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ある程度マーケティング業界にいると、広告やメール販促などのクリック率(CTR)が最も重要な成果指標であると思うかもしれません。しかし実際には、CTRは金メッキのようなもので、その輝きはやがて剥がれ落ちてゆくといえるでしょう。
デマンドジェネレーションマーケターとして、CTRの高さだけを頼りにして広告が機能していることを証明するのは簡単ですが、CTRはあくまでもストーリーの一部、いわば脇役なのです。他のすべての要因を評価せずにCTRだけに注目しているなら、マーケティング戦略に大きな損失を与えることになるでしょう。
戦略を練り直して費用に見合った広告にするために、CTR指標が誤解を招くかもしれない理由と、どのマーケティング指標に重点を置くべきか見てみましょう。
現在、Googleの検索広告の平均CTRは3.17%、ほとんどの業界におけるGoogleのディスプレイ広告では0.46%です。これらの数字を達成している場合、さらに費用を投じようとするかもしれません。しかし、まずは一歩引いてみてください。
CTRは「クリックされた数 ÷ 広告が表示された回数」で計算されるため、以下のことは把握できません。
・リーチ:広告を見たユーザーの総数
・コンバージョン:クリックしたユーザーが実際に期待したアクションを行ったかどうか
・インテンション:ユーザーがクリックした理由、優良な顧客を引きつけているかの限定的なインサイト
・リテンション:広告をクリックしたユーザーのページ滞在時間
さらに、広告が他のクリック可能な要素の近くに配置されていたり、素早くポップアップ表示されたりして誤ってクリックしてしまった場合は、CTRは正しく計測されません。
CTRに関する、より悪質な行為があります。それは、CTR操作やクリック詐欺と呼ばれるものです。
Cloudflareによると、「クリック詐欺とは、人やbotがWebページの正当な訪問者のふりをして広告やボタン、何らかのハイパーリンクをクリックすることを指します。クリック詐欺の目的はプラットフォームやサービスを騙し、本物のユーザーがWebページや広告、アプリにアクセスしていると思わせることです」。
インターネット上でアクティブなbotの数は近年急増しています。
実際、最新の統計によると、悪質なボットは今や全インターネットトラフィックのうちなんと73%を占めており、この憂慮すべき数字は、AIの急速な普及によってさらに増加すると予測されています。
botの大量発生と高度化により、botを制御することがさらに難しくなり、botがアクティブになることでCTRが人為的に上昇する傾向が強まっています。
言うまでもなく、メディアや広告プラットフォームは広告主からの課金を継続させるため、インプレッションやCTRのような主要なエンゲージメント指標を人為的に水増ししていた過去があります。
つまり、CTRが高いということは、初めは喜ばしいことに思えるかもしれませんが、その結果のみに基づいて方針を提示するのは、誤った判断を下すことにつながり、結果として貴重な予算を犠牲にすることになります。反対にCTRが低ければ、あなたは必要以上に失望しているだけかもしれません。
すべての正当なアクセスからの低いCTRは、不当なアクセスまみれの高いCTRより、ずっと価値があります。
🔎 関連コンテンツ(英語):Cracking the Code: Solving the Mystery of Low Conversion Rates
CTRに対して毅然とした態度を取る業界人や、(模擬)自助グループで自らの経験をシェアする人もいます。
この動画は、毎年「全国反CTRの日」を主催しているIAB UKの「#clickheadキャンペーン」の一環です。この巧みなキャンペーンは、あらゆるマーケターに対してCTRを超えたところに目を向けるよう促しています。
では、どこに目を向けたらいいのでしょうか?
