BtoB企業が知っておきたい、メタバース時代における3DCG活用法【前編】

メタバースにおいて、インタラクティブで豊かなコミュニケーションを実現するカギを握る、3DCGデータ。あらゆるデータを3DCGデータアセットとして社内で整理しておくことで、実は、業務効率化や社内のナレッジ継承にも役立てることができます。BtoB企業こそ学んでおきたい、3DCGデータの効果的かつ効率的な活用法について、アマナでビジュアルコンサルティングチームを率いる堀口高士が、注目事例を交えて解説します。

来るべきメタバース時代に向けて

コロナ禍で高まったリモートニーズによりバーチャルコミュニケーションが広く普及し、日々のコミュニケーション手段や選択肢が増えたと実感している方も多いのではないでしょうか。本格的なアフターコロナを迎え、リアルな場での交流が戻ってきた今でも、バーチャルコミュニケーションは進化の一途をたどっています。

メタバースという概念もその流れの中にありますが、物理的な制約を超えて双方向のコミュニケーションを実現するものであり、企業のコミュニケーション活動における課題を解決する手段の一つになっていくことが予想されています。

例えば、コロナ禍でのリアルな商談機会の減少に対してバーチャルショールームを制作したり、リモートワーク環境における社員の交流を促すためのバーチャルオフィスを立ち上げるなど、コロナ禍で表出した課題に対してアプローチを試みた経験のある読者の方もいらっしゃるかもしれません。

今はこうした目先の課題に対する取り組みが目立ちますが、少子高齢化が進みマーケットが縮小していく日本において、物理的距離や言語を超えたバーチャルでのコミュニケーションは、この先より有用かつ必須の手段になっていくでしょう。

バーチャル空間でのコミュニケーションを促していくためには、そこでやり取りされるあらゆる情報を、価値を持った状態(=コンテンツ)に仕立てる必要があります。そこで3DCGは非常に重要な役割を担うのです。また、サステナブルな企業活動を推進するためにも、実は多くの企業が3DCG技術を活用し始めています。このあたりについては、後編で事例を交えながら詳しく解説します。

3DCG技術の活用により、どのような可能性が広がるのか。今回の記事シリーズ(前編・後編)では、特にBtoB領域における注目事例を紹介しながら、それらの取り組みから見えてくる未来像もあわせて共有します。

没入感ある体験を支える、3DCG技術進化の現在地

そもそも現実世界は立体空間(=3D)であることから、バーチャル空間においても情報を3Dで表現した方が、没入感の高い体験を提供できることは明らかです。

今までは、データ容量が大きく重い3Dデータをシステム上に実装することは非常に困難でしたが、アプリケーションやデバイス、ネットワーク環境の進化によって、美しいグラフィックを描きつつも、高い操作性を実現したコンテンツが増えてきています。さらに、3DCG制作ツールの一般化によってCGを扱える人材も増えており、メタバース領域に留まらず、企業のDX推進においても、大きく寄与する可能性を秘めています。

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バーチャル体験の価値を向上させるカギとなる、3DCG発展の歴史

ここからは、3DCGを活用してコミュニケーション課題に取り組んでいるBtoB企業の事例をいくつか挙げながら、現在地への解像度を上げていきたいと思います。

事例 ①:精度の高いシミュレーターを活用し、商談のDXを推進

冒頭でも少し触れましたが、リアルとバーチャルを融合させた顧客体験を提供し、商談のかたちをアップデートしているBtoB企業が少しずつ出てきています。

フジテックは、エレベーターの完成イメージを簡単に作成できる「XIOR(エクシオール)デザインシミュレーター」を開発。これまでは主にカタログや図面をもとに商談が進められていましたが、このシミュレーター導入以降は、定員や仕様、パーツなどを選択することで完成イメージを詳細かつスピーディに顧客と共有できるようになりました。各所のショールームに顧客が来場しなくても、このシュミレーターをもとに商談を進めることができ、商談のDXにもつながっているといいます。

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“動くショールーム”をイメージし、アマナで制作を手掛けた「XIOR(エクシオール)デザインシミュレーター」は、色やパーツを選択すると即時にイメージを表示することができる。右端の乗車シミュレーションでは、定員数に対してさまざまな人数でシミュレーションできる(車椅子で乗車した場合など含む)ほか、PCでアングルを操作しながら四方八方から確認できる。チュートリアル動画はこちら

PCでの閲覧のほか、VRにも対応することで、例えば「15人定員のエレベーターで、10人がすでに乗車している状態のところに自分が乗車した場合、前後左右の人との距離感はどう感じるか」などもVRで体感することができるようになっています。
実際の商談の際には、セールス担当が顧客訪問の際にVRのヘッドマウントディスプレイを持参し、訪問先でセールス担当がデザインシミュレーターを操作しながら、仕様やパーツを選択してカスタマイズ。顧客の要望内容をVRで確認してもらいながら、商談を進めているそう。さらに、デザインシミュレーターと生産システムを連携させ、シミュレーター上に保存した設定内容から、スムーズに生産に取り掛かれるようにすることで、商談~受注までの流れを効率化しています。
このように、VRでの顧客体験に双方向性をもたせられると、豊かなブランド体験の中で3DCGを活用して製品を疑似体験させながら、営業活動のDXも同時に推進することができます。BtoB企業においても、メタバースの本質的な価値を捉えることができれば、ビジネス拡張の可能性は拡がりそうです。

事例 ②:目に見えない効果効能をわかりやすく伝える、3DCG映像

極小の製品の内部構造を見せたり、製品の効果効能のような「見えないものを可視化する」技術と表現は、CGの最も得意とする領域です。

事例を1つ紹介します。こちらは、歯科医療機器を扱うナカニシの「Ti-Max Z series」の製品紹介映像です。

(NSK Dental / NSK ナカニシ 公式 Youtubeチャンネルより)

断面の構造をビジュアライズすることで、肉眼では確認しづらい製品の精緻なつくりを伝えることができます。製品の耐久性の高さを示すうえでも、数字のエビデンスと構造のビジュアルを組み合わせて見せることで、説得力ある映像になっています。

こうした、一言で説明しづらいBtoB企業の技術や製品の魅力は、実は可視化されないまま眠っているケースが多いのです。事実に基づきながらも創造性の高い表現が求められるため、難易度は高いですが、バーチャル世界との相性が非常に良い。例えば、ブランドや企業の世界観を表現したバーチャル空間の中で、このように製品の詳細をCGで豊かに表現できると、ミクロの世界に入り込むような没入感の高い体験の中で、わかりやすく機能の優位性を説明することができます。

ブランドの世界観のCG化、製品のCG化に加え、目に見えない機能のCG化にも取り組めると、バーチャル世界においての顧客体験はかなり豊かなものになってきます。


前編では主に、豊かな表現や顧客体験を実現する3DCG技術について見てきました。続く後編では、コンテンツマネジメントや社内のナレッジ継承に役立つ3DCG活用法について紹介します。

文:堀口高士(amana)
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※こちらの記事は、日本BtoB広告協会発行の『BtoBコミュニケーション』2023年3月号に堀口が寄稿した内容をもとに、一部編集を加えて掲載しています。

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