心理学を利用してコンテンツマーケティングを改善する方法

デザインとコンテンツは密接に結び付いています。そのため、紛らわしく、時代遅れで、魅力のないデザインは、コンテンツの効果を低減させてしまうことがあります。一方、強力なデザインは、より多くのコンバージョンとコンテンツの消費を促進します。

私は、コンテンツマーケティング担当者として、グローバル企業の自社ブログ、ニュースレター、コンテンツの配信先を最適化する手助けをしてきました。その過程で、自分がコンテンツマーケティングとウェブデザインの境界を越えていたことに気づいたのです。私は、新しく未知の領域である心理学に触れていたのです。

心理学と説得

心理学は、人間の行動に結びつく心理過程の研究です。それは、私たちの行動すべてに影響を及ぼします。既存のウェブサイトをより直感的なものにするにせよ、ユーザーの意思決定に合わせてデジタルエクスペリエンスを構築するにせよ、コンテンツマーケティング担当者やデザイナーにとって、心理的学な法則を理解するのは有益なことです。

心理学は、「ユーザーはなぜそのような行動を取るのか」「ユーザーに実行してもらいたい行動を促進するためのデザイン要素は何か」といった質問に答える手助けをしてくれます。しかし、心理学の法則は、主にマーケティング担当者の手が届かない学術研究・文献の領域にあるのです。

本題に入る前に注意事項があります。この記事では、ユーザーを説得することに焦点を当てた法則についていくつか説明しています。人を説得する法則には悪評もありますが(その理由も理解できますが)、それは本質的にネガティブな行動ではありません。良くも悪くも、単純に影響を与えるだけの方法だからです。『Design for the Mind: Seven Psychological Principles of Persuasive Design』の著者であるVictor S. Yocco氏は、次のように表現しています

「邪悪なパターンを利用することや、ユーザーがやりたくない行動を取るように騙すことは、説得ではありません。それはただの嫌な奴です」。

私が言いたかったのは、まさにこのことです。この記事は、説得について書いているわけではありません。ここで紹介するのは、ユーザーがすでに検討している行動を引き起こすための、コンテンツとデザインの説得力を高める法則、事例、およびベストプラクティスのコレクションです。心理学を理解し、読者を特定の行動にエンゲージさせ、適切なタイミングでコールトゥアクション(CTA)を生み出すことによって、コンバージョンを増やす方法を学びましょう。

精緻化見込みモデルをデザインに適用する

説得とは、私たちの生活のあらゆる側面にあるものです。企業は私たちに自社製品を購入してもらいたいと考えています。政治家は私たちの投票を望んでいます。そして、人々は自分のことを好きになってほしいと思っています。ウェブサイト、アプリ、コンテンツの配信先、その他のデジタル資産についても同じ考えが当てはまります。優れたデザインは、あなたが意図する方法で製品やコンテンツにエンゲージするようにユーザーを説得し、あなたの望む結果に誘導してくれるでしょう。

説得は言葉以上のものを含んでいます。デザインの美しさとユーザーエクスペリエンスによって、ウェブサイトやアプリケーションの説得力を高めることもできるのです。それらは、オーディエンスの態度を強化することもできますが、デジタルエクスペリエンスによって、ユーザーが当初予定していた行動を止めてしまう場合もあります。自社のコアメッセージに到達する前に、9回のポップアップ、長いページの読み込み時間、あるいは3ページもの免責条項があると、ユーザーはあなたが言いたいことを受け取る前にサイトを離れる可能性が高いです。物理的、視覚的、無形、いずれの要素であっても、ユーザーの気をそらせてしまうと、説得のプロセス全体が一時的に停止してしまう場合があるということです。

学者たちは、何十年にもわたって個人に対する説得の仕組みを説明しようと試みました。説得について語る際に最も頻繁に引用されるモデルのひとつ、精緻化見込みモデル(ELM)は、態度が行動を形成する仕組みについて説明しています。あなたのメッセージやデザインにELMの法則を組み込むことで、ユーザーの態度(つまり行動)に与える影響を最大化することができるのです。

