「#ビールとおしぼりで乾杯しよ 2020年のマーケティングを新年に語る夜」レポート後編

近年オウンドメディアなどの施策に代表されるコンテンツマーケティングや、2019年も盛り上がりを見せたコミュニティマーケティングなどにより、生活者に寄り添ったマーケティング手法が、多くの企業においても広がりを見せています。

一方で、そうしたマーケティング手法は、まだまだ手探りで取り組んでいるマーケッターの方も多いのではないでしょうか?

今回はコンテンツマーケティングやコミュニティマーケティングについてのトップランナーであるキリン・平山高敏さん、IKEUCHII ORGANIC・牟田口武志さんをお招きしたトークイベントを開催。後半ではライトニングトークの登壇者、合同会社Obu・小父内信也(おぶないしんや)さん、株式会社お金のデザイン・和田崇雅さん、株式会社シューマツワーカー・南雲よしえさん3名を加えた5人に登場してもらいました。

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ーー後半はライトニングトークということで、まずは登壇者の方にそれぞれ5分くらいお話いただければと思います。

令和のコミュニティは「マルチ」と「クロス」

小父内:こんばんは、小父内です。よろしくお願いします!元々は名刺アプリEightのコミュニティマネージャーを務めていました。現在は退社して7社ほどのコミュニティのコンサルティングをしていて、日本ではトップクラスのコミュニティに対する知見があります。今日はコミュニティ2.0ということで、「令和2年に加速する2つのこと」をお話しようと思います。

その2つとは「マルチ」と「クロス」です。まずは「マルチコミュニティ」によるセルフコミュニティ化の促進が進むと思っています。すでにみなさんは学生時代の友達や地元、会社など、複数のコミュニティに属していますよね。これからの未来はさらにコミュニティに属する人が増えていき、マルチ化が加速していきます。その時に自分を中心としたセルフコミュニティがより明確になり、セルフブランディングにも直結すると考えています。そうすると自分がどういったコミュニティに属して、どんな役割・立場なのかを意識することが重要になってくるんですね。

もうひとつは「クロスコミュニティ」によるALL Happyモデルへの移行が確実に進んでいきます。今までスポンサーや協賛と呼ばれていたものは与えるというイメージが強かったと思いますが、これからは一緒に作っていく共創というモデルが主流になり、誰かが勝ち負けということではなく、そこに関わるみんなが幸せになるモデルになっていくと考えています。当然ですが、やっぱりみんなが幸せになることをやっていきたいですよね。

例えば、4月にEightとfreeeのコミュニティ同士でコラボイベントを開催する予定です。freeeユーザーの税理士さんはすごく名刺を交換されるので、そこに対してEightはイノベーションの生み出し方を提案していくことを考えています。誰も損しないので、お互いにとっていいことですよね。例えば今日登壇している5人でもコラボはできるんです。KIRINさんのビールを飲みながらIKEUCHII ORGANICのおしぼりで拭きつつ、僕が名刺交換をしながら、南雲さんが週末の副業の話をして、その先の投資の話を和田さんがするみたいな。こういったことが今後も増えていくと思うので、コミュニティで何が得られるかを考えられるといいかなと思います。以上です、ありがとうございました!

平山:KIRINが昨年11月にポプラ社さんと「 #夜更けのおつまみ 」という投稿コンテストでコラボさせていただいたんですよね。ポプラ社さんはもともとnoteアカウントをお持ちでしたので、「noteで次の作家を見つけましょう」とコラボすることにしたんです。受賞した作品はポプラ社から出版される書籍になるという企画にしたのですが、こんな風に企業同士が「クロス」して新しいお客さまと繋がっていくことは今後もあるのかなと。

ーーでは次に株式会社お金のデザインの和田さんお願いします。

アクションを起こして少しずつお金を積み立てていくことの重要性

和田:株式会社お金のデザインでマーケティングを担当しています、和田と申します。よろしくお願いいたします。今日は「お金の滑らかな体験とは」というテーマでお話します。お金のデザインでは「THEO」という資産運用のサービスや、企業の年金基金を運用するサービスなどを展開しています。弊社も若い方や熱量の高いユーザーさん向けに時々コミュニティイベントを開催していますが、特に新社会人の方から「資産運用ってやったほうがいいんですよね?でもどうやってやるの?」と聞かれることが多いです。

日本は圧倒的に現金保有者が多く、50%以上の方が定期預金や普通預金を使用している状況です。しかしアメリカやヨーロッパなどグローバルな視点で見ると、現金保有者が少ないんですね。アメリカでは株式が多いので運用後にきちんと還元されていますが、日本は定期預金なのでなかなか増えないんですよね。短く言うと「お金を貯めるのが得意な日本人。でも増やすのが得意なのは欧米人」な状況なので、個人的な想いとして変えていきたいと思っています。

