vol.186

大規模Webサイトの運用現場では、更新や確認、部門間調整に追われ、本来注力すべき企画や戦略に十分な時間を割けないという課題が多く聞かれます。ページ数や関係部署が増えるほど運用は複雑化し、属人化やガバナンスの問題も顕在化していきます。
本ウェビナーでは、アマナのWebプロデューサー・ディレクターである土方由美と、プランナーの古屋敦之、そして、2025年10月にアマナに参画した株式会社ラソナからWebディレクターの篠原周平を招き、大規模Webサイト運用の属人化と混乱を断ち切るための考え方を提示しました。
さらに、人とAIの役割分担を軸に、NotebookLMを用いたサイト分析の実践例も紹介しました。運用を仕組みとして自走させ、人が本来の業務に立ち返るためのヒントを探ります。
土方由美(株式会社アマナ/以下、土方):まずは、今回のウェビナーで扱う「大規模Webサイト運用」について、参加者の皆さんと目線をそろえるところから始めたいと思います。大規模サイトと一口に言っても、その捉え方は企業によってさまざまです。
今回のウェビナーでは、ページ数が500ページから数千規模、月間PVが100万以上、複数サイトを横断し、関係部署も5部署以上に及ぶようなWebサイトを「大規模Webサイト」と定義しています。この規模になると、承認フローやガバナンスが必須となり、運用の難易度は一段階上がります。
土方:こうした前提を踏まえたうえで、事前に参加者の皆さんにWeb運用に関するアンケートを実施しました。まず「Web運用における課題感」について伺ったところ、特に多かったのが2項目です。
1つ目は、「部門やグループ会社間で、情報共有や更新依頼のフローが整理されていない」という点。そしてもう1つが、「Web運用のルールやガバナンス体制が整っていない」という点でした。
土方:この2つは、ほぼすべての回答者が課題として挙げており、特定の業種や企業規模に限った話ではないことが分かります。
続いて、AIを活用している企業に活用目的を伺うと、全社共通で挙がったのが「コンテンツ制作の効率化」です。一方で、AI活用における課題としては、「社内のスキルやリテラシーが不足している」という回答が最も多く見られました。
土方:さらに、今後AIや自動化を活用して強化したいWeb運用領域については、コンテンツ制作・更新に加えて、サイト分析やレポート作成、ガバナンス管理、品質チェックといった領域が挙げられています。
これらのアンケート結果から、現場では「効率化したい」「AIを使いたい」という意識が高まっている一方で、その土台となる運用ルールや体制が追いついていない、という状況が見えてきます。
篠原周平(株式会社ラソナ/以下、篠原):10〜15年ほど前のサイト運用は、今と比べると非常にシンプルでした。情報の入口は主に広報部門に限られており、指示も一方向。制作と確認、公開までの流れも単純で、担当者が全体をコントロールできていた時代です。
一方、現在のサイト運用はどうでしょうか。入口の段階から、広報、人事、複数の事業部など、さまざまな部署から、メールやチャット、Excelなど異なる手段で依頼が届きます。しかも、要件が整理されていない、素材がそろっていない、期日だけが先に決まっている、といったケースも少なくありません。
篠原:出口も同様に複雑化しています。PCやスマートフォンだけでなく、アプリ、SNS、外部メディアなど、対応チャネルが増え、それぞれに表示確認や動作確認、アクセシビリティチェックが求められます。
さらに、承認フローも複雑です。部門長、法務や知財、Web担当など、多くの関係者がチェックに関わることで、修正指示も属人化しやすくなっています。
結果として、Web担当は制作そのものよりも、各所を調整するための交通整理に追われ、本来の業務に時間を割けなくなってしまう。これが、今の大規模Webサイト運用が抱える現実的な課題だと感じています。
篠原:ここからは、属人化しやすいWebサイト運用の現場をどう整理し、どう立て直していくのかについてお話しします。私からお伝えしたいのは、「大規模Webサイト運用に必要な3つの原則」です。その3つが、標準化・効率化・ガバナンスです。
篠原:まず「標準化」は、判断基準や作業ルールをそろえることです。表記ルールや依頼フォーマット、受付ルールなどを明文化し、誰が対応しても同じ前提で業務が進む状態をつくります。
次に「効率化」。これは、独自のチェックツールや手順を構築することで、効率よく、かつ正確に、迅速に作業を進められる体制を整える考え方です。
そして「ガバナンス」。ブランドの統一や部署間調整にかかわる作業を、人の努力や経験に頼るのではなく、仕組みでサポートすることを指します。
これらを実際の業務フローに落とし込むと、下図のようになります。
篠原:依頼フォーマットの統一、受付ルールの明文化、作業手順のルール化やツール活用などが求められますが、ツール導入にあたっては、注意が必要です。