中央ルートと周辺ルート

情報が提示されると、あるレベルの「精緻化」が起こります。何かを精緻化することは、その何かについて考える時間を取ることを意味します。たとえば、あなたが車を購入しなければならない場合、どの車が最適かを考えるのに多くの時間を費やしますよね。Googleで検索したり、友人と話をしたり、ディーラーを訪れたりするでしょう。ELMとは、「どの程度の確率や、どの程度のレベルで精緻化するか」ということ。精緻化のレベルによって、メッセージが中央ルートと周辺ルート、どちらの処理ルートを取るかが決まります。

  • 中央ルート処理とは、オーディエンスがメッセージに興味を持っていることを意味します。この場合、彼らはさらなる注意を払い、議論の質と強度を精査します。このように形成または強化された態度は、反論に対して抵抗力を持つと考えられています。
  • 周辺ルート処理は、より表面的なレベルで行われます。オーディエンスは、情報源の信頼性、視覚的なアピール、プレゼンテーション、食べ物・性別・ユーモアなどの誘惑といった副次的要因の影響を受け、メッセージ自体に注意を払わなくなります。このように形成または強化された態度は、あまり長続きせず反論を通じて変化し、継続的な強化が必要であると考えられています。

2つのルートの視点

中央ルート処理と周辺ルート処理の違い、そしてメッセージングとデザインが2つのルートにどのように対処できるかを説明するために、次の事例を見てみましょう。

新しいコンパクトカーを必要としている、2人の見込み顧客を想像してください。Abbyは、車の雑誌を頻繁に読む車の専門家です。Joeは車についてほとんど知識がありません。Joeはお手頃価格で優れたデザイン(彼はデザイン製品が大好きです)の高品質な車を見つけることに興味があります。どちらのユーザーも、ある程度のレベルの中央ルート処理(価格設定)を行いますが、車やメカニックに興味を持っているAbbyの方がメッセージに注意を払う可能性は高くなります。Abbyは車の詳細、スペック、比較情報を検索しています。彼女のプロセスは中央ルートを辿る可能性が高いでしょう。

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一方、Joeは新しいミニクーパーのモデルに決める前に、さまざまなサイトを調べています。彼は技術的な内容にあまり関心がありません。ウェブサイトでどのように車が紹介されているかを見るのが好きなのです。デザインにこだわる彼は、大きい画像とカスタマイズ可能なカラーコンビネーションに魅了されています。つまり、Joeは周辺ルートを辿っているのです。

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動機と能力

この事例から、次のような疑問が生まれます。中央ルート処理と高度な精緻化を促進するものは何だろう? どのようにすれば訪問者を中央ルートに誘導できるのでしょうか。研究者たちは、中央ルートへの移行に影響を及ぼす2つの主要要因は、動機と能力であることを見つけ出しました。

  • 動機は、多くの場合関連性により影響を受けます。トピックの影響を直接受けると感じるユーザーは、中央ルートを通じてメッセージを処理する可能性が高くなります。
  • 能力は単純明快な概念です。中央ルート処理が行われるためには、メッセージがオーディエンスの思考能力と一致していなければなりません。メッセージを処理する知能が不足している場合、それを批判的に評価することができず、周辺ルートを通じて処理してしまうのです。

あなたのコンテンツに関心を向けたいのであれば、より関連性が高く、理解しやすいコンテンツを作ってください。フォッグ式消費者行動モデルを使えば、動機と能力を結びつけることができます。

Fogg式消費者行動モデル:動機、能力、トリガー

BJ Fogg博士は、スタンフォード大学でPersuasive Technology Lab(説得的テクノロジー研究所)を設立し、行動設計に関する驚くべき研究を行ってきました。行動設計とは、心理学、デザイン(設計)、技術を融合し、望ましい行動に影響を与える体系的な方法です。

