開しています。それはシグマの公式サイトでも公開しているんですが、この後竹内さんからご紹介いただく「GrabCAD.com」でも公開しています。これによってシグマを知っている人は弊社のサイトで、知らない人には別のコミュニティで製品の3Dデータを見つけてもらえる。そういう制度設計をしています。先日発売した「SIGMA fp L」のデータも発売当日に公開しています。
タジリ:若松さんありがとうございます。今回はリアルタイムで視聴者のみなさんにアンケートを実施しています。「いま、オープンソースを利用していますか?」という質問を投げかけところ、「よく利用している/利用したことがある」が34%、「利用を検討している」が3%で、「利用したことがない」61%と過半数となっています。この結果について、GrabCAD Communityを運営しているストラタシスの竹内さんはどのように思われますか?
竹内翔一(株式会社ストラタシス・ジャパン プロダクト&サービス部/以下、竹内):思ったよりも少ない印象です。グローバルで見ると活性化しているので、日本ではまだまだ利用が進んでいないんだなと。エンジニアのみなさんに向けて、我々としてももっとPRしていかないといけませんね。
タジリ:コミュニティの課題については後ほどクロストークで語っていただきましょう。それでは、続いてストラタシス・ジャパンについてお話しいただけますか?
竹内:私はストラタシス・ジャパンのアプリケーション・エンジニアとして、3Dプリンタの導入支援に携わっております。また、3Dプリンティングによる造形サービス事業の立ち上げから、サービスの担当をしています。弊社は30年以上にわたって、3Dプリンタ業界を牽引してきた企業です。これまでの設置実績は14万件以上。本社はイスラエルとアメリカにあり、弊社はその日本支社という位置付けです。
航空宇宙、自動車、歯科、医療までさまざまな分野においてソリューションを提供しております。耐久性、耐熱性などの機能面はもとより、デザインの自由度を高めた製品なども開発・販売しています。いくつか事例を挙げると、例えばAIRBUS社のA350という飛行機は、筐体や内装部品など1000点以上のパーツを弊社の3Dプリントで制作して実装・運行しています。
デザイン分野では、透明素材とカラー素材を組み合わせた造形を得意としています。最近ではPANTONE認証を受けたカラーマッチングであったり、木目調やシボ調※などの質感表現の幅も広がっています。一般的にはプレーンな造形をして終わりというのが3Dプリンタのイメージかもしれませんが、実際は色や質感に至るまでワンストップで出力できるようになっています。
※シボ:立体的なふくらみのあるシワ模様。
先ほどのお話にもありましたが、弊社では「GrabCAD.com」というエンジニア向けのSNSの運営も行っております。その他コンサルティングサービスや造形サービス、ソフトウェア開発など、3Dプリンタにまつわる仕組みづくり=エコシステム設計にも積極的に取り組んでいます。
タジリ:私もストラタシスの製品を実際に拝見したのですが、想像を超えるクオリティでしたね。10年前ほど前に3Dプリンタが取りざたされた時期がありましたが、当時はまだ発展段階で、実用に耐えないところも多々ありました。しかし、昨今は技術開発が進んで、以前は想像もできなかったような活用法が次々に生まれていますよね。
ここで、「3Dプリンタを使っていますか」というアンケートの回答を見てみましょう。「よく使っている/使ったことがある」が54%、「使ったことはないが検討している」が29%、「使う予定はなさそう」が17%となっています。視聴者の過半数が使用しているという結果になりましたが、竹内さんはこの結果をどうご覧になりますか?
