人と人の繋がりを作る社内コミュニケーション

vol.89

人と人の繋がりを作る社内コミュニケーション

Text by Mitsuhiro Wakayama
Photo by Yushi Kaku

企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベント「amana LIVE 2022 Autumn」が2022年10月27日に開催されました。7つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎え、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。今回は、テーマ「人と人の繋がりを作る社内コミュニケーション」の回を紹介します。


新型コロナウイルス感染拡大を契機に、多くの企業で業務プロセスや働き方の変革が進みました。働き方が多様化するなか、組織力を落とすことなく成果を上げていくにはどのような施策が必要なのでしょうか。単なる情報共有にとどまらず、若手社員のOJT(実務を体験させながら仕事を覚えてもらう教育手法)の場とするなど、Web社内メディアを積極的に活用している伊東屋・企画開発会議室の吉田彩乃さんが登壇。アマナにてWeb社内報・ナレッジ共有サービス「XBOARD(クロスボード)」を担当する鈴木達弥と、人材開発を担当するHR managementの今井美沙と共に、ニューノーマルな時代の人材育成におけるWeb社内メディア活用を語りました。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオから配信を行いました。

社内メディアを活用したインターナルコミュニケーションの可能性

鈴木達弥(アマナ/以下、鈴木):このトークセッションではインターナルコミュニケーションや人材開発(HR)についてお話ししていきます。その中でも今回は「社内メディア」に主眼を置き、活用法や効果を事例をもとに紹介していきます。

いわずもがな、社内メディアはインターナルコミュニケーションの推進手段の1つです。では、なぜインターナルコミュニケーションが必要かと言えば、それは端的に「社内のヒト・コト・モノ・オモイが見える化された状態になるため」です。そうした状態になることで、社内でビジョンへの共感やナレッジの共有が進み、社外での競争力が養われていきます。

また、インターナルコミュニケーションが活性化された環境ではイノベーションが起こりやすいとされています。社内コミュニケーションは評価がしづらく、定量的に捉えづらい部分があると思いますが、未来に向かって企業の力を高めていく上では非常に重要な要素です。特に従業員エンゲージメント(自社への信頼、貢献へのモチベーション)につながることが予想され、生産性や顧客評価の向上、離職率や事故発生率などの低下が期待できます。

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鈴木:社内のヒト・コト・モノ・オモイが見える化された状態・環境を作るためには、継続的な施策が不可欠です。この点において、社内メディアというツールはとても大切だと言えます。弊社では「XBOARD」という社内メディア専用のプラットフォームを開発・提供しており、すでにさまざまな企業にご活用いただいています。本日は「XBOARD」を実際に導入されている株式会社伊東屋の吉田さんにご登壇いただき、それまで抱えていた課題や解決に向けた取り組みについてお話しいただきます。

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アマナの鈴木達弥。

吉田彩乃(伊東屋/以下、吉田):まずは、「XBOARD」を導入することになったきっかけについてお話ししたいと思います。伊東屋の主力商品である事務用品・文房具は2019年時点で国内のEC化率が40%を超え、BtoCの物販分野で最もEC化が進んでいました。 かつて伊東屋の魅力といえば“ここに来たらなんでもある”という品揃えの多さでしたが、これだけEC化が進んだ状況では、もはやその軸では戦っていけません。そこで品揃えの多さではなく、質の良さを強みにしていこうと、オリジナル商品の開発に力を入れるようになりました。ただ、これがうまくいかなかったんです。

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伊東屋の吉田彩乃さん。

吉田:どこの企業にもあることだと思うのですが、開発チームと販売チームの思いや考えがすれ違っていたんですね。開発チームは「こだわって上質な製品を作っているのに、なんで積極的に売ってくれないんだ」と思っていた一方、販売チームは「値段が高くてクセが強い商品は売り出しづらい」という不満を持っていました。社内のコミュニケーションがうまくいっておらず、みんなで一丸となって自社の商品を売っていこうという気運がなかなか醸成されませんでした。

そこで社内コミュニケーションを活性化させる仕組みとして「XBOARD」を導入し、社内メディア「いとでんわ」を立ち上げました。「意図」を「伝」えて「輪」を広げるメディアということで、オリジナル商品の紹介や社内プロジェクトの成果物、目的・意図を伝える場として機能しています。この取り組みによって「伊東屋らしさ」というものが社内で自然と理解されていき、オリジナル商品に関心を持ち愛好する社員も増えました。伊東屋の売上に占めるオリジナル商品の割合もどんどん上がっています。 なにか施策を打つときでも、社内の意識が集中する場があることで、それ以前に比べて反応がかなり良くなったと思います。

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鈴木:自社に関する知見や愛着のようなものって、勉強して身につくものではないですよね。だから、社内メディアを通じて、そういうものが自然に理解・醸成される環境というのはとても重要だと思います。

社内メディアは人材育成のソリューションになる

鈴木:他方、社内メディアの話になるとPV数や企画内容のことに目線が向きがちですが、吉田さんたちは社内での人材開発やOJTを念頭に活用を進められています。そのあたりについても詳しくお話を伺えますか?

