新規事業開発に必要なクリエイティブスキルを身に付ける。NECが取り組んだ、若手育成のためのamana Creative Camp

最先端ICTにより、社会や産業のDXを推進するNEC。金融ソリューション事業部門のデジタルファイナンス統括部では、顔認証を用いた本人確認サービスやオンライン決済をはじめ、金融をデジタルの力で支えるための新規事業開発に取り組んでいます。

性能やスペックだけで競争優位を築くことが難しくなってきている時代において、イノベーティブなサービスを生み出すには、チームメンバー一人ひとりのクリエイティビティを引き出す必要がある。チームをリードする渡邊輝広さん(NEC・デジタルファイナンス統括部)はこのように考え、「amana Creative Camp」を導入しました。実際、どのような効果があったのでしょうか?導入の経緯も含め、渡邊さんにお話を伺いました。

技術だけでは、一歩先のサービスはつくれない

NECの中で、金融領域の顧客向けにITサービスを提供している金融ソリューション事業部門。その中にあるデジタルファイナンス統括部では、41名のメンバーが新規事業開発を担っています。メンバーの平均年齢は36.9歳。「一歩先の金融サービスを共創し、豊かな暮らしと進歩し続ける社会を実現する」というミッションを掲げ、若い社員が未来のNECの姿を創造し、さまざまなアイデアを出し合っています。

「元々、NECの金融事業領域の中には、3つのアカウント営業を担当する統括部と、システムを担当する金融システム統括部がありました。2022年の組織再編で、新たにデジタルファイナンス統括部が立ち上がり、新しいことをやっていこうというマインドを持ったメンバーが集まりました」(渡邊さん)。

デジタルファイナンス統括部でメンバーのマネジメントを担う渡邊輝広さんは、若きメンバーを率いていく中で、一つの課題を感じていたと言います。

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NEC 金融ソリューション事業部門 デジタルファイナンス統括部 ディレクターの渡邊輝広さん。
撮影:伊藤綾(アマナ)

「我々NECを含め、技術の会社はこれまで“性能”で勝負していました。お客様と話をする際も『このCPUのクロックは…』とか、『ディスク容量が…』と、まずスペックの話から入っていましたし、お客様からも性能の話を求められました。もちろん性能は大切ですが、果たしてそれだけでいいのだろうかとずっと考えていました」(渡邊さん)。

デジタルファイナンス統括部は、新規事業を通して世の中に新しい価値を提案する部署。NECが培ってきた技術や性能を生かすことはもちろん、メンバーそれぞれのクリエイティビティを発揮させ、新たな価値創出にあたる必要があるのではないか。プロダクトやサービスの形として表れるクリエイティビティもあれば、これまでにないビジネスモデルを構想することで発揮されるクリエイティビティもあるかもしれない。そこから生まれるオリジナリティこそがNECの強みになるはずだと考え続けていたと言います。

新規事業開発には、自分なりの「正解」を信じ、整理して人に伝える力が求められる

これまでにない価値を顧客に提供するためには、デジタルファイナンス統括部の一人ひとりがクリエイティビティを存分に発揮できる環境をつくる必要がある。そのための方法を模索する中で、渡邊さんは「amana Creative Camp」に辿り着きました。

「当たり前ですが、新規事業開発における成功は、単にローンチすることではなく、持続的に事業が成り立つことだと思っています。そして、この成功・失敗が見えてくるまでには、10年、20年という時間がかかるものです。自分で軸を持って課題やゴールを見極めていく必要があり、それは自分なりに出した正解を信じ切るということでもあります。経験が浅いメンバーにはまだこれを実践することは難しいでしょうが、一方で経験以外で養えるものもあると感じていて、それを『amana Creative Camp』で補えればと思いました」(渡邊さん)。

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amana Creative Camp」では、「Design Camp」、「Creative Thinking Camp」、「Branding Camp」など、アマナが培ってきた再現性あるクリエイティブナレッジをプログラムにまとめ、日々の業務の中で創造性や主体性を発揮するための具体的ノウハウとして企業に提供している。

アマナの担当者とプログラム内容を詰める中で、渡邊さんは2つのゴールを設定。1つは「参加したメンバーが、自分の考えやアイデアに自信をもって仕事に向き合えるようになること」。もう1つは、「思考した内容を伝えるための整理術を身に付けること」です。

「若いメンバーと話をしていると、まだ仕事や自分自身に自信がないのかなと感じることがあります。新規事業開発の仕事には正解がないとも言われますが、私は逆に、正解はたくさんあると考えています。だからこそメンバーには自分が思うようにやってほしいのです。そのためには動く前に自分の考えをとことん練り、自らの思考を“伝わる”かたちに整理することが欠かせません」(渡邊さん)。

渡邊さんのこうした課題意識をヒアリングしながら、アマナで今回の実施プログラムを設計。前半は「ビジネスパーソンにおけるクリエイティビティと自分ゴト化」、後半は「伝わるコミュニケーションにおける思考整理術とドキュメントデザイン」をテーマに、計4日間にわたるプログラムを計画し、デジタルファイナンス統括部の若手メンバーを中心に18名が参加しました。

自身のクリエイティビティに気づくためのプロセス

ともすると技術職の方々は、クリエイティビティからはもっとも縁遠いところにいると考えがちです。そのため、「クリエイティビティの自分ゴト化」と言われてもピンとこないかもしれません。

