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コンピューターグラフィックス(CG)によって作成された画像または映像を指すCGI(Computer generated imagery)。CGIによって映画の世界でしか見られなかったような非現実的なビジュアル表現も比較的容易になりました。広告やマーケティングの世界においても重要なテクノロジーとなりつつあり、視覚的なインパクトも大きいことから注目すべきクリエイティブが続々と誕生しています。
特に最近、OOH広告にCGIテクノロジーを取り入れたものは「シュールOOH」または「フェイクOOH」と呼ばれ、新しい表現手法として世界的に注目されています。CGIを駆使した屋外広告はSNSでの拡散も見込めるため、企業やブランドにとってはオーディエンスとの関わり方も大きく変えられる可能性があります。
この記事では、CGIテクノロジーを用いたシュール(フェイク)OOH広告の魅力的なキャンペーン事例を5つ紹介します。この革新的なテクノロジーが、どのように企業やブランドに創造性をもたらしているのか、ぜひチェックしてみてください。
タワーブリッジにいるフェデラーの過去と現在。pic.twitter.com/ JV7VgQrgY3
— プライムビデオ(@PrimeVideo)2024年6月19日
2024年6月19日、プライム・ビデオで配信中のドキュメンタリー作品『Federer: Twelve Final Days(邦題:フェデラー ~最後の12日間~)』の独創的なプロモーションが注目を集めました。公式Xアカウントに投稿された動画には、伝説のテニスプレイヤー、ロジャー・フェデラーの引退直前を描いた同作品にちなみ、若き日のフェデラーと現在の彼がラリーを繰り広げる姿がイギリス・ロンドンのタワーブリッジに映し出されています。
CGIテクノロジーを活用することで、約61メートルある2つの塔の間をテニスボールが行き交う様子を表現し、フェデラーの偉大なテニス人生を称えるかのような大がかりなクリエイティブを作り上げています。そのインパクトから賛同のコメントが多く集まり、SNSでもシェアされるなどたちまちまち話題になりました。
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イギリスを拠点とする、スポーツブランドのグローバルオムニチャネル小売業者であるJDスポーツは、2023年秋冬シーズンのキャンペーンとして、ロンドンで最も有名なシンボルの1つであるビッグベンで革新的なCGI広告プロモーションを展開しました。この歴史的なランドマークにダウンジャケットを「着せる」という、大胆不敵な施策を打ち出したのです。
同社は、人気スポーツブランド「ザ・ノース・フェイス」の代表的なアイテムであるヌプシジャケットの1996年製モデルを、高さ94メートルのビッグベンが着ている動画をSNSに投稿しました。もちろん本当にジャケットを着ているのではなく、CGIテクノロジーを活用して実際の製品を大きく見せることで生み出されたクリエイティブです。リアルとバーチャルの境目がわからないほどリアルに表現され、見る人を驚かせました。
最新テクノロジーを活用し、ファッションとアートを融合させ創造性溢れるクリエイティブとして話題になった本キャンペーン。CGIを活用した広告表現の広がりを期待させる事例です。
美容業界は、広告マーケティングにおけるCGIテクノロジーを積極的に取り入れている産業のひとつです。具体的には、ロレアルグループ傘下のメイベリンは、常に新しいテクノロジーを採用し、人々の記憶に残る魅力的なキャンペーンを展開し続けています。
2023年7月7日にInstagramとTikTokで投稿された新商品「ファルシーズシュールリアルマスカラ」の動画は、ニューヨークの街中を走り抜ける電車の車体が、同商品のピンクのパッケージになっているというユニークなものでした。そのシュールな光景が話題を呼び、Instagramの動画は2024年9月現在で14万件以上の「いいね!」を獲得しています。
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また翌日の7月8日には、同じく新商品のマスカラ「スカイハイ」の動画広告も話題に。巨大なまつげをつけてロンドンを走るバスや電車が、建物や壁から伸びる巨大なブラシの下を通り過ぎることで、マスカラを塗るシーンを映し出しています。こちらの動画もInstagramとTikTokで数千万もの視聴回数を獲得し、メイベリンの新たな広告を高く評価するコメントが多数寄せられました。
