UGC (User-Generated Content)とは、「ユーザー自身によって生成されたコンテンツ」を指す用語です。この用語の対象範囲は幅広く、ソーシャルメディアやレビューサイト上でのコメント、ブログ記事、写真、動画コンテンツなど、基本的には一般ユーザーが生成するコンテンツ全般を含みます。これらのコンテンツは幅広い業界でマーケティングにおける活用が進んでおり、成功事例も多数生まれています。
広告戦略の最前線を行くマーケター必見。UGCを活用したブランドコミュニケーションの最新動向と事例を本記事でご紹介します。
UGCがマーケティングで重要視されている理由については、大きく以下の3点が挙げられます。
一般的な生活実感としても分かるように、ブランドが提供する情報や広告は情報として恣意的であると受け取られる傾向があります。消費者にとってはUGC、すなわち他のユーザーによるレビューや意見は信頼性が高いとみなされる場合が多いため、活用方法によっては自然な形で商品やサービスの魅力を伝える手段として機能します。一方で、UGC活用にあたってはステルスマーケティングが問題になる可能性や、企業側が投稿内容をコントロールできないことによる炎上リスクに注意する必要があります。
実際の体験を基にしたコンテンツは消費者の心理に訴えかけやすいことに加え、SNSへの体験投稿などを通じて広く拡散する点もUGC活用のメリットです。後ほど事例も紹介しますが、結果的に購買行動やブランドへのロイヤリティが高まった事例も多数あります。また、UGCは商品改良や商品開発のヒントになることも。ニーズを踏まえた商品開発により顧客満足度が向上し、新たなUGCが生まれるという好循環を生み出すことが理想だと言えます。
自社サイトにUGCを投稿できるような設計をすれば、ユーザーが自主的かつ継続的にコンテンツを作成してくれるためサイト自体の活性化に繋がり、最終的には検索エンジン上での評価が高まる場合があります。企業発信のコンテンツより、ユーザーの生の声は新鮮で多角的な情報として評価されるのもその要因です。また、UGCに含まれる自社サイトへのリンクは、一般的なデジタル広告よりも自然な形でインバウンドリンクを獲得できる可能性もあります。
UGCコンテンツ活用の手法はSNSを中心に近年さらに多様化しており、可能性も広がり続けています。まずは導入として、SNSと購買行動に関する調査結果を簡単にご紹介します。
20~40代の1,006人の女性を対象としたアンケート調査によると、「SNSで得た情報が自身のライフスタイルや購買行動に影響を与えていると思うか」という質問に対する回答のうち、「非常に思う」「やや思う」の合計は79.5%と高水準です。また、「ものの具体的な使用シーンを見ることで購買意欲が沸くことはあるか」という回答に対しては、「よくある」「ややある」の合計は77.4%でした。ちなみに、購買行動やライフスタイルに影響を与えているSNSではInstagramが76.8%でトップ、その後は「Youtube」が67.3%、「X」が61.7%、「TikTok」が30.0%、「Facebook」が21.3%と続きます。本調査は特定年齢層の女性を対象としたものではありますが、購買行動に対するSNSの影響が示唆される結果となりました。
出典:購買行動に影響を与えるSNSは「Instagram」が1位で約76%、2位は「YouTube」、3位は「X」 | ネットショップ担当者フォーラム
SNSと購買行動の関連性を考慮し、特に注目すべきUGC活用方法のトレンドとして、次の3点をご紹介します。
TikTokやInstagram Reelsなどのショート動画を活用したユーザー参加型キャンペーンの企画は、多くの企業が既に取り組んでいる分野です 。特定のテーマやルールを設定して投稿を促す「ハッシュタグチャレンジ」や投稿によって特典をプレゼントするなど、様々な手段が存在します。特にTikTokは、投稿者の知名度やフォロワー数よりも、ユーザーの興味関心と投稿内容の相性を優先してコンテンツを表示するアルゴリズムです。すなわち、投稿者のフォロワー数に関係なく(いわゆるインフルエンサーでなくとも)爆発的に拡散される可能性があり、UGC活用と相性のいいSNSであると言えます。
単なる製品のレビューにとどまらず、「商品×ユーザー」毎の体験エピソードや実生活での活用例を含む画像・動画コンテンツが支持を集めています。特に感情に訴えるストーリーを含むUGCは効果的で 、結果的に消費者とブランドの感情的な絆を形成し、自然な形での販売促進に力を発揮しています。例として、家庭環境や育児の状況を踏まえて対象商品をどう活用しているか、生活がどう便利になったか、といったストーリーを含む投稿は、通常のレビューよりも他のユーザーの信頼を獲得できる可能性があります。
ユーザー生成コンテンツの感情分析や効果測定を行い、さらに効果的なマーケティング施策や商品開発に繋げる企業が増えています。背景として、デジタルマーケティングにおける各プラットフォームのアルゴリズム変動や入札競争の過激化が挙げられます。限られた広告枠に多額の費用を投入したり、変動するアルゴリズムに振り回されたりすることなくアテンションを獲得できる新たな手段として、UGCの活用が注目されています。
参考:
【徹底解説】UGCとは何か、なぜマーケティングで重要になってきたのか|SNSコラム|#ホットリンク