僕の私見ですが、欧米人は収入を得た場合、投資した残りを支出に使う考え方。一方、日本人は収入が入って支出に使った残りがあれば貯蓄するケースが多いです。日本は高度経済成長期に年利8%だった記憶が今でもあるので、貯金しておけば増えると思われがちですが、今は時代が違います。実際にTHEOを3年間運用して25%増えている実績があるので、アクションを起こすことが大事だと思います。

お金の話をすると「リーマンショックのような状況がまた起きたらどうするの?」とよく言われます。確かにリーマンショックのように一時的に下がるときもありますが、10年20年という長期スパンで見ると確実に世界経済は成長し続けているんです。楽しく老後を過ごすためのコツとして定年までコツコツ積み立てていくことが大事なんですけど、それがなかなか難しいですよね。月に3万や5万円でも月々積み立てていくことができると、老後2000万円必要だと言われる問題もクリアできるのではないかと思います。お客様と話してコミュニティを作りつつ、楽しい老後の暮らしを考えていければいいなと思っています。

ーーまだまだ投資する人は少ないですよね。

和田:そうですね。やっぱり投資と言うとマイナスのリスクを考える人が多くて。一部下がる瞬間があっても、長期的に見れば伸びているんです。そこをもっと伝えていけたらと思っています。

コミュニティを使った施策はすぐに結果を求めないこと

ーーでは株式会社シューマツワーカーの南雲さん、よろしくお願いいたします。

南雲:副業のマッチングサービスを行なっている会社、シューマツワーカーの南雲です。コミュニティマネージャーという立ち位置で、外部のエンジニアさんとのコミュニティ「シューマイ」の企画運営やユーザーフォローなどを行なっています。私は今までに14回ほど転職をしてきて、よしなにお仕事をするお節介な便利人としてコミュニティマネージャーが適していると思っているので、その観点を活かして今日はお話できたらと思います。本日お越しいただいている方の中でコミュニティマネージャーの方はどれくらいいますか?

南雲:めっちゃ少ないですね。今日は「コミュニティ作りでやるべきこと!」をお伝えしていこうかなと思います。私たちが運営しているコミュニティ「シューマイ」では世界をテックリードする日本人エンジニアを多く輩出したいという気持ちから生まれました。企業でもよく「コミュニティ作って」と言われて作ることになったケースも多いと思います。とはいえコミュニティを作るのも簡単でなく、コミュニティとコミュニティマーケティングは分けて考えてほしいと思っています。コミュニティ自体は共通の関心を持つ人たちの集まりのことで、コミュニティマーケティングはコミュニティを積極的に活用するマーケティング施策のこと。でも施策を行うにはまずコミュニティを作らなきゃいけないということで、コミュニティマネージャーが必要になってきます。

私がコミュニティ企画運営で心がけていることのひとつめが、「KPIをとにかくインパクトのあるものにすること」。社内にも外部にも言いやすいことが大事です。実際の例としてシューマイでは「ちょっと優秀なエンジニアを1年で1,000人集める」としました。2つめは「飽きさせない努力をすること」。刺激と安心のバランスがめちゃくちゃ大事です。3つめはマーケティングをする方に多いと感じていたんですけど、「ビジネス感を出さないこと」。ユーザーやコミュニティメンバーからすると、ビジネス感が出ると利用されていると思ってしまい、離れたがる人が出てきます。これは特にコミュニティマネージャーにお任せしてほしい部分ですね。そしてコミュニティを使った施策はコンバージョンしにくいので、即結果を求めない方がいいことを頭に入れておいてもらえればと思います。

またコミュニティには3つの型があります。ひとつはアイドルのような1対Nの形。2つ目は先生と生徒のようなみんながやりとりできるサロン型。3つはN対Nのネットワークのつながりですね。この繋がりを作っておくと知らないところで拡散されている力が働くので、私はネットワークの繋がりを作ろうとしています。

最後に皆さんにお伺いしたいことがあります。「サービスを利用するユーザー」と「サービスを提供する企業」のどちらを主語にコミュニティを運営していますか?一旦私のライトニングトークは以上になりますが、皆さんの意見を伺えたらと思います。

ユーザーにも企業にも主語を持たせる

ーー早速ですが、小父内さんいかがですか?

小父内:両方です!両方の目線がないとダメだなと思っていて。最近は自然とユーザー目線に立てるようになったからこそ、ユーザー目線と言わなくなり、横からのフラットな視点で見ることができるようになりました。僕は明確に分ける必要もないかなと思います。

南雲:両方やります!

