vol.90
グローバル企業が一貫性のあるブランドコミュニケーションを行うためには
企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベント「amana LIVE 2022 Autumn」が2022年10月27日に開催されました。7つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎え、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。今回は、テーマ「グローバル企業が一貫性のあるブランドコミュニケーションを行うためには」の回を紹介します。
グローバル企業のコンテンツマーケティングでは、文字通り、世界中の消費者や顧客を対象に、一貫性のあるメッセージを発信していくことが求められます。しかし現実には、各国の支社がそれぞれのマーケティング活動を展開していたり、グローバルなコンテンツを効率よくそろえていくことの難しさを感じている企業も少なくありません。アマナとパートナーシップを結ぶIndustry Diveのグローバルゼネラルマネージャー、クリスティーナ・モリソン氏が、国ごとの特性も加味しながら一貫したコンテンツマーケティングを行うためのポイントを、事例を交えて紹介します。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオから配信を行いました。
本日は、「グローバルで一貫性を保ちながら、ローカルでも関連性の高いコンテンツプログラムを構築する方法」についてお話します。私たちIndustry Diveは、コンテンツクリエイターから受賞歴のあるジャーナリストまで、各分野の専門家300名で構成された企業です。マーケティング対象となるオーディエンスに対してジャーナリスティックなアプローチを取りながら、ブランド構築から需要創出まで、一貫してブランドストーリーを伝える活動をサポートできる体制を整え、パナソニックやHSBCホールディングスなど、さまざまな業界のクライアントを支援してきました。そして、戦略・インサイト、コンテンツ制作、それらを支えるテクノロジーをすべてカバーし、パートナーである「Welcome」とともに、コンテンツマーケティングのプロセス全体を効率化するためのプラットフォームを構築しています。
私たちは、クライアントが強いブランド認知性を維持できるように、グローバルで一貫したコンテンツ制作をサポートします。しかし、そのためには、それぞれの地域との関連性も保たなければなりません。重要なのは、まず自社の課題を把握することであり、消費者の行動の変化をはじめ、各マーケットの文化や言語の違いへの配慮はもちろん、国ごとの法律や規制なども考慮することが必要です。また、製品の活用状況やポートフォリオの違い、地域ごとのメディアチャネルについても把握して解決策を考えていきます。社内の意思統一も含めて、これらの課題を解決するための手法が、Global-to-Localプログラムです。
その活用には、カスタマーファーストの姿勢と、強固なローカライゼーション戦略 が不可欠です。導入にあたっては、消費者の考え方や行動をマーケットごとに分けて捉えます。あるマーケットでは、長文記事コンテンツが大成功を収め、別のマーケットでは、動画が最適なコミュニケーション手法であるかもしれません。
最初のステップは、プログラムのフレームワークの構築です。続いて、コンテンツ戦路を策定します。目標や指標をチームの全員で共有してください。自社のエグゼクティブの理解や協力も、成功するうえでの重要な鍵です。
テクノロジーの活用も重要です。たとえば、別のマーケットで効率的なプラットフォームがあれば、それを他のマーケットでも活用できないか検討します。私たちが日常的に利用する「Welcome」というコンテンツマーケティングプラットフォームもその1つで、20カ国のスタッフとプラットフォームを通じて連携しながら、コンテンツに一貫性を持たせることが可能です。
また、もう1つの要素として、オンボーディングとトレーニングのプロセスもあります。これは、チームメンバーが地域の枠を超え、グローバルな視野で考えるための最初のステップで、チームビルディングにも最適な活動です。
さらに、チームの強固なコラボレーションを構築するために、常に「センター・オブ・エクセレンス(中核部署)」を持つことを推奨しています。これは、機能横断的なチームの中でも、中核となるビジネスゴールを担うチームのことです。そして、このチームには、毎月のプログラムや今後の進め方に影響を与えるような意思決定力を持たせます。
センター・オブ・エクセレンスは、ベストプラクティスの共有と学習も担う存在です。四半期ごとにプログラムの成功と次のステップを検討するためにも、このチームをプロジェクトの中核に据えてください。
それでは、効果的なマーケティングプロセスにおける5つのステップを見ていきましょう。
1つ目は、チャネルについて考えることです。グローバルな視点とローカルな視点とでは、顧客へのリーチ手法が異なる可能性があります。初期のプランニングフェーズでは、戦路策定に加えて、顧客がどのチャネルでどのように行動しているのかを知りましょう。
