vol.133
ブランディングの視点を取り入れた機能するコーポレートサイトとは
現代のコーポレートサイトは、企業と顧客の重要なコミュニケーションツールであり、リニューアルを計画する企業はさまざまな課題に直面しています。しかし、時代の変化とともにコーポレートサイトのあり方も変化し、成功するためには他社との差別化やブランディングの視点が重要です。
本ウェビナーでは、アマナが手がけた事例やフレームワークを通じて、ブランディング視点を取り入れた企業のブランド戦略について解説。アートディレクターの徳増勇太とUXプランニングディレクターの藤岡裕祐がノウハウやポイントを紹介し、プロデューサーの伊藤太一がファシリテーターを務めました。
伊藤太一(アマナ/以下、伊藤):始めに、こちらのグラフをご覧ください。このグラフは情報の流通量と消費量を表しています。青色が流通量を、オレンジ色が消費情報量を示しています。インターネットの普及によって情報量が増加する一方、消費情報量に変化がありません。そのため、ユーザーを理解し、情報をどのように届けるのかが重要な時代だと言えます。
伊藤:一方で、信頼性の高い情報ソースに関する調査結果では、「ブランドのウェブサイト」が上位にランクインしています。口コミに続き、信頼性の高い情報ソースとして認識されています。情報があふれる現代において、企業のウェブサイトはさまざまなステークホルダーとコミュニケーションをとるうえで重要なツールの一つであると考えられます。
伊藤:アマナでは、さまざまな業種の企業を幅広く支援していますが、特にコーポレートサイトに関する担当者から、「UIがわかりづらい」「デザインが古く感じる」「営業やマーケティングとしてのタッチポイントを強化したい」「コンテンツ・ビジュアル不足」「採用に課題」「サービスがわかりづらい・伝えづらい」のような課題が多く寄せられます。これらを総合すると、企業の価値を魅力的、かつ効果的に伝えきれていない可能性があるのではないでしょうか。
藤岡裕祐(アマナ/以下、藤岡):ユーザビリティに関する課題はよく聞かれます。使い方や探しやすさ、その他にも運用面での問題やサイトのガバナンスの改善に関する相談も多いです。
徳増勇太(アマナ/以下、徳増):「ウェブサイトをスタイリッシュにしたい」「面白い採用サイトを作りたい」といった外見に焦点を当てた相談が多くあります。しかし、もっと本質的な部分を見直すべきだと感じています。
伊藤:これらの課題に対する解決方法として、ターゲットの整理やカスタマージャーニー、チャネルの整理などがありますが、これだけでは表層的な課題解決に過ぎません。
伊藤: 表層的な課題と深層的な課題、どちらも重要な要素でありながら、どちらか一方だけを解決しただけでは中長期的な解決は得られにくいものです。アマナでは、表層的な課題と深層的な課題の両方を考慮し、コーポレートサイトのあり方を支援しています。本日は深層的な課題に焦点を当て、アマナの事例を交えながら、課題解決のアプローチについてお話しします。
徳増:コーポレートサイトのあり方を考える際に、より深いブランディングにつながるデザインの考え方と事例を紹介します。
ウェブサイトやツールの制作は表層的な作業ですが、その背後には戦略の策定やパーパス、ブランドシステムの開発などがあります。これらが整理され、ビジュアルアイデンティティ(以下、VI)やガイドラインとして一貫性を保つことが、深層的な課題の解決につながります。深層的な課題が整理されていない状態で、下図のフェーズ4にあたる各種ツールやコンテンツを制作するだけでは、長期的に見れば非効率的になってしまいます。
徳増:ここで、より深層的な課題に取り組めた事例として、東急モールズデベロップメントのコーポレートサイトの改修についてご紹介します。
最初はウェブサイトのリニューアルデザインの相談でしたが、VI開発まで進展しました。VIが開発されていないと、各タッチポイントごとに印象が異なってしまいます。そのため、ウェブサイトのコンテンツを制作する際には、まず明確なVIが定められているかを確認するようにしています。今回の案件では明確なVIがなかったので、そこから着手する必要があると感じました。
ウェブデザインに入る前は、コミュニケーションの象徴となるデザインを考えました。東急モールズデベロップメントの頭文字「TMD」をベースにし、「枠にとらわれず(枠からはみ出して)、既成の概念を超えていく」というブランドの未来像を表すVIを開発。このコンセプトに基づいてウェブサイトのデザインを制作しています。シンボルから派生したグラフィックは「TMDライン」と名付け、ウェブサイトだけでなく名刺や封筒、会社案内、動画など、あらゆるタッチポイントで同じ印象を与えられるよう、VIとして機能することを提案しました。
徳増:ウェブサイトのデザイン制作の過程でVIを開発し、そのVIに基づいてデザインすることで、ブランディングの一環として機能するウェブサイトに改修することができました。
伊藤:すでにコーポレートロゴが存在する中で、どのような経緯でブランドロゴを作成したのですか?
