商品スペックや機能訴求だけでは伝わらない、企業の姿勢や理念をどう届けるか。BtoB領域における広告・広報の役割は、ここ数年で大きく広がりつつあります。そうした潮流を映し出すのが、日本BtoB広告賞です。 第46回 (2025年)では、コーポレートサイトや映像コンテンツなどを通じて、社会性と企業らしさを両立させた作品が数多く登場しました。
本記事では、ウェブサイト部門および映像部門の受賞作の中から注目の6作品をピックアップし、そのクリエイティブの特色や評価ポイントを紹介します。今後の企業ブランディングにおいて何が求められるのか、そのヒントを探ります。
広告主:パシフィックコンサルタンツ株式会社
部門名・受賞区分:ウェブサイト〈企業・学校PR〉の部:金賞
URL:https://www.pacific.co.jp/
作品の概要:
2024年10月にコーポレートサイトをリニューアルし、建設コンサルタントの枠に囚われない「社会インフラに関するコンサルタント」としての企業像や、ビジョン「未来をプロデュースする」を発信しています。トップページには、変化に柔軟に対応し未来を創造するというメッセージを込めたブランディングムービーを配置し、企業の姿勢を直感的に伝えています。
評価ポイント:
BtoBサイトとしての機能性とブランディング性の両立が高く評価されました。具体的には、BtoBコミュニケーションを前提とした明快な画面設計やナビゲーションのわかりやすさといった機能面、そして企業のブランドメッセージを体現したブランディングムービーの表現力など、サイト全体を通した完成度の高さが評価ポイントとなりました。
広告主:株式会社ボールド
部門名・受賞区分:ウェブサイト〈企業・学校PR〉の部:銀賞
URL:https://www.bold.ne.jp/
作品の概要:
エンジニア人材サービス企業のコーポレート/採用サイトです。「エンジニアの人生に光を当てる」ことをテーマに掲げ、キャッチコピー「その生き方を、まっとうする。」に企業の誠実な姿勢を集約しています。デザイン、情報設計、ストーリーテリングを通じてサイト全体で統一感あるブランドの世界観を構築し、エンジニアが生涯現役で活躍し続けられるというメッセージを鮮明に発信しています。
評価ポイント:
エンジニア視点に立ったコンテンツ設計とブランド表現力が高く評価されました。オリジナルの社員紹介ムービーやユーザー導線の工夫、テキスト情報に留まらないリアルな企業像の提示によってターゲット層(エンジニア志望者)の共感を醸成しています。さらに、エンジニアの業務領域やスキル習得プロセスを過不足なく可視化した巧みな情報設計が審査員から高く評価されています。
広告主:株式会社IHIエアロスペース
部門名・受賞区分:ウェブサイト〈新卒採用〉の部:金賞
URL:https://www.ihi.co.jp/ia/recruit/index.html
作品の概要:
「宇宙」を夢見たワクワク感と、現在だからこそ挑戦できるリアルな仕事観とをつなぎ、新入社員候補に訴求する採用サイトです。勤務地が群馬県富岡市であることを踏まえ、地元で暮らす場合から新幹線通勤まで多様な働き方を紹介し、「IHIエアロスペースでの働き方」ページでは具体的な生活イメージを描いています。空の先に宇宙が広がるビジュアル演出や、社員を惑星に見立てた紹介ページなど細部にこだわり、トップページのローディングアニメーションやホバーエフェクトなどテクニカルな演出も随所に盛り込まれています。
評価ポイント:
夢と現実を融合させたクリエイティブが高く評価されました。宇宙産業への憧れと実際の働き方を巧みに両立させたコンセプトに加え、ビジュアルやアニメーションによる訴求力が際立ち、閲覧者を自然とサイトの世界観に引き込む点が秀逸です。こうした演出により、企業の魅力を採用ターゲットに効果的に伝えた点が金賞受賞の決め手となりました。
広告主:株式会社オカムラ
部門名・受賞区分:ウェブサイト〈製品・イベントPR〉の部:銀賞
URL:https://www.okamura.co.jp/office/officekit/
作品の概要:
オフィス空間スタイル診断ツールとして開発されたウェブサイトです。新しいオフィスづくりを検討中のユーザーが、簡単な質問に答えるだけで5つのオフィススタイルの中から最適なスタイルを診断できます。診断結果ページでは、そのスタイルに応じた働き方やオフィス空間の活用例が写真付きで提示され、他のスタイルも比較検討できます。ユーザーに有益なコンテンツを提供することで、単なる宣伝に留まらない価値創出型のサイトとなっています。
評価ポイント:
顧客視点に立ったインタラクティブな提案が評価されました。オフィスづくりの課題を解決する実用的なコンテンツにより、企業ブランドへの信頼感醸成とリード獲得に貢献している点が特徴です。この受賞は、オカムラがBtoB領域で取り組む価値提供型マーケティング活動が高く評価されたものでもあり、従来の広告の枠を超えたDX推進・サービス提案の好例と言えます。
