米国ワシントンD.C.に本社を構え、コンテンツスタジオとしてグローバルに事業を展開するIndustry Diveから、2023年の消費者行動に関する5つの洞察を紹介します。
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2004年のことですが、当時、広告代理店サーチ&サーチのCEOであったケビン・ロバーツ氏は、「Loyalty Beyond Reason(理屈を超えた忠誠心)」を刺激するブランドを表す 「Lovemarks(ラブマークス) 」という言葉を生み出しました。ロバーツ氏は、「Lovemarksの力は、顧客を単なる統計データやマーケティングターゲットとしてではなく、一人ひとり違った個性を持つ感情豊かな人間として扱うこと」にあると言います。また、ブランドと消費者の間に愛と尊敬に基づいた関係性を生み出すのは、神秘性、官能性、親密さ、の3つの要素がカギになると述べています。
Lovemarksは、これらの要素を使って顧客ロイヤルティを刺激しました。これらのブランドを支えるマーケティング担当者は、心理学の基本原則を活用し、消費者の気持ちに影響を与えています。
「行動心理学の原則を応用することで、顧客とのやりとりの質を向上させ、顧客中心の組織としてブランド認知を高めることができる。」
マーケターも同様の戦略で消費者の行動に影響を与えることができます。購買心理学をベースにした以下の5つの戦術は、コンバージョンを増やし、顧客が長期にわたって滞在するよう促すことが証明されているのです。
FOMO(フォーモ:取り逃したり、取り残されたりすることに対する不安を表す心理学用語)は古くからある概念ですが、今また注目されるワードになってきました。私たちが普段、何かを買い逃してしまうことを「恐怖」だととらえるのは、それが希少なものだからと認識しているからです。それはつまり、私たちは「手に入らないもの」を熱狂的に欲しがるのです。
マーケティングでは、「希少性(現実と暗示の両方)」を使って緊急性を演出します。「期間限定」や「残りわずか」といったフレーズは、「早く買わないとなくなってしまう!」という緊急感を与え、希少なものを選択することが何より大事だとの意識を植え付けるのです。ウェビナーの登録であれリップグロスであれ、提供するものが数量限定であれば、顧客はよりそれを求めるようになります。需要に供給が答える形です。
「欠乏は私たちの選択肢に優先順位を付け、私たちをより効率的に動かすことができる。」
— シャハラム・ヘシュマット博士、 サイコロジー・トゥデイ誌
2023年にFOMOを効果的に活用した事例
アメリカ心理学会の研究 によると、手に入りにくいと思った商品は、より価値があり、よりおいしく、より好ましいと感じる結果が出ています。
●Starbucksの例
スターバックス は 過去20年間、「パンプキン スパイス ラテ」と「赤いホリデーカップ」という2つのキラーアイテムで、希少性を利用した戦略を仕掛けてきました。これらの商品は期間限定で販売され、その機会を逃すと来年まで手に入れることはできません。
●Simple Modernの例
Simple Modernでは、季節限定デザインのタンブラーが売り切れることがよくあります。ハーベスト・コレクションを宣伝するインスタグラムの投稿で「LIMITED EDITION」というフレーズを使い、「パンプキン スパイス ラテ」と販売時期が重なることを匂わせたところ、このコレクションは一部のファンがそのことを知る前に完売しました。
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さらにFOMOが効果的な例として、Simple ModernのTrek Tumblrが人気である理由の1つに、TikTokで有名なStanley Quencherが常に売り切れているという事実が挙げられます。
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[アンカリング効果で価値を生み出す]
希少性が顧客の欲求を引き出すだけでなく、先に基準値(アンカー)を提供することで、商品の価値を顧客に認識させます。
割引はコンバージョンを最大2%増加させることができる。
次のように希少性とアンカリング効果を組み合わせることで、切迫感を作り出すことができます。
おそらく購買心理学の分野で最も広く参照されている概念は、マズローの欲求階層です。
画像訳:(マズローの欲求階層理論を図示したピラミッド)上から順に
自己実現の欲求: 自分の可能性を最大限に発揮すること、創造的活動を含む
承認の欲求: 名声、達成感
社会的欲求(帰属と愛の欲求): 親密な関係、友人
安全の欲求: 安全、保障
生理的欲求: 食べ物、水、暖かさ、休息