「クリエイティビティは、みなさんそれぞれの中にあります」

アマナのクリエイティブエバンジェリスト・児玉秀明は、プログラム初日のレクチャーでこう切り出し、現在のビジネスシーンでなぜクリエイティビティが求められるのかを解説しました。

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アマナのクリエイティブエバンジェリスト・児玉秀明
撮影:ATSUSHI KAWASHIMA(アマナ)

そして、多くのプロのデザイナーは「どれだけ美しいものを生み出すか」ではなく、「どうすれば情報が伝わりやすくなるか」を考えていること、デザインとは 「思考の組み立て」であり「ドキュメントの情報設計」であることを参加者に伝えました。

「クリエイティビティは一人ひとりの中にある。難しいものではない。このことは私も、参加メンバーに対して最初に伝えたいと考えていました。それを汲んでいただき、児玉さんにわかりやすく解説していただいたことに驚きました」(渡邊さん)。

レクチャーに続き、ビジュアルカードを用いて個人の感性を言語化するワークを実施。

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用意された複数のビジュアルカードに対する好き/嫌いの理由を言語化してグループワークの中でシェアし合うことで、メンバーの見方や価値観に触れながら、自身のちょっとした違和感や当事者として思うことを起点にビジネスのアイデアを発想するワークを参加者に体験していただきました。

“会社のパーパス”と“自分のウィル”をつなげる、KPIツリーの作成

続いて、オンラインホワイトボード「miro」を活用し、参加者一人ひとりのKPIツリーを作成するワークを実施。

1. まずは自分にとって理想的なワークスタイルやライフスタイルを挙げてみる
2. 次に、なぜそのような欲求があるのか、自分が求める生き方や実現したいことから紐解いてみる
3. グループでメンバーとディスカッションした上で、他に考えられる欲求を挙げる
4. どうすれば1を実現できるか、自分なりのアクションアイデアを考える
5. NECの事業や活動と、4のアクションアイデアをツリーでつないでみる

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miro上に参加者それぞれが書き出したKPIツリー(一部)。個人の欲求を起点にアクションアイデアを書き出し、ツリーでつないでみることで、NECが掲げるパーパスとのさまざまな関係性が見えてきた。

「ワークでは、具体的にNECの事業活動につなげるかたちでツリーを設計していただきました。思考を整理する過程で“会社のパーパス”と“自分のウィル”がどうつながっているのかが見えるだけでも、個々人がものすごく大きなパワーを発揮できるようになる。その一歩が踏み出せたのではないかと感じます。

私自身もメンバーのいろんな思いや価値観を知ることができましたし、それぞれの“ウィル”や個性を掛け合わせながら、チームとしてどう成果を出していくかを考えるヒントにもなりました」(渡邊さん)。

後半2日間のプログラムでは、自身で考えたアイデアを“伝わる”かたちにまとめるための思考整理術や、ドキュメントデザインの方法をレクチャー。実際に参加者がいま業務で関わっているプロジェクトについてそれぞれ事前にプレゼンスライドにまとめていただき、アマナのプランナーやデザイナーから具体的にフィードバックするかたちで実施しました。

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後半プログラムのレクチャーを担当した、アマナのプランナー・鈴木陸(左上)と、デザイナー・前田直子(右下)。
撮影:郭勇志(アマナ)

チームとしての共通体験が、事業開発の推進力になる

プログラム終了後、渡邊さんのもとには参加したメンバーからさまざまな意見が集まっています。

渡邊さんが嬉しく感じたのは、「レクチャー内容に納得感や気付きがあり、クリエイティビティを身近なものとして理解できた」という意見がいくつも見られたことでした。

「クリエイティビティは自分にとって縁遠いものと考える気持ちは、私自身も理解できます。でも決してそんなことはない。少し発想を変えるだけで身近なものになることが伝わっただけでも、今回『amana Creative Camp』を実施した意義があったと感じています」(渡邊さん)。

そして、「デザインはロジックであることをわかりやすく学べた」「『なんかいい』ではなくデザインの裏付けが理論的に学べて勉強になった」などの感想もあり、今回のプログラムを通して得た具体的なスキルをこれからの業務に生かしてもらえる予感がしていると言います。

「まだすべてのプログラムが終了してからあまり時間は経っていませんが、メンバーのアウトプットが早くなってきた気がしています。もちろんスキルとしての学びもあったと思いますが、参加して自分に自信がついてきたというのが大きいのではないでしょうか」(渡邊さん)。

渡邊さんご自身も、今回のプログラムを通して考えていたことが整理された感覚があったとのこと。そして参加したメンバーの間で共通言語・共通理解が持てたことでパフォーマンスが高くなっていくという予感がしていると言います。

今後は、今回の学びがデジタルファイナンス統括部、金融ソリューション事業部門、そしてNEC全体に広がっていくことを期待したいと話していただきました。

文:高橋満(ブリッジマン)
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編集:高橋沙織(アマナ) 

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複雑で先行きの見えない世界においては、 人本来の持つ創造性を解き放ち、主体性を持ち躍動できる人材が求められます。amana Creative Campでは、 再現性を持ったクリエイティブナレッジを提供することで、個の創造性を高めると共に、企業の競争力を高める文化創りへと導きます。

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