「利便性と透明性がもたらす顧客主義の世界」

インフルエンサーマーケティングを牽引するポーランド発のindaHash。2018年5月に10拠点目となる東京にて事業をスタートした。世界中で登録しているインフルエンサー90万人以上、グローバルではコカ・コーラやマクドナルドなど、グローバルブランドと約2,000社の キャンペーン実績があり、世界No.1のプラットフォームとなっている(2018年11月現在)。2017年11月には約46億円のICOを成功させ、ますますの勢いを見せている同社は、今後のデジタルマーケティングをどう見るか。そのトレンドや今後の潮流をうかがった。

 

全世界で90万人以上。世界のインフルエンサーマーケティングをリード

– 2017年にICOを成功させますますの勢いが見られます。現在の状況を教えてください。

当社はindaHashアプリを介して企業の商品やサービスをInstagramなどのSNSで紹介する、またはブランドのニーズにあったコンテンツを提供するインフルエンサーと、企業・団体のフェアトレードを実現する仕組みを確立し、現在インフルエンサー数は全世界で90万人以上。コカコーラ、マクドナルド、ロレアルなどのキャンペーンを2,000件以上も実施してきました。

日本でもサービスを開始し、現在、多くのインフルエンサーが登録しています。ここ数カ月は1週間に1万人くらいのペースで伸びています。indaHashのインフルエンサーの特徴は、属性が多様であるところ。通常、インフルエンサーマーケティングというと女性が優位なイメージがありますが、indaHashでは男性が47%、女性が53%と、ほぼ半々であることや、フォロワーの幅も広いことが特徴として挙げられます。そのためビューティからファッション、自動車、飲料、消費財、航空会社など、さまざま領域で当社のサービスをご活用いただいています。

– 仮想通貨を発行した背景は?

仮想通貨を使用するとインフルエンサーに支払う際の手数料を最小に抑えることができます。そのため、マイクロインフルエンサーとのビジネスを可能にし、インフルエンサーはより多くの報酬を得ることができます。

– 日本ではまだキャッシュレスという文化が育っておらず、諸外国に比べて未成熟というイメージがあります。今後はそうした日本の文化も変化していくとお考えですか。

私はこの2、3年のうち、日本では「利便性」と「透明性」という言葉をキーワードに、どんどん変化が見られるだろうと考えています。

近年、消費者は“待てない体質”になっていると思います。たとえばオンラインショッピングで何かを購入し、それが自宅に届くまで2〜3日かかるだけで、「遅い!」と思ってしまう。Amazonで注文すれば翌日、早ければ当日に届きますからね。でも、10年くらい前はそんな感じもありませんでした。急速に生活周りのスピード感が速くなって、それに呼応して、“待てない人”が増えてきたのだろうと思います。

そのため今後、日本ではますます利便性が追求され、より便利で、よりパーソナライズされたサービスが展開されていくだろうと考えています。AIやテクノロジーを駆使しながら、無駄を省き、ダイレクトに個々の生活者へ届くサービスがあらゆる領域で開発されていくでしょう。

同時に、キャッシュレスという文化も日本で普及してくるのではないかと考えています。まだ日本は他国に比べて遅れていて、GDPにおける日本のキャッシュレス比率は約20%。約80%は現金が使われているということです。これは海外主要国と比べて大きく遅れ、米国や中国は50%前後ですし、スウェーデンに至っては90%に到達しています。インバウンド対応や現金貯蔵のコスト削減などを図るため、政府は2025年までにキャッシュレス比率を2倍に引き上げる目標を掲げていますから、日本でも少しずつキャッシュレス文化が広まるのではないでしょうか。

– そうなると、日本の利便性がますます高まるということですね。

利便性が加速する一方で、透明性も尊重されなければならないと考えています。ブロックチェーンがその例です。ブロックチェーンは外部から改ざんすることが難しく、非常に安全性が高い。ブロックチェーンというと仮想通貨の取引を記録する技術というイメージがありますが、国によっては土地の登記や投票などに活用しているところもあります。こうした技術が、今後、私たちの生活にもっと深く入り込んでくるのではないかと考えています。食べ物を例にとれば、生産者が誰で、どこから発送されて、どの流通経路を通り、賞味期限はいつまで、などの管理情報を見ることができ、企業は不正がしづらくなってきたということから今以上に企業のモラルや道徳も求められるでしょう。

 

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マーケットの主語が「企業」から「顧客」へ

– 変化していく時代に対応するため、求められるサービスや方向性は?

