デンソーテクノ|高クオリティの3DCGが実写と融合したCM映像に

デンソーテクノ|高クオリティの3DCGが実写と融合したCM映像に

デンソーテクノは「設計で、世界を“テクノ”する」をスローガンとし、量産設計でアイデアや先進技術を製品化している企業です。今回、従業員満足度のアップにつながるようさらに認知を上げることを目的にCMが作られました。

その3DCG制作部分を担ったのがアマナです。どのような3DCG制作を求められたのか、アマナオリジナルのモビリティ3DCG「croobicar」の使用方法についてなどを、プロデューサーの関口拓真、CGディレクターの羽田貴尚、御友裕之、CGデザイナーの徳永功、蔦滉志に聞きました。

ふわふわもモビリティも。さまざまなものを3DCGで制作

3DCG制作の依頼があったのは、2024年9月のこと。監督はアマナの出身で、アマナの3DCGやVFXの技術、モビリティに特化した3DCG制作チーム「croobi(クロオビ)」のことをよく知っており、クオリティに信頼を寄せてくれていました。

「当初の制作依頼は2つありました。ふわふわした白いものと、未来の車を3DCGで作りたい、とのこと。監督はアマナオリジナルのモビリティ『croobicar』のことをご存知で、それを活用したいとの話でもありました」(関口)

最終的に3つの3DCGを制作し、実写と組み合わせてCMが完成しました。各シーンについて、どのような過程を経て制作していったのでしょうか。

デンソーテクノ株式会社-企業CM 「ふわふわしたもの」篇 30秒

1.ふわふわした白いもの

ふわふわした白いもの

この3DCGは、御友が担当。絵コンテではふわふわとしたものが描かれていただけで、それをどう映像で具現化するか試行錯誤しつつ制作を進めました。

「コンテには、ふわふわは霧のようなものとあったのですが、どのくらい柔らかい質感にすればいいのか悩みました。また柔らかすぎるとディテールがなくて絵として成立しづらく、真円にすると現実的ではなくなります。リアル感を出すには、雲のように形作っていき、実写の世界観とマッチするように制作しました」(御友)

ふわふわは、人の思いの具現化、考えていることの象徴だという話が監督からあったものの、追加で雲の周りにラインをつけたいと依頼があり、これは何を指しているのかとますます悩みが深くなったそうです。オブジェクトとしてのふわふわを目指すとのことでしたが、金属の格子のように硬いラインは合わなかったので、今の太さや光の色などを検証していきました。

「Pinterestなどでインテリアとして置かれている雲の形のオブジェなどを参考にして、光のラインを雷みたいに表現するなど、正解を探りながら作っていくのが大変でした。結果的に、硬くなりすぎず自然なラインでふわふわを囲むことができて、本当にほっとしました」(御友)

2.車体とそのインテリア

車体とそのインテリア

この3DCGは、羽田、徳永、蔦が担当。アマナオリジナルのモビリティ「croobicar」を使用して制作を行いました。

「私は、『croobicar』の内装の質感制作を担当しました。元々の内装は黒でしたが、監督から『こんな感じで』と言われた車種に近づけるイメージで、質感付けをしていきました。『croobicar』は実在していない空想上の車なので、内装を細かく設定していません。実在の車に近づけるようにシートのシボ(革などの表面の細かな凹凸)の間隔を直し、構成するパーツが少ない箇所についてはどうやってマテリアルでバランスを取るか調整して進めていきました」(徳永)

「croobicar」とは、どのメーカーの車でもない、アマナオリジナルの車。モビリティメーカーの映像であればその社の車種を使うことができますが、そうでない業種の企業がCMなどの映像に車を登場させたい場合、現実世界には実在しないこの車を使うことでさまざまな権利関係をクリアすることが可能に。

「アマナのCGクリエイターが、デザイン、モデリング、質感づけまでをある程度行って、セダン、SUVとかコンパクトカーなどを作りました。モビリティについては、実写を撮影に使えないことが多いので、汎用性があるものを作ろうと考えたのです。モビリティメーカーではない企業がCMの中で車を出したい時に、ゼロから3DCGで車を作るのは大変だし、しかもどこのメーカーにも似ていないものを作るとなると時間と労力がかかります。それを『croobicar』としてアマナがすでに持っているということですね」(羽田)

「いわゆるノンブランドカーとして、背景などの素材と同様にアマナのアセットとして蓄積されています。クオリティと効率化の両立を求められる3DCG制作では、そもそもこうした素材があるかどうかも強みになると思います」(関口)

