MWCバルセロナから学ぶ、コネクティビティ業界のトレンドとイノベーション

vol.132

Speakers and key visuals

Text by 濱田まり子

世界最大の通信イベント「MWC(Mobile World Congress)」。毎年2月後半に開催されるイベントで、2024年は2月26日から29日までスペイン・バルセロナ で開催されました。今回のウェビナーでは、世界中のマーケット潮流をリサーチ・レポートするイノベーションアドバイザリー「STYLUS」の秋元陸氏が、MWC開催内容からスマートシティープロジェクトやIoT技術の進行状況をご紹介。毎年MWCを調査しているリサーチファームならではの視点で解説しました。

 

日本企業も参戦! MWC Barcelona 2024の規模

MWCはスペイン・国境で開催される世界最大級のモバイルや通信技術のカンファレンスで、多様な企業が最新テクノロジーを発表。進むのか未来を予測するなか非常に参考になるカンファレンスです。

10万人の来場者と2,700社の企業の出展があり、主要なスポンサーはメディアやテック企業。日本企業ではNTTデータ、日本電気(NEC)、楽天など、マイクロソフトはAI関連で参加しています。のキーノートで、テクノロジーの変化が人々のライフスタイルに影響について議論されることも、このカンファレンの特徴です。

MWC バルセロナも成功を収める

日本では楽天のブースが注目を集めました。楽天グループは楽天モバイルの子会社である楽天シンフォニーを通じて、仮想空間の構築やテクノロジーのオープン化を含む新技術を取り入れたモバイル通信プラットフォームを展開。ドイツの通信会社1&1が楽天シンフォニーのプラットフォームを採用し、業務を開始したことを発表しました。

アジアの地域性で話題になったのがTモバイルの「T PHONE」。生成AI機能を搭載し、画像認識やテキストから画像生成が可能。スマートフォン本体は安い1ユーロですが、月額90ユーロの料金プランで実質コストを相殺しています。

 

AI搭載のテクノロジー

最新の通信技術とAIをご紹介します。

 

・Google「丸で検索

Googleの「Circle to Search」はGeminiと呼ばれる大規模言語モデルを活用し、画像検索や音声コマンドなどでのイベント作成が可能です。また、スマホ画面上の気になる部分を指先で囲むだけで簡単モバイル体験が便利になるためにAIかどうかは重要ではなく、新たな体験とそのわかりやすさがポイントになっています。Geminiは複数の要素を同時に扱うモーダルAIとして注目されています。

Google「Circle to Search」。調べたいことは指で囲むだけ。もう検索ワードに悩むことはありません。

 

・Samsung「Galaxy AI」通訳

 SamsungのスマートフォンGalaxyは、独自のAI「Galaxy AI」を搭載。 まるで旅先でのグルメ情報探しでは、検索だけでなく同時翻訳を活用し、現地の人との会話で情報を得ることが可能に旅行だけでなくさまざまなシーンでの利用が期待されており、2024年には翻訳機能をリリース予定です。

 

・HONOR 「Magic6 Pro」

ユーザーの行動属性を把握し、中国に含まれるイベントや住所を地図やカレンダーに自動反映。アイトラッキングも視点し、視点でアプリ選択やメッセージ開くが可能になります。

HONOR「マジック6プロ」

視点の動きだけでハードディスクの操作が可能に。


・Infinix Mobile

香港のInfinixが、ゲームに特化したスマートフォンを発表。AIがスマホ本体の電力効率や挙動を最適化、バッテリーの消費を制御。快適なゲーム体験を提供します。 

Infinix Mobile ゲーミング スマートフォン

・ Xiaomi タブレット

Xiaomiのタブレットでは、手書きのイラストを画像生成アプリに紐付け、画像に変換する機能を紹介。デモストレーションでは、蝶のイラストを画像生成AIに依頼する様子が描かれました。

 

「Circle to Search」を始め、AIを活用してユーザー体験を向上させる事例が多数紹介されました。また、カンファレンス内で多く語られていたのが、NPUという概念について。 NPU(Nural Processing Unit)はAIや機械学習のアルゴリズムを実行するために専用に設計されたプロセッサーであり、GPU(Graphics Processing Unit)よりIntelやDELLはすでにNPUを搭載しています。NPUを搭載することで、機械学習の進化やデータ分析の進歩が期待されており、この領域は注目すべきテーマですの一つとされています。

 

衛星接続がインフラを変える

最新のモバイルテクノロジーについて紹介します。アメリカの宇宙事業会社Space Xが人工衛星による通信サービス「Starlink」は、ウクライナの病院での活用で話題に。これからもわかるように、地球全体の文化発展にとって非常に重要であり、インフラ構築のコストを考えれば、衛星接続は大きなメリットがあるを言われています。

 

 ・Thuraya「Skyphone

「Skyphone」は、UAE(アラブ首長国連邦)のThuraya社が提供する衛星通信で、通信範囲を知らず、遅延せずにデータ通信が可能です。2024年夏から秋に発売予定です。 