第3階層の「社会的欲求」によると、人は基本的欲求が満たされると、仲間からの承認を求めるようになると言われています。 1962年のキャンディッド・カメラのエレベーター実験で、エレベーターに乗り合わせた乗客が周りの人の行動を真似たことからもわかるように、私たちは自分がグループの一員であることを示すために他人の行動を真似します。
マーケティングでは、これをソーシャルプルーフ(社会的証明)と呼びます。過去の成功体験は社会的証明として広く使われている形ですが、最も効果的な推薦は家族や友人からのものです。 ニールセンによると、消費者は他のどの広告方法よりもアーンドメディアを信頼しています。
2023年のソーシャルプルーフを効果的に活用した事例
ブランドは、アフィリエイトプログラムやアンバサダープログラムを通じて、強力な社会的証明を生み出すことができます。これらのプログラムから生み出されるような紹介は、他のチャネルの平均の4倍のコンバージョン率 を誇ります。
●Bumbleの例
Bumbleのハニー・アンバサダー・プログラムは、学生に報酬を提供し、彼らを通じて自社の理念や目標を推進することで、キャンパス・コミュニティを向上させます。また、参加した学生たちは、イベントの企画、コンテンツの作成、グッズの配布、地元企業や学生団体との提携を通じて、貴重なマーケティング経験を積むことができます。
●Jdateの例
Jdateはユダヤ系独身者向けの出会い系アプリで、アフィリエイトプログラムのコンバージョン率は平均より高く、有料登録1件につき2ドルが支払われるそうです。そして、オンラインで始まったユダヤ人の結婚の 52% が、 Jdate に起因しているとされています。
Jdateはアフィリエイト・プログラムを通じて、ブランド・ロイヤリストのコミュニティを形成しています。
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[優良顧客との関係を築く]
優良な顧客は、自分たちが特別なグループの一員だと感じさせれば、友人や家族をあなたに紹介したいと思うでしょう。そうさせるためには、コンバージョンの高い次のような戦術を考えるのがおすすめです。
説得の主要な要因の1つであるレシプロシティ(互恵性)は、私たちの脳が、自分たちが得たものと同じだけのものをお返ししようする仕組みです。お金を払って購入した製品であれ、無償の贈り物であれ、私たちはその労力に対して何かお返しをしたいと考えてしまうのです。例えば、コンテンツマーケティングは、顧客のWebサイト訪問、被リンク、購入などの見返りとして、顧客に有益な情報を提供します。その結果、信頼が築かれ、ブランドの認知度が高まり、顧客との関係に付加価値が生まれます。そのためには、価値あるコンテンツの「ライブラリ」を時間をかけて作る必要があります。コンテンツ自体が直接コンバージョンを促すことは稀なことなのですから。
B2Bの平均コンバージョン率は1%未満。
多くの場合、コンバージョンを促すのは、十分に構築されたマーケティングファネルです。そして、コンテンツはその各段階を充実させるのに役立ちます。
2023年にレシプロシティを効果的に活用した事例
●HubSpotの例
HubSpotは製品だけでなく、包括的な機能と広範な統合性により、インバウンドマーケティング分野で名声を築きました。何百ものダウンロード資料(別名リードマグネット)から毎年発行される「State of Marketing Report」に至るまで、HubSpotは自社が持つノウハウや戦略、その知識を惜しみなく共有することで、マーケティングを牽引するブランドとしての評判を確固たるものにしています。 世界120カ国に184,000を超える企業がHubSpotを採用しており、その効果を証明するために、毎年ROIレポートを発表しています。
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[見込み客をファネルの下に移動させるコミットメントを求めましょう]
顧客はあなたのブランドへの信頼が高まることで、メールアドレスなどの情報を自発的に提供する可能性が高まります。その信頼をより高めるには、以下のような購買心理学の原則を適用しましょう。
📚 関連コンテンツ: Why Your Business Can’t Afford to Go Dark on Content in an Economic Downturn
「単純接触効果」と呼ばれる心理学的概念を上手に使うと、ブランド認知度のコンバージョンが促されます。しかし残念ながら、2023年の単純接触効果は 2022 年ほどは進みませんでした。ほぼ全ての業界 (91%)で Google 広告からのコンバージョン率が下がり、全体の平均 CVR は 7.04% でした。レポートでは、クリック数が 3% 増加しているという通常の CTR の増加に基づいて、この傾向はインフレによるものであるとしています。
