展示会で効果を生む効率的な体験コンテンツのつくり方

vol.149

展示会で効果を生む効率的な体験コンテンツのつくり方

near future hallway

Text by 徳尾厚

SPEAKER スピーカー

新型コロナウイルスの感染拡大以降、展示会は一時的に来場者数が減少するなど苦しい時期がありました。コロナ禍を経て各展示会の来場者数が回復しつつある今、企業は展示会への出展効果の最大化を求めており、他社との差別化や費用対効果を考えたコンテンツ作成といった課題に悩まされています。

今回のセミナーでは、アマナのプロデューサー・岡本崇志がファシリテーターを務め、エクスペリエンスセクションマネージャー・水流匡尚、CGスーパーバイザーの坂本直樹、プロトタイピングラボ「FIGLAB」でテクニカルディレクターを務める新村卓宏が登壇。限られたコストと制作期間の中で、展示会の効果を高めるノウハウや、体験型コンテンツのアイデアを事例をもとに紹介しました。

展示会で求められるコンテンツとは

展示会では、来場者の興味を引き、企業や商品の魅力を効果的に伝える手段としてコンテンツが欠かせません。セミナーの冒頭では、コンテンツ主導のハイブリッドな顧客・ブランド体験づくりを担う水流により、展示会におけるコンテンツの役割とそのポイントについて解説しました。

コンテンツ制作の7つのポイント

展示会用のコンテンツ制作で押さえるべきポイントは、大きく7つに分けられます。

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このうち、以下の3つはどの展示会でも必要となる要素であるため、プロジェクトの軸として十分に設計を行い、ステークホルダーと共有することが重要です。水流は、プロジェクト関係者がこの3点を共有することで「どこからでも立ち戻れるブレのない一貫した制作が可能になる」と強調しました。

・目的設定

リード(見込み客)の獲得やブランド認知向上、製品プロモーションなどの具体的な目的の設定と、それぞれの目標を達成できたか確認するKPI(重要業績評価指標)を明確にする。

・ターゲット設定

対象の展示会にどのような年齢、職業、興味関心を持った来場者が集まるかを理解し、その中からターゲットを設定する。

・コンセプト&ストーリーテリング

シンプルでわかりやすいメッセージや体験ストーリーを策定する。商品やサービスの背景などを語ることで、来場者との感情的つながりを構築することができる。

さらに以下の4つのポイントについては、目的や予算に合わせて最適化し、目的達成に貢献する効果的なクリエイティブを制作します。

​​・ビジュアルデザイン

ブランドのアイデンティティを体現する重要な要素。視覚的なインパクトで来場者を引き付けた後、詳細な情報を提示して来場者の理解や納得感を作り出す。

・体験型コンテンツ

タッチパネルで操作できるものや、VR、デモンストレーションなどインタラクティブ(双方向)コンテンツで興味を引き付けるなど、来場者が主体的に参加し興味を深められることが重要。

・ノベルティサンプル配布

パンフレットや持ち帰りたくなるようなアイテムを配布することで、来場者のブースへの誘導や、アンケート収集のきっかけにする。持ち帰って使ってもらえるような製品サンプルの配布も効果的。

・事前告知&フォローアップ

プレスリリースを配信したり、Webサイトでティザー動画を流すことで展示会の集客につなげるほか、会期後のメールや電話でのフォローアップは来場者との関係の維持や発展に有効。

距離で変わるビジュアルの役割

展示会コンテンツでは視覚的に情報やイメージを与えるものとして、ビジュアルデザインが非常に重要な役割を持ちます。水流は「来場者との距離感によってビジュアルが果たす役割が異なる」と指摘します。

・遠距離(会場全体):短時間で来場者を惹きつけるために、ブースデザインや大型映像装置、照明でブースに導く
・ブース前:パンフレットなどの配布物やブースのレイアウトで興味を引く
・ブース内:商品やサービスへの理解が深まるような体験型コンテンツや動画を提示

