中間ファイルをマスターせよ! 3D-CADから3DCGへデータ変換攻略法

Key visuals for 3D-CAD content
Text by 鵜飼美生



ビジュアライゼーション技術の進歩に伴い、製品の3D-CADデータ(以下、CADデータ)を使用したCGビジュアルの制作が増加しています。

しかしながら、クライアントから提供されたCADデータを使用する際に、CG制作ソフトウェア上でデータの破損や不具合が生じたことはありませんか? CADデータがあれば即座にCG化できると期待していたものの、実際には問題に直面することもあります。 最初からつまずくとストレスですよね。

実は、元のCADソフトウエアによって適切な中間ファイル形式を選択することが重要なんです。CGI Asset Dept.のマネジャー鵜飼美生が、CADソフトウェアからの中間ファイル形式の選択と注意点について解説します。

Mio Ugai

鵜飼美生
株式会社アマナ/CAD-CGIディレクター。自動車メーカーの子会社にて、DTPで車のカタログなどの制作を担当。 CADと3DCGを勉強した後、2006年にアマナに入社。 自動車の3DCG制作を担当し、3D-CADデータから3DCGデータを制作する技術の開発に携わる。 2010年よりさまざまなプロダクトのCGIマネジメント(情報整理や品質管理、進行管理)を経て、 現在は3D-CADデータを3DCG制作用のデータにコンバートするCGI Asset Sec.マネジャー。

元のCADソフトウエアに適した中間ファイル形式の重要性

CADデータを活用してCG制作を行う際、多くの企業は機密性の高いネイティブフォーマット形式のCADデータをCG制作側にそのまま提供できないことがあります。そのため、CADから書き出した中間ファイル形式のデータを提供されることが一般的です。一般的な中間ファイル形式としては「STEP」がよく使われますが、元のCADソフトウェアによっては図1のように破損することがあります。

3_1_1200x任意_破損例.jpg

図1:CADソフトウェア「SOLIDWORKS」で作成したCADデータを中間フォーマット「STEP」形式で書き出し、3DCGソフトウエアに読み込んだ図。全体的に大きく破損しています。丸で囲んだ部分に寄ってみるとトリムも外れています。

適切な形式でないと、ここまで大きな破損はないかもしれませんが、部分的な破損や一部の部品の欠落が起こり、正しい形状がわからないことも。そのようなデータでCG制作を行う場合、修復やモデリングが必要です。せっかくCADデータがあってもCADデータほどの精度を保った高品質なビジュアライズが難しくなることがあります。

私たちはこれまで20年間、さまざまな製品の3D-CADデータを活用してCGビジュアル制作を行ってきましたが、適切な中間ファイル形式を提供してもらえないことがあり、そのたびにデータの状況を報告し、修正や再書き出しを依頼しています。企業側の担当者とデータを準備する設計担当者の負担が増え、制作スケジュールが圧迫されることもあります。したがって、CADソフトウェアに適した中間ファイル形式とその際の注意事項を、企業側、CADデータを受け取りCG制作を依頼する人、CG制作者において理解が重要です。

 

CADのカーネルを知る

3D-CADデータには、”モデリングカーネル”(以下、カーネル)と呼ばれる中核があります。このカーネルは、パソコンのOSがシステム全体の動作を制御するのと同じように、3Dモデリングの基本的な動作やロジックを制御します。CADソフトウェアによってカーネルが異なるため、たとえば、図2の円柱のような同じ形状でも表現に違いが生じます。

3_2_1200x任意_カーネル.jpg

図2

カーネルには、特定の3D-CADシステム向けに独自に開発されたものと、汎用的に開発されたものがあります。汎用的な開発のカーネルで代表的なものには、「Parasolid」形式「ACIS」形式があります。図3のように、それぞれのカーネルの中間ファイル形式を選ぶことで、データの破損や不具合を少なくして書き出すことができます。

3_3_1200x任意_形式.jpg

図3

独自のカーネルはSTEP形式で、ParasolidはParasolid形式、ACISはACIS形式が適した中間ファイル形式です(赤い矢印)。ただし、適した中間ファイル形式であっても、CG制作ソフトウェア上でデータが100%きれいに受け渡されずに破損することがあります。また、CG制作会社によってParasolid形式ACIS形式が扱えない場合や、STEP形式に複数の種類があるため、CG制作側で開けない可能性もあることから、カーネルが異なるファイル形式でも書き出すことを推奨します(青い矢印)。

あらかじめ2つの異なるカーネルのデータ形式を用意することで、それぞれのデータでの破損を補うことができ、スケジュール的な損失を減らすことができます。最初に2つのデータを用意する手間がかかりますが、結果的に余分なデータのやり取りを減らし、データを提供される担当者の負担を軽減できます。

CADソフトウェアは何百種類もあり、会社ごとに異なるソフトウェアが使われています。ここでは代表的な例に絞って説明していますが、もし図3に掲載されていないCADソフトウェアを使用している場合は、設計担当者にお問い合わせください。それにより、使用しているCADソフトウェアがどのカーネルに属するかを確認できます。

中間ファイル形式のデータを書き出す際の注意事項

中間ファイル形式のデータを書き出す際には、以下の点に注意が必要です。

1.アセンブリ情報の状態にする

理由:製品を構成する部品の配置位置が分からなくなるため。1つの塊になってしまい、部品を切り分ける作業が膨大に発生してしまいます。

2.データ容量が1ファイル1GB以上になる場合は分割する

理由:データ容量が大きすぎると、3DCG制作側で開くことができない可能性があります。

3.カーネルの違う2種類のデータ形式を書き出す(図2参照)

理由:適した中間ファイル形式でも、CG制作ソフトウェア上で100%きれいにデータが受け渡らず破損することがあります( 補足1 )。また、CG制作会社によってParasolid形式ACIS形式が扱えない場合があること、STEP形式には種類があるためCG制作側で開けない可能性もあります。

4.ネイティブフォーマットから、2回以上変換を加えない

理由:企業から提供されたCADデータそのままのネイティブフォーマットから、2回以上変換を加えるとエラーの原因となります。たとえば、ネイティブフォーマットから中間ファイルIGES形式(補足2)に変換されたデータを、さらにSTEP形式に変換し直すことなどを指します。

・補足1:書き出した中間ファイルを使用しているCADソフトウエアに読み込んで確認すると、綺麗な状態で表示されます。しかし、3DCG制作側のソフトウエアで破損していることがあります。

・補足2:以前はIGES形式(.igs)が推奨されていましたが、書き出しデータとしては状態がよくない場合が非常に多いため、避ける方がよいです。

3D-CADデータを最大限に活用する中間フォーマット形式

CADデータを活用したCG制作を行う際には、使用しているCADデータのカーネルに応じて適切な中間フォーマットを選択することが重要です。また、書き出す際に注意すべき点もあります。効率的かつ高品質なCG制作を実現するためには、まずは使用しているCADソフトウェアとそのカーネル(図2)を確認することが大切です。

文: 鵜飼美生(アマナ)
撮影:広光(アン) 


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