沢井製薬|クリエイティブとメディアで企業イメージを更新

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技術ブランドを通して沢井製薬の企業価値を高めたい――沢井製薬において技術ブランディングの取り組みが始まったのは、こうした思いがあったからでした。先進性と信頼性を打ち出しつつ、会社の新しい魅力を発信するため、クリエイティブとメディアの二軸の施策をアマナが担当しました。

どのようにして企業イメージの更新を目指したのか、サワイグループホールディングス ブランドコミュニケーション部 ブランドコミュニケーショングループの森田彩加さんと、アマナの熊本容子(プロデューサー)、高橋みずき(クリエイティブプランナー)、栗原拓也(メディアプランナー)の4名が語ります。

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技術のブランド化が他社との差別化ポイントに

――今回の技術ブランディング施策を実施するに至った理由を教えてください。

森田彩加さん(以下、森田):当社では、2022年から「技術のブランド化」に取り組んでいます。沢井製薬には薬の開発や製造に関する多くの特許技術があり、その技術ブランドを通して新たなイメージを獲得し他社と差別化していくという、大きな方針がありました。

――あえて技術ブランディングを行うという方針を打ち出したのには、何か課題があったのでしょうか。

森田:ジェネリック医薬品は、今では日本での使用率が80%を超えていて、これは、ジェネリック医薬品が社会に浸透するという第1フェーズが終わったと考えています。では第2フェーズは?となった時に、ジェネリック医薬品の各メーカーがそれぞれの特徴を打ち出していく中で、沢井製薬はジェネリック医薬品のリーディングカンパニーとして、また「技術力の沢井」として、圧倒的なブランド力を築きたいという思いがありました。
2023年に新たに技術ブランド「QualityHug®」を立ち上げたこともあり、アマナさんへは当社の技術ブランドをテーマに動画広告の作成を依頼。「先進性がある、挑戦的である、創造性がある、優れた製品を作り出している」という、当社の新たなイメージ獲得ができるようにお願いしました。

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森田彩加|Ayaka Morita
サワイグループホールディングス株式会社/ブランドコミュニケーション部ブランドコミュニケーショングループ
広告宣伝、EC担当などを経て、2023年にサワイグループホールディングスへ入社。同年技術ブランド「QualityHug®」担当として、主に広告宣伝業務に従事している。

 

――アマナに連絡があった経緯を教えてください。

熊本容子(以下、熊本):最初は、amana.jpからお問い合わせをいただき、アマナの業務内容を紹介しました。その後、事例などで当社のクリエイティブを知っていただき、技術ブランディングの施策がスタートした際にご連絡をいただいたという次第です。

森田:アマナさんのクリエイティブに関しては、申し分のない、高いクオリティのものを作成していただけるというイメージを持っていました。今回、依頼したテーマが「技術ブランディング」。薬にまつわる技術の説明は難解で、理解しづらい内容になる懸念があったため、一般の人が見てもわかりやすく、さらに沢井製薬は先進的な企業なんだなと思ってもらえるようなクオリティで作っていただきたいという期待を抱いていました。

AMANA yoko kumamoto
アマナのプロデューサー、熊本容子。

 

2つの価値観を両立させる「トレードオン」の戦略

――アマナではどのように進めていったのでしょうか。

高橋みずき(以下、高橋):技術ブランディングの広告動画を作ることと、その動画をどうやって届けるかということで、クリエイティブとメディアの戦略を立てる必要がありました。そのためにはまず私が理解して橋渡しをしなくてはいけないので、リサーチを行ったのです。ジェネリック医薬品の課題は何か、医療関係者にインタビューをしたり、生活者がどういうイメージを持っているかについては、リサーチとデータ分析を行っているノウンズさんに依頼して、企業の認知度や好感度などについて調べました。

※参考:データとクリエイティブの融合が生み出す、競争力のあるマーケティング戦略

AMANA mizuki takahashi
アマナのクリエイティブプランナー、高橋みずき。

 

高橋:その結果、「安心感」や「信頼性」といった、沢井製薬さんが今まで培ってきた企業イメージ(=資産)もあることがわかって、未来感だけではなくそうした資産も一緒に伝えられるクリエイティブにしなくてはと思いました。先進性だけ、技術にフォーカスするだけではどうしても難しくなりがちなので、両方の価値が伝わるクリエイティブにしたいと考えたのです。

――リサーチの結果を見て、気付いたことはありますか?