牟田口:どっちが正解とかはないと思うのですが……。オウンドメディアでコミュニティを運営する立場としては、読者も出てくださる法人の方も、誰もが嫌な思いをさせないのは大事だと思っています。どちらが主語なのかと言うよりは、どちらも大事なのかなと。

平山:コミュニティを運営する上で大事なことは、所属欲、役割、返報性の法則の3つと向き合うことだと思っています。所属欲というのは、参加者がそのコミュニティに属していることに対する喜びが何かを設計することです。役割というのは、そのコミュニティの中で参加者が役割を持っていることを自覚できるようなコミュニケーション設計をすること。そして返報性の法則については、参加者から自発的なリファラルをしてもらうだけのベネフィットを主体者からしっかりと提供することです。どちらにせよきちんと主体者側が「主語」を持って語りかけなければコミュニティの一体感は出なくなりますし、参加者の「主語」がしっかりと行き交う場にしなければコミュニティはうまくいかないと思っています。

和田:特に金融サービスはコミュニティが大事だと思っていて。お金の話って普段友達となかなかしないじゃないですか。でもすごく親しい人とは話すんですよね。だからユーザーさん同士で紹介してもらうのはすごく大事なことだと思っています。弊社のサービスではお客様によって運用する金融商品の割合が異なるサービスなので、実績の運用実績の数字が出しづらい関係もあり、その分ユーザーさんの意見が大事になってきます。ただTwitterやFacebookのSNSに書くことはなかなかないので、オフラインでどのように伝えていくかが重要になってきますね。

ーー南雲さん、いかがですか?

南雲:両方できたらいいってことですね。企業とユーザーの板挟みになってしまっているコミュニティマネージャーが多いと思っていていて。だから「両方大事だよ」って言ってもらえたことにすごく安心しました。

平山:とはいえ、まずは主体者側が自分の足を使ってユーザーと繋がりにいかないとコミュニティは破綻すると思っています。これは声を大にして言いたいですね。その上でテクニック的な部分でコミュニティマネージャーの方達の力をお借りするのがいいかなと。

コミュニティの作り方

ーー昨年あたりからコミュニティマネージャーと名乗る人たちが増えてきていますが、どのようにコミュニティを作り上げてきたかを少しお話いただけますか?

南雲:ヒアリングからですね。身近にエンジニアさんがたくさんいらっしゃったので、協力してもらいながら作り上げてきました。

和田:プロダクトのロードマップを考えるときにも、お客様の声も聞かなきゃいけないと思い、オフラインでヒアリングできるような場面を作ろうと思いました。施策に対しての意見をその場でお客さまに直接聞けるのは、コミュニティのメリットだと思いますね。

ーー最初からコミュニティを作ろうと考えていたんですか?

和田:最初はイベントを開催するところから始めました。普段お金の話をしない人がほとんどですが、実は話したいと思っている人は多いんですよね。なのでイベントを開くと、熱く語ってくれる人もいらっしゃったことでコミュニティに発展していきました。

小父内:僕らは4人から始まりましたね。最初は私と広報担当とヘビーユーザーさんでご飯を食べに行きました。当時はまだコミュニティも全然ないときでしたが、コミュニティが生まれるきっかけになったと思います。

ーーまずはコミュニティの有無に関わらず、ユーザーさんの声を聞くところから始められているんですね。イベント運営時に心がけていることはありますか?

牟田口:一度に大きく行わないことですね。なんとなくたくさん人数を集めるのではなく、少人数でも良いので、きちんと我々のタオルを良いと思ってくださる方を集めた方が良いと思います。いきなり100人規模のイベントを開催するのではなく、まずは5人や10人くらいで小さく始める方が良いのかなと。

小父内:工場の見学は何人規模で行われてるんですか?

牟田口:40〜50人が限界ですね。

小父内:なるほど。Eightも45人なんですよね。最初は20人だったのですが、20〜30人くらいから始めるのは良いと思っています。きちんと見渡せる範囲で、ユーザーさんと向き合えるかが大事ですね。

平山:コミュニティの中でおもてなしをしたいのか、ユーザーさんに役割を与えて発散させたいのかなど、目的によって最適な人数やコミュニケーションの仕方は変わってくるのかなと思います。

南雲:私は質も量も大事だと思っていました。そして新規とリピーターを両方獲得するためにイベントを定期開催していましたね。3つくらいのテーマをローテーションしながら、新しいものも取り入れて新規の方を取り入れていたら、雪だるま式にどんどん大きくなっていきました。

小父内:リピーターはどのくらいの割合でいるんですか?

