アマナには100人を超えるクリエイターが在籍しています。プランナー、フォトグラファー、ビデオグラファー、エディター、CGクリエイターなどさまざまな領域を担い、日々の仕事の中で企業や社会の課題に対してそのクリエイティビティを生かし、解決の道を模索しているのです。この連載では、アマナのクリエイターが1人ずつ登場。社会課題を解決するためにどのように動き、何を発信しようとしているのか、そのプロセスと思いを紹介します。
第7回に登場するのは、アマナでプロジェクトデザイナーを務める杉山諒(以下、杉山)です。企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画し、プランニングやファシリテーションを中心にプロジェクトを成功に導くべく活動しています。問題意識、仕事への携わり方について、杉山に聞きました。
――大学時代に始めたダブルダッチが仕事の原点だということですが、それはなぜですか。
杉山:2本の縄跳びを跳ぶ競技というスポーツ的な面はもちろんあるのですが、一方で3分間の競技時間の中で、どこで観客に心地よい気持ちになってもらうかという強弱を作る構成や、ステージ上のライティングなどの演出という面などがあるので、僕自身はダブルダッチは総合芸術だと捉えているんです。そして、構成や演出を準備するところから始まり、パフォーマンスを観客が評価してフィードバックするという構造、パフォーマンスごとにチーム全員のクリエイティビティを発揮しなければ良いものが生まれないということなど、チームを作り、準備するという過程のすべてが現在の仕事の原体験になっていると感じています。
※ダブルダッチ:縄跳びの一種。向かい合った2人の回し手が2本の縄を回し、その中で跳び手が技を交えながら跳ぶ。
――アマナに就職したのはなぜですか?
杉山:大学からそのまま就職をせずに、空間デザインの専門学校に通いました。ダブルダッチの「限られた時間の中で構成・演出を考える」という点などを「空間デザインである」と勝手に捉えていたこともあって、一度そこを追求してみようと思いました。勉強しながら、一人でプロジェクションマッピングを作ったりもして、そういうことを活かせる就職をしたいという思いを持つようになったところでアマナのFIGLAB(フィグラボ)に出会いました。
――アマナではどのようなことに携わってきましたか。
杉山:最初に配属されたFIGLABは「デジタルプロトタイピングラボ」という位置づけだったので、クライアント企業の課題に対して、技術的、実験的なアプローチで解決できることは何かということを探っていました。実験的なアプローチという点ではFIGLABのメンバーは全員がクリエイティビティを発揮している人たちで、それこそダブルダッチと同じ楽しさを感じていました。
一方で、プロトタイピング、実験的アプローチを扱っているが故に、ビジネスとしては基盤が不安定という課題がFIGLABにはありました。当然、部門に対してのプレッシャーは強まりやすくて、ただチームとしてのクリエイティビティを発揮してクライアントに応えるというだけでなく、部門を整えるという経験ができたのは大きかったように思います。
FIGALABの活動後、プロデューサー、プランナーを経験。その後、事業会社とコンサルティング会社の2社の出向を経験。企業のブランディングや新規事業開発、人材育成など幅広いプロジェクトに参画してきました。
――「クリエイティビティ」という言葉が繰り返し使われていますが、どのようなものだと考えていますか
杉山:まず仕事というものは、どんな仕事であっても、携わる人の思いと、スキルを掛け合わせた一種の表現活動であって、表現によって生まれる価値を他の人に提供する行動だと考えています。価値を生みだしているという意味では、誰もがクリエーターのはずです。その意味で「クリエイティビティ」というのは誰もが持っている価値創造の力と捉えています。
現代の社会は、モノや情報にあふれ、大量生産、大量消費の時代から、人と地球環境の持続可能性に注目が集まる時代。正解のあるタスクなど少なく、何が課題なのか、何を実行するべきなのか、自らも、組織も、一人ひとりの問いを見出すことが求められ、それはまさにクリエイティビティを発揮することが重要視されていると思っています。
私自身のキャリアとしては、 関わるメンバーやプロジェクトの幅が広がっても、成果に向かってクリエイティビティを発揮しているメンバーが多かったという点で恵まれていたと思います。ただ、中には自らの意思ではなく会社の都合で依頼があったり、機械的に仕事をしている人がいたりと、クリエイティビティを発揮するのが当たり前と言えない状態も経験してきました。