Fogg博士のモデルによると、行動が起こるためには動機、能力、トリガーの3つの要素が同時に起こらなければならないのです。これらの要素がひとつでも欠けていると、行動は起こりません。

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能力と動機は、行動を起こす際のトレードオフの関係(一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという関係)にあります。これは、行動モデルの曲線が表すものです。行動(例:サイトをチェックし、ボタンをクリックしてください)にエンゲージしてほしいとユーザーにお願いすれば、ユーザーが快く行動してくれるポイントが見えてくるでしょう。そのために私たちは、動機と能力をトリガーが成功するポイントまで高めてくれるコンテンツをデザインする必要があります。動機と能力が十分に高いレベルに達する前に、デザインがトリガー(コールトゥアクション)を提示すると、行動は起こりません。

あなたのコンテンツとデザインにおいて、3つの要素を高める方法は次のとおりです。

動機

動機を向上させる最も効果的な方法は、強力なメッセージを通じてあなたの商品とコンテンツがなぜオーディエンスに関連しているかを示すことです。ステータス、アーリーアクセス、権限、報酬といった複数の要因も、動機を高めることができます。Vitality(健康増進型)保険を例にとってみましょう。サイトにアクセスしたほとんどの人はすでに強い動機を持っており、アップルウォッチによる報酬が動機をさらに高めてくれます。

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能力

オーディエンスが理解できるように、あなたのメッセージを伝えましょう。能力を高めるには2つの方法があります。2つのうち難しい方法なのが、あなたのメッセージを理解できるように人々を訓練することです。簡単な(そして最良の)方法は簡易化することです。メッセージを簡易化することで、あなたが提供するものとそれを受け取る方法を容易にします。

これによって、重要なルールへと導かれます。最適化するものを選択しなければならない場合、動機よりも能力を選択してください。動機ではなく、簡易化のマスターになるのです。

Oscarのウェブサイトは、簡易化の完璧な例です。この健康保険会社は、複雑なトピックでもアクセスしやすくしています。Oscarのウェブサイトは能力を高め、中央ルートの推進を容易にしています。

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トリガー

トリガーがなければ、対象となる行動は起こりません。ときには、アラームが鳴るというように、トリガーが外的になる場合があります。また、トリガーは私たちの日課から生じる場合もあります。キッチンを通って歩くことは、冷蔵庫を開けるトリガーになるかもしれません。トリガーの概念にはさまざまな名前がついていますが、コンテンツマーケティング担当者は一般的にそれをコールトゥアクション(CTA)と呼んでいます。

ユーザーを行動へと促す望ましい方法は、BJ Fogg氏が言うように、「動機づけられたユーザーの経路にホットトリガーを配置する」ことです。外部トリガーのタイミングが内部トリガーに近づくにつれて、アソシエーション(関連付け)がより迅速に形成されます。通常、コンテンツやアプリケーションを通じたユーザーのエクスペリエンスが優れたものであった場合、内部トリガーが生まれます。アプリケーションによって継続的に報酬を得ると、アプリケーションを開くことを促すニーズとのアソシエーション(関連付け)が行われます。内部トリガーは内的な推進要因や思考であるため、それを測定することや頼ることはほとんど不可能です。プロダクトデザイナーが外部トリガーを好むのはそのためです。外部トリガーには、次のようなものがあります。

  • 電子メール
  • プッシュ通知(例:電子メールのサブスクリプション・ポップアップなど)
  • テキストメッセージ

これらのトリガーは、実行可能で、パーソナライズされ、タイムリーな場合に最も効果を発揮します。ユーザーが、行動を起こすことが可能で、そのように動機づけられているときにCTAを提示された場合、彼らがCTAを実行する可能性は高くなります。