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上記のように、来場者が遠い時にはブランディングで目を引き、来場者がブースに近づくにつれてコンテンツの解像度が徐々に上がっていくように、ビジュアルを使い分けることが重要です。特に動画コンテンツは、音と映像で人目を引き付け、短時間で多くの情報を伝えることができることから、いずれのシーンでも有効に機能する強力なコンテンツだといえます。

以下は、直近の展示会のトレンドです。

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上図から、来場者はただ新しい情報を集めにくるだけではなく、より有意義な体験や記憶に残る体験・誰かに共有したくなる体験を求めている傾向にあるといえます。そしてそれらは出展社と来場者がより感情でつながることに貢献します。

テクノロジーの進化によって、大型ディスプレイのコストが下がったりVRゴーグルなどのデバイスが誕生したりなど、来場者が求める「特別な体験」を提供する方法が増えました。今後ますます、体験型コンテンツとして動画が果たす役割は大きくなると考えられます。

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効果的な動画制作を叶える「新たなテクノロジー」と「アセット」の活用

前述のとおり動画は展示会で非常に有効なコンテンツであるものの、制作期間やコストに加え、社内調整に時間を取られて修正が遅くなるなどの懸念があります。これらの課題解決のために活用したいのが「新たなテクノロジー」と「アセット」です。

さらに、新しいテクノロジーを活用した「バーチャルプロダクション」であれば、制作期間とコストを大きく削減することが可能です。ウェビナーでは、事例とともに、バーチャルプロダクションの効果が紹介されました。

リアルタイムに合成映像を作るバーチャルプロダクション

従来、製品やサービスの映像に人物を重ねる場合、演者の動画撮影、背景の動画撮影、合成処理とそれぞれの段階で時間を必要としていました。バーチャルプロダクションは、スタジオに巨大なLEDディスプレイを設置して背景を映し出し、ディスプレイの前に立った演者と背景を一緒に撮影します。この時、カメラに搭載したセンサーに連動して背景映像の画角を変えることができます。LEDディスプレイ以外にグリーンバックで演者を撮影して合成する方法もありますが、ハイエンド系の映像制作においてはLEDディスプレイタイプが使われることが多いようです。

バーチャルプロダクションのメリットは、以下が挙げられます。

・ロケが不要なため、移動などのコストを削減できる
・屋内で完結するため、天候に左右されない
・スタジオ内で背景を変えることで撮影時間が短縮できる
・背景映像がCGの場合、人物映像との合成をリアルタイムで行える

上記の通り、スケジュール的にもコスト的にも制作プロセスを効率化できる点が大きな魅力です。また、アマナはCGアセット(素材)を多数保有しています。屋外映像、屋内映像などをデータベース化して目的に応じて既存の素材を使用するため、案件ごとにCGを都度制作するのに比べて時間は大幅に短縮できます。

バーチャルプロダクション事例:コクヨ「THE CAMPUS」

バーチャルプロダクションを採用したコクヨのパブリックエリア「THE CAMPUS」の紹介ムービーでは、グリーンバック方式を採用しました。グリーンバックのスタジオで人物が演技をするのと同時に、カメラのセンサーに連動して背景CGをリアルタイムで合成しました。

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バーチャルプロダクションは人物とCGを同時に撮影するため、従来の画像合成で必要だったマスク処理といった後工程を削減できます。この事例では撮影は約1日で終了し、通常の制作フローでは不可能な短時間での制作を叶えました。

展示会で使用する動画コンテンツは、未来像を描くケースが多くあります。そのため、実際の撮影よりもCGを使う選択肢が増えてくると予想できます。効率化やSDGsの観点と合わせて、企業が描く世界観の作り込みのクオリティが差別化となり、効果を生むコンテンツになると考えられます。

アセット活用事例:トヨタ自動車「LAND CRUISER”250”」

トヨタ自動車の「LAND CRUISER”250”」の紹介ムービーは、ロケではなくCGアセットの活用により約1ヶ月という短期間で企画制作を実現しました。

 
 
 
 
