1984年に日本に上陸した、ハーゲンダッツのアイスクリーム。日本オリジナルのフレーバーも次々と発売され、甘い幸せを提供し続けてきました。
40周年となる2024年夏、「あなたと創るしあわせ」と題した記念サイトがオープンし、アニバーサリーを飾る40周年記念商品が発売されました。このうち、第2弾となる「アニバーサリーアソート」のランディングページとビジュアルをアマナが制作し、お祝いムードに華を添えています。
制作に関わったアマナのプロデューサーの岩本菫花、桑原杏奈、アートディレクターの田口未結、フォトグラファーの菅野桂子(UN)、レタッチャーの笹崎彩に、アニバーサリー感をどのように演出したのか、そのポイントについて聞きました。
40周年記念サイト「第2弾 アニバーサリーアソート」より。
ハーゲンダッツ ジャパン40周年記念商品第2弾のランディングページとビジュアル制作の話があったのは、今年春のこと。アマナは同社のビジュアル制作、イベント制作、PR施策などを10年近く担当しており、今回はアニバーサリーということもあって、クライアントから特別感のある表現でクオリティの高いものを目指したいとのご要望がありました。
「担当したい!と、制作チームへの参加を志願した桑原と渡部桃子は、実はプロデューサーの岩本とは別の部署所属。でもアマナの場合、手を挙げた人は積極的にチャンスが与えられ、やってみたい案件に参加できます。ハーゲンダッツの商品はtoCで20代から30代前半がターゲットです。メインユーザーの世代のプロデューサーがメインに立って動いた方がいいのではと判断して、2人にジョインしてもらいました」(岩本)
「思い入れのある商品だったので、手を挙げてよかったと思いました。スタッフには、『グリーンティー 濃い落ちルーティン』でもアートディレクターを務めた田口、これまでアマナにおいてハーゲンダッツのビジュアルのレタッチを担当してきた笹崎、食べ物に宝石のような輝きを与えて撮ってくれる菅野にお願いしました」(桑原)
今回のビジュアル制作は、現物をそのまま撮って採用するのではなく、撮影したさまざまな素材(アイスクリームのカップ、リボンなど)を組み合わせて作っていきます。バラバラに撮ったものを違和感なく組み合わせ、しかも「アニバーサリー」という特別な世界観に仕上げるには、クリエイターそれぞれのセンスがかみ合わなくてはなりません。ADによる空間構成と、それを実現できるレタッチャー、フォトグラファーをスタッフィングすることが重要でした。
アニバーサリー感とはいえ、賑やかなイメージだけを追い求めるとなんだか騒がしいビジュアルだなという印象で終わってしまいます。ハーゲンダッツらしい上質感や高級感をどう見せるかが、ポイントでした。
「楽しさを重視して作ろうとは思っていましたが、ただカラフルなだけではハーゲンダッツらしさが出ないと感じました。ハーゲンダッツのアイスを買うのは、何かいいことがあった日だったり、がんばった自分へのご褒美だったり、ちょっとした贅沢を味わいたい時。ハーゲンダッツがあるだけでいい時間が過ごせそう!という幸せな予感やワクワク感を表現したいなと考え、ハーゲンダッツのロゴやパッケージの色を取り込みつつ、『アイスで乾杯!』という構成を考えました」(田口)
「アニバーサリーアソート」は、ミルククラシック、カスタードプディング、クッキー&チョコレートの3つのフレーバーがセットになっています。それぞれのアイスクリームそのものはもちろん、フレーバーに含まれている具材(クッキーやカラメルソース、ミルクなど)、またお祝い感を演出するためのリボンや背景のラメなども、すべて撮り下ろしました。
「全体の雰囲気としては、商品の上質さや大人っぽいイメージを保ちつつ、パーティーを想起させる少し硬めのライティングを狙いました。具材は液体や固体などいろいろなシズル感を出す必要があり、レタッチ後もなるべく自然に見えるように立体感や奥行きを意識してアングルを決めました。全体の仕上がりを左右するプロップ(小物類)は、撮影前にチーム全員でトンマナを決め、それにそろうように撮影したのがビジュアル全体を底上げしたポイントになったと思います」(菅野)
今回の撮影では、食品撮影の際に頼むことが多いフードスタイリストやプロップスタイリスト、シズル師(食品撮影の際に、泡がはじける様子など臨場感を出すための仕掛けを施す人)などは入れず、アマナのチーム内で役割を分担。「アニバーサリー感のあるビジュアル」というゴールのイメージを共有し、さまざまなアイデアを出し合いながら制作を進めていきました。
「アイスクリームはシズル撮影の中でもかなり難しい部類に入ります。撮影のためにライトを集中させているところは高温になるため、カップの蓋を取ってすぐに理想的な天面のものを選び、菅野にスピード重視で撮影してもらいました。完成したビジュアルでは少し溶けた感じになっていますが、これはプロデューサーがストローで息を吹きかけたところを撮影してレタッチで調整したもの。どのくらいのとろけ感がおいしそうに見えるか、その見極めが重要でした。
また、アイスの中に入っているカラメルソースやチョコクッキーを見せたく、クッキーの断面やカラメルソースを別に撮影して、レタッチでアイスの天面に移植。実際の天面から大きく離れないリアリティのある、おいしそうに見える配分を目指しました」(笹崎)
特に大変だったのはカラメルソースの表現。サラサラすぎず重くなりすぎない、ちょうどおいしそうなカラメルソースを表現するため、粘度や透明感などが違うさまざまな種類をテストしたそうです。