広告主:三菱電機株式会社
部門・受賞区分:映像部門〈採用系映像〉の部:金賞
URL:https://vimeo.com/1089602991/7357d84db8?share=copy
作品の概要:
若手エンジニアチームによるギネス世界記録への挑戦を追ったプロジェクトドキュメンタリー映像です。三菱電機の技術者たちが「パズルキューブを最速で解くロボット」の開発に挑み、0.305秒でルービックキューブを揃える世界最速記録を達成・認定された過程を描いています。テストを重ね苦難を乗り越えるチームの姿と、世界記録達成の瞬間を臨場感たっぷりに伝えることで、技術への情熱と企業のチャレンジ精神を映し出しています。
評価ポイント:
企業のイノベーティブな魅力を体現したストーリー性が高く評価されました。実際に樹立した圧倒的な世界記録は大きな話題を呼び、若手技術者の挑戦と成果を通じて三菱電機の先進性やチームワークを訴求する強力なブランディング映像となりました。こうしたユニークなアプローチが採用マーケティングにも寄与すると評価され、映像部門の金賞に輝いています。
広告主:株式会社タイミー
部門名・受賞区分:映像部門〈採用系映像〉の部:審査委員会特別賞
URL:https://vimeo.com/1089610744/8969703737?share=copy
作品の概要:
アルバイトマッチングサービス企業の採用ブランディング映像で、社員一人ひとりの仕事にまつわる想いとドラマを題材にしたサプライズドキュメンタリーです。「テレビCMなどで知名度はあるものの、社員の本当の姿や仕事の意義が学生に伝わっていない」という課題を受け、企画「At That Timee」では従業員の熱い想いを“社内展示会”という形で可視化し、当人たちにサプライズで見せる演出を採用しています。展示ブースと社員のリアクション、インタビュー映像を組み合わせることでリアルな感動と熱量を伝える仕上がりとなっています。
評価ポイント:
社員の本質的な魅力を引き出すクリエイティブ手法が評価されました。本映像は、社員の語る忘れられない仕事エピソードを展示化したユニークな手法により、企業の持つ熱い想いを採用候補者にダイレクトに届けた点が秀逸です。用意された展示を目の当たりにした社員たちの一発勝負の生の反応を捉えることで、飾らない本音と情熱を映像に凝縮し、視聴者の共感を呼ぶコンテンツに仕上がりました。このように課題解決に直結するストーリーテリングとクリエイティブ性が高く評価され、審査委員会特別賞受賞に至りました。
第46回日本BtoB広告賞では、企業のブランディング力とコミュニケーション設計の巧みさが際立つ作品が多く見られました。主催者の総評でも「もはや“良いものを作る”だけでは十分でない時代」において、BtoB広告は企業の本質を可視化し、社会や市場との信頼関係を築くための重要な役割を担っていると述べられています。
受賞作品に共通するポイントとして、例えば次のようなトレンドが浮かび上がっています。
ローカル志向・地域への貢献
審査では、地方を応援する企業や地域に根ざした取り組みの広告に対してポジティブな評価が多く寄せられました。
サステナビリティへの取り組み
サステナビリティを重視した姿勢もBtoB広告における重要な要素として捉えられており、第45回から新設された「サステナビリティ賞」は、今回も継続して設けられました。
人材採用・企業ブランディングの強化
入社案内や採用サイトなど採用関連の作品が複数入賞しており、企業が自社の魅力やビジョンを就職希望者に伝える人材ブランディングに力を入れていることが伺えます。
分かりやすさとクリエイティブの質
自社の特徴や価値を端的に示し、デザインやコピーまで丁寧に作り込んだ作品も高評価を得ています。
これらの傾向から見えてくるのは、BtoB広告が単なる製品PRではなく、企業そのものの価値や社会に対する約束を伝えるメディアへと進化しているということです。コミュニケーションの質が、企業の信頼を左右する時代。その最前線を走る表現が、今年も数多く誕生していました。
こうした傾向を踏まえ、自社のBtoBコミュニケーションをさらに効果的に高めるにはどうすれば良いでしょうか。
社会との信頼関係を築くには、自社のブランドストーリーを戦略的に再構築し、メッセージを直感的に伝える映像コンテンツを活用することが鍵となりますが、そうした取り組みを自社だけで完結させるのは容易ではありません。
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文:小林拓美
amana WEB PRODUCTION
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amana TVCM/MOVIE
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