唯一無二のブランディングのために。他社と差別化できる「コンセプト策定」のメソッドを学ぶ

vol.145

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SPEAKER スピーカー
  • 徐 維廷 (株式会社アマナ/クリエイティブプランナー)

「多様性」が説かれる現代では、さまざまな消費者のニーズや価値観に応えるため、あらゆる商品やサービスが次々と生まれています。その中で、いかに自社製品やサービスの価値を時代に合わせて発信できるのかは、今やビジネスにおける必須の思考スキルになったといえるでしょう。

アマナでは、このような時代の中で企業が自社製品・サービスの価値を発信する上で欠かせない「ブランディング」と「インナーコミュニケーション」という2つの観点から、思考を鍛えるワークショップを大阪で初開催しました。

本記事では、アマナの徐 維廷(クリエイティブプランナー)による、他社と差別化したブランディング実現のための価値創出メソッドを学ぶワークショップの様子をまとめます。

ブランディングに欠かせない「コンセプト」とは

自社製品やサービスの価値をユーザーに届けるためには、他社と差別化された魅力を発信していく必要があります。ブランディングの過程は下図の通りで、本ワークショップでは、ブランディングの根幹となる「コンセプト策定」のメソッドについて解説されました。

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では、コンセプトとは何か。コンセプトはブランディングだけではなく、あらゆる案件やプロジェクトを進める上で重要視されるものですが、徐は「存在意義を伝えるもっともシンプルでまとまったカタチ」であると話します。

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あらゆる事業、商品、クリエイティブには、対外的に発信せずともコンセプトが根幹に備わっています。事業であれば「他社とはどう差別化できるのか」、商品であれば「これまでとはどう違うのか」、クリエイティブであれば「どのようなトンマナで世の中に送り出すのか」。これらがその「存在意義」であり、機能するコンセプトであるといえます。

「良いコンセプト」とは何か

では、ユーザーに選ばれる、すなわち「良いコンセプト」とはどのようなものなのでしょうか。徐は、「既存の価値観」と「時代や人のインサイト」を掛け合わせて生まれた「新しい価値観」であると言います。

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例えば、昨今は「サステナビリティ」や「AI」が時代のトレンドであり、人々のインサイトであると考えられます。自社の製品やサービスの既存価値にこれらのインサイトを組み合わせることで見出した新しい価値観こそが、ユーザーの心に響くいいコンセプトであるといえるでしょう。

ユーザー目線の「イミ消費」に響くコンセプト策定を

さらにユーザーのインサイトを掘り下げて考えてみましょう。

あらゆる価値観があふれる現代の市場は、商品やサービスそのものに価値がある「モノ消費」から、商品やサービスを使うことで自身がどのような体験を得られるのかに価値を見出す「イミ消費」へと変化しています。同じ機能や役割を持つ商品やサービスが複数あるこの世の中では、ユーザーが「購入することで気分が上がる」「購入することで自身のステータスを感じる」などの感情的な価値が感じられるものが選ばれます。

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よって、選ばれる商品・サービスになるめには、提供する作り手側の思いとして機能的な価値だけを語るだけでは不十分です。これからは、ユーザー側の立場に立ち、商品・サービスを使用することで「どのような気持ちの変化をもたらしてくれるのか」「どのように社会的に貢献できるのか」といった観点での発信が重要だといえます。

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共感と差別化で一歩先のコンセプトを導く

すでに世の中にある価値をそのままコンセプトとして定義するだけでは、「良いコンセプト」とはいえません。徐は、「良いコンセプトには、共感と差別化が必要である」と言います。

例えばAという人物の肩書きが「プランナー」であったとします。「プランナー」というワードには馴染みがあるため、大まかにどのような業務を担う人物であるかはすぐに想起できます。これが「共感」です。

しかし、これだけでは「何をプランニングする人物であるのか」までは把握できません。戦略をプランニングするのか、メディア広告をプランニングするのか、クリエイティブをプランニングするのか。自分らしさや個性を言語化して世の中に打ち出すことが差別化であり、良いコンセプトを策定するための重要なプロセスであるといえます。

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肩書きの例ひとつとっても、コンセプトのあり方やバリエーションは多種多様です。これらに正解はないものの、徐は「良いコンセプトを判断するための、クリエイターが日々の仕事の中で重要視すべきチェックポイントがある」とし、下図のポイントを紹介しました。

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ターゲットに届けるための「視点の変換」

自社製品やサービスの新たな価値を見つけコンセプトを策定するための思考方法として、本ワークショップでは、1年のうちの「6月」の新たな価値を見つけ出すワークを実施しました。

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「6月」から連想されるポジティブ要素とネガティブ要素を洗い出し、そのうち今回は「ネガティブ要素に焦点を当て、新たなターゲットや価値を模索していきます。徐は、「自身にとってはネガティブ要素であっても、視点を変えることで誰かのポジティブ要素になりうる」と話します。

例えば6月から連想される「雨が続く」というネガティブ要素は、インドア派の人とっては外出をしなくてよい理由になることから「家の中で映画鑑賞を楽しむための期間」としてブランディングできます。このように、ネガティブ要素ひとつとっても視点を変換することで、新しいターゲットに新たな価値を提供することができるのです。このようにして、コンセプトの骨子を作り上げていきます。

