Square事例に見る、パンデミックによる状況変化をプラスに捉え、持続可能なコンテンツ戦略に転換する方法

不測の事態に際し、どうコンテンツ戦略を再構築していくか。今回は、決済サービスを提供するSquare(2021年12月に社名を「Block」に変更)が、COVID-19によるパンデミックに際してとった戦略転換を紐解きながら、そのポイントを紹介。studioID(アメリカのBtoBニュースソース企業INDUSTRY DIVEのグローバルコンテンツスタジオ部門)のTravis Gonzalezによる解説記事でお届けします。

パンデミックによる状況変化をプラスに捉え、持続可能なコンテンツ戦略に転換する方法

パンデミック発生当初、マーケターのほとんどがパンデミックを破壊と混乱を招く要因と見なしていましたが、視点を変えて“不確実な状況に耐え、戦略を構築する機会”と捉えてみると、新たな気づきを得ることができます。世界的な混乱の中で直面した課題から、どのように戦略を転換し、成功させたのか、ブランドの事例をもとに解説します。

マーケターが、顧客のニーズ、イベント、あるいはカルチャーシーンに合わせたコンテンツを作成する際に常に頼りになるのが、文書化されたコンテンツ戦略です。これはいわば、ブランドのストーリーを伝え、オーディエンスを増やす方法を示したロードマップ。実効性のあるコンテンツ戦略は、一貫性を保ちながら、ビジネスニーズ、業界のトレンド、そしてオーディエンスの関心に合わせて少しずつ進化させていくことができるものです。

しかし、数週間の間に業界がひっくり返ってしまったら…? 策定した戦略は、いかなる意味を持つでしょうか。

リアクティブな計画を、プロアクティブな戦略に転換する

COVID-19のパンデミックによる影響を受けて、コンテンツマーケターが口をそろえて漏らしたのは、“what now(さあどうする)”でした。何年もかけて行ってきたオーディエンス調査や、入念に検討されたマーケティングファネルのメッセージングが、突如としてソーシャルディスタンス、健康への懸念、経済的不確実性、そして不安にさらされることになったのです。多くの戦略はこれらに耐性がなく、進化を強いられることになりました。

当社、INDUSTRY DIVEのクライアントであるSquareは、この変化に直面した企業のひとつです。中小企業およびエンタープライズ企業に向けて、決済・運用ソリューションのエコシステムを提供していた同社の顧客であるビジネスオーナーたちは、突然の変化と対応を強いられる事態になりました。Squareは、それらの顧客に対して提供するコンテンツを、従来のようなビジネス成長に関するアドバイスから、前例のない混乱状況をサバイブするためのリソースやヒントを与えるようなコンテンツへ、即座にピボットする必要がありました。

多くのブランドはこの事態にリアクティブ(即応的)な転換で対応し、COVID-19に関するアドバイス的な情報をかき集め、早急にパンデミックのコンテンツハブを構築しました。これはマーケティング界隈に見られる普遍的な変化でありながらも、すでにパンデミックに関する話題は飽和状態で、消費者でさえ、昨年3月以降よりCOVID-19の広告に使われている比喩的表現に飽き飽きし始めています。今この瞬間について語るのではなく、ブランドはパンデミックを乗り越える方法と、同じような局面に備える方法について語っていかなくてはなりません。

そんな中でSquareは、リアクティブなマーケティングアプローチを、パンデミックという難題を乗り越え、同社のオーディエンスとの関連性が高いストーリーに転換する(そして、そのメッセージの価値をステークホルダーに証明する)方法について考えを巡らせます。そして、新たなコンテンツ戦略を構築する中で、発信すべきストーリーは「生き残るための方法」ではなく、「リジリエンス(復活力)を高めるための方法」だと気づいたのです。

ブランドの価値に徹底してこだわる

パンデミック以前のSquareのコンテンツ戦略では、同社のオーディエンスが顧客の「ニーズ」を見つけることに重点を置いていました。そこでまず、コンテンツ戦略におけるプランニングの初期段階で、「マズローの5段階欲求」に照らし合わせ、ビジネスオーナーにとってのSquareの価値をマッピング。この欲求モデルは、生存欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求に至る、5段階のモデルで構成されています。

次に、Squareのオーディエンスであるビジネスオーナー目線で、彼らのニーズを同じようにマッピング。彼らは、支払を受けるためのツール(=生存ツール)、在庫管理のためのツール(=安全ツール)、顧客と関係を構築するためのツール(=自己実現ツール)を必要としていると同時に、自社ブランドでレガシーを築き、同じ目標を掲げる他企業とのメンターシップや仲間意識を見出したい(=承認されたい)と考えています。

Squareはビジネスオーナーたちをそれぞれのビジネス領域におけるプロフェッショナルと位置付け、彼らの成功談や苦労話、ビジネスをやり抜いたストーリーをコンテンツに起こすことで、プロフェッショナルコミュニティの中で実践的なビジネスアドバイスを提供していくことに。

競合他社が、まとめ記事やハウツーガイドなど、小手先の生存ノウハウコンテンツを作成する一方で、Squareはマズローの理論を現実世界で適用し、提供するアドバイスが同社のオーディエンスにとってなぜ重要なのか、一段深く掘り下げている点で際立っていました。

Squareは、パンデミック後の世界において「ビジネスオーナーファーストのコミュニティ」という概念が、Squareブランドならではの付加価値になると気付きました。不確実な時代の中で、ビジネスオーナーは仲間にアドバイスを求めます。支援や指南、励ましが必要なのです。パンデミックによるソーシャルディスタンスは、オンラインでのインタラクション(相互作用、交流)を促し、バーチャル世界に多くのコミュニティを誕生させました。