2つ目のステップは、利用可能なテクノロジーとパートナーを把握することです。
3つ目に、コンテンツの監査を行いましょう。私たちの場合は、既存のコンテンツを検証し、それをどのように再利用するか、一貫性を持たせるにはどうしたらよいかを考えます。コンテンツ監査は、グローバルでの一貫性を維持する観点から、ギャップと機会を特定するための重要な作業です。
そして、4つ目になりますが、限定した3つのマーケットで試験的にマーケティングプログラムを開始することが大きな成功につながります。これらの優先マーケットの選択は、ビジネスにおける影響力や収益性、実験的な取り組みに前向きであるかという観点で行うとよいでしょう。1つではなく3つのマーケットを推奨するのは、多様性を持たせるためです。
5つ目は、プロセス推進のためのチーム構築になります。メンバーには、変化を受け入れ、機能横断的に働くことに前向きで、グローバルな枠組みやプログラムのガバナンスをどのように進めるかについて強い発言力を持つ人材が望ましいです。
多様なマーケットに対するアプローチとしては、図のようなGlobal-to-Localプログラムへの移行、つまりグローバルマーケティングのエコシステムを構築して統一したストーリーテリングをすべきです。また、ベストプラクティスをグローバルで共有することは、マーケティングチームや組織の成熟度を高め、コンテンツのROIを向上させるのに役立ちます。
Global-to-Localプログラムは、運用効率の点でも効果的です。マーケット横断で活用される共通のテクノロジーがあれば、成果の可視化やコラボレーションの強化につながり、長期的なコスト削減を実現できます。
最後のポイントは、コンテンツマーケティングの改善です。リード獲得や製品の売り方だけに焦点を当てるのではなく、ブランド構築と需要をつなぐことを意識して、それをいかにスケールアップできるかが成功の鍵となります。
では、私たちのクライアント事例をいくつか紹介します。
ゼネラリ保険は、6年前から現在に至るまで、私たちのクライアントの1社です。彼らは自社のブランド認知をグローバルに拡大させたいと考え、このプログラムをスタートさせました。その際に、ブランドのグローバルゴールと、ローカルな特徴や戦路とのバランスを取ることは、非常に重要でした。
そこで、私たちはまず、ローカルマーケットのステークホルダーの意見を取り入れながら、グローバルコンテンツ戦路を構築しました。そしてそれを、APAC(アジア太平洋)やEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、東ヨーロッパにまで展開し、地域最適化を進めました。
その後、さらに20の異なるマーケットで理解を深めるためのワークショップや、コンテンツ監査、現状のチャネル戦路の把握を行い、コンテンツを通じて代理店とのタッチポイントを増やすことにも着手。私たちが導入したフレームワークによって、マーケット全体でデジタル成熟度が向上し、プログラム開始以来、アクション率(※)が大幅に上昇し、各コンテンツハブへのトラフィックが増加していることも確認しています。
(※)アクション率:ユーザーが「お問い合わせ」や「詳細情報」などのCTA(Call to Action:行動喚起要素)をどれくらいクリックしたかを示し、ビジネスの成果を表す上で非常に重要な指標。
また、センター・オブ・エクセレンス関連では社内にコンテンツコミュニティを設け、39のビジネスユニットから270人のメンバーが参加しました。アップスキルや知識共有、各マーケットの成功事例を紹介する機会にもなりました。スペインはこのプログラムに参加した最初のマーケットで、半年でメールのトラフィックが2倍になったとのことです。
ゼネラリ保険が活用した「Welcome コンテンツマーケティングプラットフォームで」は、プロジェクト管理、デジタルアセットマネージャーとも呼ばれるグローバルライブラリーの構築、ブランドライブラリー、現状のパフォーマンスをリアルタイムで確認できるアナリティクス機能、そして自動レポートまで、さまざまな機能が活用されています。そこにはSEO対策も含まれ、コンテンツアイデアの企画やコンテンツ戦路の策定に役立っているのです。
2つ目の事例は、ホテル事業を手掛けるマリオットです。トップ45の旅行先に関するコンテンツ構築の取り組みを行い、25カ国にわたる各マーケットと各旅行先のガイドを制作しました。グローバルで一貫したブランドを維持するため、25カ国それぞれに現地の専門家を配置し、コンテンツ開発に協力してもらったのですが、マリオットの非常に厳格なブランドガイドラインに則ることも必要でした。そのため、まずは英語でグローバルコンテンツを作り、その後に45の異なるマーケットに合わせてローカライズしています。コンテンツに優先順位をつけたり、ブランドの観点から何が最も必要なのかを常に把握したうえで各コンテンツを制作するには、その裏付けとなる強力なSEOデータも重要でした。
最後に、5年以上のお付き合いがあり、アメリカ、イギリス、そして日本ではアマナのパートナーシップを通じて取り組みを行っているアメリカン・エキスプレスのB2B事例をご紹介しましょう。