篠原:多くの企業では、「効率化したい」と考えたとき、真っ先にAIツールや高機能な管理ツールなど、ツールに目が向きがちです。ですが、いきなりツールを入れることはおすすめしません。
ツールは魔法の杖ではなく、あくまで加速装置にすぎません。ルールが曖昧な状態のままツールを入れると、混乱した状態がそのままシステム化され、間違いや非効率が高速で繰り返されるだけです。これが、大規模Webサイト運用における最大の失敗パターンです。
ツール導入にあたっては、下図のように段階的に進めていきましょう。
篠原:STEP1は、基準をそろえることです。表記ガイドラインや運用マニュアルを整備し、人による判断のブレをなくします。続くSTEP2で、チェックを型化。校正チェックリストや検証計画を導入し、記憶に頼らない確認体制を、この段階でしっかりと構築します。
ここまでで自社の「正解」を固めたら、最後にツールの採用・実装です。ツールは、固まった正解を何度でも正確に繰り返してくれる優秀なアシスタントだと考えます。ツールに合わせて人間が働き方を変えるのは、特に大企業や大規模Webサイトの運用では難しいケースが多いと思います。自分たちで決めたルールを、ツールに手伝わせる。このスタンスで進めることが、成功の鍵になります。
大規模Webサイト運用の敵は、「量」「質」「ルール」に縛られる三重苦です。これを解決するのは、標準化・効率化・ガバナンスの仕組みであり、ナレッジによる標準化をもとに、ツールを導入することです。
篠原:AIと人の役割分担を考える際に前提としてお伝えしたいのは、AIは人の仕事を置き換える存在ではない、ということです。AIはあくまで、ミスを減らすためのパートナーです。ルールに基づいたチェックや、膨大な情報を横断的に確認するといった作業は、AIが得意とする領域です。
一方で、その判断が適切かどうか、ブランドとしてどうあるべきかといった最終判断は、人が担う必要があります。この切り分けを曖昧にしないことが、これからの大規模Webサイト運用では重要です。
篠原:こうした考え方を踏まえ、ラソナではアクセシビリティ対応を支援するAIツールの研究開発も進めています。Webアクセシビリティへの対応は、ガイドラインが複雑で、確認にも大きな負荷がかかる領域です。
そこで、最新のガイドラインを参照しながらチェックを行う仕組みや、画像のalt属性を補助的に生成するような構想を検討しています。人がすべてを目視で確認するのではなく、AIが下支えをし、人は判断に集中する。そうした役割分担が、現実的な運用につながると考えています。
古屋敦之(株式会社アマナ/以下、古屋):先ほど篠原さんからお話があったとおり、作業フェーズの中でも、データ分析や効果測定は、比較的AIを取り入れやすい領域だと考えています。
アマナでは現在、NotebookLMのエンタープライズ版を活用し、コンテンツ分析やサイト全体の分析といった領域で、分析業務の効率化に取り組んでいます。
NotebookLMは、資料やアクセス解析データなどのソースを読み込み、要点整理や質問への回答、分析の補助を行えるAIツールです。やはり人がデータを分析するよりも、一定の示唆をスピーディーに得られる点がメリットですね。アウトプット精度に大きな乖離はないと感じています。
具体的には、アマナで運営するオウンドメディア「amanaINSIGHTS」のコンテンツ分析や競合分析などで活用しています。例えば、2024年と2025年でユーザーのインサイトやトレンドがどう変化したかや、競合サイトの類似コンテンツを読み込ませて競合サイトとの比較を行うなどです。以下のようなプロンプトで分析を行います。
古屋:そのほか、個別コンテンツの分析やSEOの観点で他社比較をすることも可能です。
AIは非常に有用なツールですが、どの観点で分析するのか、どこを深掘りするのかといった分析設計は、人が担うべき役割です。重要なのは、AIのアウトプットをそのまま使わないことです。AIはあくまでたたき台を出す存在です。特に企画の領域では、人が戦略を考えることにフォーカスできる状態を作ることが重要であると感じています。
篠原:標準化や効率化、AI活用が進み、運用が仕組みとして自走するようになれば、Web担当は本来の業務に立ち返ることができます。そのための土台として、人とAIの適切な役割分担があると考えています。
土方:AIを活用してコンテンツの改良や分析を進めていく取り組みについては、私たちもまだ始めたばかりの段階ではありますが、実際に使ってみると「こんなこともできるんだ」と感じる場面が増えてきました。
こうした取り組みについては、日々研究を重ねているところですので、今後は新たな事例も含めて、また皆さまにご紹介していければと思っています。本日はありがとうございました。
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amana WEBSITE ANALYTICS SERVICE
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