「ベストコンテンツマーケティングブランド50選」から成功の秘訣を知る [ThinkContent TOKYO 2018]

毎年NewsCredでは、さまざまな業種から、企業規模を問わず、コンテンツマーケティング/オウンドメディアの可能性とイノベーションを体現している先進的な50ブランドをピックアップ、「ベストコンテンツマーケティングブランド50選 by NewsCred」として紹介しています。

2018年9月27日に開催された「ThinkContent TOKYO 2018」では、このTOP 50に選ばれたブランドを題材に、アビームコンサルティングで顧問を務める本間充氏とNewsCredのAPAC地域マネージャーのEsti Frischling(エスティ・フリスリング)によるトークセッションを実施。いくつかのケーススタディを取り上げながら、成功の秘訣を紐解いてもらいました。

ここに本セッションのレポートをお送りしますので、ぜひご精読ください。

※【2018年版】ベストコンテンツマーケティングブランド50選 by NewsCredはこちら

※ThinkContent TOKYO 2018のプログラムや登壇者の詳細はこちらをご覧ください。

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アビームコンサルティングで顧問を務める本間充氏

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▲NewsCredのAPAC地域マネージャーを務めるEsti Frischling(エスティ・フリスリング)

Case Study 1: MAZDA「ZOOM ZOOM MAGAZINE」

本間 充(以下、本間): コンテンツマーケティングにフォーカスしたケーススタディを3つほど紹介して、その取り組みから学ぶべきことをエスティさんにご説明いただこうと思っています。

まずはMAZDAのウェブサイト、「ZOOM ZOOM MAGAZINE」から。

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エスティ・フリスリング(以下、エスティ): みなさん、よくご存知のブランドかと思いましたので、ひとつめの事例として選びました。

「ZOOM ZOOM MAGAZINE」はエディトリアル色が強く、付加価値が高くてビジュアルも豊富なコンテンツがたくさん掲載されたデジタルマガジンです。ユーザー生成型コンテンツ(UGC)も多く、MAZDAのファンと自動車が好きな人たちが色々と意見を交わすような場、いわゆるひとつのコミュニティとして形成されています。

本間: これは、MAZDAファンに向けたサイトなのでしょうか。

エスティ: もともとはMAZDAが作成したコンテンツを見るだけのサイトとしてスタートしましたが、時間の経過とともにさまざまな人が関わるコミュニティへと進化していきました。今では「ZOOM ZOOM MAGAZINE」とファンが作ったコンテンツ(UGC)を結び付ける場所として、重要な役割を担っています。ただ単にコミュニティビルディングが盛んというだけでなく、試乗をしたい人がすぐに申し込みをできる仕組みも備えています。コミュニティ、ビデオ、ニュースなど、いくつかカテゴリーがありますが、サイトを訪れたひとりひとりの要望や状況に合わせて内容を選ぶことができるのが何よりも素晴らしいですね。

本間: なるほど。つまり、「ZOOM ZOOM MAGAZINE」はペイド、オウンド、アーンドをすべて兼ね備えたメディアということですね。

エスティ: 先ほど、チャールズが今後はインテグレーテッドなアプローチが重要になると言及していましたが、多様なカスタマーエクスペリエンスがインテグレーテッドされている「ZOOM ZOOM MAGAZINE」でもそうした体験をすることができます。

Case Study 2: Adidas「Game Plan A」

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本間: 次に紹介いただくAdidasもみなさんに馴染みのあるブランドですね。Adidasが運営している「Game Plan A」の目的は何でしょうか。

エスティ: このサイトはもともと、その当時、一万人の従業員が参加していたAdidasのLinkedInコミュニティ内の絆を強めるために立ち上げられたサイトでした。みなさんが抱いているコンテンツマーケティングのイメージから少しずれてしまうかもしれませんね。しかし、サイトが立ち上がってからは社員以外も参加するようになり、フォロワーが100万人以上もいるパワフルなサイトになりました。社内のチームビルディングを目的として作られたサイトでしたが、社外の人も加わったことで強力なブランドツールへと進化した例ですね。

本間: 先ほどご紹介いただいたMAZDAはコミュニティ支援型のコンテンツマーケティングでしたが、Adidasはインナーブランディングの構築を目的にスタートしたということですね。そういう意味では両者とも立ち上げの目的が違います。