竹内:おそらく日本の企業で、開発プロセスで3Dプリンタを使ってない企業はほぼないのではないでしょうか。機構設計をやっている方にはもう無くてはならないものではないかと。
若松:その通りですね。レベルや頻度に差はあるとしても、ハードウェアを作っていれば必ず使っていると言っても過言ではないと思います。
タジリ:では、引き続き弊社の鈴木よりプレゼンテーションをしてもらいましょう。
鈴木 陸(株式会社アマナ プランナー・ディレクター/以下、鈴木):私はアマナでプランナー/ディレクターとして、企業の社内コミュニケーション施作やブランドコンセプト開発、制作企画ディレクションなどを担当しています。弊社は「VISUAL(-ize)」というところに価値提供の強みを持っております。もともと写真事業からスタートして、一昨年40周年を迎えました。価値や課題を見出す“眼”とビジュアライズする技術をもって、さまざまなコミュニケーションを創り出すことをミッションとしています。
「VISUAL(-ize)」には3つのステップがあると考えています。ひとつ目は「生みだす」。これはクライアントのポテンシャルや課題の抽出し、コンセプトメイクやプロトタイピングをサポートするということです。ふたつ目は「形にする」。目に見えるビジュアル、そして目に見えないシステムを具現化していくプロセスです。そのために弊社では、写真・映像・デザイン・エンジニアリングなどさまざまなクリエイティブを実現する人材を抱えています。そして、3つ目の「広がる」というステップ。これは今回のテーマに最も関わってくる部分だと思います。表現したものを伝え届ける技術、価値を最大化するための戦略もまた弊社が重視するところです。
タジリ:実体的な商材提供だけでなく、コミュニティの創出やサポートもアマナの得意とするところですね。さて、視聴者のみなさんには、今回もうひとつアンケートに回答していただきました。「共創にかかわるようなコミュニティに参加していますか」という質問に対して、「よく参加している/参加したことがある」45%、「いいミュニティがあれば参加したい」40%、「自社でコミュニティを持っている」0%、「参加したことがない」26%という回答を得ました(複数選択可)。半数くらいがコミュニティを探しているといった状況ですかね。顧客を巻き込みながらコミュニティを作っていきたい、あるいはパートナー探しをしている企業や個人は一定数いるのかなという印象です。
タジリ:それでは、ここからクロストークに移っていきたいと思います。まず、若松さんにお伺いしたいのですが。シグマはストラタシスの3Dプリンタを導入しているということですが、いくつかメーカーがあるなかでその理由というのは、どういったところにありましたか?
若松:弊社が3Dプリンタを運用したのは10年以上前で、設計の際の試作で使用していました。ストラタシスさんのプリンタは2013年頃から使用しています。機種選定に関わったエンジニアによると、まずは精度が他社より高いと。そして出力スピードにも優れている。これはスケジュールがタイトな開発では助かるポイントです。さらにコストが低く抑えられているのも非常に嬉しいですよね。
タジリ:その3つのバランスが最も優れていたのがストラタシス社の3Dプリンタだったということですね。
竹内:ありがとうございます。ばっちりPRしていただいて(笑)
若松:もはや弊社では3Dプリンタの代名詞が商品名の「Eden」ですからね(笑)。それくらいみんな使っています。
タジリ:オープンソースについて話す前に、昨今のオープンソースハードウェアの情勢について鈴木さんいかがでしょうか。
鈴木:オープンソースをコアテクノロジーとする企業は過去30年に200社以上設立されていて、特にここ10年の取引は大規模化していて「オープンソースのルネッサンス」と言われる時代が到来しています。
COVID-19の世界的な流行がはじまった当初、ドイツの医療機器メーカー・Medtronic社は自社の人工呼吸器の設計仕様書や治具の図面などのデータを公開しました。ライセンスの期限は「WHOがパンデミックの終息を宣言するまで」。オープンソース化はコロナ禍の世界において加速度をましていますが、Medtronic社の動きはその先駆であったと思います。
またこの人工呼吸器のプロダクトに対して、テスラなどの異業種が制作検討を名乗り出た、というニュースがありました。Medtronic社のオープンソースを他社がサポート、大きな動きになっていく、この流れがおもしろいと感じました。
また、オープンソースコミュニティの流れはアジアにも波及しています。中国では2020年10月、北京・上海・深セン・成都で大規模なカンファレンスが開催されました。
竹内:COVID-19といえば、流行初期にフェイスシールドの3Dデータが各所から公開されたときがありましたよね。弊社でも生産に関わったのですが、その時自動車メーカーなどの異業種との共同の機会があって、オープンソースによって広がっていく関係があるということを実感しました。
