食の写真で最も必要とされるのは、「おいしさの表現」です。
しかし、この「おいしさの表現」、簡単にできるというわけではありません。
撮影が難しいとされるアイスクリームを例に、「おいしく見える撮り方」をプロのフォトグラファーが指南します。
まずは、撮影前の準備から。業務用のアイスクリームのパックを使用します。
アイスクリームには、実はさまざまな種類があります。乳成分の量によって、
の4つに分けられます。
撮影で美しい形を作るためのポイントとなるのは、乳脂肪分の量と空気の含有量。キレイな波模様を作るには乳脂肪分が少ないほうが適しており、また、ミルクを攪拌して凍らせていくアイスクリームの特性上、空気がたくさん入るほど波模様ができやすくなります。ラクトアイスやアイスミルクのほうが、よりキレイな波模様が出やすくなるのです。
とはいえ、今回は「アイスクリーム」のおいしい撮り方ですから、種類別アイスクリームで撮影していきます。
アイスクリームをおいしく見せるためには、器に「こんもり」「ふわっと」盛らなくてはなりません。アイスクリームをすくうためのディッシャーやスクレーパー、スプーンなどを、大小のサイズでそろえましょう。ホームセンターやキッチンツールを扱うショップなどで手に入ります。
アイスクリームの温度は−18℃前後がおすすめ。これより高い温度だと軟らかすぎ、低い温度だと硬すぎてしまいます。口に入れたときの温度は−5〜10℃ぐらいのことが多く、そのほうが口溶けもいいのですが撮影には軟らかすぎ。食べておいしい温度と撮っておいしく見える温度とは、違いがあるのです。
できれば1日以上前から冷凍庫に入れ、中心部とその周りなどアイス全体が均一の温度に保てるようにしておきましょう。
アイスクリームに直接触れる道具類は、ドライアイスで冷やしてから使います。
アイスクリームを盛り付けていきます。まずは、核となるアイスをすくうため、小さめのスプーンやスクレーパーでひとすくい。思い切りよく、さっとすくうのがコツです。ここでためらうと、キレイな波模様ができません。
すくったアイスクリームは、器に盛る前にいったんアクリル板などの上で成形します。手の温度を伝えないよう、竹串と軍手を活用して。
最初に小さくすくってから、だんだん大きくすくって重ねていくとキレイなアイスの山ができます。
この状態でいったん冷凍庫に入れ、3分ほど冷やしておきます。あまり冷やしすぎるとアイスクリームの温度が低くなってしまい、外に出したときに霜が付いてしまうので要注意。
冷やし方が足りないと、器に盛ったときにすぐに軟らかくなってしまいます。器自体も冷やしておくこと、器に移したらすぐに撮影することが大切です。
準備ができたら、いよいよ撮影です。
先ほど、アクリル板の上に形作ったアイスクリームを、器に盛りましょう。竹串を使って、形を壊さないようにそっと移してください。
カメラの前にアイスクリームをセットしたら、すぐに撮影しましょう。重ねた山の形や波模様など、「いちばん美しく見える」角度を見つけることがポイントです。
ここからは時間との勝負。アイスクリームが溶けきらないうちに早めにシャッターを切っていきましょう。
アイスクリームが重なったところに、ストローでふーっと息を吹きかけます。アイスの周りが少し溶けてきたときがベストショットが撮れるタイミング。
少しだけ溶けたアイスクリームのビジュアルが、口に入れたときのとろりとした食感、冷たい甘さをしっかりと表現。「おいしそう!」と思わせる写真になりました。
アイスクリームのように温度で状態が変化しやすい食べ物の撮影は、
以下の点に注意しましょう。
5つのポイントに気をつけて、アイスクリームをおいしく撮影してください!
アイスクリーム撮影:宮原康弘(acube)
※宮原が撮影した動画作品もご覧になれます。詳しくはinfo@acube.jpへお問い合わせください。
プロセス撮影:秦和真(acube) テキスト:VISUAL SHIFT編集部
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amana visualでは、フォトグラファー、レタッチャー、CGクリエイター、ムービーディレクターをはじめとしたビジュアル制作に携わるクリエイターのポートフォリオや、個性にフィーチャーしたコンテンツを発信中。最新事例等も更新していきます。