南雲:リピーターはだいたい2〜3割で、残りが新規の方です。イベント後にはアンケート実施してます。あとは、運営メンバーにはこだわっています。いろんな反応を恐れずに言いますと、女性で雰囲気が柔らかい人をアサインしていて、そうすると自然とセールス感や威圧感がなくなりますね。正直言うと可愛いいなって思う人と運営してることが多いです(笑)

コミュニティにおいてユーザーが何を求めているか

ーー時間がなくなってきましたので、来場者の方からいただいた質問からピックアップしていきます。「コミュニティにおいてユーザーが何を求めているか」について、どのように考えているかお聞きできればと思います。

小父内:まずは「場」を提供しないと何も起こらないですよね。信頼できる場を用意した上で、みなさんに何をしたいか聞くんです。そうするとそのプロダクトならではのコミュニティが生まれてきます。Eightでは楽しく出会える場を提供していて、コミュニティでの出会いからイベントやビジネスに発展していく。だからみなさんもプロダクトに応じたコミュニティを提供していくことを頭に入れるべきですね。そして信頼を構築することは、全てのコミュニティにおいて大前提だと思います。

平山:すごく難しい質問ですが、どんな人と繋がりたいのかが前提にないと接点すらわからないと思うんですよね。クラフトビールをはじめとした新しいカルチャーに興味のある人が多くなっているという肌感があったので、キリンはnoteを始めて接点を作りました。IKEUCHIIORGANICさんでは愛用者の声を表に出すことで、響く人に結びつくだろうという考えですよね。コンテンツマーケティングやコミュニティマーケティングが流行っているから行うのではなく、「どんな人とどんな接点を作りたいか」の前提がないと何も生まれないのではないかと思います。テクニックは色々あると思いますが、まずは自分でメディアやコミュニティに触れてみることがスタートなのではないでしょうか。

牟田口:平山さんには共感することが多いのですが、ユーザーが何に関心があるかをすごく重視する時代にはなっているなと。好きなものをどんどん発信して観測し続けることが必要かなと思っています。例えば我々のオーナーは洗濯が大好きなんですよ。お客さんから洗濯についての質問があると、喜んで30分くらい話すほど。そのうち「IKEUCHIIORGANICに洗濯マニアがいるぞ」という噂がパナソニックの人に伝わってみたいで、タオルコースのある洗濯機を作りたいという話が来たんですよね。そして昨年の11月に初めてタオルコースが搭載された洗濯機が発売されたんです。これは好きなものを発信し続けた結果だと思いますね。

2020年のマーケティング施策について

ーー素晴らしいですね。自分から発信して接点を作っていく姿勢が大事ですね。最後に2020年にやろうと考えていることや、マーケティングについて一言いただけますでしょうか。

牟田口:今年やりたいこととしては、お客様とIKEUCHI ORGANICのタオルを愛用して使ってくれている取引先の方をもっと繋げていきたいです。昨年オウンドメディアを1年運用していて見えなかった部分の効果は、メディアに出た人同士が繋がったことですね。レストランの人が美容師のところに髪を切りに行ったり。メディアに出た人や共感してくださった方でイベントも開いていきたいと思っています。トレンドを知る前に自分たちのお客さんを知ることがすごく大事だと思っていて。SNSを見るとIKEUCHIIORGANIのいいところは出てきても、悪いところって出てこないんですよね。でも不満は必ずあるはずなので、先日も愛用してくださっているユーザーさんに会いに行きました。ユーザーが求めることは世の中にあるのではなく、お客さんの中にあるのかなと思っています。

平山:オウンドメディアとしてのコンテンツでいうとジャーナルスティックな視線を持ちたいと考えています。キリンは飲料メーカーの中で歴史もある会社。そして今は多様なお酒との付き合い方がある時代です。なので例えば、お酒を飲まない選択をした方の話を聞いてみたいですね。乾杯はコミュニケーションのツールのひとつで、そういう観点からもお酒そのものを捉え直す機会をメンバーが持つことは大事だと思っています。あとはもっとnoteの中でクリエイターさんをコラボをしてみたいですね。まずは我々の想いをクリエイターさんに共感してもらい、一緒にクリエイトした先でお客さまから「キリンいいよね」という声があがってくれば嬉しいですね。

ーーこのような場を設けているのも、まさに「クロスが生まれればいいな」という思いもあります。今日のお話を聞いて、コミュニティマーケティングではユーザーさんの声を聞く中で施策が生まれていく流れであることを感じました。ぜひ参考にしていただければと思います。トークセッションは以上になります。改めて、みなさんありがとうございました!

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