機能するオウンドメディア【後編】オウンドメディアの正しい作り方

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EUGENE MYMRIN/GETTY IMAGES

多くの企業が注目しているオウンドメディア。企業からの「オウンドメディアを作りたい」「オウンドメディアを改善したい」という相談が増えている今、どのように構築し運営していくといいのでしょうか。【前編】に続き、アマナにおいてエディトリアルを担当する、編集者/コンテンツディレクターのタジリケイスケに話を聞きました。

編集者が考えるオウンドメディアの始め方

――【前編】は、「なぜ、企業にとってオウンドメディアが必要なのか?」についての解説でした。今回は実践編ということで「オウンドメディアの正しい作り方」を聞きたいと思います。オウンドメディアを作る際、最初に行うべきことを教えてください。

タジリ:まずは目的の優先順位を明確にすることです。会社や事業の認知を上げたいのか、コアなファンを増やしたいのか、リードを獲得していきたいのか、リクルート活動に生かしたいのか。中には、こうしたさまざまな目的を全部叶えたいという企業もいるでしょう。でもオウンドメディアは魔法の箱ではありません。すべてをすぐに実現できるわけではないということを、最初に意識する必要があると思います。

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タジリケイスケ

株式会社アマナの編集者・コンテンツディレクター。多摩美術大学卒業後、クリエイティブエージェンシーを経て、編集の視点で企業ブランディングからコンテンツ戦略まで手掛けるクリエイティブ集団、株式会社TOILを設立。2017年より、株式会社アマナにてメディアディレクション、イベント企画・ファシリテーションを行う。また、多数のオウンドメディアの編集長/コンテンツディレクターとしても活動している。

撮影:ソンジン(アマナ)

――優先順位をつけるコツはありますか? たとえば、経営層からオウンドメディアを作るよう指示された現場の担当者の中には、そもそも優先順位がつけられずに困っているケースもありそうです。

タジリ:実際、そういうご担当者は少なくないと思います。そんな場合は視点を変えて、そのオウンドメディアで何を達成すれば社内で評価されるかを考えてみるといいかもしれません。

――目的ではなく成果を見定めるということでしょうか?

タジリ:その通りです。月間10PVを達成するでもいいし、リードを何件獲得するとかでもいい。それが本質的な成果でないのは承知の上で、とにかくコンテンツを作って発信することによって、どんな価値を生み出したいのかを明確にするところから始めてみるのも選択肢の1つだと思います。

機能するオウンドメディアにするために、欠かせない4つの要素

――オウンドメディアに正しい作り方はあるのでしょうか?

タジリ:オウンドメディアを有効に機能させるためには、4つの欠かせない要素があると考えています。

1.メディアストラテジー

2.編集体制

3.コンテンツ制作とメディア運用

4.定量的・定性的分析

です。これをしっかり押さえておけば、間違った方向に進むことは避けられると思います。これらの要素をさらに細分化してまとめたのが、こちらの図です。

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――準備段階でやるべきこと、運用段階で気をつけるべきことが明確に示されていますね。

タジリ:ここに挙げているのはどれもオウンドメディアに不可欠で、全部網羅することが重要です。というのも、メディアは継続してこそ価値を発揮するので、1つ欠けているだけで機能しなくなるからでます。予算や体制は有限なので、できる範囲で……ということになりますが、リソースを割けない要素がある場合も、しっかり検討した上で判断することが大切です。

――オウンドメディアを作る際に陥りがちな失敗例があれば教えてください。

タジリ:課題になりやすいのは、編集体制の構築だと思います。メディアを作る=情報を発信し続けることになるわけですが、その大変さをよく理解しないままスタートしたせいで、記事を継続してアップできる体制をそもそも整えられていなかったり、コンテンツ制作を外注したもののクオリティのコントロールやマネジメントができずに困っていたり、というケースをよく見かけます。

――それに関して何かよい対応策はありますか?

タジリ:編集体制にしろ、コンテンツにしろ、継続して作ることのできる体制や予算を確保し、結果を分析し続けることです。基本的な話ですが、それができないメディアは失敗します。そして結果によっては、初期設定の見直しや変更を速やかに行う。そうやってPDCAを効果的に回していくことで、前述のような課題は避けられるでしょう。PVなどは測定しても、編集体制や企画の見直しまではなかなか手が回らないのか、おざなりになっていることも多いので、ぜひ意識してみてください。

自走できるオウンドメディアを目指して

――オウンドメディアの構築と聞くと、どうしてもコンテンツ制作にばかり注目しがちでしたが、その前にも後にも大事なことがあるとよくわかりました。他に気をつけておくべきポイントはありますか?

タジリ:こうしたプロジェクトは、最初から担当した人がいちばん熱量を持って推進しているものです。そのため、立ち上げ当時の担当者が異動してしまうと、せっかく培ったノウハウがまったく引き継がれない、いわゆる属人化によるリスクが生じてしまいます。コントロールがきかなくなって徐々に社内承認が降りなくなり、最後は予算も圧縮されて終焉を迎えるといったことも簡単に起こりうるので注意が必要です。

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EUGENE MYMRIN/GETTY IMAGES

――企業には、属人化を避けると同時に、一度スタートしたら「続ける覚悟」も持ってもらいたいということですね。確かにこれは外部のアドバイザリーでどうにかできる話ではなさそうです。

タジリ:そうなんです。ただそこを全部企業任せにするというのも無責任だと思う気持ちがあって、ノウハウがちゃんと企業の側に蓄積されていくような仕組みを模索しているところです。そうやって伴走者がいなくなった後も、きちんと自走できるメディアになるようサポートしていければと考えています。

――オウンドメディア作りで日々、頭を悩ませている担当者の方たちへアドバイスをお願いします。

タジリ:すぐに結果を求めようとする気持ちはわかりますが、メディアというのは形ができて読者の信頼を得たブランドになるまでに相当の時間を要するものです。発信したことが信用してもらえないというのも、決して珍しいことではありません。まずは、とにかく続けてみてください。信頼を得るのが難しいことに変わりはないけれど、続けていけばボディーブローのようにいつかは伝わります。それは信じて継続していくしかありません。一度やると決めたら、簡単にやめたりしない。ぜひ企業の皆さんには「続ける覚悟」をもって、オウンドメディア作りに臨んでいただけたらと思います。

取材・文:石川遍
AD:中村圭佑

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