吉田:社内メディアの編集は若手社員の成長に役立っています。制作に携わる社員は、取材・編集を通じて社内のあらゆる部署に出向き、話を聴き、さまざまなやりとりのなかで人とのつながりを作っていきます。いずれ各部署でリーダーとなる彼/彼女らにとって、各部門とのコネクションが自然と培える機会は非常に有益だと思っています。同時に、発信する側に立つことで、プロジェクトや各部署への理解が深まります。また、コンテンツ制作を通じて写真やライティングのスキルが向上することはもちろん、伊東屋らしい文章やビジュアルのトンマナが身につくこともポイントです。

鈴木:たしかに「この部署について調べてください」と言われるより「この部署について発信してください」と言われたときの方が能動的に取り組めますよね。その積み重ねは従業員エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。弊社でも参考にさせていただきたいところです。

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会場となった『deepLIVE™️』配信スタジオにて。(左から)鈴木達弥、吉田彩乃さん、今井美沙。

吉田:いまお話ししたような取り組みによって、弊社内ではコミュニケーション強化の重要性が浸透して、合言葉のように「部署間で連携しよう」という声が聞かれるようになってきました。

鈴木:すばらしいですね。じつは弊社でも「XBOARD」を活用して、社内メディア「amana knowledge board」(通称akb)を運用しています。次に、こちらを通じた人材育成について、弊社の今井より紹介します。

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今井美沙(アマナ/以下、今井):弊社では人材育成のツールの1つとして「XBOARD」を活用しています。具体的な活用方法としては、まず「新人と社員の接点創出」が挙げられます。多くの企業同様、弊社も研修がオンライン化したことで人的交流の機会が激減しました。そのような環境の中でも組織の文化を体感できるように始めたのが、新人社員による社内メディア「akb」のリサーチでした。弊社の「akb」にはすでに4000件以上の記事が配信されていまして、この中から気になった記事をいくつかピックアップしてもらい、それらを1シートにまとめて新人同士でシェアしてもらいました。

また、ピックアップした記事中に登場した先輩社員をオンライン研修に招き、記事の内容、つまり仕事の内容について紹介してもらったりもしました。新人社員の業務理解の促進はもちろん、他部署の先輩社員の顔ぶれと仕事を知ることになり、ナナメのつながりができたのも一連の取り組みによる成果でした。また、シェアによって新人同士のヨコのつながりも強化され、社内の幅広い人材と仕事に関心を向けるきっかけになりました。

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今井:また別の活用方法として「イベントのアフターレポートとしての利用」が挙げられます。社内での研修・学びの場は、ともすると閉ざされた状態になりやすく、さまざまな知見や気づきが関係者のあいだのみで完結してしまいがちです。そこで研修過程のレポートや成果発表会の動画などを記事として「akb」上で配信しました。結果として、ある研修のレポートが月刊閲覧数No.1になるなど、あらゆる社員の関心を向けることができました。自分の所属以外でおこなわれている研修の内容を知ることは、共通課題や解決策のヒントを発見することにつながります。加えて、社員間に共感が生まれることで、次の活動・社内文化の醸成といった「未来への布石」にもなると考えています。

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鈴木:わたしもアマナに長く在籍しているのですが、最近の新人社員のほうが自分より社内の人や仕事についてよく知っていることがあり、本当に驚かされます。それはこうした取り組みの成果だった、ということですね。それでは最後に伺いたいのですが、おふたりは社内メディアの取り組みを通じた人材育成として、今後やってみたいことはありますか?

今井:どんな組織にもタレントはたくさんいると思っています。タイミングやニーズによって光が当たる人が変わるだけであり、スポットが当たる可能性は全ての人にあると私は考えています。社内メディアは、さまざまな社員の声や思い、考え方を発信し共有できるので、今後は、全社向けイベントなどの感想を共有する座談会などを企画できたらいいなと思っています。自分とは異なる意見に触発されたり、近しい考えに共感したり、さまざまなリアクションが仕事にフィードバックされていくと良いですね。

吉田:座談会、いいですね。弊社でもやってみたいと思いました。私は社内メディアの記事をフランチャイズの社員のみなさんにも届けたいなと思っています。つまり、弊社の商品を扱ってくれているけれど、弊社の社員ではない方々に「伊東屋の思い・理念」を伝え共感していくためのツールとして、社内メディアが活用できるといいなと。

今井:伊東屋のみなさんで積み重ねてきた試行錯誤やナレッジが共有されるのは意義深いことだと思いますし、そうなったらと考えると私もワクワクしてきました。

鈴木:おふたりともありがとうございました。インターナルコミュニケーションは、ともするとリモートワークの進展に関わらず、さまざまな企業にとって課題となるものです。今日のお話は、社内メディアがインターナルコミュニケーションにおいて非常に有効に作用することの証左になったのではないかなと思います。

SOLUTION

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deepLIVEは、リアルタイムCGと最新鋭のバーチャル・プロダクションシステムを備えた自社スタジオの活⽤により、 企業やブランド固有のニーズに即した企画立案〜リアルとバーチャルの垣根を超え共感を生む深い(ディープな)体験構築が可能、新たな体験創出でデジタルコミュニケーションにおける様々な企業課題の解決をサポートします。

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amana XBOARD(アマナクロスボード)は、インナーコミュニケーションを促進する社内報・ナレッジ共有のWebサービスです。人を軸にしたコンテンツ作りで従業員エンゲージメントを深めナレッジを適切にカテゴライズすることで見つけやすいコンテンツ配信が可能です。

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