アーティストの作品から広告まで幅広いプリントを請け負うFLAT LABOを紹介する本企画。第2弾は、appleの店舗や携帯ショップの直営店などでも見かけるようになった空間演出が簡単にできるLED内照フレームについて、FLAT LABOの小須田翔が使用例を交えながら解説します。
──プリントする素材から作品の展示監修まで、ニーズに応じた提案をしているFLAT LABOで、今、旬な展示方法があると聞きました。
小須田翔(以下、小須田):そうなんです。“LED内照フレーム”といって、専用のファブリック(布)に写真などをプリントし、それをアルミフレームに張ってLEDで内側から照らす展示方法があります。これは、appleの店舗や携帯電話の直営店、外資系ファッションの店舗などで使われることが増えています。
実は、LED内照フレームと仕組みが似ている、コルトン・電飾フィルムというものは以前からあって、今でも展示場など幅広い場所で今でも使われています。でも、コルトン電飾フィルムは、乳白色のフィルムにプリントして裏から蛍光灯を当てるので、設置が大変でした。一方、LED内照フレームは、蛍光灯がLEDになったり、UVプリンターの技術が上がったおかげで、写真などのビジュアルをきれいに、繊細に見せることができるようになったんです。
そしてなにより、フィルムではなくファブリック(布)にプリントすることで、取り外しがラクにでき、簡単にビジュアルの差し替えができる、ということで注目されています。フレームは両面式の自立型、天井吊り、壁掛けタイプがあり、目的やコンセプトに合わせて選べるのもポイントです。
──ビジュアルを簡単に交換できるとはどういうことですか? どんな仕組みなのでしょうか?
小須田:仕組みはとてもシンプル。まず専用のファブリック(布)に写真などのビジュアルをプリントして、フレームのサイズに合わせてカット。次に、プリントされてない裏面の周囲にシリコンを縫い付けていきます。最後に、ファブリックをピンとしっかり張りながら、シリコンをアルミフレームの溝に差し込んでいけば完成。ビジュアル交換時は、枠からシリコンを押し出しながら、ファブリックを外すだけでいいというのが手軽なんです。
1.布に写真などのビジュアルをプリントする
2.プリントした部分からサイズに合わせてカットする
3.ミシンでシリコンを縫い付ける
4.フレームにシリコン部分を差し込む
5.完成!
──“LED内照フレーム”は、今後ますますニーズが増えるのでしょうか?
小須田:そうですね。ヨーロッパではファッションブランドをはじめとする店舗や企業で多く使われ、ディスプレイの主流となっています。きっと、日本でもこれから浸透していくのではないでしょうか。
企業で活用するなら、LED内照フレームを壁にかけて、撮影した自社製品のビジュアルを展示したり、アートや写真を季節ごとに変えて飾ったりということもできます。アパレルブランドなど、シーズンによってビジュアル変更したい場合も、ファブリック(布)なので外部の施工業者に頼まなくても現場のスタッフで対応できます。
一方、写真家の作品展示に使われることも最近は増えています。空間演出も兼ねた大きなフレームから、テーブルに置けるような小さめのフレームまでオーダーが可能なので、アイデア次第で用途も広がるはずです。
FLAT LABOが手がけた“LED内照フレーム”を使った展示が見られるとのことで、開催中の写真展に編集部が行ってきました。
伺ったのは、日本橋にある重要文化財「三井本館」の開館90周年を記念した、写真家のホンマタカシ氏による写真展『三井本館 Mitsui Main Building TOKYO 1929-2019|写真・ホンマタカシ』。
同展では、三井本館の合名玄関と呼ばれるオフィスのエントランスと、三井本館に隣接する日本橋三井タワーの1階アトリウムで、三井本館の歴史を紐解く写真や映像を紹介しています。“LED内照フレーム”を使った写真の展示が見られるのは、日本橋三井タワーの1階アトリウム。
ホンマ氏が撮影・監修した今回の写真展で、それがどのように使われているのか、展示・企画担当である電通ライブの尾亦耕平さんに話を伺いました。
──エントランスに入った瞬間、目に飛び込んでくるホンマさんの写真が、大きくて迫力がありますね。
尾亦耕平さん(以下、尾亦。敬称略):この大きな写真の展示に使っているのが“LED内照フレーム”です。1台が縦2.7m×横1.8mほどの大きさで、これはスタンドのみで自立できる(メーカー推奨)最大の高さです。両面式の“LED内照フレーム”を4台置いて、ホンマさんによる三井本館の撮り下ろし写真を計8枚、特大サイズで展示しています。天井が高いこの場所でも、4台置くことで存在感のある演出を実現できるのが大きな魅力です。
──確かに、空間全体を装飾していて新鮮な驚きがあります。そして、ホンマさんの写真はモノクロとカラーを組み合わせて展示されていますね。
尾亦:そうなんです。モノクロ写真は「カメラ・オブスキュラ」
──作品の前に立っていると、写真の世界に吸い込まれていくような不思議な感覚になります。
尾亦:展示を見に来られた方からも、そういう声を多く頂きます。内側にあるLEDをつけたり消したりと、一辺ごとにライト調整ができるので、写真を部分的に強調したり、奥行きのある演出も可能なんです。また、アルミフレームがシンプルな作りなので、大きな写真が一段と引き立って見えます。
インパクトのある空間演出ができたり、見せ方を変えて印象チェンジができたり……。“LED内照フレーム”を採用することで、表現や演出の幅が広がりましたね。
季節感を出したり、新製品を定期的に発表する企業にとっては、手軽に取り外しができるのは、魅力的なのではないでしょうか? 今回の記事用に作成した小さいLED内照フレームは、5万円くらいから。フレームがあれば、その後の運用費は、ファブリックと印刷代のみ。コンスタントにビジュアルを変えていきたいという企業やお店にとっては、予算的にも負担にならず、いろんなビジュアル施策のヒントになりそうです。
『三井本館Mitsui Main Building TOKYO 1929-2019|写真・ホンマタカシ』
テキスト:木林奈緒子
撮影:猪飼ひより(amanaphotography)