最近、世界ではインクルーシブ・マーケティング運動が起きています。裏返すと、この活動は自社の排外主義を押し売りし、特定層(エリート層)のユーザーにしかメッセージを送らないブランドはチャンスを失っていくということでもあります。
先日、ThirdLoveのCEOであるHeidi Zak氏がNew York Timesに寄稿した書簡(Victoria’s Secretの最高マーケティング責任者で「プラスサイズの女性やトランスジェンダーはショーには出さない。ショーはファンタジーだから」とVogueに述べたことを批判する文章)は、インクルージョンに関して指摘したものです。
「私たちは、女性の体型、体重、年齢、民族、性同一性、性的指向を問わず、あらゆる女性のためにブランドを確立させるべきです。このことを画期的な考えだと見なしてはいけません。むしろ標準とすべきことです」と彼女は執筆しました。「インクルージョンをトレンドと主張するのはもうやめましょう」。
これをトレンドと呼ぶのは、事態を単純化しただけです。現代の消費者にとってインクルージョンがこれまでにないほど重要なことは疑いようがなく、ThirdLoveなどの一部のブランドはこの運動に参加することで多くの肯定的なアーンドメディアと忠実なファンを集めています。「世界中の人々にコカ・コーラを買ってあげたい」という象徴的なCoca-Colaのコマーシャルを知っていますか? この概念は新しいものではありませんが、こうした運動が活発になったのはごく最近のことでした。
その理由は、ブランドが消費者の声に耳を傾け、彼らの価値観と足並みを揃えるようになってきたからです。2018年に実施したAccenture Holiday Shopping調査で、70%のミレニアル世代が、プロモーションやオファーでインクルージョンやダイバーシティを表明した企業を選ぶ傾向があるとわかりました。そして、コンテンツマーケティングで自社の価値観を示しているのは、多くの場合が機知に富むD2C(直販)ブランドです。
「私たちは、何らかの形で立場を表明し、世界をより良い場所にしようと取り組み、排外主義ではなくインクルージョンを重視するブランドを多くの女性が受け入れるさまを目の当たりにしてきました」とThirdLoveの最高クリエイティブ責任者であるRa’el Cohen氏は言います。親近感の高いアパレルブランド・ThirdLoveが多くの消費者に訴求して成長できたのは、女性の体型、体重、年齢、民族、性同一性、性的指向を問わず、すべての女性のためにブラジャーを作るというコアミッションがあったからです。30年前に機能していたものが現在機能しなくなった原因は、人々が自分たちの支持しているブランドに期待することが増えたからです。
「消費者は、非現実的な夢を売ってほしいという欲求を進化させ、自身がその夢の一部に感じたいと思っています」と彼女は述べます。「彼らは、販売している製品であろうと、マーケティングで描写されているモデルであろうと、支持するブランドの中で自分自身を投影したいのです」。
ブランドはその認識を理解しつつありますが、多様なイメージを採用することに関しては、まだ成長の余地があります。実際に米国のマーケティング担当者の91%以上が、やるべきことはまだ残っていると回答しています。しかしCohen氏は、物事は正しい方向に進んでいると前向きです。「多くのブランドが、この1年間でインクルージョンを採用し始めています。私たちは、同じような動きが今後も続くと予想しています」とCohen氏は話します。「これは長年待ち望まれていた動きでした」。
ここからは2019年をインクルージョン元年にしたいブランドに向けて、重要な戦略をいくつか紹介します。
四方八方に手を広げ、誰もが受け入れてくれるようなブランドになる必要はありません。しかし、ターゲットオーディエンス以外の人々にリーチする方法を考えることは、時間やコンテンツマーケティング予算の観点から見ても価値がある投資です。「私たちはターゲット層を重視してきましたが、それはマーケティングで誰かを除外しなければならないという意味ではありません」とCohen氏は語ります。同社は最近、「To Each、Her Own」キャンペーンで60代のモデルを起用しました。そのキャンペーンに対するミレニアル世代の反応はひときわ肯定的でした。「女性は、自分が直接的に含まれていなくても、ダイバーシティを重視し、十分なサービスを受けていないユーザー層に焦点を当てるブランドを尊重するのです」。
