コーセー「DECORTÉ(コスメデコルテ)」シリーズから新たに発売された、導入美容液「AQ アブソリュート エマルジョン マイクロラディアンスⅡ」のテレビCM用ムービーのCG制作を、アマナが担当しました。コーセーのブランドの中でも最高級ラインである「DECORTÉ AQ」の商品を紹介するにあたり、そのリッチ感をCGでどのように表現したのでしょうか。案件に携わった、アマナのプロデューサー・小深田剛、CG制作を担当した福井雅也、佐々木紀子、御友裕之に聞きました。
コーセー「DECORTÉ AQ」シリーズのスキンケア製品について、アマナがCG制作をするのは3回め。これまでは商品の訴求ムービーを制作してきましたが、今回はテレビCM用という依頼をいただきました。
「効果効能よりも、とにかく乳液の美しさを見せるという目的で作ってほしい、とのリクエストでした。『DECORTÉ AQ』 はコーセーの中でも最上位に位置する高級ラインなので、そのイメージを喚起するように乳液の高級感、なめらかさ、美しさをとことん追求するムービーを目指しました」(小深田)
乳液の象徴でもある、ミルクのような白い液体。ムービーの冒頭と最後に流れるカットは、CGディレクションも務めた福井が担当しています。
「CGは、実写と違って都合のいいように動かせます。今回は左右から液体が流れてきてぶつかるような動きをつけましたが、これは実際の世界にはない動き。水よりも粘度のある液体をCGなら作り出すことができるし、その際に人が見た時に違和感がないようにしなければならず、動きととろみ感をひたすら追求しました」(福井)
当初、白い液体は滝のように上から下に流れる見せ方をしていたそう。それだととろみを感じにくいという指摘があり、商品のリッチ感につながる「優雅さ」をどう表現するか、頭を悩ませました。
「とろみを表現するのに、液体と液体がぶつかる時の動きを作ればいいのではと思いつきました。ただ液体が流れていくだけだと、例えその動きをゆっくりさせても普通の液体にしか見えないのですが、商品にぶつかったり液体と液体がぶつかるところでとろみを感じさせられるなと思ったのです。
液体全部が一斉に動くと水に近い動きになります。ですが、ハチミツを垂らしたように液体の上に液体が乗る感じを表現するととろみを感じられる。表面にさらに遅い波がかぶるといいんだと思い、動きの違う波を重ねるように工夫しました。
このとろみ表現を探るために、いろいろな液体の動画を参考に見ました。ハチミツが垂れている映像を見たり、以前だったら自分たちで実験撮影をしたりも。CGを作るには、本物を知らないとできませんから」(福井)
肌細胞のアップや断面図のイメージ画像を作成したのは、佐々木です。ビューティー案件ではよく使われる肌細胞の画像ですが、実写ができず、フルCGでの制作は必須。佐々木は以前にも制作経験が多数あり、そのスキルを十分に生かしました。
「この乳液は、次に使う化粧水の効果をアップさせるための『導入』が目的の商品なので、乳液を塗る前と後とで肌細胞の状態をどう表現するかがポイントでした。塗る前といっても肌の状態を悪くしすぎると汚らしい印象になってしまうから、ほどほどの状態を見極めることに注力。
肌細胞は透明すぎるとクリスタルのような硬質な印象を与えてしまうため、不透明だけどなんとなく光が通って輝きがある感じに仕上げ、乳液を塗ると肌細胞の状態がよくなって次に使う化粧水が浸透しやすくなる状態をイメージしやすくしました」(佐々木)
背景が暗く落ちた場面に光のシャワーが降り注ぐ瞬間の映像は、御友がCG制作を担当しています。
「導入乳液を先に使えば、次にどんな化粧水を使っても効果がアップしますよ、というシーンを表現しました。以前にシャワーのように水の粒を飛ばすシーンの制作経験があったので、そのノウハウが生きたと思います。
丸い粒だけを飛ばしてもリアリティがないので、いろいろな形の粒を作ることと、連なりを作って飛ばしているのも、光が降り注ぐように見えるポイントです。いかに自然な印象に見せるかに注力しつつ、スピード感を持って対応しました」(御友)
クライアントからも高評価をいただくアマナのCG制作について、クリエイター達は日頃からさまざまな心がけで制作に臨んでいると言います。
「チョコレートフォンデュやチーズフォンデュを思い出し、食べ物をすくい上げる時にこういう動きになるなと、とろみ感の着想を得ました。物と液体がぶつかる感じ、液体が流れる時に実はいろいろな箇所のスピード感が違うことなど、日頃の観察から得られることは多いですね」(福井)
「CG制作の前には、写真や動画などをストックサイトでチェックして、たくさんの映像を見るようにしています。提案の際にも、例えば『輝く感じ』はどの輝く感じに近いのか、参考映像を共有しながら進めていくとお互いが目指すイメージに最短距離で近づけますね。アニメーションを作っても質感がイマイチだと伝わらないことが多いので、途中段階では解像度が低くても質感をきちんとつけておくことが大切。そういったコツも蓄積しています」(佐々木)
「期日を守るのは当たり前ですが、その期間内でなるべく同じ手法で作らないようにしています。CGは常に進化しているので、新しい技術やソフトを学んだりしながら進めると、勉強したことが自然に身につきます。すると、次に急ぎの案件が来ても、過去の経験則から対応できることが増えるので、少しだけでも新しいことを模索しながら作ることを続けていきたいです」(御友)
コーセー「DECORTÉ AQ」シリーズのCG制作を継続して受注していることについて、小深田は「オーダー以上のクリエイティブで応えているから」とその理由を語ります。
「クライアントや制作会社がほしい表現はどんなイメージなのか、希望に合う表現をこちらで解釈して作ることが大事。ただキレイに作るだけでなく、求められていることは何か、想像をサボらないようにしています。さまざまな新商品が投入される化粧品業界は、特に高い質感の表現が求められますから、クライアントや制作会社が気づいていない潜在的な理想の表現に近づける努力は、今後も怠らないようにしていきたいですね」(小深田)
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<案件制作>
スポンサー:株式会社コーセー
CG ディレクター: 福井雅也
CGクリエーター : 佐々木紀子 御友裕之
CADセットアップ : 太田代誠 志村祐輔
CGプロデューサー : 小深田剛
<記事制作>
取材・文:大橋智子
AD:中村圭佑
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amana cgxサイトでは、amanaのCG制作チームが手がけたTV-CMやグラフィック、リアルタイムCGを使ったWEBコンテンツなど、CGを活用する事で、クライアント課題を解決に導いた様々な事例を掲載。
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