ROASとは、広告費1ドルあたり、どれだけの収益を上げたかを測定するものです。(Hubspotには便利なROAS計算機もあります。)
ROASを算出すると、次のことが可能になります。
・プラスのリターンが得られたかどうかを明らかにすることで、特定の広告キャンペーンの効果を測定できる。
・過去の広告費とキャンペーンの成果に基づいて、広告予算の使い方を判断できる。
CLVとは、一人の顧客がブランドとの関係全体を通じて、そのビジネスが生み出すと予想される総収益を見積もるものです。
CLVを算出すると、次のことが可能になります。
・リピート購入やアップセルの機会を通して、収益を生み出す可能性が高い顧客をターゲティングし、収益を増やすことができる。
・優良な顧客の維持に注力することで顧客獲得コストを削減できる。
CPLとは、マーケティングキャンペーンから見込み顧客を集客するため、平均でかかる費用や見込みを測定するものです。これは顧客獲得単価とは少し異なります(詳しくは次で説明します)。
CPLを算出すると、次のことが可能になります。
・広告のフォーマットやビジュアル、キャッチコピーをテストし、どの要素がより優良な見込み顧客を獲得するのかを検証できる。
・CPLを削減する取り組みによって予算を最適化し、より少ない予算でより多くの見込み顧客を獲得できる。
CPAとは、新規顧客や売り上げを獲得するためにかかる平均の費用を指します。CTRはユーザーがコンテンツにアクセスした時に分かる指標ですが、CPAは購入を完了したかどうかを示します。
CPAを算出すると、次のことが可能になります。
・新規顧客一人当たりにかかるコストを把握できる。
・キャンペーンを最適化することで顧客獲得単価を下げ、コンバージョンの可能性が最も高い顧客のみをターゲットにすることができる。
顧客維持率とは、どれくらいの顧客が長期にわたって商品やサービスに定着しているかを示すものです。これは「解約率」と呼ばれることもあり、低ければ低いほどビジネスに有利です。
顧客維持率を算出すると、次のことが可能になります。
・新規顧客の獲得(一般的にコストがかかる)よりも、既存顧客の維持に集中することでコストを削減できる。
・アップセルやクロスセルに注力することで、紹介者を獲得する機会を増やしながら、より多くの収益を生み出すことができる。
他にも、ROIやクオリファイドリード、流入元別のコンバージョン率などマーケティングの効果を測る優れた指標があり、それぞれ、より的確な資金投入の判断に役立つ有益なインサイトです。
📈 関連コンテンツ(英語): Content Marketing Measurement, Demystified: How to Demonstrate ROI from Brand to Demand
CTRは単なる指標のひとつに過ぎませんが、それでもマーケティングに欠かせない存在です。(ザズーのいない「ライオン・キング」や、ロニーのいない「シッツ・クリーク」を思い浮かべてみてください。これらのキャラクターは主人公ではないかもしれませんが、物語を展開するためには必要な存在です。)
CTRは、他の重要なマーケティング効果を測る指標と併用することで、有益なインサイトを提供してくれます。さらに、追加の指標を使うことにより、CTRを向上させることもできます。
例えば、CTRに他の指標が加われば、次のようなことが判断できます。
・広告、コンテンツ、または表示されたページがユーザーニーズとマッチしていないため、クリック数は多いものの、ページの滞在時間は短く、コミュニケーションが少ない。
・オーディエンスの範囲が広すぎて商品やコンテンツに関心がないため、クリック数やコンバージョンが少ない。
・キャンペーンで見込み客を獲得しているものの、コンバージョンにつながる見込み客がほとんどない。つまり、見込みの低い顧客ばかりを引きつけているかもしれない。
・コンバージョンからのリターンがキャンペーンに費やした費用や時間を上回っている。
CTRだけでは、上記のような結果は得られません。よりよいマーケティングのストーリーを組み立てるには、他のピースが必要なのです。
この記事は、SpringboardのSonya Matejkoが執筆し、Industry DiveがDiveMarketplaceを通じてライセンスを取得したものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。
元記事「Misleading Metrics: What Your CTR Isn’t Telling You」は2024年5月18日にstudioID’s insights blog – springboardに掲載されました。
また、日本におけるIndustryDiveパブリッシャーネットワークに関してはamana Content Marketingまでお問い合わせください。
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