これからのコミュニケーションデザインの作り方
その「プロセス」が生み出す企業価値

vol.80

これからのコミュニケーションデザインの作り方

Text by Mitsuhiro Wakayama
Photograph by Ayumi Okubo

企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベントが2022年5月25日に開催されました。8つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎えたトークセッションや講演、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。テーマ「これからのコミュニケーションデザインの作り方」の回を紹介します。


グローバルな規模で優れたブランドコミュニケーションを展開するLIXIL。その成功の秘訣は一体どこにあるのでしょうか? LIXILのコミュニケーションデザインの一翼を担うオガワカズヒロさんは「よい社内コミュニケーション」こそ重要だと言います。本イベントでは株式会社アマナの池永一も登壇し、建築開口部に特化したLIXILのブランド・TOSTEMの事例を中心に、どんな企業でも始められる「デザイン主導の利益貢献」についてトークしました。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオからリアルタイムで配信を行いました。

優れたクリエイティブは「社内のコミュニケーション」から

オガワカズヒロ(株式会社LIXIL/以下、オガワ):われわれがTOSTEMブランドの方向性を議論し始めたのは、4年前のことでした。当初は悶々としていましたが、コミュニケーションを少しだけ見直すことで、アウトプットの質が大きく向上していきました。そしてなにより、社内各部署の関係性がすごく良くなったことは価値ある成果だと思っています。今日お話しする我々の取り組みが、少しでもみなさんの参考になったら嬉しいです。

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オガワ:ブランドを担当していると、悩み事っていろいろあると思うんですよね。ブランドがうまく機能しない、なんかダサい、安くしか買ってもらえない、とか。そんなときは、コミュニケーションデザインを少しチューニングすることをおすすめします。ここでいうコミュニケーションデザインとは「商材をグラフィック表現を使ってわかりやすくパッケージしたもの」を指します。アマナのコミュニケーションデザインはいつもかっこいいなと思っているんですけど、池永さんは普段どんなことを心がけているんですか? 

池永一(株式会社アマナ/以下、池永):やはり「ブランド理解」と「消費者理解」ですね。いずれにも心を傾けて深く追求し、質の高いインサイトをクライアントに提供したいと常々思っています。

20220525_amanalive_2_2.jpg(左から)株式会社アマナの池永一、株式会社LIXILのオガワカズヒロさん。

オガワ:なるほど、それが良質なアイデアやビジュアルの秘訣というわけですね。

池永:ただ、そうは言っても、良いアイデアやビジュアルがあれば万事OKというわけではなくて。それを活かすためには、オガワさんがおっしゃったように「コミュニケーションデザインを少しチューニングすること」が不可欠だと思います。

オガワ:僕がよく事業部のメンバーに対して言うのは「デザイナーやアートディレクターをうまく使え」ということです。効率よく社内外注しろという意味ではありません。事業部にできないことをデザインチームがやり、デザインチームにできないことを事業部が率先してやるという意味です。

これはTOSTEMブランドがリファインされる以前の話ですが、まず口火になったのは「ロゴデザインを刷新しよう」という提案でした。しかし、社内の気持ちはバラバラ。そこで池永さんたちと作ったのがブランドムービーでした。このビジュアルのおかげで、バラバラだった事業部やデザインチームの心が1つになったんです。

20220525_amanalive_2_3.jpgLIXIL Global Design

オガワ:大切なことは「みんなの想いのよりしろをつくる」ということです。ブランドムービーでなくても、きっかけは別になんでもいい。想いが一緒にならなければ、インナーコミュニケーションはうまくいきません。アウターとのコミュニケーションを図ろうとするなら、まずは自分たちのコミュニケーションを円滑にすることが肝心だと思います。

デザインは難しくない、大切なのはゆっくり積み上げること

オガワ:これからの企業価値は「クリエイティブチームを活用できるか否か」にかかっている気がするんですが、池永さんはどう思いますか?