Cialdiniの説得の法則

ここまでは、精緻化がどのように起きて、動機や、能力/簡易化、トリガーによって促進されるのかを見てきました。説得の専門家であるRobert B. Cialdini博士は、そこにもうひとつの要素を追加しています。私たちは情報過多の時代に生きているので、常にすべての情報を処理し、情報にもとづいて意思決定を行う時間が十分にあるわけではありません。そのため、私たちは自分の行動を判断するのに役立つシグナルを探しています。Cialdini博士は、これらのシグナルを「ショートカット」と呼んでいます。これらのショートカットをデザインとコンテンツで使用すれば、ユーザーが中央処理ルートを採用するのを促進することができます。

現状維持: 人々が新しいアイデアや行動の仕方を積極的に取り入れると言っても(あるいは彼らの行動がそのことを示唆していると言っても)、現状維持を好む方が一般的です。自社の製品やサービスが、コンフォートゾーンから抜け出すことを顧客に求める場合は、顧客がそれらを体験できるようにリスクのない仕組みを探求してください。Blue Apron、Plated、HelloFreshなどの食材宅配会社は、新規顧客に無料で食事を提供することで、そのリスクのない仕組みを体現しています。この戦術は誰にとっても魅力的ですが、新しい夕食のルーティンを試すのに気が進まない人たちにはさらに効果的なものになります。

相互利益: 人々は一般的に、見返りを求めずに自分のために何かをしてくれる人に恩義を感じます。簡単に言えば、あなたが顧客に与えるものが多くなればなるほど、彼らは喜んで還元してくれるということです。顧客に与えるものが予期せぬ割引か無料ギフトかどうかにかかわらず、見返りを求めないという考え方は期待を遥かに上回ります。一部のB2Bソフトウェア企業は、自動的に無料トライアルを延長したり、顧客に新製品の機能の独占的なアクセス権を付与したりすることによって、それを体現しています。たとえば、Freshbooksは、最初の試用後に購入しなかったユーザー宛に試用延長の電子メールを自動的に送信することで知られています。これはビッグロック・コンテンツマーケティング・モデルのコンセプトです。

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社会的証明と受容: 私たちは、自分とよく似た人々の意見やアイデアを大切にしており、自分と似た人々が行動を起こしたときに行動したいという強い衝動を感じます。社会的証明は、顧客のケーススタディ、口コミ、レビュー、社会的関与といった多くの形式があります。たとえばMarketingProfsは、この法則を新しいメンバーシップページに適用。600,000人以上のマーケティング担当者がサインアップしたことを紹介することで、読者にそのグループに参加するよう動機づけしています。

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希少性と見逃すことへの恐怖(FOMO): 何かの不足に恐れを抱いたとき、私たちは行動(それがなくなる前に購入、備蓄、または経験すること)せざるを得ないと感じます。これは、長年マーケティング担当者が行動を駆り立てるのに使用してきた、驚くほど強力な心理的学な法則です。期間限定タイムセールを利用したり、消費者に彼らの友人が何を購入しているかを示したりすることによって、購入に対する切迫感を生み出すことができます。Amazonのタイムセールが、その最たる例です。このタイムセールは、希少性(出品数は多いが、各アイテムの数量は少ない)とFOMO(時間はあるが、見逃す可能性も高い)の両方に当てはまります。航空会社が特定の価格帯の空席数を示すこともそれと同じです。

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結論

これらの法則に細心の注意を払い、全容を学んだうえで、あなたのコンテンツハブ、アプリ、ランディングページに適用してください。これらを適切に組み込むと、時間の経過とともにコンバージョンが確実に増えることでしょう。

Giuseppe Caltabianoは、コンテンツマーケティングとデジタルマーケティングに関する基調講演家および執筆家です。彼のブログ「国境を越えたコンテンツマーケティング」では、グローバルコンテンツマーケティングに関する記事をご覧いただけます。

元記事「How to Use Psychology to Improve Content Marketing」は2018年1月2日にInsights.newscred.comに掲載されました。

この記事はNewsCred BlogのGiuseppe Caltabianoが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

また、日本におけるNewsCredパブリッシャーネットワークに関してはNewsCred by amanaまでお問い合わせください。

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