高橋:「技術力」や「先進性」というベクトルで比べると、ジェネリック医薬品のメーカーは明らかに数字が伸びません。逆に、国内の新薬メーカーや海外の医薬品企業だとポイントが取れて、生活者はそういう視点で企業を見ているんだなと思いました。だから目指すクリエイティブは、新薬の国内メーカーや海外の企業と同じ印象を与えることで、同時にサワイジェネリックの品質・信頼性も伝えなくてはと考えました。

――そこで「トレードオン」というワードが出てきたわけですね。

高橋:そうですね。信頼性と新たなイノベーションは両立しないとみなされる「トレードオフ」が生じていたことがわかったので、そこから一歩進んだ「トレードオン」を提案。クリエイティブにおいて、国内外の新薬メーカーのような「先進性がある」印象を残せるように、さらに技術に対するひたむきな態度を盛り込むことで「信頼性」を感じさせる、2つの価値観を両立させようと話が進みました。

資料1.jpg

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難解な内容をわかりやすくスタイリッシュな動画に

――クリエイティブ制作はどのように進めていきましたか?

高橋:「技術ブランド総合」として1本、さらに特許技術を紹介する「QualityHug®」として2本、計3本の動画を作成しました。贅沢なキャスティングですが、ディレクターを2人起用して、先進性だけを目指すのではなく今まで培った資産の部分も伝えられるようにインプットしてもらい、アイデアを出しながら2人で進めてもらったんです。

熊本:ポイントは、技術の何をどう見せるのがベストなのか?ということ。沢井製薬さんが特許を持っているのは、研究職の人材の質が高いとか、機材など環境が充実しているといった背景があるから。だとしたら、社員の皆さんや実際の機材などを技術群として見せてはという話になりました。
手法としては、アマナの得意なCGを使ってわかりやすく見せるということもできましたが、やはり現場の方や研究所にあるものをリアルに伝える方がよいのではと。そのためには沢井製薬さんのご協力が必要で、絵コンテを作る前からシナリオハンティングとして先に現場を拝見できたのがありがたかったです。実際にどういう絵を作るか、細かいメッセージをどうするかなどを絞り込めましたし、さらに撮影にも使わせていただきました。

森田:私からは、技術ブランド総合の動画については、オーダーの段階で「アートとサイエンス」をテーマにできないかと難しいお願いをしていたのです。アートとサイエンスってきっと相性がいいだろうなという考えと、そんな動画が作れたら今回の目的にも合うのではないかと。相当難しいだろうな、と思いつつ、きっと形にしてくれるに違いない!と期待を込めての依頼でした。それに対してアマナさんからは、シンメトリーな構図で画面を構成するという提案をいただき、さらにソリッドな音楽とライティングでものすごくカッコよく仕上げていただきました。社内からも、「本当に自社のラボ(研究所)で撮影したの?」と声があがるほど、見ごたえのある映像になったと思います。

 

動画「薬の技術を生み出す」篇(30秒)

 

――特許技術を紹介することについては、どのように思いましたか。

森田:医療用医薬品メーカーはBtoBtoCと言われますが、一般の人にはなじみのない技術も多いかと思います。 具体的に技術がどういったものなのかを動画に入れたいと思ってはいましたが、それが一般の人に刺さる内容なのか、刺さるように見せられるかが懸念点でもありました。
2本の動画を作成していただき、1本は発がん性物質「ニトロソアミン」の混入リスク低減技術、もう1本は錠剤への模様転写技術です。難解な技術でしたが、実際に技術を生み出した研究所と機材を使用し、研究員を通して伝えることで、わかりやすく、感性に訴えかける雰囲気も出ていて、今までの沢井製薬にない素敵なテイストで仕上げてくださったと感じました。

QualityHug®「カザリア」篇(30秒)

QualityHug®「サプレナ」篇(30秒)

 

精度の高いターゲティングで、狙った層に届けるメディア戦略

――メディア戦略についてはどのように進めていったのでしょうか?

栗原拓也(以下、栗原):まず、企画段階からクリエイティブ制作には手ごたえがありましたし、そもそもアマナはクリエイティブに強みを持っている会社なので、間違いのないものができると確信していました。そのため今回のプロジェクトでは、クリエイティブが主役であり、メディアプランはあくまでもそれを支える役割であると位置づけていたのです。
とはいえ、メディア配信における設計や運用の精度は欠かせません。ターゲティングの精度や配信時期、配信設計、予算の配分といった細部においても隙をなくして不明瞭な点を残さないようにし、狙ったターゲットにアマナのクリエイティブを届けること、この当たり前のことをいかに精度高く実現できるかを鑑みてメディアプランを立案しました。また、今回の施策は、クリエイティブと一体となって特定のブランドイメージを獲得することが狙いでした。そのため、配信メディアはYouTubeとTVerに絞りました。

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高橋:全体を見ている立場としては、栗原がクリエイティブに信頼を置いてくれているのはわかっていましたし、細やかな設計があって検討したうえでの緻密なプランだなと思いました。特に、広告を届けたい層に対して緻密にアプローチする工夫がなされていて、メディア感度の高さを感じました。医療従事者や医療に関心がある人に届く戦略になっていたと思います。

