3D-CADデータを3DCGに変換することで、製品ビジュアライゼーションや広告制作、デザインレビューの精度が飛躍的に向上します。本記事では、最新のコンバート方法や最適なソフトウェアについて、アマナのCGクリエイターが詳しく解説します。
前回の記事「 製品ビジュアルの質を上げる!3D-CADデータから3DCGへの変換プロセス」では、CADデータを3DCGデータに変換する流れについて解説しました。
今回はCADデータからCGデータへコンバートの現状についてお話しします。
CADデータには、大きく分けて2つ種類があります。2D-CAD(図面)と3D-CAD(立体的な形状のあるデータ)です。
2D-CADは、図面ですので曲線しかありません。3次元的な形状がないので、モデリングという作業が発生します。(これに関してはまた別の機会に説明いたします)
今までの記事に出てきている3D-CADはこちらのCADで、3次元の形状があるため、CGへの転用が可能です。CGソフト用のデータに変換するには、3D-CADデータをポリゴンデータに変換する必要があります。
3D-CADデータをエクスポートする際には、CADソフトによってさまざまな中間ファイル形式が選べます。どのファイルフォーマットが最適かについては、こちらをご参照ください。
3D-CADデータには、さらに「ソリッドデータ」、「シートデータ」、「フェイスデータ」という異なるタイプがあります。それぞれのデータの状態を簡単にご説明します。
ソリッドデータ:厚みがあり、中身が詰まっている状態
シートデータ:2枚以上の厚みのない表面が結合している状態
フェースデータ:厚みのない表面が結合していない状態
コンバートするには、ソリッドデータまたはシートデータが推奨されます。
上記の図のフェースデータは、わかりやすく示していますが、見た目上はフェースが結合しているように見えても、データ上では結合していないデータも作成できてしまうので、注意が必要です。
こういったデータの場合には、コンバートの際にフェースデータ同士を結合するか、CADソフトで結合する必要があります。
ここまでで、3D-CADデータをスムーズに変換するために、適切なフォーマットやデータ形式(ソリッドなど)、提供時のポイントが整理できました。
次に、CGソフト用のデータにできるソフトは何があるのか……。CADデータを直接読み込み、CGデータを作成できるソフトウェアには、以下の3つのカテゴリーがあります。
3DCGソフト:モデリング、質感、アニメーション、シミュレーション(物理法則を元にアニメーションを作る)、ライティング、レンダリングができるソフト。
例:Maya、3ds Max、Cinema 4Dなど
ビジュアライゼーションソフト:CGソフトほどできることは多くなく、基本的には質感、簡単なアニメーション、ライティング、レンダリングができる。工業デザイナー・エンジニアなどがよく使うソフト。
例:Keyshot、VRED、Patchwork 3Dなど
データコンバーター:CADデータを読み込み、ポリゴンデータへコンバートするソフト。
例:PolyTrans、spGate、Pixyz、SAP 3D Visual Enterpriseなど
3D-CADデータをコンバートしてみます。ソフトはシェア率が高い3ds MaxとMayaで行ってみます。
まず、簡単なデータを作成して検証を行います。データは角が丸くなった立方体(フィレット付き)の形状にします。このデータは、FusionというCADソフトを使って作成します。なお、この立方体はソリッドデータです。
ファイルを開くと、下図のウィンドウが開くのでパラメータを入力します。3ds Maxはパラメータが少なく設計されています。
大体、設定するのは2箇所です。
・Convert to Mesh:ポリゴンに変換するのかどうかを設定。変換しない場合は、Nurbsオブジェクトとして読み込まれます。
・MeshResolution:ポリゴンの分割具合を設定。この設定はパラメータだけではわからないのでトライアンドエラーが必要です。
※このパラメータは曲線の分割を変更するパラメータのようで、直線の部分は分割が増えません。
下図が読み込んだ結果です。
コンバートの際、特に留意すべき2つのポイントがあります。
形状の正確な再現:コンバートされたデータが、元の形状を忠実に表現しているか、精度が確保されているか。
頂点の結合:頂点が正しく結合され、ポリゴンがスムーズに接続されているか。
3ds Maxのコンバーターは、これらのポイントをクリアしていました。
MayaでCADを読み込む場合、パラメータが多数あります。
・Tessellate objests:ATF Tessellationの選択がよさそうです。NoneはNurbsで読み込まれますが、良い結果は得られません。Aruba Tessellationは頂点が結合しないうえ、フェースの継ぎ目が滑らかにつながりません。後で加工する前提であれば、ポリゴン削減などができてよいかもしれません。
・Normal Tolerance:曲線に対して分割する角度(小さいほど細かく)
・Max Edge Length:分割する際のポリゴン一辺の最大の長さ(小さいほど細かく)
・Grid Aspect RatioやSurface Toleranceは、その他のパラメータに依存するので、ここでは割愛します。
ATF Tessellationであれば、きれいにコンバートできそうです。
2つのCGソフトで検証してみましたが、CGソフトからのインポートでも、問題がなさそうですね。
では、CGソフトだけでコンバートしていけばいいのかというと、そうではありません。
今回は1パーツのデータでコンバートしていますが、実際の製品データは複雑なもので、500パーツ~1000パーツほどあり、パーツは大小さまざまで、そのまま変換すると分割をしすぎたり、足りなかったりしてしまいます。
その試行錯誤をCGソフト上で行うとかなりの時間がかかります。理由としては、CGソフトはCADデータをコンバートした後にCADデータを破棄してしまうからです。再度、コンバートし直すためには、CADデータをもう一度読み込まなければいけません。
CADデータを効率よくコンバートするためには、以下のソフトウェアを活用すると効果的です。
・ビジュアライゼーションソフト
・コンバーター
これらのツールを使用することで、CADデータをポリゴンに変換した後も、元のCADデータを保持したまま、再度読み込むことなく何度でもコンバートを行うことが可能です。※CADデータが更新された場合を除く。
さらに、これらのソフトには、軽微な破損や不備を修正する機能が備わっており、設計担当者への再提供依頼を軽減することができます。
3D-CADデータのコンバートをスムーズに行うため、可能な限りソリッドやシートデータを扱えるSTEP、Parasolid、ACIS形式でのご提供を推奨します。
※IGESはフェースデータになりやすいため注意が必要です。
※IGESからSTEPなどへの変換も推奨できません。
3D-CADデータのコンバートについて、CGソフトの標準機能でもかなりうまく処理できることが分かりました。(破損がなければ、綺麗に読み込めることが確認されています)パーツ数が少ないデータであれば、CGソフトで十分対応可能です。
一方、大量のパーツが含まれるデータの場合、より効率的で最適なコンバートが求められます。そのため、CGソフトではなく、ビジュアライゼーションソフトやコンバーターソフトの使用を強くお勧めします。
文・3DCG画像: 太田代誠(アマナ)
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