本記事は企業の広告・ブランド担当者に役立つ本から、気になる一節を数回に分けてご紹介する連載です。読みながら、その本の“考え方”に少しずつ触れていただけます。
変化の激しいAI時代を生き抜くために、拠り所とすべきものは何でしょうか。ここでは人の脳が持つ「利用」と「探索」という特性が、AI時代においてなぜ重要になるのかを紹介します。
~本コンテンツは、書籍『AIで覚醒する脳』(茂木健一郎著・実務教育出版刊)にて、脳科学者の茂木健一郎氏が語るAI時代における人間の脳や感性、創造性が果たす役割から一部抜粋・編集したものです(この記事は第1回/全3回)。
No.2:なぜ世界のトップランナーは「謙虚」であり続けるのか(1月20日公開予定)
No.3:AI時代、ペーパーテストを解く能力にあまり意味はない(1月21日公開予定)
河野太郎前デジタル相が、BBCのトーク番組『HARD Talk』でインタビューを受けたとき、真っ先に問われたのが、「河野大臣、あなたは政治家として3代目ですよね」ということでした。
たしかに、政治家が世襲になっているというのは変な話ではあるのですが、安定した生き方ではあります。
私が日ごろ感じていることの一つに、日本人の多くが安定した生き方を選択しがちということが挙げられます。
私はさまざまな大学で講義をおこなっているのですが、大学に入ること自体が安定だととらえてしまう学生が時々いることに驚かされます。
それこそ一生懸命勉強して、大学に入ったとします。その後の彼らを見ていると、大学に入った瞬間に目標を見失い、「安定型体質」になってしまう学生が時々いるのです。
これは、ビジネスパーソンにも同じことが言えます。
安定を求めてブランド企業と呼ばれる大企業から採用をもらった瞬間に、安定型体質になってしまう。このような傾向を私は「学習された無気力」と呼んでいます。
ただ、こうした安定型体質はこのAI時代で脳を覚醒するための弊害になることは、もはや言うまでもありません。
「今の生活には、それなりに満足している」
そう考える人も少なくないかもしれませんが、つい安定を求めてしまうといった日常の「甘い蜜」に慣れ親しんでしまっている人たちから、AIに次々と仕事を奪われていく危険性があることを認識しなければなりません。
そこで、まずは皆さんに脳の特性を上手に利用して、安定型体質から脱却してほしいと思います。その脳科学的キーワードが、「利用(Exploitation)」と「探索(Exploration)」のバランスです。
この「利用」と「探索」とは、わかりやすく言えば「確実性」と「不確実性」のバランスと、言い換えることができます。
私たち人間に限らず、すべての動物が長い歴史の中で進化し、生き残ってきた背景には、この確実性と不確実性のバランスが極めて重要だったと言われています。
なぜなら、いつどんなときに環境が変化するかわからない、あるいは自分よりも強い動物が現れて、食べ物を奪われてしまうかもしれない。そうした確実な報酬源がなくなってしまう恐れが常にあるからです。
もちろん、だからといって確実な報酬源を持たずに未知なる不確実な報酬源を求めてさまようだけではリスクが大きく、絶滅してしまう可能性もあります。
だからこそ、既知の確実な報酬源を「利用」すること、そして未知の不確実な報酬源を「探索」するというバランスをとることが、生き残るための重要なポイントになっていったというわけです。
AI時代も同じです。ある一定のことに特化したタスクをこなしてくれるAI(確実な報酬源)と無限の可能性を秘めた人間の脳(不確実な報酬源)という両輪を回しながら生きていくということが大切になってきます。
既知の確実な報酬源であるAIを「利用」すること、そして未知の不確実な報酬源である脳を「探索」することは、このAI時代を生きる私たちに課せられた最重要任務と言ってもいいでしょう。
特に、私がこの本で皆さんに推奨したいのが、未知の不確実な報酬源である脳を「探索」するということ。わかりやすい例で言えば、ネット書店のアマゾンで本を買う人が増えてきたことで、出版不況も相まって本の売上が落ちているリアル書店は新しいビジネス戦略を余儀なくされています。
これまで安全圏だと思っていたものが安全圏ではなくなる。これが当たり前の時代だからこそ、未知の不確実な報酬源を「探索」する、いわゆる脳を覚醒させていくことが、脳科学的にも重要だと私は考えているのです。
確実な報酬源であるAIの期待値は、初めから計算できるわけです。
でも、人間の脳の期待値は計り知れない。
そこで、確実な報酬源であるAIを活用しつつも、時代を先読みしたり、環境の変化に適応できるような脳を鍛えていく。そのためには、安定型体質から脱却してどんなことにもチャレンジしていく気構えが重要だということです。
(この記事は第1回/全3回)
No.2:なぜ世界のトップランナーは「謙虚」であり続けるのか(1月20日公開予定)
No.3:AI時代、ペーパーテストを解く能力にあまり意味はない(1月21日公開予定)
▼書籍紹介
生成AIの急速な普及により、マーケティングやコミュニケーションの現場でも「人間にしかできない価値」があらためて問われています。本書は脳科学者・茂木健一郎氏が、AI時代において人間の脳や感性、創造性が果たす役割を解き明かす一冊です。
論理や効率ではAIが優位に立つ一方で、共感を生み出す発想力や直感、物語を紡ぐ力は人間ならではの強み。広告・ブランディング・コンテンツ開発において、これから何を磨き、どう価値を生み出すべきか。AIと競うのではなく、AIを活用しながら“人間らしさ”を武器にするための視座を与えてくれます。
▼書籍情報
書名:AIで覚醒する脳 AIには絶対できないこと 人間だけができること
著者:茂木健一郎
出版社:実務教育出版
発売日:2025年9月29日
リンク:https://amzn.asia/d/116iGtF
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