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あらゆるマーケティングトレンドの裏側では、どのようなことが行われているのでしょうか?studioIDのStrategy Groupがお届けする定期コラム「The Deep End」をお楽しみください。
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メディアが過去に行った大規模な「動画へのシフト」は、なぜ失敗してしまったのか?そして、今はなぜ失敗していないのか?過去の失敗を繰り返さないために、ブランドは何ができるのでしょうか。
2015年から始まった、メディアの「動画へのシフト」を覚えていますか?それが、メディア関係者が業界全体で動画コンテンツに対して多額の投資を行なった最後の年でした。その結果は、クリエイターにとっても、経営者にとっても悲惨なものになりました。ライターは職を失い、リーダーは無意味な指標を頼り、広告クライアントは騙されたと感じてしまったのです。
その10年におよぶ大失敗が終わった今、なぜ多くのブランドやパブリッシャーが再び動画コンテンツに投資しているのか不思議に思うかもしれません。実は、今回はうまくいっているのです。
過去の失敗にはさまざまな理由がありましたが、大きな理由は、人々が動画を見たくなかったからだといえます。
広告主は視聴者数に惑わされて、より多くの動画広告枠を購入するため、メディアにもっと多くの動画を作るよう働きかけました。そのような誤解を招く指標と広告主からの大量の問い合わせに、メディアの幹部は「動画へのシフト」という新たな動きを推し進めました。
この「誤解を招く指標」はどこからきたのでしょうか?
動画を新たなトレンドにするよう迫られたメディアと、Facebookなどのプラットフォームの両者が、動画のパフォーマンスについて徹底的に嘘をつきました。たとえば、動画をたった3秒以上観ていれば視聴回数にカウントするなど、重要指標を誇張していました。
Facebook(現Meta)などの企業は、閲覧数を900%近くも誇張していたのです。
プラットフォームには嘘をつく動機がありましたが、動画コンテンツへのシフトのために多くのリソースを投入していたメディアも同様でした。「それはFacebookの嘘だったが、コンテンツ配信のより良い方法だという口実で動画にシフトした、メディアの嘘でもあった」と米ニュースメディアのSlateは記載しています。
特にひどかったのは、ハイペースな動画コンテンツ事業の立ち上げ費用を捻出しようと、コンテンツ制作予算と人件費が削減されたことです。その結果、動画メディア「Now This」のような短い動画コンテンツが次々と登場しましたが、それはこれまでのコンテンツに代わるものとしては不十分でした。
無意味なものから不正確なものまで、ニュースの要約動画はFacebookなどのプラットフォームでトレンドとなり、何十もの企業が「NowThis」のスタイルを模倣しました。
メディアの幹部たちは、テレビがラジオに取って代わったように、動画が容赦なく迅速にテキストコンテンツに代わるものになると思い込み、慌てふためきました。しかし、消費者の習慣が根強かったことなどもあり、この変化は浸透しませんでした。人々は動画も好きですが、文章や音声コンテンツも大好きなのです。
メディアの幹部たちは、ラジオで起こったことから少しでも学んでいればよかったのですが……。
「ラジオの死」をめぐる誇大広告は非常に大きく膨れ上がりましたが、ラジオ局はその終焉が叫ばれた後も何十年も存在しています。
確かに、ポッドキャストは次世代のオーディオフォーマットとして急速に普及しましたが、ラジオは今でも存在し続けています。
しかし、Web動画をめぐる物語は無視できないほど強烈なものでした。そのため、同じトピックであっても視聴者によって求めるコンテンツのスタイルが違うという事実に、経営陣は気づかなかったのです。テキストコンテンツの予算を削減し、短いWeb動画に多額の資金を投入した企業は、結果的に需要のないものを大量に作ることとなり、さらに多くの雇用が失われました。メディア版「ITバブルの崩壊」のように大惨事となったこの現象は、広く報道されました。
🎥 関連コンテンツ(英語):5 Short-Form Video Trends for Share-Worthy Content
「ITバブルの崩壊」のときと同じように、動画へのシフトは説得力のあるコンセプトでしたが、愚かな投資が続き失敗に終わりました。この時、メディアは次のように「誤って」考えていました。
・動画は多くの視聴者が好むフォーマットだった、もしくはそうなるだろう
・視聴者が喜ぶ短い動画コンテンツを作るのは簡単で安価である