CM画面

「croobicar」と人物とを組み合わせた映像では、ライティングも大きなポイントになりました。

「人物を実写撮影するため、その映像と『croobicar』をマッチさせないといけません。まずは絵コンテを元にVコンテを作成し、それを基に撮影に立ち会い、ライティングをHDRで撮って映像に反映させました」(羽田)

「車内に赤いラインが映り込む映像と、この『croobicar』の車体が登場する映像を担当しました。元々の『croobicar』の質感が整えられていたから、撮影の際には背景に合わせて車がよく見えるライティングを突き詰めることに集中できました」(蔦)

HDRを使用することで、より臨場感があり映像になじむ3DCGを作ることができます。その工夫が、実写と3DCGの違和感のない映像制作につながりました。

3.回路図のような赤いライン

回路図のような赤いライン

この3DCGは御友が担当。監督からは、回路図を構成する赤いラインが画面全体を覆って行く様子を、というオーダーがありました。

「赤いラインがあちこちに伸びていく様子を描くのですが、すべての線を手作業でコントロールする必要があり、作業を進めていく際には演出も少しずつ変わっていくため、その都度、アニメーションのタイミングを変えるのが大変。ですので、以前にテストで使っていた、半自動でできるソフトを試したところ、うまくハマりました。カット数が多く尺も長めに出す必要があり、計算時間がかかったり使用用途も変わったりする場合は、ソフトの助けを借りると効率化できることを学びました」(御友)

デンソーテクノのCM特設ページ

映像は、「ふわふわしたもの」篇として、デンソーテクノのCM特設ページにて公開中。

CMは東海ローカルにてオンエア。また、上記の特設ページでも公開されています。今回のミッションとしては、デンソーテクノの認知を上げ、従業員の満足度をアップすることであり、できあがった3DCGについての高評価はこのミッションに対して寄与できたのではないかと考えています。

「『croobi』というモビリティに特化した3DCG制作チームがあり、さらに『croobicar』というノンブランドの車をアセットとして持っているというアマナの強みが、十分に発揮されたと思います」(関口)

<スタッフクレジット>(スポンサー、クライアント以外すべてアマナ)
スポンサー:デンソーテクノ株式会社
クリエイティブエージェンシー:株式会社レベルゼロ
プロダクション:株式会社シースリーフィルム
プロデューサー:関口拓真
CGディレクター:羽田貴尚、御友裕之
CGデザイナー:徳永功、蔦滉志、竹本英正

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これも3DCG!? 超現実世界にリアリティを与える、 CGアーティストの感性

取材・文:大橋智子

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PROFILE

株式会社アマナ
羽田 貴尚

株式会社アマナ
羽田 貴尚

CGデザイナーとしてキャリアをスタート後、静止画、動画問わずさまざまな案件を担当。MobilityCG専門制作チーム「croobi」の中心メンバーであり、CGディレクターとして多くの案件に携わる。

御友 裕之

株式会社アマナ
御友 裕之

株式会社アマナ
御友 裕之

Creative / Custom Media Dept. に所属。以前の会社では企業用VP、医療系VP、ゲームムービー、展示映像、映画などのCG制作を担当。2008年にアマナに入社。主にCMのCG制作に携わり、煙や液体などのエフェクト制作を多く担当。現在は液体表現を得意とし、幅広いジャンルのCG制作を担当している。

徳永功

株式会社アマナ
徳永 功

株式会社アマナ
徳永 功

専門学校でCGを学び、CGデザイナーとしてキャリアをスタート。その後、ゲーム、映像、広告業界を経験して2010年にアマナに入社し、現在に至る。MobilityCG専門制作チーム「croobi」のメンバー。主に自動車の静止画、動画のCG案件を担当。

蔦滉志

株式会社アマナ
蔦 滉志

株式会社アマナ
蔦 滉志

CGデザイナー。リアル系からスタイライズまで幅広いテイスト。モデリング、テクスチャ、ライティング、レンダリングまで一貫したパイプライン構築を得意とし、効率とクオリティの両立を意識した制作を行っています。プロジェクトの意図を正確に汲み取り、表現として具現化することを常に意識しています。

関口拓真

株式会社アマナ
関口 拓真

株式会社アマナ
関口 拓真

日本大学芸術学部写真学科卒業後、2019年にアマナに入社。
プロデューサーとして、3DCG、グラフィック、シズル動画などを中心とした広告ビジュアルの企画・制作業務に携わる。
週末はモータースポーツ関連の活動にも携わっており、車やモータースポーツへ深い関心を持ち続けている。

SOLUTION

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