従業員のエンゲージメントを高めるインターナルコミュニケーション

vol.108

従業員のエンゲージメントを高めるインターナルコミュニケーション

Text by Hisako Tanase
Photo by Mizuki Hino

企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベント「amana Brand Communication Day 2023 Spring」が2023年5月24日、25日と2日間にわたり開催されました。8つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎えたトークセッションや講演、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。今回は、テーマ「従業員のエンゲージメントを高めるインターナルコミュニケーション」の回を紹介します。


リモートワークが普及し、社内メディアの重要性が再注目されました。多様化した働き方を踏まえて、社内メディアは、あるいはインターナルコミュニケーションのあり方はどう変わっていくべきなのでしょうか。
社内メディアを積極的に活用しているマルハニチロ株式会社から原島真純さん、本島敦子さんを迎え、アマナの社内報・ナレッジ共有サービス「XBOARD(クロスボード)」担当の鈴木達弥、アマナの社内コミュニケーションを推進している松野正也とともに、インターナルコミュニケーション活性化のポイントや、従業員に響くコンテンツ企画・制作のコツについてトークセッションを行いました。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオから配信を行いました。

社内メディアが再注目されるワケ

鈴木達弥(アマナ/以下、鈴木):このセッションでは、インターナルコミュニケーションを支える継続的な施策として「社内メディア」に注目し、その目的や期待する役割、課題を紐解いていきたいと思います。

インターナルコミュニケーションは、「社内のヒト・コト・モノ・オモイの見える化」された状態になるための活動です。そうした状態になることで、企業理念やビジョンへの共感、ナレッジの共有が進みます。

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アマナの鈴木達弥。

鈴木:ステークホルダーの中で接触機会が多いのは社員であり、社外のステークホルダーも社員を通じて企業を見ています。社内での共有と共感は社員個々の発信力や営業力を養い、ひいては企業全体の競争力強化につながります。

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鈴木:社内のヒト・コト・モノ・オモイが見える化された状態・環境を作るためには、継続的な施策が必要です。この点において、社内メディアはとても使い勝手のよいツールと言えるでしょう。

弊社では「XBOARD」という社内メディア専用のプラットフォームを開発・提供しており、すでにさまざまな企業にご活用いただいています。本日は「XBOARD」を実際に導入されているマルハニチロ株式会社から原島真純さん、本島敦子さんにご登壇いただきました。アマナの松野も交えて、導入のきっかけとなった課題や解決に向けた取り組みについてお話しいただきます。

原島真純(マルハニチロ/以下、原島):Web社内メディア導入の経緯は、「マルハ」と「ニチロ」の経営統合に遡ります。どちらも水産をルーツとしていますが、事業内容が幅広く、業態もメーカー・商社と専門性が高いため、部署間の相互理解がなかなか進まないという状況がありました。もっとお互いを知る環境が必要だとの考えから、タイムリーで丁寧なコミュニケーションができるツールとして「XBOARD」を導入しました。誰もがデジタルを駆使する時代となり、時代とともにコミュニケーションツールも進化させ、より新鮮な情報を親しみを持ってお届けしたいという思いから、Web社内報「DOUBLE WAVE web」(通称:ダブweb/以下、ダブweb)を創刊しました。

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マルハニチロの原島真純さん。

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Web社内報の名は、マルハのMとニチロのNを2本の波(DOUBLE WAVE)で表現したコーポレートマークに由来している。

本島敦子(マルハニチロ/以下、本島):社内メディアの必要性を経営層に向けてプレゼンした内容が、そのままダブwebの編集方針になりました。ダブWebの目的は、マルハニチロの従業員へ企業メッセージ(経営層からのメッセージや企業理念など)をわかりやすく丁寧に、タイムリーに届けることで情報格差をなくし、グループの一体感を醸成することです。

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マルハニチロの本島敦子さん。

単なる「お知らせの箱」ではなく「顔の見えるSTORY」を

松野正也(アマナ/以下、松野):アマナの社内メディアは「amana knowledge board(略称:akb、以下akb)」といいます。その名の通り、社員のナレッジを共有する場を作ろうと立ち上がりました。属人的になりがちなクライアントワークの知識や経験を記事という形を通して共有することで、会社全体の資産としていこうという活動です。毎日更新で月20〜25本、累計で約5000本の記事がアップされています。

社内の情報共有と共感の形成ということでakbとダブwebの目的は通ずるものがありますので、今日はぜひ、ダブweb編集における細かい工夫をお聞きしたいと思います。

原島:「顔の見えるメディア」「従業員の笑顔をつなぐメディア」をコンセプトにしていますので、全従業員に顔写真の登録をお願いしています。割と自由に、みなさんいろいろなシチュエーションの写真を登録されてまして、猫と一緒に写った写真の方もいます。コンセプトの通り、笑顔の写真が多いですね。

松野:離れた拠点の方同士は滅多に会う機会もないでしょうし、その方の人となりみたいなものが分かる写真があると、実際に会った時に会話がはずみそうです。

本島:akbでは、ナレッジを記事として楽しく読んでもらうためにどんな工夫をされていますか?

松野:いろいろありますが、大きく3つのこだわりを持って記事を作っています。1つめは、必ず「人」を出すこと。社員は社員に対して興味を持っていますから、まずはそこを大事にしています。2つめは、ストーリーを意識して記事をつくること。3つめは記事のビジュアル表現手法です。写真やイラスト、マンガなど、記事によって何が最適な表現方法なのか、こだわりを持って考えます。さらには、記事のビジュアルを作るのも社員に任せており、作成者のクレジットを入れるというのも編集部のこだわりです。

本島:配信頻度が高すぎるとか、記事が読みきれないといった声は上がりませんか?