・視覚的なフォーマットである動画コンテンツは、自然とエンゲージメント率が高くなる
ですが、現在、これらの考えどおりに市場が変化したのです。
実際、2024年のコンテンツマーケティング予測調査では、マーケターの71%が「ソーシャルメディア向けの短編動画」が今年最も成功するフォーマットになると予測しています。
今回は、「誇大広告」ではなく本物のトレンドです。過去20年でソーシャルメディアのコンテンツクリエイターやプラットフォームによる技術革新やフォーマット、制作スタイル、文化が変化したことで、動画コンテンツは復活しました。ブランドは今、費用対効果の高い方法で、動画コンテンツで成功するために必要なリソースとロードマップを手に入れているのです。
現在の成功のほとんどは、YouTubeやTikTokといった動画ファーストのプラットフォームの台頭によるものです。これらのプラットフォームは、動画編集への敷居を下げ、スキルを民主化しただけでなく、消費者が動画コンテンツに期待し、楽しむように仕向けました。コンテンツ制作者は、試行錯誤を繰り返してフォーマットや長さ、スタイルといった問題を解決し、効率的な制作方法を確立しました。TikTokのような短編動画の巨大サービスが台頭したことで、視聴者は低コストでよりカジュアルな動画を楽しむようになっています。
このシンプルな制作体制は、高度に制作されたしっかりした動画よりも生産性が高く、IBM Technologyで最もパフォーマンスの高いコンテンツになりました。そのスタイルとプレゼンテーションは、成功した独立系YouTubeクリエイターの動画と同様のものです。
2024年には、インターネットユーザーは1日あたり約100分間をWeb動画の視聴に費やすと予測されています。
視聴者が動画フォーマットを好む傾向があるだけでなく、クリエイターはどのような環境にあっても、成功するコンテンツの作り方がわかっているということになります。動画の撮影、編集、公開に必要なツールは豊富かつ安価で、ほとんどのマーケターが利用できます。才能のある若い動画編集者が登場する中、ソーシャルビデオコンテンツでブランドを成功に導く人材を見つけるのはかつてないほど簡単になっています。
あなたのブランドは、過去の教訓から何を学びますか?動画戦略を優先するために、テキストコンテンツや他のコンテンツを縮小するのはやめましょう。その代わりに、誰でも動画制作ができることを利用して、可能な限り動画を含むメッセージを拡大していきましょう。
まず、最も簡単なことから始めてみましょう。
・既存のウェビナーを短いクリップにカットする
・ビデオ通話やポッドキャストを録音する
・ブランドがより本格的な動画制作に投資できる状況でない場合は、TikTokのエディターやCapcutといったシンプルなエディターアプリ、プラットフォームを利用する
♻️ 関連コンテンツ(英語):How to Repurpose Content for Social, Email, Sales Outreach, and Beyond
かつて動画は高価でリスクの高い仕事でしたが、現在はそうではありません。WordPressがすべての人にブログを立ち上げるチャンスをもたらしたように、新しい視聴者の期待と編集ツールによって、すべてのコンテンツチームに動画制作のチャンスが与えられています。
もちろん、マーケティングにおいて、フォーマルで整った動画コンテンツを制作する価値はありますが、それがすべてではありません。特に、視聴者がブランドとのカジュアルな接点を動画に求めている場合、フォーマルな動画を使った戦略はコストがかかりすぎます(そもそも、それが視聴者の求める動画ではないということは言うまでもありません)。低リスクの動画コンテンツ戦略を構築する方法
オーディエンス、ポジショニング、目的に合ったコンテンツ戦略を立てることに注力する必要があります。そして、優れたテキストコンテンツやバーチャルイベントを制作しているのであれば、すでに成功しているものからあまり逸脱することなく、その手法を動画に拡大させることができるはずです。
特に強力な動画コンテンツ戦略を実行する場合は、これらのことを意識すべきです。マーケティングチームとして動画施策を検討しているのであれば、次に挙げる質問に答えられるようにしておきましょう。
たとえば、視聴者が「購買担当者」である場合、サプライチェーンに関する動画をLinkedInでは観たいと思うかもしれませんが、TikTokやInstagramで同様の動画を探す可能性は低いでしょう。
これらの傾向を理解するには、LinkedInやYouTubeなどのプラットフォームでエンゲージメントを獲得し成功している同業他社を調べてみてください。
どのタイプの動画コンテンツが効果的かに注目してみましょう。
・情報/説明動画か?