企業がマーケットを獲得する際、「規模」という視点はもはや、重要なキーとしては機能しなくなっています。一昔前なら、企業規模が大きくものをいい、マーケットを獲得するためにもっとも重要なファクターのひとつでした。しかし今後、マーケットを考える上で主語となるものは「企業」ではなく、「顧客」。その顧客と常に繋がっていられる仕組みを持つ企業が、マーケットを獲得する上で、大きな強みを発揮するのではないかと思います。

その仕組みのひとつがSNSです。というのも、現在、企業が個人個人とつながるためのプラットフォームはSNSが中心です。作ってからマーケティングを考えるプロダクトアウト型だけではなく、デジタル上から顧客の声を聞き 開発を行うマーケットイン型の企業も急増しています。このような背景からも、SNSがますます重要な役割を果たすようになるのではと考えています。

– マーケティングの方向性がよりパーソナルになるということですね。

一昔前の日本ではマス広告が絶大な力を持っていましたし、夕方6時にはお父さんが家へ帰って家族揃って夕食をとり、みんなでテレビをみて、同じCMに影響を受けました。しかし現在では家族形態もライフスタイルも多様化していますから、商材やサービスによってはすべての人に同じメッセージで同じ商品を示しても、あまり響かなくなってしまいました。デジタルマーケティングが活用され始めたころには「30代男性」などのようにセグメントし、戦略を考えることが一般化しましたが、今はそれですら間に合わなくなりました。

こうしたトレンドが強くなると、コミュニケーションの形式自体も変わり、SNSにおいては企業もアカウントを持っているユーザーの一人に過ぎなくなる。つまり、「企業が大きくて、生活者が小さい」という従来の関係性が崩れ、むしろ、消費者の声の方が大きなウエイトを占めるようになってきます。おのずとマーケティングだけではなく、“守り”と言われていたカスタマーケアなどの領域においても重要な施策が必要となるでしょうし、顧客とのあらゆる接点が何らかのプラットフォームを媒介にして繋がっていくのではないでしょうか。

– 自然と企業や企業人のあり方も変わりますね。

たとえばマクドナルドのように、新商品を命名するのも顧客による総選挙で行うなど、消費者巻き込み型のマーケティングがもっと普及するのではないでしょうか。先ほど、日本人は“待てない体質”になっているとお話ししましたが、こうした傾向はあらゆる面で見られるようになると思います。つまり従来のバリューチェーンだと、新商品を市場に出し、売り上げを検証して、なぜ売れなかったのかと分析し、さらに改良品を世の中に出すまで相当な時間が必要でした。しかし、SNSなどで顧客と常につながっていることができれば、消費者のニーズをタイムリーにキャッチすることが可能となり、これらの展開をもっとスピーディに行うことが可能になります。

これだけ競争が増し、荒波の中で生き抜かなければいけない社会においては、企業は短いスパンでトライアンドエラーを繰り返すことが必要になります。そのため、イノベーティブなチャレンジを恐れない、能動的な人材がますます求められるようになるでしょう。世の中の変化に迅速に対応し、より深く消費者を理解する。前例主義に陥らず、ゼロからイチを生み出してストーリーを紡いでいく。そうした能力が今以上に必要とされるのではないでしょうか。

 

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– 最後に、御社の今後の展開について教えてください。

2018年10月から新しくインフルエンサーと企業のマッチングをもっと精緻化するサービスを開始しました。たとえばこれまでは「ビューティ領域」「トラベル領域」など大項目でインフルエンサーを活用してきましたが、Amazon AIとのインテグレートを行い、インフルエンサーの過去の投稿を分析することで、「マスカラの投稿が多い」「リップの投稿が多い」など、より細かくインフルエンサーの傾向を分類できるようになりました。これにより、もっと個別のプロダクトに寄ったキャンペーン展開が可能になります。

もうひとつ、同月に「indaHash Deal」というサービスを始めました。これまではインフルエンサーへの報酬は、現金と仮想通貨の2種類でしたが、これらに続きブランドプロダクトやサービスのディスカウントなどで報酬をお支払いするというサービスです。「キャンペーンで商品を告知してくれてありがとうございました」で一時的な関係性を終えるのではなく、実際に商品のユーザーになってもらい、リアルなファンを増やす。こうしたマーケットプレイスの働きを強めながら、これからもより本質的なインフルエンサーマーケティングを実現していきたいと思います。

 

この記事は、Growth Hack Japanより、amanaのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。

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