「…今日のデジタル環境では、ユーザーはコンバージョンに至る前に、複数のチャネルで貴社のビジネスとやり取りすることができます。つまり、他の戦略が検索ユーザーをコンバージョンに近づける一方で、検索広告は購入準備が整う前にファネルの上部にある検索ユーザーを捉えるのに役立つ可能性があります。」
– LOCALiQの2023年Google広告業界ベンチマークレポート
ただの単純接触でも、リターゲティングデータを使って繰り返し行えば、効果につながることがあります。Marketing and EconomicsのEuropean Journalによると、リターゲティングキャンペーンはコンバージョンを10%増加させ、さらにカゴ落ち(カート放置)対象者では、この数字は26%にまで上昇します。
リターゲティングに利用できる顧客行動には以下のようなものがあります。
2023年に単純接触を効果的に活用した事例
顧客にコンバージョンしてもらいたいのであれば、最初のタッチポイントで諦めてはいけません。何度も繰り返し、そしてその努力に見合ったものを提供しましょう。
●Petcoの例
Petcoは、過去の購入やその他の顧客の行動に基づいてリターゲティング広告を実施しています。もしあなたのFacebookが猫の写真や地元の猫レスキューからのシェアでいっぱいなら、Petcoはあたなをターゲットとして、猫のおもちゃ、フード、トイレ砂に関する広告を出しています。Petcoも、希少性のテクニックも一緒に活用していることに注目してください。「期間限定」の文言と反復的なターゲティングを組み合わせることで、ユーザーのクリックを促しています。
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[ロイヤルティとリテンションを高めるために感情を利用する]
顧客の性格、好み、趣味について知っていることを活用して、リターゲティング広告用の感情的なメッセージを作成しましょう。感情的な反応は、次のような強力な感情を引き起こします。
対面でのやりとりや製品の特徴など、複数の要因が顧客体験に影響を与えます。マッキンゼーは、 カスタマー・エクスペリエンスに影響を与える3つの主な要因を挙げています。
「商品だけでは消費者のロイヤルティはもはや保証されない。消費者は多くの場合、ブランドが提供する体験をそのブランドの主な差別化要因と考えている。」
— Deloitte
マーケティングチームがカスタマー・エクスペリエンスに影響を与えることができる領域には、以下のようなものがあります。
2023年にユーザビリティを効果的に活用した事例
●Sienaの例
Sienaのチャットプラットフォームは、AIを駆使して、カスタマーサービス・チームに感情豊かで人間らしい対話をもたらします。このプラットフォームは、レスポンスタイムを98%向上させながら、コンテキストと感情を理解します。
Sienaを使用すると、マーケティングチームはブランドの声、チャネル、顧客ベースに基づいてペルソナを作成します。言い換えれば、同社の AI チャットボットは、ブランドの声を伝え、ブランドの用語を使用する本物の人間のように聞こえます。Japan Crate、Kit*ch、Simple Modern などのブランドは、Siena の対応により顧客満足度が向上し、解決までの時間が短縮されたと報告しています。
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[使い慣れたデザイ パターンを使用して、ユーザーが期待するものを提供します]
グラフィック デザイナー、開発者、Webサイト管理者と協力して、サイト監査を実施します。サイトまたはアプリが、次のようなナビゲーション要素の配置に関する基準となるルールに従っているかどうかを評価します。
📚 関連コンテンツ: The Psychology of Colors in Content Marketing
購買心理学から消費者の行動について多くのことを学ぶことができますが、マーケティングメッセージがどの程度成果に繋がっているかを本当に知りたい場合は、データを確認する必要があります。
消費者が Web サイトにアクセスしているときに行う行動を追跡することで、消費者のニーズをより適切に満たすように方向を調整できます。次のような戦略を実施するようご検討ください。
📚 関連コンテンツ: “What I Wish I Knew Sooner:” Marketing Strategy Tips from Brand to Demand
元記事「The Psychology of Conversions: 5 Consumer Behavior Insights for 2023」は2023年9月19日にspringboardに掲載されました。
この記事は、IndustryDiveのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。
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