プロが伝授! 伝わる色校正の指示の入れ方

アーティストの作品から広告まで幅広いプリントを請け負うFLAT LABOを紹介する本企画。今回は、印刷を行う前に色の調子を確認する“色校正”をテーマに、オンデマンド印刷の色校正の基本知識や実際に編集部が入れた赤字について、FLAT LABOがアドバイスします。

色をチェックするときの注意点

──イメージ通りの仕上がりを叶えるために色校正はとても重要な作業だと思うのですが、色校正の基本としてどういう点に気をつけたらいいですか?

小須田翔(以下、小須田):まず前提として、見る人や環境によって見え方が異なるということを頭に入れておくことが大切ですね。

たとえば同じ赤色でも、“明るい赤色”と感じる人もいれば、“暗い赤色”と感じる人もいます。また、色校正をするときの環境、蛍光灯の明かりなどによって、色の見え方は変わってきます。なので、イメージ通りの仕上がりにするためには、印刷会社まで足を運び、色評価用(※1)の環境のもとで色校正するのがベストです。

また、PCモニターによって色の見え方に差が出てきたり、モニターの色再現とプリントの色再現にも差があるということを理解しておくと、印刷会社とのやりとりがしやすくなるはずです。

──そして実際に修正したい箇所に赤字を入れるとき、文字だけで伝えるというのもなかなか難しいですよね。

小須田どの部分の色をどうしたいのか、できるだけ具体的に明確に伝えることが、スムーズにイメージ通りの仕上がりに導くコツです。色見本をつけたり、“ここと同じように明るく”などといった比較対象があると伝わりやすいですね。

逆に、“かわいい”とか“やわらかい雰囲気に”とか抽象的な表現になると、依頼主と印刷会社の担当者との間で感覚にズレが生じる可能性もあります。

ときどき、芸術家肌のアートディレクターやフォトグラファーからは、“ガッとくるようにしてください”などといった擬音語で指示が入ることもあるんです(笑)。面と向かってコミュニケーションがとれると、会話をしながら方向性を探っていくことができますが、文字だけでやりとりをする場合は、色見本や比較対象をつけるといいですね。

※1 色評価用の蛍光灯やLEDを使用している環境

編集部が色校に赤字を入れてみました

実際に広告ビジュアルで使われやすいイメージ写真に編集部が赤字を入れてみました。プリンティングディレクター小須田がチェックし、より伝わりやすくなる赤字の入れ方をアドバイスします。

[1]自然光の人物写真

写真はライフスタイルや健康系、化粧品などの広告ビジュアルに近いものをセレクト。 (c) LSC/a.collectionRF /amanaimages

[プリンティングディレクター小須田がチェック]
全体的になんとなく言いたいことは伝わるけれど、参考資料をつけるなど、より具体性があるといいですね。

 

◎いいところ

・「顔の印象明るく(見本より暗くならないように)」
→見本という比較対象があるのでわかりやすいです。

 

×あともう少し…

・「全体青み抜く」(左)
→青みを抜くと黄色っぽくなるけれど、それでOKなのかどうかわかりにくいです。部分的に青っぽいのが気になるだけかもしれないので、青く感じる要因がどこにあるのか考えてみると、より理想のイメージに近づきます。

・「木の質感出す」(右)
→木目を出したい場合、簡単なスクリーンショットでもいいので木目の参考となる画像資料があるとズレが少なくなります。

 

[2]陰影のある写真

写真は雰囲気のあるライフスタイル系や雑貨の広告ビジュアルに近いものをセレクト。(c) Pras Boonwong / EyeEm /amanaimages

[プリンティングディレクター小須田がチェック]
赤字の内容はだいたいわかりますが、元のデータにない色は出せないので、データにその色があるのかどうかが気になるところです。データに実際、その指示しているものがあるのか確認した上で、赤字を入れましょう。

 

◎いいところ

・「全体、黄赤よりに(夕方、西日をイメージ)」
→夕方の西日をイメージと補足しているので、具体性があっていいです。

×あともう少し…


・「暗い部分つぶれないように」
→データにない色は出せないので、もとのデータがどうなっているのか要確認ですね。また、ディテールがつぶれないように明るくすることで、黒が締まらなくなったり、雰囲気が変わってしまう可能性もあるので、何を重視したいのか明確にした上で修正指示を出すといいです。

・「質感を残しつつ、上質なノートに見えるように」
→“上質”という表現がやや曖昧ですね。質感自体はコントラストを上げれば出せるけれど、上質さに結びつくのかどうか……。たとえば“表面をなめらかに”と補足するなど、上質の方向性が見えると伝わりやすいです。

アート作品にも赤字を入れてみました

アート作品には正解がなく、作品の世界観や作家の想いを表現することが大切になるため、作家と印刷会社(プリンティングディレクター)がコミュニケーションを重ねてイメージを共有することが重要です。

今回は作品の色校正の一例として、雰囲気の異なる2つの作品に編集部が赤入れし、それを小須田がチェックしました。

[3]風景の写真

写真/上村可織(UN)

[プリンティングディレクター小須田がチェック]
風景写真の作品は、その世界観を引き出せるよう、時間帯や細かなニュアンスを丁寧に表現するのを意識するとイメージに近いものになります。

×あともう少し…

・「全体赤み抑える」
→朝なのか夕方なのか、それとも時間帯を感じさせたくないのか、もうひと言補足して、赤みを抑えたい意図がきちんと伝わると完璧です。

・「背景にとけこまないように。白をしっかり出す」
→どの程度、背景と紙の地の部分との境界線を出したいのかがややわかりにくいですね。同じ写真の中で“ここと同じくらい出す”など、比較対象があるといいです。

・「もう少し葉の質感出す ※でも出しすぎ注意」
→葉の質感を出すことで、写真のやわらかい雰囲気が失われる可能性があるので、なにを大切にしたいのかを明確にした上で赤入れを。また、データ上で葉の質感が出ているのかを確かめておくことも必要です。

 

[4]コラージュされた世界観のある写真

写真/上村可織(UN)

[プリンティングディレクター小須田がチェック]
こちらも風景と同じように、どのような世界観にしていきたいのかをまずは考えてから、赤字を入れるようにしましょう。変えたくないところはその旨を書きつつ、調整したい箇所に指示を入れるのもいいです。

◎いいところ

・「背景浅くなりすぎないように。雰囲気そのままで」
→現状の作品の雰囲気を保つという前提があるのでわかりやすいです。

×あともう少し…

・「石のディテール出す」
→石の質感を出して立体的に見せたいという意図は伝わるのでOK。ただ、ディテールを出すことで、人物など他の部分が目立たなくなることも。なぜディテールを出したいと思ったのか補足して伝えると、より的確な調整ができます。

まとめ

色校に赤字を入れるのは、慣れないとどのように書いていいのかわからないものです。思い通りの色味にするために、今回の赤字の入れ方を参考にしてみてください。イメージに近づけていくためには、印刷をする人とのコミュニケーションも大事になります。時間があれば、直接会って話すとより思う通りのものになるはずです。

テキスト:木林奈緒子
撮影:猪飼ひより(amanaphotography)

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