「アクリル版にカラメルソースを置いて撮影しましたが、空中に浮かんでいるように見せたく、菅野がライティングを工夫してくれました。立体感を付けたことで丸みを帯びた形に見え、浮遊感が出たと思います。ハーゲンダッツのアイスは、日常の中で特別感を感じたいときに買うもの。ただかわいい、女子会っぽい感じにするよりは、さらに華やかな雰囲気になるように注力しました」(笹崎)
完成したビジュアルは、SNS動画としても使われることになりました。当初はランディングページとビジュアル制作で進めていましたが、アウトプットの場が広がった背景にはどのような経緯があったのでしょうか。
「ADの田口が制作したビジュアルを、撮影の時に『実際に乾杯させるように動かしたらSNS映えするのでは』と思いつき、実際にGIFの動きを少し付けてクライアントに提案してみました。承諾していただき、SNS動画としてアップすることになったのです」(桑原)
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社内にクリエイターが在籍しているから、時間をおかずにさまざまなクリエイティブを作ることができるのがアマナの強み。静止画に動きを付けようとなったら社内ですぐにテスト版を制作し、見せることができます。そもそもどんなビジュアルを作るかという最初の段階で、レタッチや撮影を含めリファレンスをリアルな形で作ることが可能。プロデューサーとクリエイターが同じ社内にいるからこそ、ワンストップでできることが多数あります。
完成したビジュアルについてはクライアントにもとても気に入っていただいたそう。とはいえ、このように多くの素材を組み合わせて1つのビジュアルを作る場合にストック素材を使った方が、手間がかからないようにも思えます。
「ストック素材でもできなくはないのですが、違う環境で撮った写真を組み合わせるとチグハグな感じになってしまうので、同じ環境下で撮影するのがベストです」(田口)
「レタッチでなじませることはできますが、それぞれ撮影した目的が違う写真を並べて、見た目をそろえるのはかなり大変。同じライティング、同じ環境で撮った方がクオリティが断然よくなるし、今回も撮り下ろしをしたからこそ完成度の高いビジュアルができたと思います」(笹崎)
あえて撮影することで、全体のクオリティが上がるし、それがわかっているプロデュース、クリエイティブチームの存在は、「期待は裏切らない。予想は裏切る。」というアマナの指針を具現化しています。
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<案件担当>
スポンサー:ハーゲンダッツ ジャパン株式会社
クライアント:VML&Ogilvy Japan合同会社
プロデューサー:佐藤謙介、岩本菫花、桑原杏奈、渡部桃子
アートディレクター:田口未結
Webディレクター:中村功
コピーライター:眞木 茜
フォトグラファー:菅野桂子(UN)
レタッチャー:笹崎彩
ムービーディレクター:榊原万琴
<記事制作>
取材・文:大橋智子
AD:中村圭佑
株式会社アマナ
岩本 菫花
株式会社アマナ
岩本 菫花
2015年amanaへ入社。Sales&Produce Deptに所属。人物、物問わず幅広い撮影プロデュースを4年経験し、デジタルを主軸としたクリエイティブプロデュースの部署へ異動。企業ブランディングやWEBサイト制作、クリエイティブ制作を中心に担当し、現在はコミュニケーション領域全般にカバー領域を広げ、デジタル、リアルを問わず複合的な案件のプロデュースをメインに担当している。
株式会社アマナ
桑原 杏奈
株式会社アマナ
桑原 杏奈
2022年に新卒でアマナに入社。プロデューサー職としてWeb担当の部署に所属しながら、LP制作をはじめ、記事制作、企業や商品のブランディング、カタログ制作など枠にとらわれない案件でプロデュース業務を担当。撮影においても、アーティストのジャケットやブランドの新商品など、人物、食、物などさまざまな分野の現場で制作進行を行っている。
株式会社アマナ
田口 未結
株式会社アマナ
田口 未結
2013年に新卒入社。Creative Direction Dept.に所属。 デザイナー兼アートディレクターとして活動。LPサイト制作をはじめ、SNS広告や企業・商品ブランディング、カタログ制作など、多岐にわたる案件に携わり、枠に囚われないクリエイティブを提供している。新商品のプロモーションなど、人物、物、食と様々なジャンルでデザイン制作を経験し、幅広い分野でのデザイン案件を担当している。
株式会社アン
菅野 桂子
株式会社アン
菅野 桂子
1986年生まれ。2009年日本写真芸術専門学校にてコマーシャルフォトを専攻。2011年アマナ入社。2015年フォトグラファーとして活動開始。現在はプロダクト撮影を中心に活動。柔らかい色合いや空気感の中に、商品を力強く見せるビジュアル制作に定評がある。 幼少期を福島県の広大な自然の中で過ごした菅野は、時間によって色を変え、雲や湿度によってコントラストをドラマチックに変化させる太陽の光に夢中になり、熱心に観察する日々を送る。自然が生み出す光に魅せられた菅野は、スタジオライティングにおいても、時間、湿度、色を見る側に感じさせるライティング表現を得意とし、数多くのプロダクト撮影を手掛けている。
株式会社アマナ
笹崎 彩
株式会社アマナ
笹崎 彩
2014年にアマナに入社。Photography Dept.に所属。 長年アシスタントとして培った経験を基に、2021年からレタッチャーとして活動を開始。プロダクトや人物を問わず多岐にわたる分野で実績を積み、撮影現場から「より良いビジュアル」を作り上げることに注力している。持ち前のコミュニケーション力と柔軟な対応力を活かし、クライアントの要望に応じて、精度の高いビジュアルを提供している。