トゥラヤ「スカイフォン」

・ Ulefone「Ulefone Armor 23 Ultra」

「Ulefone Armor 23 Ultra」は、衛星メッセージの通信機能を搭載しており、限界な環境下でも信頼性の高い通信を提供します。

「ウレフォン アーマー 23 ウルトラ」

Ulefoneに加え、ルクセンブルクの衛星通信会社SESはコロンビアの通信事業者と提携し、インターネットの接続が難しい遠隔地にWi-Fiサービスを提供する計画を発表。かつ経済的な発展を最大限にできるよう、アクセスを提供します。衛星通信テクノロジーの提供により、これまでネットワーク接続に取り組むことがあった地域や企業が発展する可能性が高まって話題になっています。

 

メタバースとAIを活用したワークプレイス

メタバースに関するテーマについても発表されていました。海外では成功を収めている企業が登場しており、今後5〜10年で一般化すると言われています。

台湾を拠点とするスマートフォン・携帯情報端末メーカーHTCが、VRヘッドセットのVIVEシリーズで知られる中で、独自のメタバースプラットフォーム「VIVERSE」を公開し、メタバースとAIを活用したワークプレイのコンセプトムービーを発表しました。

HTC VIVE。

独自の技術・ポリゴンストリーミングによって、メタバース内で高精細な3Dオブジェクトの表示が可能に。これにより、複数人がメタバース内の会議室で集まり、1つの製品を見ながら話すことができます。同時翻訳もメタバースで活用されており、異なる言語を話す人々が仮想空間で会話する際に、選択した言語でコミュニケーションできます(同じ会議室内でのみ適用)。

 

VRスマートヘッドセットの進化が進んでおり、小型軽量化に取り組むブランドが増えている中で、グラス向けのレンズ開発などを語るtooz technologiesは、メガネにXRを搭載。最先端のテクノロジーと、途中で翻訳するためのマイクとスピーカーを推進していると発表しました。

tooz technologies。

メタバースは通信テクノロジーと密接に関連しており、AIと同様に注目を集めている領域であると言えます。

 

スマートフォンの最新プロダクトデザイン

・Samsung「クリングバンド」

Samsungは柔軟な液晶画面を折り曲げ、腕に巻きつけるリストバンド型のウェアラブルスマートフォンを発表。この斬新なデザインにより、新しいユーザー体験が提供されることが期待されています。

サムスン「クリングバンド」

・Infinix「E-Color Shift」 

Infinixが「E-Color Shift」を発表しました。Eインクを通電させることで色や形を自由に変える機能を提供し、カラーバリエーションをカスタマイズできます。させることが可能です。

インフィニクス「E-カラーシフト」

・Clicks Technology 「Clicks Creator Keyboard」

イギリスのClick Technologyが、キーボード付きiPhoneケース「Clicks Creator Keyboard」を発表。英語だけでなく、ドイツ語やフランスのキーボードもリリース予定とのこと。このスマートフォンケースにキーボードが付いているデザインは、元祖スマートフォンのBlackBerryを彷彿させ、レトロブームの20年前のプロダクトデザインやユーザー体験を復刻することが若者に受けられています。BlackBerryへの憧れを体現できることでも話題になりました。

Clicks Technology「Clicks Creator Keyboard」

 

バズワードに振り回されないために

今回のMWCでは、AIが大きなテーマとして注目されました。AIのテクノロジーは以前から存在していましたが、最近では画像の解析やコストの低下などの進歩により、が容易になりました。また、AIやメタバースの概念は時代とともに変化し、テクノロジーとして新しい生活に浸透しています。

毎年、新しいバズワードが出現する中で、これらに振り回されないために必要なのが、以下の3点です。

理想のUXとテクノロジーの気づき:
BtoC企業を想定した際、ユーザーにとって快適なユーザー体験は何か。デジタルテクノロジーとしてのメタバースやAIは手段であり、目的ではありません。理想のUXを描き、新しいテクノロジーが導入しやすくなった時に再評価することが、建設的な議論と言えます。

自社が保有するデータの見方:
店頭、eコマース、SNSなど、企業と顧客との接点は多様ですが、自社がデジタルテクノロジーを活用する際には、データが重要な要素となります。差別化を決意するために、顧客との接点がどこにあり、どのような情報が収集されるかを見極める、整理することも大切です。

データエクスチェンジの考え方:
このような状況下では、最新データだけでは理想のUXに決心しない場合もあります。そのような場合には、データエクスチェンジのアプローチが必要になります。しかし、最近ではユーザーが自分のデータに価値を見出し、提供したくないという傾向がございます。理想のUXを提供するために、そして、必要なデータを収集するためにユーザーにどのような対価を提供するかという議論が重要です。 

これらの議論は、テクノロジーを事業の競争力として活用する際に、バズワードに振り回されないようにするために推奨です。 

 

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ロンドンを拠点に活動するSTYLUSは、様々な業界のトレンドを分析し、未来の変化を予測するイノベーションアドバイザリーサービスです。
独自のアプローチで、データと経験を基にしたインサイトを提供し、企業がイノベーションを推進し、市場の変動に対応できるよう支援しています。

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