――クリエイティビティを発揮できない人がいるということですね
杉山:僕の課題意識というのはそこにあって、本質的には、人はだれでもクリエイティビティを持っていると思うんです。仕事をするにあたって相手を喜ばせたい、相手に答えたいという思いは誰もが持っているはずなのに、クリエイティビティを発揮できない人がそれなりにいる印象があります。ずっと「クリエイティビティを発揮するのが当たり前のチーム」にいることで、そういうチームや、チームの生み出すものの素晴らしさを知っているからこそ、「発揮できない」ということがとてももったいない、みんながクリエイティビティを発揮できればもっと素敵な世界になるのにと強く感じています。
先ほど、現代は問いを立てること、一人一人の答えを提示し、価値を生み出すことが重要と言いましたが、例えば経済産業省でも、「答えが明確でない問題や変化し続ける状況に対処し、新規事業を創出するために創造性が重要視されている」「組織内で個々人の創造性が生かしきれていない状況があるのではないか」と謳って創造性人材の育成支援ということに取り組んでいる動きもあります。
杉山:なぜクリエイティビティが発揮できないのだろうということは原因が1つという単純な話ではないと思いますが、持っているクリエイティビティを発揮していないのであれば、発揮できる環境を用意すればいいはずです。なので、参画するプロジェクトでは、僕は、たとえばプロジェクトのスタート段階から、全員に対して、この人はどういうことが得意なんだろうということを見つけて、得意な部分でのアイデアや意見を言ってもらったり、考えるモチベーションを持たせるためのコミュニケーションを意識しています。一人一人が力を発揮できるような環境を用意するのが、プロジェクトデザインをする上で重要な要素だと考えています。
さらには、個々のプロジェクトに留まらず、企業の競争力を高めるクリエイティブ人材育成プログラム「amana Creative Camp」というプログラムを企画運営したりもしています。
――それはどのようなプログラムなのでしょうか。
杉山:始めたきっかけは偶発的でした。プレゼンテーション資料がいつも素敵だとクライアントの担当者が評価してくれて、PowerPointを教えてくださいという要望をいただいたんです。じゃあ、資料をキレイに作ることではなくて、資料を作るための考え方から始めるレクチャーをパッケージ化したらサービスになるのではないかと考えたのが始まりです。
実際にスタートさせてみると、相談を寄せてくれる担当者ごとにさまざまな観点や要望があり、それに応えているうちに組織開発のサポートをするサービスに発展しました。実は、アマナ社内の属人的なノウハウを言語化、組織化することにも役立っていて、社内のクリエイティビティの発現にも一役買ったのではないかと自負しています。僕自身も、ファシリテーター、人材育成というような側面で成長できたと思います。
――amana Creative Campを通して、「誰もがクリエイティビティを発揮できる」世界を目指しているということですね。
杉山:もちろんそうですが、Creative Campで僕が講師として年間でどれくらいの人と接することができるのだろうと考えると、「世界」というにはあまりにも少ないですよね。だから、ワークショップではなく、クリエイティビティを発揮できる人が増えていく仕組みを作れないだろうかということを画策しています。
あとは、個人のクリエイティビティだけではなくて、チームや企業間のクリエイティビティのマッチング、もっと大きく業界間のクリエイティビティのマッチングみたいなこともできないだろうか、ということも考えています。amana Creative Campというのは教育的なアプローチだと思いますが、仕組み作りでクリエイティビティが発揮されるようになるなら、とても素敵な仕組みになると考えています。
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取材・文:秋山龍(合同会社ありおり)
編集:大橋智子(アマナ)
撮影:西浦乃安(アマナ)
AD:中村圭佑
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複雑で先行きの見えない世界においては、 人本来の持つ創造性を解き放ち、主体性を持ち躍動できる人材が求められます。amana Creative Campでは、 再現性を持ったクリエイティブナレッジを提供することで、個の創造性を高めると共に、企業の競争力を高める文化創りへと導きます。