タジリ:シグマは自社ビジネスの核になるカメラの3Dデータを公開していますよね? いろいろ懸念もあったと思いますが、オープンソースにするという選択をしたのはなぜでしょう。
若松:厳密には外観データだけで、中身のデータは公開していません。だから、コピー商品が出回るということはない。ただ、懸念されるデメリットよりも、メリットの方が圧倒的に多い。アクセサリーの話で言えば、よりフィットしたものを作るには3Dデータが不可欠です。作り手が三次元測定器を買って測って…というところから始めていては、コストも時間もかかる。ユーザーメリットを考えれば、最善の選択はやはりオープンソースです。
たしかに他のカメラメーカーでも、NDA(秘密保持契約)を結んでアクセサリーメーカーにデータを公開することはやっていました。しかし昨今は、個人でも3Dプリンタを持っている人が増えたので、もはやメーカーだけが作り手ではありません。Webサイトでのデータ公開は弊社が初めてだったと思いますが、それは国内外の幅広い作り手にリーチしたいという意図があったからです。
また、データ公開は、ブランディングとしても効果を発揮するなと。オープンソースにするとなんだか「会社としてオープンな雰囲気」が出るじゃないですか(笑)。「何か相談ごとがあっても、他のメーカーだと門前払いされそうだけど、シグマなら話聞いてくれるんじゃないかな」って思ってもらえるというか。事実、世界中から問い合わせがあるんですよね。「こういうもの作ろうと思ってるんだけど、どう?」っていう提案が増えるというのはありがたい話ですよね。
タジリ:とはいえ、実際オープンソース化の提案を社内で通すというのは難しいですよね? 設計図は会社の資産でもあるので、リスクを警戒する人もいるだろうし。どの企業でも「オープンソースいいね、じゃあやろうか」と一足飛びにできるものではない気がします。
若松:もちろん、抵抗はありました。例えばデザインチームとしては、外観データはデザインの重要な要素であると同時に「一部でしかない」。だから公開はしたくない。彼らにとっては物理的に具現化された質感やUXも含めて「デザイン」なわけです。要するに、デザイナーとして世に出したいのは完成した製品であって、その過程ではない。3Dデータは中途段階における要素のひとつでしかなく、世に出すのは不本意なわけですね。
ただ、最終的には社内の理解を得て、データ公開に至りました。デザイナーも、ユーザーサイドで制作されたグリップやケージを実見するのは楽しいと言っていましたよ。
タジリ:シグマはオープンソースによって、国内外の企業やユーザーとコミュニティを作っているわけですが、こうした動きは日本ではまだまだ少ないというのが現状です。竹内さんのご指摘にもあったように、海外ではプラットフォームが発達して、このようなコミュニティが一層盛り上がりを見せています。ストラタシスが運営する「GrabCAD Community」は業界内では認知度が高いプラットフォームだと思いますが、その現状と課題について竹内さんからお話いただければと思います。
竹内:「GrabCAD Community」は現在、全世界で870万人以上のユーザーが利用していて、400万件以上のCADデータが公開されています。3Dデータの自由なアップロード/ダウンロードはもちろんのこと、さまざまなコンテンツがあります。例えば「チュートリアル」、つまりアマチュアがデータの作り方などをエンジニアやデザイナーから学べる機会が提供されています。世界中のユーザーが作ったマニュアルが公開されていますね。あと面白いのが「チャレンジ」というものでして。これは例えばNASAとかゼネラル・エレクトリックのような企業が、世界中のエンジニアに「こんな部品が作れないか」という問いかけをして、そのソリューションに対して懸賞をかけるというコンペの一種です。
タジリ:これはストラタシスの主催ですか?
竹内:各企業が主催することが多いです。もちろん弊社でデザインコンペとして募集をかけることもあります。
タジリ:なるほど。単に3Dデータのデータベースだけでなく、こうした「コト」が起こる仕組みも実装されているということですね。
竹内:そうですね。他にも「グループ」という機能で、語りたいトピックごとにメンバーを募ることもできます。共通の関心をもった横のつながりのなかで質問しあったり、そういうコミュニケーションが生まれていますね。
タジリ:日本人のユーザーはまだまだ少ないとお聞きしました。欧米や他のアジア諸国のユーザーが増えているなかで、日本のユーザーが伸び悩んでいる原因はどこにあると思いますか?
竹内:これは個人的な見解になりますが、私は前職が自動車メーカーのエンジニアでした。その当時を振り返ると自発的にモノを作ろうという気概があまりなかった。業務として、あるいは命令を受けて、試行錯誤を始めることはあっても、自分から動き出すことはほぼなかったです。フリーランスを除けば、日本のエンジニアや開発担当者には、そういう自発性を持たない作り手が多いことが遠因しているのではないでしょうか。
タジリ:逆に、海外ではモノづくり=自発が自然になっていると?
