“らしさ”を作って差別化を! 強いブランディングは“人格化”にあり

私たちは魅力的な人・モノ・コトに惹かれます。ブランドも同じで、魅力的な企業や商品、サービスに人が集まってきます。そんな魅力的なブランド作りのポイントは、人格を作るように“らしさ”を確立していくこと。アマナのブランド戦略室が、事例を交えながらブランディングのコツを解説します。

ブランディングは人格作り

ブランディングは、ブランドの魅力や機能を含め、世の中に“これはあのブランドだ”と認識してもらうために行うものです。正しく認知してもらうためには、まず社内でブランドのイメージをしっかりと確立しなければなりません。

このイメージ作りの際によく用いられるのが、ブランドを人に見立てて考えていく方法。魅力的な人物を作り上げていく感覚で、ブランドの核=DNAに肉付けをしていくペルソナ(人格)作りというものです

それでは、ブランドの人格作りとはどのようにしたらいいのでしょうか?
ポイントは、ブランドのイメージを統一すること。会うたびに違う雰囲気の服装や髪形、しゃべり方をしていては、その人のイメージが定着せず、同一人物だと認識できないこともあります。そうならないためにも、あらゆるタッチポイントで同一の雰囲気を醸し出すビジュアルやワードでブランド表現を統一しましょう。

図のように、ブランディングの要素を人にたとえてみるとわかりやすくなります。

ブランディングの普遍的な部分(核)になるのが、図の中心にある「ブランドコンセプト」や「ビジョン」、「ミッション」。人間で言うと、ブランドコンセプトは“ニックネーム”。ビジョンはその人の“信念”や“夢”、ミッションは“生き方”と言えます。その核を軸に外側に広がっていくのが、その人の性格や世界観などになってきます。

このように内側の濃い色の部分から、外側の雰囲気や魅力などを表す部分まで、対比しながら整理すると“らしさ”が見つけやすくなるはずです。人間一人ひとりが違うように、企業や商品、サービスを人格化するときには、“らしさ”を活かして、ほかにはない個性的な人物像を作り上げることが大切です。

どんな高機能の新商品を作っても、技術が成熟された現代では、機能性はどんどん上書きされていきます。たとえば、スチーム機能付きの新しいオーブンを開発しても、ほかの企業でも同じ機能の商品を作れてしまうのです。

ですが、機能は上書きされても、ブランドの世界観は上書きされることはありません。世界観のあるブランドには、ファンがつきます。ファンというのは、そのブランドのカルチャーやイメージなどの“心理的価値”に心を惹かれるので、同じような商品がより低価格で販売されたとしても、オリジナルのブランドの世界観に共感して、商品を選ぶものなのです。
このように、消費者にこのブランドなら間違いないという“心理的価値”を定着させることが、効果的なブランディングの秘訣ですが、その元となるのがブランドの人格です。

ブランディングにより、新たな“場”が生まれる

魅力的なブランド作りと適切な営業戦略ができると、共感されるファンが生まれ、企業拡大につながっていきます。さらに、そのブランドに追随する競合ブランドができ、人が集まる新しい“場(マーケット)”が生まれます。競合ができることは不利なように見えますが、実は悪いことではありません。「模倣戦略」や「フォロワー戦略」と言われるものがあるように、ライバルが増えることで市場がさらに拡大するチャンスにつながっていくのです。

ただし、マーケットが拡大したときにプラスの効果を得るには、自社のブランド価値・世界観がしっかり確立されていなければなりません。ブランド価値が確立されていないと、2番目以降のライバルの勢いに飲まれてしまい、自分たちが生み出したマーケットから撤退しなければならなくなることも。他社に負けないサービスやブランド価値を作り上げるためにも、ブランドの人格をきちんと整えておくことが大前提になります。

【世界観作りが功を奏したスターバックス】
わかりやすい一例がスターバックス。スターバックスは“第3の場所”をコンセプトに店舗を作ってきましたが、ここまで事業を大きくするまでに広告宣伝は一切行っていませんでした。その代わり、考え方、店舗デザイン、商品、おもてなしなど、企業としての基本の部分を徹底して創り上げました。その結果、どの国のどの店舗でも同じ世界観を体験できるようになり、世界中の顧客にブランドのイメージを浸透させることができたのです。

また、スターバックスが流行したことで“模倣”ライバルが生まれ、エクセルシオールやタリーズなどといった新しいコーヒーのチェーン店が続々誕生し市場が広がりました。ですが、スターバックスはブランド価値をしっかり確立していたので、他店に飲まれることなく現在も多くの人に支持されています。

まとめ

スターバックスのような大きな企業でなくても、ブランドの人格作りをしっかり行い、顧客の共感を得られたなら、競合が出てきても第一線で生き残ることは十分可能です。
むしろ大企業より中小企業のほうがブランディングで差別化していける可能性を秘めています。それは、関係者が少ないので社内の改革が実行しやすく、ブランドの世界観作りもスムーズにいくから。また、業界の3番手4番手の方が思い切ったブランディングができるもの。中小企業の中には「お金がかかるからウチには無理」と思っている人も多いかもしれないですが、基本の要素を揃えれば、広告なしのブランディングもできます。関係ないと思っている企業こそ、ブランディングに挑戦してみてはいかがでしょうか。

 


■キービジュアルのウラ話
今回イラストレーターの松原光さんに企画内容を踏まえて、キービジュアルを描いてもらいました。なぜこのイラストになったのか、作り手の”思い”を紹介します。

「人格化をしっかりすることで、強くなるということから、企業が“ブランディングという筋肉”をつけるというのをイメージしながら描きました。どこにも負けない力強い企業になるというのが伝わるといいなと思います」(松原光さん)

〈PROFILE〉松原光|まつばらひかる
イラストレーター。グラフィカルでキャッチーな作風にユーモアがプラスされたイラストが評判。国際アートフェア「UNKNOW ASIA2018」にて、Jeon Woochi賞、池田誠審査員賞を受賞。http://www.sandomistudio.tumblr.com


テキスト:石部千晶(六識)  イラスト:松原光
作図:メルクマール

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