インスピレーションが欲しいときは、まず顧客基盤に目を向けてみましょう。あらゆる人に向けたマッチングアプリとしての地位を確立したBumbleは、女性に権限を付与してジェンダーの役割を打ち破り、最近ニューヨークで多様なユーザーを讃えるキャンペーンを立ち上げました。
同社はInstagramの専用ハンドル@FindThemOnBumble(彼らをBumbleで探してね)を立ち上げ、実在するユーザーを紹介しました。その説明文にはこう書かれています。「このページでは、5つの地区に住む刺激的な人々を紹介します。起業家も、ゲームチェンジャーも、ガラスの天井を打ち破る人もいます。デザイナーも、アーティストも、活動家もいます。シングルマザーやシングルファーザーもいます。移民や移民二世のアメリカ人もいます。多くの人が驚くべき逆境に打ち勝ってきたのです」。
Bumbleはキャンペーンの締めくくりに、ユーザーの近所・お気に入りのスポット・職場など地元に特化した広告を打ち出し、「最も刺激的なニューヨーカー」という名前のドキュメンタリーを制作しました。この短編動画は、InstagramとBumbleのウェブサイトで紹介されています。
インクルージョンはトレンドではなく運動だとCohen氏は述べます。「この運動を真摯に受け入れるには、ブランド自身が何者かを明確に示さなくてはなりません。上辺だけの策では効果は得られないでしょう」。Third Loveにとって、それは、モデルかモデルでないかを問わず、ソーシャルチャネルやブログであらゆる経歴・学歴・性的指向・年齢の女性を起用することを意味します。「この方法であれば、従来見過ごされてきたグループが声を上げることができます。すべての人にスポットライトを当てることは、進歩を遂げるための大きなステップです」とCohen氏は話します。
MicrosoftがXbox Adaptive Controller(障がい者向け拡張可能コントローラー)を製造・発売したことで、今までゲームをプレーできなかった幅広い障害を持つ人々がゲームを楽しめるようになりました。このデバイスは、製品の開発段階から障がい者が参加し、設計や製品の販売方法まで、すべての段階でインクルージョンを重視していました。
この製品が2018年夏に最初に発売されたとき、Microsoftは同社のコンテンツハブ「Story Labs」で、ターゲットである障がい者に関する長文記事を特集し、クリスマス向けコマーシャルでは「Reindeer Games」を発表しました。これは、症例が少ない遺伝性疾患を持つ友人が初めてビデオゲームをプレーする瞬間を見守る子どもたちを描いた、今季でもっとも感動的なCMのひとつになりました。
「広告のルーツは、『赤鼻のトナカイ』に登場するRudolphのストーリーです。人と違うことや困難だと思っていることが、実はチャンスでもあると伝えたかったのです」とMicrosoftのブランド・広告・調査担当コーポレートVPであるKathleen Hall氏はAdAgeに語っています。「私たちがどのような違いを持っていても、人々を結び付け、世の中を改善できるのが、テクノロジー本来のパワーです」。
2019年のコンテンツマーケティングカレンダーを作成するときに、「自分のブランドは十分にインクルーシブか?」と問いかけてみてください。そしてCohen氏はこう言います。「30年前に機能していたものが現在機能しなくなってしまったのは、人々が自分たちの支持するブランドに期待しているからです。この変化を認識しないブランドのリーダーは、重大なことを見落としているかもしれません」。
Dawn PapandreaはNewsCredの寄稿者です。
元記事「A Movement, Not a Trend: The Power of Inclusive Marketing」は2019年1月22日にInsights.newscred.comに掲載されました。
この記事はNewsCred BlogのDawn Papandreaが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。
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