・戦術的なハウツーか?
・字幕付きの示唆に富んでいるインタビューか?
・インフルエンサー主導のレビュー/ディスカッションか?
また、TikTokなどのプラットフォームで職業やトピックを検索して、何が人気なのかを調べることで、独自のソーシャルリスニング調査を行うこともできます。
動画コンテンツ制作自体は、最重要課題ではない点を忘れないようにしましょう。適切な配信ができなければ、戦略は失敗に終わります。マルチチャネルによるアプローチを恐れずに試してみましょう。動画はソーシャルプラットフォーム、テキストコンテンツへの転用、ユーザー登録付きコンテンツ、営業資料などとしても活用できます。
🎧 関連コンテンツ(英語):The Power of Social Listening to Drive Conversions
これは業界ごとに、大きく異なる可能性があります。ロボット業界では、製品であるロボットが実際に動作している様子を紹介する動画が大人気です。しかし、たとえば会計士は必ずしも会計ソフトの動作を見ることに興味があるわけではなく、機能や特徴を説明する動画を好むでしょう。
スタイルだけでなく、動画の長さも考慮しましょう。ショート動画が大流行していますが(当然ですが)、長い動画コンテンツの価値を軽んじてはいけません。密度が高く、業界に特化したコンテンツの場合は、ウェビナーやYouTubeシリーズのような長時間の動画のほうが戦略的に適しています。もちろん、これらの長い動画をカットしたショート動画を、その両方で活用することもできます。
🎨 関連コンテンツ(英語):4 Visual + Design Trends Shaping Content Marketing in 2024
あなたの会社は、重要なトピックについて語り、TikTokのような短い動画を作ることができる社内KOLをたくさん抱えるブランドかもしれません。あるいは、Instagramの「リール」やYouTubeの「ショート」に分割できるようなアニメーションが大量にあるかもしれません。
消費者が魅力的な動画コンテンツにとって重要だと回答した上位2つの特徴は、「明確なメッセージ/ストーリー」と「信頼性」です。
コンテンツチーム内と組織全体の両方で、動画に出演してくれる従業員の募集を検討してみましょう。ブランドやトピックに関する第一人者で、視聴者にとって魅力的に映る人物は誰か?軽やかで良い声を持っている人は?動画のエンゲージメントは、ほんの些細なことにも大きく左右されるため、出演者はしっかり考えて選びましょう。
動画コンテンツは、ますます信頼性が求められる傾向にあります。現代の視聴者は、リアルに感じられるものや、時には非公式に感じられる動画コンテンツも目にしています。今、持っている情報と視覚的なリソースについて考え、それを中心に動画コンテンツを計画しましょう。
この記事は、SpringboardのLiam Berryが執筆し、Industry DiveがDiveMarketplaceを通じてライセンスを取得したものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。
元記事「Brands Are ‘Pivoting to Video’ — and This Time, It’s Working」は2024年3月19日にstudioID’s insights blog – springboardに掲載されました。
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