松野:全くないですね。むしろ記事が足りない。伝えたいことが多すぎて追いついていないと感じています。記事がたくさんあっても、気になった記事だけ読んでもらえればいいと、そんなふうに割り切っています。

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左からマルハニチロの原島さん、本島さん、アマナの松野。

読み手の興味を引きだすためのこだわり

鈴木:情報発信する際に意識されているポイントはなんでしょうか。

原島:先ほどもお話ししましたが、インフォメーションではなく顔の見えるストーリーを届けることを常に意識しています。垂直方向の情報検索はイントラネットの掲示板でできますので、ダブwebは横展開してもらえるような広がりのあるコンテンツ作りを心がけています。

本島:「毎日新しい情報がある」という意識を習慣づけるために、毎日記事を配信していますが、曜日ごとにテーマを設定し、メリハリをつけています。また、Web社内報という特性を活かして、写真や動画を多めに盛り込んで記事を作るようにもしています。文字数の制限も設け、1記事あたり2000字を上限としています。

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経営者メッセージの日があったり、エンタメ記事の日があったり。緩急をつけた曜日企画。毎週金曜日には、新着記事をメルマガで配信している。

松野:akbでは毎週5〜10本というペースで新着記事をアップしているのですが、過去記事の活用にも力を入れています。時節柄やビジネスシーンなど、さまざまなテーマを切り口に記事をキュレーションし、メルマガで配信しています。

鈴木:1回作って終わりとするのではなく、コンテンツを資産として運用しているのですね。

記事作りは、現場レベルの感覚と情報収集がキモ

鈴木:運用上の課題についてはいかがでしょうか。課題解決に向けての取り組みなども教えてください。

本島:一番は情報収集でしょうか。特に本社(編集部)から遠い場所にある支社や工場、海外のグループ会社から継続して情報を得ることの難しさを常に感じています。そこで、2022年からは編集部の中に各グループ企業担当を設け、各担当者が積極的にそのグループ企業の情報を得るような仕組みを作りました。海外のグループ会社は閲覧環境にないのでメルマガという形で記事を配信しているのですが、メルマガを読んだ方から現地のニュースが舞い込んできたりといったこともあります。

松野:情報収集の課題は我々にもありますね。アマナでは各部門の会議にakb編集部がお邪魔して(傍聴して)、直接その部門の課題を抽出したりもしています。それを編集会議に持ち帰って、なにを記事にするか、どう記事にするかといったことを話し合います。編集部とは別に、各拠点にアンバサダーを設け、なにか情報があったら送ってもらうといった試みをしたこともあります。

鈴木:社外向けのコンテンツと同じですね。発信することに重点を置きすぎると企業側が伝えたい情報を一方的に押しつけるような形にもなりかねない。しかし読み手が本当に知りたいのは現場レベルにある疑問や課題の解決方法だったりします。現場レベルの声を拾って企画に落としていける仕組みがあるのはいいですね。

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コンテンツを生み続けるための環境作り

松野:今は編集部が中心となって記事を作っていますが、ゆくゆくは社員一人一人が伝えたいことを自発的に記事制作して発信できる場にしていきたいですね。そういった文化が根ざせばインターナルコミュニケーションもより活性化していくのではないかと。

原島:従業員の顔を積極的に出していきたいという点でダブwebとakbは同じですね。しかし、出演を打診しても断られるケースが少なからずあります。アマナさんでは、そういった場合どうされていますか?

松野:時間も限られていますし、他にも出てくださる方はいるので、断られたら深追いせずに、次にあたります。ただ、なるべく断られないように、出演することによって得られるメリットを伝えるようにしています。社内メディアに取り上げられてから「社内のつながりが増えた」「気軽に声をかけてもらえるようになってやりたい案件に出会えた」という声もいただいていますので、そういったお話を丁寧に伝えています。akbの媒体資料を用意する計画も進めています。

原島:編集部ではなく従業員自身に記事制作をしてもらうというお話がありましたが、具体的にはどのような働きかけをされているのでしょうか。

松野:ガイドラインを作成して、より自発的に記事制作しやすい環境作りをしています。また、自発的に記事を書いてくれるような社員、ロールモデルとなる社員を育成することにも注力しています。モデル候補の社員をリスト化し、年に1〜2回、その人に関わるテーマの記事作成をお願いします。執筆された原稿は編集部でしっかり校正・校閲してフォローしています。また、フレームワークのように質問事項を埋めてもらうだけで記事が書き上がるようなシートを用意して渡したりもしています。

鈴木:まだまだ聞きたいところですが、時間の限りがあるので今日はこれで終了させていただきます。インターナルコミュニケーションにおいて社内メディアを有効に作用させるには「このメディアを通じて社員にどうなってもらいたいのか」という目的・コンセプトが非常に重要であると感じました。成果を測る指標としてPV数などの定量的データを追うことは大切ですが、数値だけを気にして目的を果たせなければ本末転倒です。メディア運用がうまくいかないときは、一度原点(メディアの目的、コンセプト)に立ち返って検証してみてはいかがでしょうか。

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deepLIVEは、リアルタイムCGと最新鋭のバーチャル・プロダクションシステムを備えた自社スタジオの活⽤により、 企業やブランド固有のニーズに即した企画立案〜リアルとバーチャルの垣根を超え共感を生む深い(ディープな)体験構築が可能、新たな体験創出でデジタルコミュニケーションにおける様々な企業課題の解決をサポートします。

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