アメリカン・エキスプレスのB2Bビジネスでは、BUSINESS CLASSというコンテンツハブでトレンドやインサイトを発信しています。私たちはサイロ化していたコンテンツ制作業務を整理して合理化し、米国での成功例から、イギリスや日本で展開すべきコンテンツのヒントを得ることもできました。そのためにコンテンツマーケティングプラットフォームを活用し、初期のパイロットフェーズを経て、対象を8つのマーケットに拡大。グローバルなコンテンツ運用体制を構築しています。
Global-to-Localでの取り組みでは、ローカルのマーケターの立場に立ち、彼らが何を優先しているかを知ることが非常に重要です。ここ数年は対面式のワークショップを実施できなかったので、1対1のバーチャルセッションやステークホルダーインタビューを実施することで、チームを理解し、優先順位を見出すような工夫もしました。
Industry Diveは、常にクライアントがより良い成果を得られるようにサポートを惜しみません。また、アマナのパートナーであることを嬉しく思っています。本日は、ありがとうございました。
amana Content Marketingについて
アマナは、コンテンツマーケティングの本場アメリカで業界を牽引するリーディングカンパニー、Industry Diveの国内唯一のパートナーであり、その集合知を活用し、成果へと繋がるコンテンツマーケティングをサポートしている。
コンテンツに対する洞察やマーケティング戦略策定の知見を活かしてコンテンツマーケティングに関する課題を解決するためのソリューションには、次の3つの柱がある。
1)ストラテジーとインサイトに関するアドバイザリー
2)コンテンツ制作
3)コンテンツマーケティングのためのプラットフォーム
ストラテジーとインサイトに関するアドバイザリーでは、コンテンツマーケティングを成功に導いてビジネスゴールを達成するためのノウハウに基づいて、戦略の策定から実際のマーケティングアクションに至るまでをサポートする体制を整えている。
これは、ストラテジー、トラフィック、エンゲージメント、アクション、マネタイズという5つの要素の頭文字をとったS.T.E.A.Mを起点に、ROIを重視して結果を出すための活動を推進するもの。目標設定や成果の可視化を含めて、企業が直面するコンテンツマーケティングの課題を解決する上で活用することができる。
コンテンツ制作は、文字通り、コンテンツマーケティングの「燃料」となるもので、既存の有用なコンテンツをライセンスを受けて使用するライセンスドコンテンツと、企業とアマナが共に作り上げていくオリジナルコンテンツの2種類に対応する。
一般には馴染みが薄いと思われるライセンスドコンテンツとは、多種多様な大手メディアが公開している二次利用可能な記事などから、マーケティングチャネルに対して提供する良質なコンテンツを指す。Global-to-Localの展開の一環として、欧米メディアの記事を日本語に翻訳するサービスも行なっており、オリジナルコンテンツと合わせて利用することが可能だ。
そして、戦略に基づいてコンテンツを活用していくうえで重要となるのが、プラットフォームのテクノロジーである。アマナでは、グローバルで評価の高い統合型のマーケティングプラットフォームである「Welcome」CMPを提供している。
CMP(コンテンツマーケティングプラットフォーム)とは、コンテンツの企画・制作から記事のライティングと承認、アクセス解析に至るまでを包括的に管理するためのツールを意味し、このサイクルを効率的に運用していくことができる。また、ここからCMS(コンテンツマネジメントシステム)やSNSなど、さまざまなチャネルに対するコンテンツの展開も容易に行うことが可能となっている。特に、今も進化を続けている「Welcome」CMPは、多様なツールとのインテグレーションという点でも優れており、まさにマーケティングの基盤となる存在だといえる。
戦略、コンテンツ制作、それらを支えるテクノロジーという3つの柱を持つアマナのユニークなコンテンツマーケティングサービスについての詳しい情報は、こちら。
deepLIVE
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deepLIVEは、リアルタイムCGと最新鋭のバーチャル・プロダクションシステムを備えた自社スタジオの活⽤により、 企業やブランド固有のニーズに即した企画立案〜リアルとバーチャルの垣根を超え共感を生む深い(ディープな)体験構築が可能、新たな体験創出でデジタルコミュニケーションにおける様々な企業課題の解決をサポートします。
amana Content Marketing
amana Content Marketing
コンテンツマーケティングの本場であるアメリカで、業界を牽引するリーディングカンパニーであるIndustry Dive。国内唯一の独占パートナーであるアマナがその集合知を活用し、成果へと繋がるコンテンツマーケティングをサポートします。
企業が抱える課題に沿って、戦略策定からチーム構築、コンテンツ制作、効果測定まで、コンテンツマーケティングの運用をトータルで支援します。