エスティ: そうですね。Adidasは、運営していく中で目的主導型のマーケティングがブランディングで非常に重要だということに気づき、社員に対しても消費者に対しても企業の価値や真髄に何があるのかをしっかり理解してもらうべきだという結論に至りました。自分と同じ価値観や考え方を持っていることを主軸に企業や商品を選ぶ消費者が増えていることも、この活動を続ける理由のひとつにあります。

本間: オーセンティシティをカバーすることが目的だということですね。

エスティ: ここまで紹介した2社は、どちらもサイトを立ち上げた目的は違いますが、対象とすべきオーディエンスが誰なのかをきちんと見据えています。Adidasの場合、まずは社員を大事している姿を見せることが、社員以外のより幅広いオーディエンスの琴線にも触れるだろうと考えました。そして、はじめは小さくスタートして、微調整をしながら活動の規模を広げていく方法で成功を収めました。

Case Study 3: Autodesk「Redshift」

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エスティ: Autodeskは2017年のTOP 50で選ばれた企業です。B2B向けのソフトウェア企業で、Adidasと同じく小さく立ち上げて徐々に規模を大きくしたケースです。

本間: はじめはターゲットをシャープに、小さなグループに向けてコンテンツマーケティングを実施した、と。小さく始めてよりスケールアップするという手法も、戦略のひとつとしてあるということですか?

エスティ: はい、手段のひとつとして考えられます。彼らは2013年にパイロットプロジェクトとして「Line//Shape//Space」というサイトを立ち上げました。このサイトは、小さなビジネスをターゲットに、中小企業の成功を促し、支援することを目的として数々の革新的なアイディアを掲載したサイトです。パイロット版として小さく始めたにも関わらず、このサイトは大きな反響を受け、多くの賞を受賞したのです。しかし、ターゲットを含むすべてのニーズを満たすような設計がされておらず、対応がしきれなくなったことから「Line// Shape// Space」をクローズし、新たなサイトを立ち上げることに決めました。それが「Redshift」です。

本間: 日本国内の場合、すべてのコンテンツを自社で作成することは難しいと判断し、外部の力を頼る企業も少なくありません。ご紹介いただいた3社はコンテンツの目的がそれぞれ明確ですが、社内チームのみで作成されているのでしょうか?

エスティ: 「Redshift」の場合、外部の代理店から支援などがあったと思いますし、他社に関しても自分たちですべてのコンテンツを作成しているわけではありません。情報の粒度や正しさでいえば、やはり専門家に聞くべきものは専門家に聞いたほうが良いですから。小さくはじめるときは、対象となるオーディエンスをきちんと理解したうえで規模を広げていくことが成功の秘訣だと考えています。

広告ビジネスの変化、マスマーケティングの減衰

本間: ベストコンテンツマーケティングブランド50選には、非常に面白い事例がいくつも掲載されていますよね。たとえば、スポーツジムに通っているユーザーのためだけにコンテンツを提供するとか、銀行業界がお客様向けにライフコンサルティングのためのコンテンツを充実させているとか。

日本ではあまり見かけないような事例が多い ーー 逆をいえば、米国ではコンテンツマーケティングの領域が非常にホットだということですが、その理由について伺えますか?

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エスティ: アメリカでは、従来の広告からの逸脱が起きています。とくにスマートフォンのヘビーユーザーであるミレニアル世代は、アドブロッカーを利用していたり、テレビではなくNetflixで好きな番組を観たり、携帯やインターネットでニュースを見たりと、ブランドが消費者と接点を持つチャンスがほぼありません。広告は感性に響くクリエイティブを通してメッセージを伝えていかなくてはならない時代にあるということです。

本間: つまり、広告というビジネスが変化しているのでコンテンツマーケティングが要求されているということですね。もうひとつは、米国においてマスマーケティングが崩壊しつつあることも原因として考えられるのでしょうか。

エスティ: そうですね、先述した要素が互いに繋がりあっているからでしょう。いまの人々はパーソナライジングされた、自分ゴト化できるメッセージを求めています。どのタッチポイントを通したとしても、FacebookやInstagramで見ている内容と同じような体験をリアルでも体験したいのです。ですので、ブランドはマーケティングの目的をはっきりさせていかなくてはなりません。

