これが最新のマーケティングトレンドだ! [デジタル・エンゲージメント vol.7]

テクノロジーライターの大谷和利さんによる、本コラム『デジタル・エンゲージメント』。毎回ひとつのブランドを取り上げ、マーケターたちが創造性を駆使して編み出したエンゲージメントを高めるための工夫を連載形式で紹介していますが、vol.7の今回は少し趣を変えて … 「これが最新のマーケティングトレンドだ!」と題し、大谷さんにマーケティングの世界的な潮流について解説していただきます。

 

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今回は、いつもの優れたコンテンツマーケティング例の解説から離れ、最新のマーケティングトレンドについて紹介する。テクノロジーとネットワークの発達によって、マーケティングの在り方も進化を続けているわけだが、世界的な潮流は、今、どのような動きを見せているのだろうか?

 

コンテンツマーケティングにあらずんばマーケティングにあらず

 

世界のマーケティングのトレンドは、すべてコンテンツマーケティングに向かっているといっても過言ではない。たとえば、マーケティング関連の著作で世界的に知られるセス・ゴーディンは、「(コンテンツマーケティングは)残された唯一のマーケティング手法」であるといい、同様に、「コンテンツマーケティングこそが現代におけるマーケティングそのもの」と考えるマーケターが増えている。

なぜ、そのような認識が生まれたかといえば、コンテンツマーケティングがブランドの確立と維持に直結し、消費者や顧客の信頼を得る手段として非常に効果的なためだ。この背景には、企業がモノやサービス、ソリューションを販売する立場から、顧客に寄り添い、顧客が得るバリューやメリットを最大化することによって、自社製品をナンバー1の選択肢として受け入れてもらおうとする思惑がある。

顧客は、企業のSNSやWebサイトを通じて発信される実用情報や知的好奇心に訴える情報、そして、シェアやリツイートなどを通じた再発信によって自らの承認欲求が満たせるコンテンツを重視する。したがって、企業はそうした情報の内容を充実させることはもちろん、その見せ方や発信の仕方、タイミングなどをコントロールすることによって、自らを、対象となるビジネス分野のリーダーあるいはエキスパートとして位置付けることができる。

事実、ミレニアル世代の90%が特定のブランドを選択する基準として「信頼できるかどうか、正統であるかどうか」を挙げる一方で、実際にその基準を満たしていると感じるブランドの割合は半分にも満たないと思う層が57%に達するとの調査結果もある。しかも、ユーザー生成コンテンツを信用するという割合は、企業自体のコンテンツに対するものより3倍も高いことが、同じ調査から明らかとなっている。

 

1. ミレニアム世代のブランド選択基準.jpg

2. 正統性を感じるブランドの割合.jpg

3. ユーザー生成コンテンツへの信頼.jpg

 

ともすれば、企業のマーケティング担当者にとってコンテンツの整備は余技と思われがちで、実のところ過去にはそのような時期もあった。しかし、今ではいかに優れたコンテンツを効果的に提供できるかがマーケターの重要な仕事の1つとなっている。そして、そのための戦力として、コンテンツのキュレーションや発信能力に長けた、編集畑の人材を強化する企業も出てきているのだ。

 

パーソナライズされた顧客体験の重要性

 

もちろん、企業の業種や業態が違えば、コンテンツのあり方も異なり、コンテンツマーケティングの戦略も同じものにはならない。しかし、1つ共通していえることは、顧客がパーソナライズされた体験を求めているということである。

言い方を変えれば、顧客(個人の消費者に限らず、B2B取引における担当者なども含まれる)は、企業が自分のことを理解し、それぞれのニーズや興味に応じたコンテンツが最小限の時間と手間で提示されることを期待している。

たとえば、消費者の75%は、自分の名前を把握し、過去の購買履歴からレコメンドしてくれる小売業者から商品を購入したいと考えており、同じく81%は、ブランドが自分のことをわかった上でアプローチすべきタイミングを心得て欲しいと感じ、74%は、Webサイトのコンテンツがパーソナライズされていないとフラストレーションを覚えるとの調査結果もある。

 

4. 自分を知る小売業者を好む.jpg

5. 顧客情報を把握してアプローチすべき.jpg

6. パーソナライズされていないとフラストレーション.jpg

 

