生活者の心に寄り添う存在として、毎日の小さなときめきを提供してきたフェイラージャパン(以下、フェイラー)。2025年7月には、新しいブランドムービーが公開され、ブランドの持つ価値や世界観を広く伝えています。
このムービー制作をアマナが担当。訴求したかったポイントやアウトプットに向けてどのような工夫がなされたのか、アマナのビジネスプロデューサー・森洋平、ムービープロデューサー・青木誠、ムービーディレクター・MACO、プランナー・井川文恵が語りました。
FEILER Brand Movie
この案件がスタートしたのは2024年末のこと。フェイラーがブランドムービーを作る計画があり、以前からフェイラーのグラフィック撮影などを担当していたアマナに声がかかりました。アマナではまず、ビジネスプロデューサーの森とムービープロデューサーの青木とでヒアリングを行い、課題の顕在化とムービーの訴求ポイントを明確にしました。
「フェイラーとしては、ブランド評価を作り直したいというお話でした。他ブランドとのコラボ商品が好評で売り上げ自体は好調ですが、『フェイラー』というブランドそのものの価値がきちんと伝わっているのだろうか、という懸念があったそうです」(青木)
「コラボ商品が発売と同時に売り切れてしまうくらいの人気を博しているのに、フェイラーの良さが実は知られていないのでは、という話が出ました。丁寧なものづくりを大切にしているため、大量生産大量販売が難しく、どうしても数量限定になってしまいます。でもユーザーにとっては、なぜたくさん売ってくれないのか?という疑問につながることにも。動画を作りたいというクライアント自身のご要望からスタートしましたが、何をどうアウトプットすればいいかという話を進めていくと、フェイラーが抱えている課題が顕在化してきました」(森)
フェイラーは、1928年に当時ドイツ領だったチェコに工房を構え、1948年にドイツ・ホーエンベルクにて創業した歴史あるブランド。柔らかい手触りの生地は、シュニール織という独特の製法で作られています。1972年からは日本でも販売され、その品質の良さから主なターゲットは富裕層の女性でした。
2012年時点で顧客の高齢化が深刻化していたことから、2014年からリブランディングに取り組み始めました。若年層向けの新商品や販路の拡大、ファンマーケティングなど施策を行い、顧客の平均年齢は30〜40代に。2022年にはブランドメッセージ「心はいつだって踊れる。」を打ち出し、生活者の心にそっと寄り添う、毎日の小さなときめきを提供するブランドとしてイメージを一新しました。
こうした背景を踏まえて、与件整理を行ったのがプランナーの井川です。顕在化した課題についてリサーチを実施し、データから導き出されるターゲット像を絞り込み、コンセプトを練っていきました。
「古くからの顧客は、フェイラーが歴史と伝統に裏打ちされたドイツのブランドであることを知っていますが、コラボ商品などを通して最近ファンになった層には、そうした情報が届いていないのでは、と危惧されていました。実は、『幸せつむぐ、もっと、ずっと』というテーマで作られた、リブランディング前の世界観を表したムービーがすでに存在していました。ただ、そのまま見せるだけでは、最近ファンになった層にはピンとこないかもしれないという懸念があったのです。そこで、リブランディング前と後の双方の顧客層にとってのフェイラーのイメージを毀損しないように意識しながら、整合性を取りつつ、ターゲットが求めるイメージを丁寧に絞り込んでいきました」(井川)
キーワードとなったのが、「機能的価値」と「情緒的価値」。フェイラーにおける「機能的価値」とは、吸水性や速乾性がある、肌触りがいい、耐久性がある、といった品質の良さにつながる特徴を指します。「情緒的価値」とは、リブランディングで打ち出した、毎日の小さなときめきを提供してくれる存在であるという、心に寄り添う思いを表します。こうした価値の背景には、創業以来受け継がれてきた歴史と伝統、そして丁寧なものづくりがあります。
フェイラーというブランドが本質的に持つそれらの価値が、ユーザーにどこまで届いているのか。クライアント自身が抱いていた懸念と実際の認識にずれがないかを明らかにするために、消費者データ分析ツール「Knowns(ノウンズ)」を用いてリサーチを実施しました。
「その結果、ユーザーには『機能的価値(品質の良さなど)』がきちんと知られていることがわかりました。さらに『持つとテンションが上がる』など、『情緒的価値』も理解されているようでした。一方で、フェイラーの背景にある歴史や伝統、丁寧なものづくりについては、十分に伝わっていないことが判明。であれば、それらを『機能的価値』『情緒的価値』の裏付けとして映像に描くべきではないかと考えました。
2つの価値をただ見せるのではなく、その背景にあるブランドの物語として丁寧に伝えることで、ユーザーにより深くフェイラーの魅力が届くのではと感じたのです」(井川)
ムービーの制作を進めていったのが、ムービーディレクターのMACOです。プランニングを元に、複数のコンテを提案。コンセプトをプランナーの井川が「ときめきのひみつ。」と設定し、フェイラーの商品をユーザーが使っているシーンを入れる構成で、Web・店頭用の60秒程度のムービー1本と、広告展開用の15秒ムービー3本で進めることになりました。