TikTokのUGC活用戦略:日本企業の成功事例とリスク対策 | EmbedSocial エンベッドソーシャル
出典:ニトリネット
ニトリはSNSライブの配信をはじめ、顧客コミュニケーションに注力する企業として有名です。UGC活用という観点では、公式通販サイトに「みんなのニトリ」という新しいコーナーを設けInstagramで投稿されたUGCを集約し、公開しています。このコーナーでは、顧客が実際にニトリの商品を使ってコーディネートした写真を集めており、インテリア雑誌を眺める感覚で実際のユーザーによる多種多様なコーディネートに触れることができます。また、関連する投稿を「おすすめのコーディネート」として表示するなどUI・UXが丁寧に設計されているのもニトリの特徴です。
人気の理由は、カタログの写真だけでは分かりにくい商品の使い方や部屋に置いたときのイメージを具体的に掴める、他のユーザーのコーディネートからインテリアのアイデアを得られる、そして同じ趣味を持つ人たちと情報交換できるコミュニティが形成されるなど、体験価値の深さにあります。プロモーション効果としては、自社サイトとしての強みを活かして商品サイトとリンクさせることで、スムーズな購入体験を醸成しています。
1996年発売、明治のロングセラー商品「うずまきソフト(ラクトアイス)」。あるXユーザーによる「(パッケージに記載された商品名の)うずまきがうますぎに見える」というUGCにヒントを得て、「うますぎソフト」のパッケージを新たにデザインし、間違い探し形式で従来パッケージと並べたコンテンツをX公式アカウントに投稿。通常の投稿より遥かに多いいいね!と、好意的なコメントを多数獲得しました。同社は反響を受け、「うますぎソフト」版パッケージを販売。期間限定による希少性や、一時的に従来パッケージと混在していたサプライズ性により、SNS上でさらに話題を呼びました。結果として一時は商品が品薄になるなど、売上にも大きく貢献しています。
本事例はUGCを多段階で活用している点が特徴的です。ユーザーによるUGC(投稿)をSNSプロモーション、商品デザインにまで反映し、さらなる反響を獲得することでより多くのUGCを生み出すことに成功した好事例であると言えます。UGCを効果的に活用することで、定番商品であってもエンゲージメントやロイヤリティを向上できる可能性を示唆しています。
参考:
“UGC=お客様の声”を商品に還元。明治「うずまきソフト」に見るUGC活用|SNSコラム|#ホットリンク
出典:Cloud CIRCUS :9.6万再生を記録!ドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」の世界観とマッチした限定AR企画で、放送前のプロモーションに成功!
メディア・エンタメ業界からは、X(旧Twitter)で話題になった、TBSドラマ「夕暮れに手をつなぐ」の放送前プロモーション企画をご紹介します。本企画のタイトルは「夕暮れ限定AR」。夕暮れの空にスマートフォンをかざすと、主演キャストからボイスメッセージ入りAR動画が届く体験型のプロモーション企画です。夕暮れ時の「エモさ」を「かけがえのなさ」で表現するべく、16時から18時の限定で体験できるよう設計するなど、作品の世界観とユーザー体験をクロスオーバーさせた好事例です。
結果的にユーザーがSNSで体験をシェアすることによって、ドラマ放送前からエンゲージメントを高めることに成功。本来は放送前1週間限定の企画だったにも関わらず、体験回数9.6万回以上、体験人数3万人以上という高い効果を発揮。好評により放送期間中も毎週火曜日限定で本企画が復活することになりました。メディア・エンタメコンテンツでも、世界観とマッチしたUGC生成を促すことで、プロモーションに効果を発揮することを示した事例であると言えます。
先にも述べたように、従来のデジタルマーケティングにおけるプラットフォーム上での入札競争が激化する中、UGCを活用したブランドコミュニケーションは、より重要な要素となっています。まだまだ活用の余地は広いため、新たなUGC活用のトレンドを自社から生み出すチャンスもまだまだあります。例えば「ハッシュタグチャレンジ」は代表的な手法ですが、インフルエンサーとコラボしてチャレンジを促す、ARなどの技術と組み合わせるなど、自社の商材・サービスに合わせて、ぜひ活用方法を模索してみてください。
長期的に見ればUGCは単なる商品の宣伝ではなく、ユーザーとの共創を通じてブランドの価値を向上させ、購買意欲を刺激する強力なツールです。今後も、AI技術の進化や新しいプラットフォームの登場により、UGCの活用方法はさらに進化していくでしょう。企業にとっては、ユーザーの声を積極的に取り入れ、リアルタイムでのコミュニケーションを重視することで、持続可能なブランド成長を実現すべき時代が来ています。
アマナのサービス:
プロモーション https://amana.jp/service/detail_22.html
プロモーション制作事例 https://amana.jp/works/?l=96&sv=7#search
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文:田中良
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