コンセプトの「伝え方」を磨く

ターゲットに価値が届くかどうかは、コンセプトの伝え方が大きく影響します。コンセプトの伝え方を検討するにあたって、徐は「言葉の設計は、ただ新しさを追求するだけで良いわけではない」とし、「合理性」と「新鮮感」の両方のバランスが重要であると話します。

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上図のように、合理性ばかり追求した言葉は、ありきたりなワードが並ぶこととなり魅力が伝わりません。一方で、新鮮感ばかり追求すると、イメージが湧かずにユーザーの共感が得られません。コンセプトを言語化する際には、「共感」と「差別化」の意図がわかるよう、ユーザーが瞬時にイメージできる表現を用いながらも、差別化のポイントがはっきり見えるワーディングをすることが求められます。

日常的に活用できるワーディングの技として、徐は以下の4つを紹介しました。

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例えばAは、策定したコンセプトの他の言葉の可能性を探るためにあらゆる表現を考える、いわゆる千本ノックのように言い換え表現を生み出していく手法です。例として、徐はアイルランド出身のフランスの劇作家、小説家であるSamuel Beckettの名言を挙げました。

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この名言の最後を飾る「Fail better.(より良く転べ。)」はチャレンジを促す表現として用いられていますが、「Let’s Challenge」と表現するよりもずっと柔らかいニュアンスであり、心が楽になる表現だといえます。

このように、同じ目的を示す言葉であっても、言い換えることで捉え方は大きく変わり、既定の価値観に左右されずに新しい世界観をターゲットに示すことができます。

 「6月」の新たなコンセプトを発案

これらの技を用いながら、最後のワークでは、A〜Eまでのチームに分かれ、「6月の特徴」「ターゲット」「ターゲットのニーズを満たす価値」について議論し、「6月」の新たなコンセプトをユーザーに届けるために言語化していきました。ワークショップによって、以下のような新しい「6月」のコンセプトが誕生しました。

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“ヘッドビジネスチャンス”

雨天が続く6月は、気圧の変化による偏頭痛や、湿気で髪がまとまらないなど頭部に関する悩みが生まれやすい時季といえる。これらの悩みのせいで、「会社に行きたくない」「部屋にこもっていたい」といったネガティブな気分になりがちな人たちをターゲットとして、ビジネスを展開できるのではないか。美容機器メーカーや美容院による新しいヘアスタイルや手入れを提案するほか、頭痛の数値を測り頭痛のポイントに応じてユーザーが商品をゲットできるなど、ポジティブなビジネスを生み出せるのでは。

“降水確率が高くても、家族の絆は晴れ模様”

ターゲットは、普段家にいることの多い母親たち。6月は、外出できるような休みやイベントごとが少ない月だといえる。さらに、雨天が多いことから父親は休日のゴルフもなく、子供も部活動などの屋外でのアクティビティができないことから、自然と「家族が家に集まる」という状態が生まれる。ここをポジティブと捉えてコンセプトを策定した。

“雨でも晴れ気分。雨だから出かけよう。”

6月は天候が変わりやすく外出がしづらいという観点からコンセプトを策定。ターゲットは雨の日でも外出したい人や、外出したいと言う子どもがいる家族など。雨を楽しめるイベントを開催することで、彼らを幸せにできるのではないか。例えば「雨の動物園」というイベントであれば、車に乗ったまま濡れることなく園内を巡れるツアーを実施したり、入園口で水鉄砲で来園者に水をかけあえて濡れることを楽しんでもらったりなどの施策が企画できるのではないか。

“4コマ漫画「整うおこもりさん」”

6月は「不安が多く、身も心も整いづらい月」だという意見がチーム内で生まれたことをきっかけに、ターゲットを「整っていない現状をどうにかしたい、整えたいと考えている人」に設定。「整うおこもりさん」という4コマ漫画を制作し、発信する。6月のお悩みや日常のあるあるをテーマに、家の中や自分自身を充実させて整えていくストーリーを表現する。

“ジューンブレイカビリティ”

6月は、「ジューンブライド」と、5月のGWが過ぎ7月以降の夏休みを控えた「ブレイクタイム」であるという観点から「ジューンブレイク」という案が生まれた。そこから、前向きになれるような表現として「ジューンブレイカビリティ」というコンセプトを生み出した。ターゲットは単身・独身の人で、祝日がない6月に自身のために有給休暇を取得し一人旅を楽しんでもらう。

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5チーム全てが異なるコンセプトを策定し、6月のネガティブをポジティブに変えるさまざまな案が誕生。本ワークショップを通して、参加者は製品やサービスのブランディングをしていく上で欠かせないコンセプト策定のメソッドを学びました。思考法を理解し鍛えることで、既存の製品やサービスの新しい価値を見つけ出し、他社と差別化ができる唯一無二のブランディングを実現できます。

アマナでは、このようなワークショップを通して企業のブランディングの悩みを解決し新たなクリエイティブを創出するサポートも行っています。「自社商材が競合との差別化戦略に悩んでいる」「新しい商材の開発、新規事業に携わっているがブランディングが難しい」「リブランディングの方向性が決まらない」「特定のターゲットグループに注力したマーケティングを実践したい」などの課題があれば、ぜひお問い合わせください。

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