「広告展開用の3本は、親子、男性、女友達と、さまざまな属性のユーザーが生活の中で使っているシーンを冒頭で見せることで、他のユーザーが『確かに私たちもこうやって使っているよね』と共感を得られる演出にしました。使用シーンを見せてから、実はドイツでこのような製法で作られていますよ、と技術の部分を見せる展開に。使っている人と作っている人をリンクさせることで、機能的価値と情緒的価値、その背景にあるものづくりの姿勢までもバランス良く伝える構成にしました」(MACO)
FEILER Brand Movie やさしさのひみつ編
FEILER Brand Movie タフなひみつ編
FEILER Brand Movieときめきのひみつ編
ナレーションは説明的になりすぎないように、フェイラーのストーリーを紡ぐような優しく温かみのある言葉で表現。ドイツでのロケは、現地フェイラーの皆さまの温かなご協力のおかげで、ブランドの魅力を丁寧に伝える良質な映像を撮影することができました。
「企業として伝えたいことはたくさんあると思いますが、優先すべきはユーザーにフェイラーのことをよく知ってもらい、もっと好きになってもらうこと。このムービーの目的は販売促進でも認知拡大でもなくて、理解促進だと思いました。ではどうしたらユーザーの心に響くのかと考えた時に、『歴史と伝統を伝えたい』『優良な技術を知ってほしい』といった企業目線が目立ち過ぎないよう、ユーザーが共感できるストーリーで見せることに注力しました」(MACO)
プランナーとディレクターが同じ社内にいることで、ワンストップでムービー制作が可能なアマナの体制。顕在化する前の課題をすくい上げ、クライアントと対話を重ねながら、与件整理、ターゲット設定、コンセプト作成、そしてムービー制作を進めていきました。
「アマナには総合力があります。プロデューサーがクライアントとの関係性の土台作りをしていたので、すぐにスムーズなコミュニケーションが構築され、ムービーの具体化の作業の精度とスピードが上がりました」(井川)
「プランナーのおかげで与件整理も含めて方向性が定まりました。いろいろな知恵が集合していることが、対応力につながっていると思います」
(MACO)
7月に公開されたムービーは、ドイツ本国からもポジティブな反応があったとのことです。フェイラーを使っている人の幸せそうな様子と、作っている人の真剣な表情を通して、これからも小さなときめきを伝え続けていきます。
「今回のように、課題が明確になっていない段階からクライアントと対話を重ねることで、ブランドの本質的な価値を整理し直す機会にもなりました。完成したムービーは単なる映像ではなく、フェイラー自身が自信を持って語れるストーリーになったと感じています」(森)
「ブランドの世界観や歴史を映像でどう伝えるかという難しさはありましたが、クライアントとクリエイティブの橋渡しをする立場として、各メンバーの専門性を信頼しながら進めることができました。方向性が定まってからは、現場全体が自然と同じゴールを目指せていたように感じます」(青木)
<スタッフクレジット>(スポンサー、クライアント以外、すべてアマナ)
スポンサー:フェイラージャパン
クライアント:トラック
ビジネスプロデューサー:森洋平
プランナー:井川文恵
アートディレクター:前田直子
ムービープロデューサー:青木誠
ムービーディレクター:MACO
プロダクションマネジャー:成田貴臣
キャスティング:ニーズプラス
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取材・文:大橋智子
株式会社アマナ
井川 文恵
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井川 文恵
コミュニケーションプランナー。映像制作会社でディレクター、販促支援会社にてプロモーションプランナーを経験後、アマナに入社。BtoC・BtoB・官公庁まで、多種多様なコミュニケーション設計に携わる。特に、キャンペーン・プロモーションなどのアクティベーションプランニングは幅広い経験を持つ。
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MACO
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MACO
ムービープランナー・ディレクター。数社の制作プロダクションで、動画の企画・演出経験を経てアマナに入社。美術大学での経験から、自身で絵を描きイメージをすることを武器に、企画立案から世界観やビジュアルイメージを作ることまでを得意としている。SNS動画、CM、ショートドラマまで、媒体・ジャンルにとらわれないコンテンツ作りに取り組む。
amana TVCM/MOVIE
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TVCMやWeb用の動画、企業紹介ビデオなど、幅広い動画の撮影に対応。長年培ってきたスチル撮影の経験とノウハウを活かして、クオリティの高い動画を制作します。撮影スタジオはもちろんのこと、動画の編集・合成を中心に、ナレーション収録も可能な動画編集スタジオを完備。撮影、編集、ディレクションなど、専門性の高いスキルを持ったスタッフが、動画の制作をサポートします。
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