SquareとINDUSTRY DIVEがピボットさせた戦略は、既存の理念を越え、今の時代に適したコミュニティを形成したのです。

より人間らしく

パンデミック初期の頃、Squareは既存顧客に対して「日常生活における変化」に関する調査を行いました。回答には感情的なものが多く、ビジネスオーナーは自分たちの事業、ブランド、顧客のためにいかに正しい決断を下せるか、頭を抱えていました。彼らは保証や情報、迅速なサポート、そして前向きなアドバイスを求めていたのです。

これらのビジネスオーナーの感情は、電通イージスが同時期に行った調査結果から提唱した「ミレニアル&Z世代がパンデミック進行中に経験した“Stages of Grief(悲しみの5段階)”」と類似していました。この調査では、気晴らしや安心感を求める気持ちをどう満たせるかという問題から「ニューノーマル」の見つけ方まで、ブランドがこれらのオーディエンスニーズを満たすためにどのようにサポートできるが検討されました。

Squareのミッションは、「経済の人間的側面に力を与えること」。そして、そのモットーは、ビジネスオーナーを個人として捉えることで実現されます。つまり、BtoCオーディエンスの感情から受けたインスピレーションを、BtoBへ応用するということです。電通イージスの調査回答者と同様、ビジネスオーナーもパンデミックの中で、答えを探したり、迅速な対応を行ったり、将来の計画を立てたりと、それぞれの「悲しみ」の段階を経験しました。それをもとにINDUSTRY DIVEは、感情的にも実用的にも、Squareのオーディエンスが各ジャーニーの過程で必要とするコンテンツを提供していくための戦略を立てていきました

 

軸となるコンテンツを検討していくにあたり、INDUSTRY DIVEとSquareは、パンデミック下におけるビジネスオーナーのメンタルステータス別に、以下3つのコンテンツペルソナを開発

① 正しいアクションのためのサポートをしてほしい層
② ビジネスを継続するためのサポートをしてほしい層
③ 長期的な成功に向け、その準備をサポートしてほしい層

Squareのオーディエンスに向けてコンテンツを制作する際には、上記3つのペルソナに沿ったコンテンツになっているか、そして感情的または実用的なニーズのいずれか(またはどちらも)を満たしているかというポイントを常に確認しています。

レジリエンスを高めていくための計画

このような不確実性に対する反応・適応のサイクルは、COVID-19によるパンデミックに限ったものではありません。今回、予測不可能な局面に合わせてペルソナの再構成を行いましたが、これまでの歴史を振り返ると、ビジネスオーナーが定期的に同じような経験をしていることがよくわかります。経済動向はつねに流動的であり、急速な変化(eコマースのブームなど)に適応しながら確固たる基盤を固め、成長しています。そして、その過程のどこかで、新たなビジネスモデルの検討を余儀なくさせる局面が訪れるのです。

Squareの「ニューノーマルにおけるペルソナ」は、拡張性とモジュール性を考慮して設定されています。困難な時期に対する理解を必要とするビジネスオーナーが、より多くのコンテンツを求めることもあれば、将来を見据えたビジネスオーナーが、じっくりとレベルアップできる時期を待つこともあるのです。

Squareのコンテンツ戦略開発の目標は、このような不測の事態に際してビジネスオーナーを支えつつ、実用的なアドバイスや彼らと同じ境遇の人々のコミュニティを提供することで、大きな支えとなることでした

戦略を共有する

文書化された戦略を実行し、反復し、息の長いものにしていくためには、マーケティング組織の全員がその戦略を理解しなければなりません。ブランドとオーディエンスが良いコミュニケーションを続けていくために、戦略の背後にあるマクロな方法論から、コンテンツの公開日時等に至るミクロな要素まで、チーム全員がコンテンツの価値を理解する必要があります

Squareはニューノーマル戦略を採用し、2回にわたるセッションを通じて80人以上のマーケターチームにその内容を紹介しました。 1回目のセッションでは、コンテンツマーケティング戦略の価値と、それぞれのアセットがブランドの目標、ニーズ、目的をどのように伝えるかを説明。オーディエンスファーストモデルのコンテンツマーケティングとして組み立て直す必要があったのです。

チームに対して戦略理解を促す説明をする際にも、Squareのオーディエンスに向けたコンテンツアプローチと同様、わかりやすく、アクセスしやすく、そして楽しいものにする必要があります。

チーム全体が「なぜコンテンツマーケティングに取り組むべきか」に対して理解を深めたうえで、2回目のセッションでは、その具体的な方法について説明。COVID-19のように破壊的な事態に際して、ブランドはそれをどう受け取り、活用し、オーディエンスに語りかける方法を再形成すればよいのか。オーディエンスに提供すべきコンテンツ体験の全体設計から説明します

これは、ストーリーベースのコンテンツマーケティングを成功へと導くフレームワークとして、幅広いチームがアイデアを試し、コンテンツを提案し、ファネルの深層にまでつなげる方法を理解するうえで有効な方法です。

COVID-19は、Squareのコンテンツマーケティング戦略を混乱させることなく、ビジネスオーナーが前例のない局面を乗り切り、再び成功へと歩みを進めていくためのコンテンツ戦略へとピボットさせる機会を与えました。SquareのミッションとINDUSTRY DIVEのインサイトを強力なコンテンツマーケティングの方法論に落とし込むことで、今後何年にもわたってマーケティングトレンド(そして経済の不確実性)を乗り切ることができるプランを確立できたのです。

元記事「Turning a Pandemic ‘Pivot’ Into a Lasting Content Strategy」は2021年6月11日にspringboardに掲載されました。
この記事は、IndustryDiveのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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