池永:クリエイティブチームとして実働する側としては、自分たちのポジションや得意分野をどう発信するかが大事だなと思っています。先ほどのブランドムービーが「巻き込み方」の一例だとすれば、ポテンシャルの発信は「巻き込まれ方」に関する方法論というか。

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オガワ:クリエイティブの要件を挙げるとすると、この5つなんじゃないかと思います。全員の理解を統一して、共感を得て、共に創り、規定化して、運用していく。これはデザインにおけるPDCAと言えるのかもしれません。昔だと、大御所のデザイナーが考案したロゴをいきなり規定化して「明日からこれを運用しろ!」なんてことがありましたが、そうではなくて。押し付けられたデザインは適切に運用されませんから、やはり社内の円滑なコミュニケーションのもと、共通理解とモチベーションをもって共にデザインを創り、スパイラルアップさせていくことが重要だと思います。

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オガワ:デザインは難しいことではありません。社内のクリエイティブを担う人材、あるいはデザイン部門があれば、そこのメンバーに意見を聞くところから始めてみるのが良いと思います。先ほども言ったように、社内外注ではなく、あくまでリスペクトを持った意見交換であることが肝要です。

また、1つの事業・クリエイティブを進めていくにあたっては社外の協力先もたくさんあると思います。彼らも交えて社内外で議論しながら、積み上げていくことが大事ですね。したがって、クリエイティブに力を入れ始めたからと言って、いきなり何かが変わるわけではありません。それをゆっくり、ゆっくり上げていくことを重視してください。

まずは目指すゴールイメージを描き、バックキャストしていく。表現のオン/オフを設けて規定化し運用していきましょう。この表現のオン/オフについて、少し補足しますね。議論の俎上に載せたあるデザインを「これはダメだから却下」と即断するのはナンセンスです。そういう時は「これもいい表現ではあるけれど、ウチとして今出すべきものではないよね」と考える。これが「表現をオフ」にした状態です。そのようなオン/オフの規定・基準を通して、次は表現を監査し修正を繰り返していきましょう。するとチーム内部の人員が変わっても「これはウチらしい/らしくない」という判断が自然とできるようになります。体制が維持され、アウトプットの品質が安定してくるということです。

20220525_amanalive_2_6.jpg会場となった『deepLIVE™️』配信スタジオにて。池永一。

池永:正解・不正解の基準というか、立ち戻れる場所があるとクリエイティブの強度は格段に上がりますよね。

オガワ:そうですね。あと、オン/オフの基準って時代によって変わるんですよね。だから、良いクリエイティブができても放っておいていいわけじゃなくて、時代のトンマナに合わせて修正を繰り返していくことが重要ですね。

20220525_amanalive_2_7.jpg会場となった『deepLIVE™️』配信スタジオにて。オガワカズヒロさん。

オガワ:ここまでお話ししてきたことを意識すると、常に同じ顔つき、同じ声色で情報を発信することができます。グラフィックや写真のクオリティが統一されることで、いわゆる「脈絡一貫したデザイン」ができあがるわけです。同時に、そこに至るまでのコミュニケーションが改善されることにも価値があります。社内のコミュニケーションが良くなることで、デザイン発信の利益貢献も可能になるんじゃないかなと思います。

なかなか難しいことだと思いますが、ゆるやかに、やさしく、事業部とデザインチームを絡めながら、良いコミュニケーションのかたちがデザインされていくといいですね。今日のお話がそのきっかけになれば幸いです。

SOLUTION

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deepLIVEは、リアルタイムCGと最新鋭のバーチャル・プロダクションシステムを備えた自社スタジオの活⽤により、 企業やブランド固有のニーズに即した企画立案〜リアルとバーチャルの垣根を超え共感を生む深い(ディープな)体験構築が可能、新たな体験創出でデジタルコミュニケーションにおける様々な企業課題の解決をサポートします。

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