栗原:事後のアンケートなどでブランド調査をしたら、いい結果が出ていました。
私は案件の途中でインフルエンザにかかって、調剤薬局でもらった薬がたまたま沢井製薬さんのものでした。それがすごくうれしくて、これが私たちが目指したユーザー体験だと実感したんです。当事者だから気に留めるのは当たり前かもしれませんが、こういううれしい思いをしてもらうために行った施策なので、そういう人を一人でも増やしたいなとあらためて感じました。

森田:今回は一般生活者をメインターゲットとしつつ、医療関係者にもアプローチしたいという要望を事前にお伝えしており、広告配信時のターゲット設定については慎重に検討する必要がありました。アマナさんのメディアプランの中では特にTverのターゲティングが医療関係者に向けた配信設計で、それが斬新でおもしろいと感じました。また、今までは属性でのターゲティングによって医療関係者に見られる特定の媒体に出稿することが多かったのですが、新しいターゲティングアイデアをいただいてそんな方法もあったのか、と驚きました。

AMANA takuya kurihara
アマナのメディアプランナー、栗原拓也。

 

クリエイティブ戦略とメディア戦略の相乗効果

――今回の施策のポイントはどこにあったと思いますか?

熊本:クリエイティブについては、ビジュアルが単にカッコいいだけではダメで、一般の方にも伝わるようにコピーワークも含めて難儀するところが多かったと感じました。どこまで丁寧にするか、森田さんの協力も得て言葉の盛り込み方に注力し、視聴者の耳にすっと入ってくるものになったと思います。
メディアプランとの連携もスムーズでした。沢井製薬さんならではのターゲティング設計を配信にも生かせることができたことと、それに対するフィードバックを具体的にいただくことができました。クリエイティブプラン、メディアプランが共に、とても濃い内容で解像度の高いものができたのではないでしょうか。

栗原:メディアプランについては、一緒にディスカッションしながら最後まで走ることができたのが大きかったです。沢井製薬さんのことをいちばんよくわかっているのは沢井製薬さんの社員なので、意見を言っていただいて円滑なコミュニケーションが取れたことがよい結果につながったと思います。

高橋:全体では「トレードオン」という切り口で沢井製薬さんの先進性と信頼性の両立を目指したわけですが、アマナとしてもロジックと感性という両軸がうまく実現できた施策になりました。

 

sawaiseiyaku amana

 

――技術ブランディングは、今後どのように生かしていくのでしょうか。

森田:同じ動画でも属性によって反応が違うという結果が出ているので、今後は属性に合わせた別のアプローチができればと考えています。ターゲット別に訴求内容をチューニングしていってもいいですよね。そのうえで、今回の動画を生かして、さらにブランディングの取り組みを続けていきたいです。

――アマナの今後のビジネスプランを教えてください。

熊本:アマナといえばクリエイティブ、というイメージが先行しがちですが、「きちんと届けられること」「作るビジュアルにも意味があること」も含めて印象づけていけたらと考えています。そのために、上流の戦略部分からしっかり設計し、そこを感じてもらえるようなアウトプットを作っていくことが、私たちの本当の価値だと思っています。
ビジネス的な戦略に役立つものを作り、それを適切なターゲットに届ける。そこまでを一連の流れとして支援できるよう、今後もユーザーとの接点を広げていきたいですね。


<スタッフクレジット>(スポンサー/クライアント以外すべてアマナ)
スポンサー/クライアント:沢井製薬株式会社
アカウントマネジャー:熊本容子
統括プロデューサー:五藤裕樹
クリエイティブプランナー:高橋みずき
ムービーディレクター:粉川翔之介、榊原万琴
プロダクションマネジャー:有井大智、成田貴臣、南部さくら
メディアプランナー:栗原拓也

 

取材・文:大橋智子
撮影:大久保歩(アマナ)

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PROFILE

熊本容子

株式会社アマナ
熊本 容子

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熊本 容子

ビジネスプロデューサー。外資系広告代理店アカウントを経てデジタルプロデューサーとしてアマナに入社。近年はインナーコミュニケーション、コンテンツマーケティングを中心にコミュニケーション領域での長期的なスキーム構築を支援している。

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高橋 みずき

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高橋 みずき

プランナー。制作会社での営業としてキャリアをスタート。印刷会社へ転身後は大手メーカーのプロモーションプランニングを担当。アマナでは飲料・食品・アパレル・通信・流通・医療など幅広い業種において、コミュニケーション戦略策定・ブランド開発を担当する。

栗原拓也

株式会社アマナ
栗原 拓也

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栗原 拓也

メディアプランナー。前職は博報堂DYグループのデジタルマーケティングエージェンシーアイレップにて、主にSEM(サーチエンジンマーケティング)を担当。クリエイティブの可能性を追求するため2020年アマナにジョイン。以降、同社でメディアプランニング業務に従事。

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