AIとデザインの関係が急速に進化する中、企業の広告・宣伝担当者にとって、どのようにAIを活用すれば効果的なクリエイティブを生み出せるのかは重要なテーマです。
本記事では、アマナのハイブリッドディレクターが、デザインの現場でAIを活用する具体的な手法や、人間ならではの創造性の価値を掘り下げます。デザイナーだけでなく、企業のブランド戦略に関わる方にも役立つ内容となっています。
アマナのハイブリッドディレクターを務めるコンスタンス・リカです。アマナに入社する前は、グラフィックデザイン、3DCG、VFXなどのビジュアルを軸に、さまざまなプロジェクトに携わってきました。現在は、新しい技術を活用し、多様なアプローチでプロジェクトのアートディレクションを行っています。
数年前に初めて画像生成AIの可能性に触れ、Midjourneyで初めて作品を制作したとき、複雑な感情が込み上げました。興奮と同時に、正直なところ一抹の不安も感じました。広告業界のディレクターとして、このテクノロジーの波は避けられないと強く実感した瞬間でした。
今では、AIはクライアントミーティング前夜の救世主であり、行き詰まったブレストの突破口となっています。しかし、私にとってAIは単なる時短ツールでしかありません。確かに可能性を広げる創造的なパートナーでもありますが、それを可能にしているのは、やはり創造するための時間を確保できるからです。AIを使ってオペレーションワークをスピードアップし、残りの時間をじっくり思考・創造する——これが私の新しいワークフローになりました。
デザインの本質は変わりませんが、そのプロセスは大きく変化しています。この変革の波に乗り、デザイナーとしての可能性をどう広げていけるのか。私の経験から見えてきた、AIとデザインの新しい関係性を紐解いていきます。
伝統的なデザインプロセスでは、プロジェクトの開始には多くの時間を要しました。しかし、その内省の時間こそが創造性の源泉でもありました。手作業によるスケッチは直感的なデザイン理解を促進し、時間をかけることで個性とブランドに忠実なアイデアが生まれていました。この深い思考と内省こそが、オリジナルな発想を育む大切な過程だったのです。
AIの登場により、このプロセスは劇的に効率化されました。多様なコンセプトを短時間で生成できるようになり、選択肢が大幅に広がりました。デザイナーは反復作業から解放され、より本質的な創造活動に集中できるようになりました。
さらに、クライアントとの初期段階での対話も加速し、プロジェクトの方向性をより早く固めることが可能になりました。その結果、「本当に意味のあるものとは何か」を考える時間が増えたと感じています。
かつてのデザインリサーチは、ユーザーインタビューや市場調査を通じて、深い洞察を得るものでした。直接的なユーザー接触が文脈理解を生み、細部への注意が予期せぬ発見につながることも多くありました。しかし、この手法ではサンプル数に限界があり、大規模なデータ分析には向いていませんでした。
AIは膨大なデータを瞬時に解析し、人間が見落としがちなパターンを発見することができます。これにより、客観的な分析が可能になり、主観的なバイアスを軽減しながら幅広いユーザー行動からインサイトを抽出できるようになりました。
しかし、AIも人間によってトレーニングされるため、潜在的なバイアスがかかることがあります。そのため、デザイナーやリサーチャーは、AIの分析結果を検証し、意識的にバイアスを見つけ出し、軽減していく作業が必要です。
AI時代において、デザインとビジネス目標の結びつきがより重要になっています。ビジネス志向のデザインには、成功指標の設定や、ユーザーとビジネスの深い理解が求められます。
注目すべきは、AIは過去のデザインを複製することはできても、革新的なアイデアを生み出すことはできない点です。枠を超えた思考でデザインをビジネス目標に結びつけられる人材の価値が、今後ますます高まるでしょう。
AIを味方につけ、人間ならではの強みを活かすハイブリッドデザイナーの需要が高まっています。しかし、AIはあくまでもツールであり、デザイナーやディレクターとしての個性や、できたものに対する意味づけ、本質的な価値を見出せるのは人間だけです。
AIが生み出した余裕時間を活用し、より意味のあるクリエイティブに挑戦すべきだと私は考えます。
AIと共存する時代に必要なのは、継続的な学習と、人間ならではのスキルの強化です。AIツールの習得と効果的な活用法の学習はもちろん、ビジネス知識とデザイン思考の強化も欠かせません。独自の創造性と人間らしい感性の開発こそが、AIとの差別化ポイントになります。
変化し続ける環境の中で、人間の創造性こそが最も価値のある資産です。AIという強力なツールを手に入れた今、私たちデザイナーは創造の可能性をさらに広げることができます。テクノロジーと共に進化しながら、人間にしか生み出せない価値を追求していく——それが、これからのデザイナーに求められる姿勢ではないでしょうか。
アマナでは、AIを活用したビジュアル制作やブランディングのご相談も承っております。貴社のクリエイティブ戦略に新たな視点を加えるお手伝いができますので、お気軽にお問い合わせください。
アマナのハイブリッドディレクター、コンスタンス・リカによるAIを活用した企画提案の新しい手法を学ぶワークショップ 「AIで解決する企画提案の壁:リサーチから伝わるビジュアル表現まで」 を開催します。
本ワークショップでは、市場調査からビジュアル表現まで、AIを活用して企画提案の精度と効率を向上させる方法を実践的に学ぶことができます。
主な内容:
✔ AIを活用した市場調査とトレンド予測の実践的手法
✔ AIによる発散的思考とキーワード抽出の効果的な活用法
✔ Adobe Fireflyを使った画像生成とムードボード作成の先進テクニック
AIを活用した企画提案の新たな可能性に触れる機会として、ぜひご参加ください。
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はじめましてEVOKEです
文・ビジュアル:コンスタンス・リカ (アマナ/EVOKE)
EVOKE
EVOKE
CO-CREATING FUTURES.
amana inc.のクリエイティブチームEVOKE。
クリエイティブコラボレーションを通じて、目指す未来を描き出す。
最近は、AIを活用したクリエイティビティの拡張に力を入れている。