 
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動画は、「自然と都市の融合」をテーマとしています。オフロードに部分的に都市の要素をかけ合わせることで、視聴者に違和感を与えるインパクトの強い動画制作を目指しました。演出コンテの制作からCGクリエイターも同席することで技術面の検討を初期段階からスタートでき、制作期間の短縮へとつなげています。

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企画演出の時点からアセットデータベースを念頭に検討。演出コンテの段階でイメージボードも提供したことで、「顧客との具体的なイメージの共有ができ、安心感につながった」と、アセット活用のメリットが解説されました。

来場者に深い体験価値をもたらすコンテンツアイデア

前述の展示会のトレンドのうち、以下の4つを実現できるものとして「体験型コンテンツ」が挙げられます。

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体験型コンテンツを考える上で重要なキーワードとなりつつある「フィジタル」と、体験型コンテンツの重要なポイントを、FIGLABの新村が解説しました。

実空間とデジタルを融合した「フィジタル」

「フィジタル」とは、実際の空間(フィジカル)に、デジタル技術を組み合わせた、リアルとデジタルのハイブリットによるコンテンツを指します。

20240801report_8.png展示会におけるフィジタルは、展示会などのリアルなコンテンツと、デジタルコンテンツ(VR、AR、スマートフォン連携など)を組み合わせ、より深い体験を提供します。一方的に情報を受け取るのではなく、ユーザー自身が参加し体験することで、企業のメッセージをより印象強く伝える方法として注目されています。

事例で見る、体験型コンテンツの5つのポイント

体験型コンテンツに展示会のトレンドを取り入れるには、以下の5つの重要なポイントがあります。

・ストーリーテリング:ユーザーと感情的なつながりを強化して記憶に残る体験を提供
・驚き、ユニークさ:空間とデバイスの組み合わせでユーザーの目を引く
・インタラクティブ:ユーザーが関与できる要素を多く含んだ双方向の体験
・パーソナライゼーション:ユーザーごとにカスタマイズし最適化された体験で、より強い関与を促す
・没入:ユーザーをコンテンツに引き込んでブランドやメッセージと深く結びつける

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例えば、アメリカの家電製品の見本市「CES(Consumer Electronics Show)」に出展した際は、DENSOの未来構想に合わせてトラベル、ビジネス、デイリーという3つのストーリーを制作。透過ディスプレイや音声操作デバイスの組み合わせによりユーザー体験を深めることで、ストーリーテリングとインタラクティブ性を兼ね合わせた、来場者に未来構想を伝えられるコンテンツを制作しました。

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以下は、イマーシブミュージアムの「ポスト印象派」という展示です。展示会場は、高さ6メートル、広さ700平方メートルという大きな空間に映像を投射することで、来場者が絵の世界に入り込むという没入感を演出しています。アマナは、この映像の一部パートで没入感の高い映像制作を行いました。

また、アマナが共催する浅間国際フォトフェスティバルの作品制作にも携わっています。マツダと映像作家・写真家の柿本ケンサク氏のコラボレーション作品は、柿本氏の写真をマツダの車と背後のスクリーンに投影。鑑賞者が車に近づくと、車から光が伸びて鑑賞者と車をつなぎ、移動することで写真作品が移りかわります。鑑賞者の視点移動が光や音と連動し、より深い作品体験を提供しました。

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展示会は企業の新しいビジネスマッチングを生み出す重要な場です。限られた予算と期間で、来場者の心を掴む展示を実現するためには、動画を活用した体験型コンテンツの活用が欠かせません。

アマナでは、バーチャルプロダクションに活用できる豊富なCGアセットを保有し、生成AIや新型デバイスなど新しいテクノロジーを活用した動画コンテンツ制作のノウハウを持っています。企業やブランドが描く未来像をビジュアル化して共有し、スムーズで効率的なコンテンツ制作を実現します。限られた時間とコストの中で、ハイクオリティな展示会コンテンツ制作を叶えるために、まずはお気軽にお問い合わせください。

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amana cgxサイトでは、amanaのCG制作チームが手がけたTV-CMやグラフィック、リアルタイムCGを使ったWEBコンテンツなど、CGを活用する事で、クライアント課題を解決に導いた様々な事例を掲載。
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