そのため、パーソナライゼーションをいかに実現するかがマーケターにとっての重要課題となり、それを高いレベルで実現することが自社のコンテンツマーケティングの差別化につながっていく。

顧客の興味に応じた情報が最短時間で表示されるという意味では、検索エンジンによるサーチ結果、またはバナー広告やSNSのリンク、業種によりパンフレットやチラシの2次元バーコードからのアクセス流入の受け皿となるランディングページ(コンテンツマーケティングの元素表のLp)が、すでにその役割を最も端的に担う存在といえる。そのため、コンテンツを提供する側には、ランディングページの充実を図ると共に、そこへの流入元となる上記の要素をしっかり整備することが求められよう。

その上で、前述のように、特に若い顧客の間にユーザー生成コンテンツを信用する傾向があることを考えると、自社コンテンツをSNSやブログでいかに拡散してもらえるかを念頭に置いたマーケティング戦略の立案が重要となる。また、顧客の登録情報とコンテンツの閲覧履歴などから、個々のニーズに合わせて内容とカスタムリンク付きのニューズレターを生成して送ることも有効だ。

パーソナライズされたコンテンツをAIによって自動生成する試みはすでに始まっており、その実現にはそれなりの先行投資も必要だが、今後は、その動きが一段と加速してくることが予想される。そのため、企業のマーケティング担当者には、常にこの分野の動向を把握しておくことも求められる。

 

インタラクティブコンテンツの台頭

 

現代のマーケティング活動にとって、モバイルファーストの考え方は欠かせないが、次世代通信規格である5Gの導入と普及によって、その傾向はさらに強まってくる。具体的には、通信速度に関して現行の4G LTEの10~100倍もの高速化が期待され、ビデオやライブストリーミングを利用したコンテンツ提供が当たり前の存在になるのだ。

双方向の情報のやり取りも今まで以上に簡便かつスムーズに行えるようになることから、インタラクティブなコンテンツへの需要が高まり、プロモーション的な要素を含むゲームや、VR/ARコンテンツの提供なども、コンテンツマーケティングの要素の中に含まれてくることが容易に想像できる。すでに、コンテンツマーケターの66%が、Webページ内にインタラクティブな要素を盛り込むことによってコンバージョン率が上昇したと答えている調査結果もあり、その有効性は十分に立証されているからだ。

 

7. インタラクティブ要素でコンバージョン率アップ.jpg

 

たとえば、堅い業種と考えられている金融分野でもインタラクティブなコンテンツによって顧客のエンゲージメントを高めることに成功している企業はあり、手軽に財政状況のチェックができるオンラインクイズを提供する米投資信託大手のフィデリティなどが挙げられる。

 

8. フィデリティのインタラクティブ画面.jpg

 

つまり、コンテンツマーケティングで利用できる要素は意外なほど多彩で、これからますますそのバラエティが増え、他社が簡単には真似できない価値を提供できたところが競争を勝ち抜いていくことになる。

それだけにコンテンツの準備に手間と時間がかかり、企画や運用面でより高度な知識が必要となることも事実だが、その一方では、デジタル技術の進歩によって、様々なコンテンツの生成、編集、配信を容易にするツールも揃ってきている。自力で対応できるところはインハウスで対応しつつ、高度なコンテンツの手配や処理は信頼できる外部のプロにアウトソースして任せ、両者をバランスよく活用することで自社に最適なコンテンツマーケティング手法を確立することが、今、すべての企業に求められているといってよいだろう。

 

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大谷 和利(おおたに・かずとし)

テクノロジーライター、AssistOn取締役。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、スティーブ・ウォズニアックのインタビュー記事をはじめ、コンピュータ、カメラ、写真、デザイン、自転車分野の文筆活動を行うかたわら、製品開発のアドバイスなども行う。主な著書・監修書に『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)、『ICTことば辞典:250の重要キーワード』(共著。三省堂)、『ビジュアルシフト』(監修。宣伝会議)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(同文館出版)。主な訳書に『Apple Design日本語版』(AXIS)、『スティーブ・ジョブズの再臨』(毎日コミュニケーションズ)。

 

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