徳増:既存のコーポレートロゴは打ち文字で作成されたものだったので、オリジナルのブランド表現をしたいと思ったのがきっかけでした。「TMD」という呼び名も提案した結果、コーポレートロゴとは異なるブランドコンセプトを伝えるためのコミュニケーションシンボルとして採用されました。
伊藤:なるほど、コーポレートロゴを刷新するとなると大掛かりなプロジェクトとなりますが、コミュニケーションシンボルという考え方は使い勝手が良く、ユニークですね。
藤岡:確かにユーザーに新しく認識してもらうツールとして非常に有効ですね。ガイドラインを経てウェブサイトのデザインに昇華していくうえで、どのようなことを意識して進めましたか?
徳増:クライアントの担当者がブランドの印象をスタイリッシュに刷新したいと強く望んでいて、その要望に全力で応えたかった。そのためにはクライアントのイメージしている「スタイリッシュな世界観」を理解することが必要でした。そこで、ブランドカラーを明るくして未来を想起させる意味を込めたり、既成の概念を超えるコミュニケーションシンボルを重視しました。元々TMDが持っている価値を促していく。これらがスタイリッシュさにつながっていくという意味を持たせることで、全員が納得するデザインのストーリーを提案できたのがポイントです。
藤岡:共通の指針があると、クリエイティブな作業が効率的に進むと思います。クライアントと同じ視点で未来を描くことも可能ですね。
徳増:ページ数が多いウェブサイトの場合、デザインシステムから制作した方が開発、運用ともにメリットが大きい場合があります。その際も、ブランドの表現は重要であり、VIが開発されていると具体的なコンセプトに落とし込むことができます。
たとえば、ウェブサイトの振る舞いや「らしさ」を人物にたとえて、そこからディレクションワードを導き出します。そして、ディレクションワードに沿って一貫性のあるデザインシステムを構築していくのが理想的です。また、ディレクションワードから導き出された制作意図に沿ってデザインシステムの詳細を設定すれば、アートディレクターのチェックなしでも構築することが可能なので、一定のクオリティが維持できるという利点もあります。こうしたデザインシステムを納品することで、プロセスを効率化させるだけでなく、運用面でも優れたウェブサイトを実現することが可能になります。
藤岡:ウェブサイトに関わる際に考慮すべきポイントは多岐にわたりますが、特に注目すべきは以下の4つの項目です。
藤岡:優れた設計をしても、VIから乖離していたり、ターゲット層に響かない場合、中長期的には効果が薄れてしまいます。コーポレートサイトを機能させるには、企業が顧客に与えたいイメージと、顧客が企業に抱くイメージを一致させるブランディングの視点から、サイト上のさまざまなタッチポイントを考慮して戦略を立てることが重要です。さらに、商品を売るためのマーケティング視点も欠かせません。これらの設計とマーケティングを組み合わせ、ターゲット層が継続的にサイトに魅了され、企業に信頼や安心感を抱くような良質な体験を提供し、継続的な支持を得ることを目標にするべきなのではないかと考えています。
現在の施策は、顧客との一貫したコミュニケーションを確保していますか? 会社のイメージや性格を正しく表現していますか? もし違和感を少しでも感じたら 、再度見直してみてください。ブランディングの観点を加えることで、企業の表現が変わります。その結果、顧客からの認識や選択方法も変わるでしょう。この過程は、競合他社や市場からの差別化にも影響を与える可能性があります。これらの取り組みを継続することで、より機能的なコーポレートサイトに発展すると思います。
amana WEBSITE ANALYTICS SERVICE
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Webサイトは公開することがゴールではなく、公開後のトラフィックデータを分析し、改善しながら運用していく必要があります。
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