AIをクリエイターに育てるプロンプト③〜AIに「メソッド(秘伝)」を注入する

AIネイティブマーケティング
本記事は企業の広告・ブランド担当者に役立つ本から、気になる一節を数回に分けてご紹介する連載です。読みながら、その本の“考え方”に少しずつ触れていただけます。

AIとのやり取りを重ねるうちに、出力の質が安定し、狙った方向に近づいていく感覚を覚えることがあります。その違いを生むのは「どんな考え方をAIに与えているか」です。クリエイティブディレクター並河 進氏による、実践的な思考法をもとにしたAIをクリエイターに育てる5のやり方から、今回は「メソッドを注入する」プロンプトを紹介します。


~本コンテンツは、書籍『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』(並河 進著・宣伝会議刊)から一部を抜粋・編集したものです(この記事は第3回/全3回)。 

No.1:AIをクリエイターに育てるプロンプト①〜AIを「助手」にする 

 No.2:AIをクリエイターに育てるプロンプト②〜AIに「ダメ出し」をする


ChatGPTやGeminiにキャッチフレーズをお願いしても、最初からなかなかいいコピーができあがってこない。コピーライターなら、そんな経験があるのではないでしょうか?

特にクリエイティブのような、創造性が必要な領域では、LLM(大規模言語モデル) の平均的で優等生的な答えでは十分とは言えません。

このコラムは、生成AIを使いこなしたいクリエイターのためのAI育成講座です。話をわかりやすくするために、コピーライティングに絞って話しますが、ビジュアルでも、テレビCMでも考え方は同じです。

第1回「助手方式」、第2回「ダメ出し方式」に続き、並河流、AIを育てる5つのやり方から、ここでは「メソッド注入方式」を紹介します。

メソッド方式とは?

自分 or 誰かのメソッドを注入したプロンプトをつくって、そのメソッドでつくらせる方法です。

かなりパワフルな方法なのですが、メソッドの幅が出力の幅の限界になります。

私は、自分自身のコピーの書き方を、10のメソッドにまとめました。

自分自身で編み出した秘伝(と言いつつ、この本に書いてしまいますが)の方法です。

並河流、コピーライティング10の技

言葉から入る

言葉は人間の意識を映し出す鏡。時には古い概念、共通の考え方を反映していることもあれば、すでに心の奥底にある言葉(原体験)が強く残っていて、それを変える必要がある場合もあります。

心の奥底にある言葉(原体験)

個人的な体験が、他の人の共感を呼ぶことは少なくありません。まずは、自分の心の奥底から出発し、個人的な経験や感情を言葉にしてみましょう。

目線を変える

主役を変えること。それは視点を切り替えるということでもあります。たとえば、自動車に乗っているときは歩行者に怒り、歩行者になると自動車に怒る。視点を変えることで、新たな気づきや気持ちが生まれるのです。

わかりやすく例える

「東京ドーム何個分」などよく使われる例え話ではなく、思考を促すような例え話、その商品にぴったりの新しい比喩を考えてみましょう。

命名する

言葉に名前をつける力は非常に強力です。「クールビズ」と名付けられた瞬間、ビジネススタイルが一新され、従来の常識が塗り替えられました。「キモ可愛い」なども、命名されたことで存在に新たな価値が生まれるのです。

見立てる

「カレーは飲み物」という言葉のように、何かを別のものに見立てることで新たな視点が生まれます。「美味しいもの=飲み物」として捉える感覚は、単なる言葉遊びではなく、想像力を広げる鍵となります。

競合を見直す

競合相手を変えることで、新たな切り口が見えてきます。旅の競合は、他の県への旅ではなく、ゲームかもしれないし、家でだらだらしていることかもしれません。

世の中の流れ

「転職」をテーマにした広告を見てみると、「働き方」の変化を反映して、それぞれの時代に合ったメッセージが発信されています。世の中の流れに敏感であることが、広告の効果を高める秘訣です。

掛け声をつくる

「〜しよう。」といった掛け声型のコピーです。シンプルでありながら、強く心に響く掛け声は、

言葉の力を再認識させてくれます。

ダジャレ

言葉遊び、つまりダジャレを駆使したコピーもまた、記憶に残るものがあります。視覚やフォントのデザインと相まって、強い印象を与える広告になることがあります。


このメソッドで、LLMに「福島の桃」のコピーを書かせてみましょう。

こちらが「福島の桃のおいしさを伝えるコピー」を、10の技ごとに1本ずつ作成したものです:

① 言葉から入る

「これは“果実”じゃない、“感動”だ。」

──桃は単なる果物という既成概念を崩し、感情を動かす存在として提示。

② 心の奥底にある言葉(原体験)

「“あの夏、冷やした桃の甘さが、帰省の記憶をすべて包んでいた。”」

──幼少期の記憶や家族との時間に結びつけることで共感を引き出します。

③ 目線を変える

「木になったままの桃から見える、空の色を知ってますか?」

──桃の視点に立って語りかけることで、感情的距離を縮めます。

④ わかりやすく例える

「まるで、太陽を丸ごと食べてるみたい。」

──桃の甘さやジューシーさを想像しやすい比喩で表現。

⑤ 命名する

「どろり桃(もも)」

──濃密な食感と甘さを一言で印象づける新しいネーミング。

⑥ 見立てる

「福島の桃は、夏の宝石です。」

──価値あるもの(宝石)に見立てることで希少性と美しさを強調。

⑦ 競合を見直す

「デザートじゃなく、これは一つの体験。」

──他の果物やスイーツではなく、感覚体験そのものとして差別化。

⑧ 世の中の流れ

「添加物ゼロのスイーツが、枝になってる。」

──健康志向や自然派嗜好のトレンドを反映した訴求。

⑨ 掛け声をつくる

「かじれ、福島。しみこめ、夏。」

──力強く短く、身体に響くリズムで構成されたキャッチ。

⑩ ダジャレ

「ももったいない!食べなきゃ損な福島の桃」

──語呂の良さとユーモアで印象に残りやすく。


少し変なコピーも混じっていますが、そこはご愛嬌。なかなかいいコピーもあります。

なにせ、この方法は、何ラウンドでも生成することができます。


(この記事は第3回/全3回)

No.1:AIをクリエイターに育てるプロンプト①〜AIを「助手」にする 

No.2:AIをクリエイターに育てるプロンプト②〜AIに「ダメ出し」をする 


▼書籍紹介

生成AIが業務に欠かせない存在となるなかで、人とAIはどのような関係を築くべきなのでしょう。本書は、広告・クリエイティブの現場で培われた思考と実践をもとに、AIを単なる効率化の手段ではなく、思考や表現を広げるパートナーとして活用するための考え方を紹介する一冊です。AIとの対話の重ね方、判断軸の持ち方など、マーケティング、事業開発、コミュニケーション、クリエイティブに関わる人にとって参考となる内容がまとめられています。

▼書籍情報

書名:AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる 
著者:並河 進 
出版社:宣伝会議
発売日:2025年10月17日
リンク:https://www.sendenkaigi.com/marketing/books/book_35811/ 


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文・編集:桑原勲

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A³|amana AI Architectsは、「AIの進化を、美意識の進化へ」というビジョンのもと、生成AIを“ブランドに最適化する”ソリューション「AI Creative Architecture」を核に、企業のブランド表現を次世代の制作基準へアップデートするプロフェッショナル集団です。

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