竹内:欧米やアジア諸国には、DIY文化が根付いていますからね。あと、日本ではコンプライアンス遵守が徹底されていて、業務上の知識や技術は外では使わないという教育も原因のひとつなのかなと。
タジリ:日本はモノづくり大国を自称していますが、現状をみると危機感を持たざるを得ませんね。
竹内:そうですね、私も同じ気持ちです。海外の方が個の力が強いというか、エンジニアたちが自分から発信して、仕事を獲り、ひとつのものを作り上げるという意識が非常に高い。それがスタンダードになる時代もそう遠くないのかなと思いますね。
鈴木:カメラマンもそうですよね、いい写真を撮れるだけではなく、プレゼンテーションや表現がうまい人はフリーランスでどんどん発信してどんどん仕事をとってくるひとも多いですよね。でも、モノづくりという枠で見たときは、まだそうした意識をもつ人が日本ではまだ多くないのかもしれませんね。
若松:モノづくりとだとどうしても、つくるためのハードに投資をしないといけない。低廉になっているとはいえ、個人ではまだハードルが高い。ただ、参入障壁が下がってきているのは事実なので、いい流れだとは思っています。
タジリ:オープンソースコミュニティの課題を挙げていただいたところで、次の話題に移ります。では、そうしたなかでコミュニティを実際に機能・稼働させていくためには、どういう戦略が必要だと思われますか?
竹内:日本のオープンソースコミュニティユーザーが増えないという課題に対しては、シグマのような企業が、このような場で先駆的な事例を紹介してくれるのが最も有効なんじゃないかなと思っています。
若松:いやぁ、他社さんも乗ってきてくれるといいですけどね(笑)
タジリ:3Dは扱えないけど2Dなら扱える、あるいはアイデアだけはあるという人たちまで視野に入れれば、潜在的なコミュニティの規模はもっと大きくなったりしませんか?
竹内:なるほど、その考えはおもしろいですね。形だけ作れる人、アイデアだけ持っている人がうまくマッチングできれば、まだ世にない素晴らしいものが生まれる可能性が上がりますね。
鈴木:クリエイターの定義を広げていくことも重要ですよね。コミュニティに参加する人たちっていわば趣味人・アマチュアが多い。彼らを、例えばメーカーが公認して、オフィシャルなクリエイターとして登用する仕組みがあるといいなと思っていて。メーカー所属でもないけど、ただのアマチュアでもない、新しいスタンスのクリエイターを名指す概念を作れないかなと思っています。もしそういう仕組みができたら、メーカーとは別に彼らがアイデアの窓口になって、モノづくり文化が飛躍的に進展する気がします。
若松:たしかに趣味人が多いですが、彼らのなかにも製作をビジネス化している人は大勢います。それがコミュニティを長期的に持続させる秘訣なのかもしれませんね。モノを作るにはお金が必要ですから。
タジリ:たしかに。いまは個人で発信できて、良いアイデアがあれば投資を受けられる時代ですからね。「GrabCAD Community」がそのひとつの拠点として機能してくれるといいですよね。
今回のタイトルにも掲げた通り「偶然をつくりだす」というのは重要です。モノを作って売るというシンプルな製造/販売だけでは、どの企業も立ち行かなくなってきたのが昨今です。自分たちのプロダクトやサービスをいかにユーザーに届けるか、訴求するかという部分が目下の課題だと思います。
そのためには、広告的な手法ではなくユーザーコミュニティを活性化し、ユーザー側にメリットも与えながら自然とファンをつくっていく手法が必要なのでは、と考えます。
ストラタシスが業界でリードする存在になっている理由として、870万人以上のユーザーを抱える「GrabCAD Community」というコミュニティがあるということがあげられるのではないでしょうか。ユーザーは、たまたまストラタシスの製品を使って、たまたま「GrabCAD Community」に参加しているという「偶然」を体験しています。が、さらにそこからファンを生み出すために、その「偶然」を「必然」にさせる仕掛けを企業側が作っていくことが重要です。
オープンソースは従来のメーカー/ユーザーの垣根を超えたコミュニケーションを可能にして、消費文化そのもの構造を変えていく可能性を秘めています。オープンソースのオンラインコミュニティは日本ではまだまだ普及の途中ですが、モノとの付き合い方を考え直すインセンティブになるものです。ストラタシスとシグマの取り組みを先駆として、日本企業発の新しいモノづくり文化が生まれることを期待しています。
3名の登壇者のみなさん、本日は興味深いお話をありがとうございました。
株式会社シグマ:https://www.sigma-global.com/jp/
株式会社ストラタシス・ジャパン:www.stratasys.co.jp
GrabCAD Community:www.grabcad.com
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