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当初この2つの動画を見たユーザーの多くは、実際に特大サイズのマスカラのパッケージやつけまつげ、マスカラブラシを街中に設置していると錯覚しました。しかし、数日後にはすべてCGIテクノロジーによって作られたデジタルアニメーションだったことが明らかになっています。それが作られた世界であるとは視覚的に見破れないほど、精巧なクリエイティブを生み出すCGIテクノロジーの力量を示した事例と言えるでしょう。
アメリカの自然派コスメブランドとして注目を集めている「エルフ(e.l.f.)」は、新商品であるニキビパッチのプロモーションキャンペーンにCGIテクノロジーを活用しました。2024年4月29日にInstagramに投稿された動画は、サウスダコタ州のラシュモア山に彫られたジョージ・ワシントン元大統領の顔に同社のニキビパッチを使用する一部始終を捉えており、見た人の目を引く映像となっています。
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ニキビパッチを吊るしたヘリコプターがワシントン元大統領に近づき、左頬にできた大きなニキビにパッチを慎重に貼って剥がす様子には、誰もが引きつけられることでしょう。大胆かつ遊び心のあるアイデアであることはもちろん、商品の利用方法が容易にイメージでき、販売促進という意味でも効果的なクリエイティブに仕上がってます。
動画はInstagramで2586万回再生され、TikTokでは280万件以上の「いいね!」を獲得(ともに2024年9月現在)し、世界中の消費者の心を見事に掴みました。従来SNSに強みを持つ同社のマーケティング戦略を、全く新しいレベルに引き上げることに成功しました。
グローバル飲料ブランドの「ペプシ」は、2024年にブランドリニューアルを行いました。14年ぶりとなるブランド・アイデンティティの刷新を盛大に祝うグローバルプロモーションに、CGIテクノロジーを採用しています。
同キャンペーンは120を超える地域で展開されたものです。高度なCGIテクノロジーによって視覚効果を取り入れたデジタルインスタレーションが世界各地の有名なモニュメントに反映され、ペプシの新ブランド・アイデンティティが世界を席巻しました。ロンドンのテムズ川に浮かぶ巨大なペプシ缶から、ホーチミンの 70 個の風船、パキスタンのクリケットスタジアムで試合中に降下した巨大なペプシ缶、メキシコの世界貿易センターのイルミネーションまで。都市や自然の名所でペプシの新アイデンティティがお披露目され、ブランドの新時代の到来を祝福する大規模なキャンペーンとなりました。
ペプシの缶やロゴなどが世界のシンボルとも言える場所に溶け込みつつ、商品自体の鮮烈なイメージを強調したインスタレーションは、人々がどこまでが実写でどこからがCGIなのか判別できないほどの出来栄えでした。SNSでは動画公開後すぐに何万回ものシェアが行われ、話題を呼ぶことに成功しています。また、デジタル技術を駆使したキャンペーンを展開したことで、ペプシ自体のブランドイメージを強化することにもつながりました。
広告・マーケティングにおけるCGIテクノロジーの活用は、単に特殊効果を生むツールとしての役割を超えて、企業やブランドに無限のクリエイティブな可能性をもたらし、消費者に新たな体験を提供する手段として今後さらに活用が進むでしょう。今回紹介した事例は、いずれも斬新なアイデアや遊び心に満ちたアプローチで、従来の広告手法とは一線を画すクリエイティブを実現しています。CGIを駆使することで、現実では不可能な演出やスケールでの表現を生み、消費者の記憶に残るキャンペーンを生み出すことができるのです。テクノロジーの進化とともに、広告業界におけるCGIの活用はますます広がりを見せ、ブランドと消費者のつながりをより強力なものにしていくでしょう。CGIテクノロジーが生み出す新たな広告・マーケティングの潮流に、今後も期待が高まります。
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