コンテンツマーケティングを成功へと導くには

本間: 3つの事例でコンテンツマーケティングの有益性や有用性についてお話しいただきましたが、コンテンツマーケティングを成功させるための鍵は何でしょうか。

エスティ: 昨年からお伝えしていることですが、コンテンツマーケティングはパフォーマンス重視の時代に突入しています。良いコンテンツを作ればそれでいいということではなく、協力し合えるチームによるインプットとアウトプット、そして費用対効果を見なくてはなりません。つまり、ビジネスゴールの目標を達成しなくては意味がないということです。Adidasのサイトで社員を大事にしていることを知って感銘を受けたり、MAZDAのサイトをきっかけに試乗を申し込もうと思ったり、何らかの行動へとつなげる必要があります。

本間: ここからは話を進めながら、パフォーマンスに関する3つの要素について解説していきましょう。コンテンツにおいても収益が重要なワードになってきたということでしょうか。

1. マーケティング主導の収益向上

エスティ: 何を達成しなくてはならないのか、ビジネス上のゴールは何かというバリュードライバー、要するに、自分が行ってきたマーケティング活動を追跡してROIや費用対効果など実際の金額で測定する必要があります。これこそがマーケティングの真髄と言えるべき部分です。

本間: 日本ではまだ、コンテンツ制作チームとマーケティングチームが分かれていて、コンテンツ制作チームはページビューだけを、マーケティングチームはアクション数だけを追っていることが多い。どちらもコンテンツにかかった費用を見ていないので、レベニューを測ることができていません。

2. 運用効率の最適化(コスト削減)

エスティ: まだサイロ化されている組織の方が多いようですが、協力してコラボレーションすることではじめて収益を測定できるようになるのです。

本間: すなわち、コンテンツマーケティングを通して、会社の中の組織も再編成しなくてはならないということですね。

エスティ: 理想は、同じ部屋で完全なるひとつのチームとして作業ができること。ですが、とりあえず今はチームが別でも、一緒にプランニングして、同じ言葉を話して、サイロ化せずにコラボレーションができていれば良いと思います。

3. ブランド価値の向上

本間: 言葉ではなんとなく理解できるのですが、実際にブランドエクイティの結果を測ることは簡単ではありません。

エスティ: 非常に測定しにくい指標ではありますが、オーディエンスがブランドをどう感じているのか、ブランドを知っているのか、知っているならばどう感じているのかという側面から測定しましょう。測定方法のひとつはソーシャルメディアです。対象のブランドとソーシャルメディアでやり取りしている人たちの意見を通して測るのですが、そういう意味ではMAZDAは最たる例として挙げられます。ファンがブランドとやり取りしているコミュニティがあることで、潜在層の人たちとMAZDAとの距離がどれぐらいかを測定することができるのです。

本間: チームも離れていて、互いが見ている目標にズレがある … 日本のマーケターは、プランニングしてエクゼキューションした後に測定を行い、リプランのための時間を割いて、改善していかなくてはならないかもしれません。

エスティ: いきなり組織を変えることはできませんので、まずは他のチームが何をしているのか、必要なものがどこにあるのかを把握して、対話がしやすく透明性のある状態でコラボレーションすることですね。そして、チームにいるひとりひとりが自分に課された責務をしっかり負ってください。

オーディエンス中心のアプローチからスタートして結果を計測し、その結果を踏まえてコンテンツを作るという流れが良いとされているかもしれませんが、先ほど紹介した成功事例も参考にしてみてください。ひとつのオーディエンスセグメントで始める、小さく、管理可能な範囲ではじめて、どのような結果が現れるかを見つつ規模を拡大する。そうするには、いずれにしてもチームのコラボレーションが必要ですね。

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本間: 最後にひとつ伺いたいのですが、リーダーがコンテンツマーケティングの目的を明確に決めなくてはならないのでしょうか。

エスティ: 必ずしもリーダーが決めることではありません。私たちNewsCredは、コンテンツマーケティングのプロの視点で、リーダーがコンテンツマーケティングの目的を設定するお手伝いをしていますので、より的確に進めることができます。また、明確なビジネスゴールを持っているならば、それを軸にオペレーションへと移すことは決して難しいことではありません。NewsCredはコンテンツマーケティングのアドバイスやサポートもしていますし、NewsCred Insightではコンテンツマーケティングのトレンドも紹介していますので、ぜひともご参考ください。

本間: コンテンツマーケティングはまだまだ始まったばかりのビジネス。ぜひ、みなさんも芯のある思いや軸のある目的をもとにはじめてみてはいかがでしょうか。本日はありがとうございました。

Photos by 川合穂波(acube)

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高枝まりんはamanaのコンテンツディレクターです。

NewsCredのサービスについては、NewsCred by amanaまでお問い合わせください。

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