米Industry Diveが語る、事例から学ぶコンテンツ制作フレームワーク

vol.113

米Industry Diveが語る、事例から学ぶコンテンツ制作フレームワーク

Text by Kazutoshi Otani
Photo by Sonoko Senuma

企業のあらゆるコミュニケーション課題に向き合い、その解決方法を探る、アマナ主催のイベント「amana Brand Communication Day 2023 Spring」が2023年5月24日、25日と2日間にわたり開催されました。8つのテーマを切り口に、先進企業の方々をゲストに迎えたトークセッションや講演、マーケットの今と未来をとらえたセミナーを実施。今回は、テーマ「米Industry Diveが語る、事例から学ぶコンテンツ制作フレームワーク」の回を紹介します。


企業がコンテンツマーケティングを行う主な目的としては、次のような3点が考えられます。ブランドやサービスの認知度の向上、好意度の獲得、 そして、もちろんマーケティング的な観点からの企業収益への貢献です。このセッションでは、アマナとパートナーシップを結ぶIndustry Dive(*1)のグローバルゼネラルマネージャー、クリスティーナ・モリソン氏が、実例を挙げながら、そうした目的に見合うコンテンツを制作するためのフレームワークの概要や、企業に求められるソートリーダーシップ(*2)についてご紹介します。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオから配信を行いました。

*1 :150以上のクライアントと取引のあるグローバルコンテンツマーケティング企業。26の業界向けに「Dive」というメディアを展開し、毎日1200万人以上のエグゼクティブ層がそのコンテンツに目を通している。2022年にInformaと合併し、グローバルなイベント展開も含むデジタルメディアジャーニーをトータルにサポートする体制が整備された。クリスティーナ・モリソンは、Informa傘下のコンテンツスタジオ「studioID」のゼネラルマネージャーとして、APAC・EMEA市場のクライアントに対し長期的なBrand-to-Demandプログラム構築の支援を行っている。

*2 ソートリーダーシップ:ターゲット顧客の興味の対象となっている市場や分野に関して、将来を先取りしたインサイトや見通しを提示することによって議論や思想形成を促し、新たな解決策やソリューションを示唆する活動。

ソートリーダーシップ獲得のための3つのポイント

クリスティーナ・モリソン(Industry Dive):今回は「Ownable Conversations」というフレームワークの詳細や、それによりオーディエンスに対して自社のどのような強みを訴求できるかについて、お話します。コンテンツ過多の今、重要なのは、顧客とコミュニケーションを取り続けることです。そのためにも、ソートリーダーシップコンテンツが求められています。

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オンラインでつなぎ、イギリスより出演したクリスティーナ・モリソン。左はアマナの渡邊隆尚。

ところが、意思決定者の71%が、「ソートリーダーシップのコンテンツのうちで実際に価値あるインサイトを与えてくれるものは半分以下」だと答えています。また、43%のマーケターが、「コンテンツが適切なオーディエンスに届いているかさえもわからない」と回答しているのです。一方で、81%のエグゼクティブ層は、「気づきを与えてくれるインサイト」を求めています。コンテンツを読むことで、新たな考えに触れることを望んでいるのです。

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コンテンツの重要な柱の1つである「顧客との信頼関係」を構築するには、まず、自社の考えを明確にすることが大切です。不確実な時代だからこそ、クライアントは明確な考え方を打ち出している企業に相談したいのです。

また、オーディエンスは実用的なインサイトを求めています。Studio IDとしては、明確なインサイトのないコンテンツは作るべきでないとすら考えています。

そして、そのカテゴリーにおける専門性も重要です。実用的なインサイトと明確な視点を持つコンテンツを作ることで、同じカテゴリー内の競合ブランドに勝つだけでなく、自社の専門性も高まります。その意味では、コンテンツを上手く活用している他業界の企業にも目を向け、学びを得るべきです。
ここまでのポイントをまとめると、自社ブランドのみが持つ独自性があること、現状を打破する革新性があること、そして、適切なデータアナリストやプロダクトマネージャーから得られたインサイトを含む専門性の高いコンテンツで差別化すること。ソートリーダーシップの獲得には、この3つの要素が重要になります。

「Ownable Conversations」というアプローチの強み

自社のコンテンツが、価値あるインサイトを提供して、オーディエンスのブランド全体のミッションや目標に貢献できるようになるには、我々が「Ownable Conversations」と呼ぶソートリーダーシップコンテンツを作るためのアプローチが必要です。
これは、自社ブランドが「保有できる(=存在感を示せる)」領域を意味し、それに関して独自の視点や、そのカテゴリーに関する専門性、および、大局的な視点を持ち合わせていることを指します。アプローチのポイントは、次の3つです。

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1つめは、コンテンツカレンダーの作成。コンテンツピラー(テーマ)を管理するだけではなく、それをどのようにOwnable Conversationとして発信していくかが重要です。月次・四半期ごとのコンテンツプランを作成することで、広告予算や自社の独自性・専門性を明確にして、2つめのポイントとなる、コンテンツキャンペーンにつなげます。そして、ブランド価値を高めたいトピック領域における関連キーワードの自然検索成長率をモニタリングして、3つめのポイントである、シェア・オブ・ボイス(広告投入量シェア)を増やしていきます。

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続けて、Ownable Conversationsに含まれるカスタムリサーチとその方法について説明しましょう。「バリュープロポジション(提供価値)」と「ツァイトガイスト(時代精神)」の重なりが、「保有できる領域」、つまりOwnable Conversationとなります。バリュープロポジションは、あなたのブランドの目的やブランドバリューを示すものです。ツァイトガイストは、社会の大きな変化や、主要なテーマ、課題、機会を意味します。そして、Ownable Conversationの部分で、専門性を見出すとともに自社のインサイトを活用していきます。

優れたマーケティングの仕組みをつくるための、再現性のあるモデルと更新性の確保の実現に役立つのも、Ownable Conversationsフレームワークです。私たちのチームでは、こうしたフレームワークを作成するだけでなく、それに基づいてコンテンツの企画会議を行い、コンテンツ案を作成するという、再現性のある手法を取っています。Ownable Conversationsフレームワークに基づき、ウェビナーやホワイトペーパーといった一貫性のある「ビッグロック(一枚岩)コンテンツ」を作り、そのコンテンツをインフォグラフィック、ブログ記事、ソーシャル投稿などに再利用することで、ROIを最大化するわけです。

Ownable Conversationsのコンテンツ制作法と実例

コンテンツを作るためには、まずステークホルダーインタビューを行います。最も重要なのは、社内のあらゆるレベルのリーダーの立ち位置を理解し、インサイトを得ることで、オーディエンスに対するポジショニングを強化し、ブランド価値を高めることです。
通常3~5回のステークホルダーインタビューに加えて、自社メディアのデータやさまざまな情報源を活用した業界トレンド調査、他社ブランドの動向分析、インスピレーションが得られそうな企業の調査などを行います。そして最後が、カスタマーインタビューです。手法はさまざまですが、これにより顧客のニーズ、課題、そしてジャーニーを理解します。
クライアント事例を1つご紹介しましょう。長年にわたるクライアントの1つ、広告会社Waze Adsのリード獲得は非常に重要な取り組みでした。

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Wazeは、市場に対して独自の価値を提供することを望んでいましたが、広告で発信するメッセージを最適化し、キャンペーンのROIを高めるためには、この分野で確固たる地位を築いているトップブランドに対抗しうる、より強固なポジショニングが必要でした。そこで、リテール、マーケティング、レストラン業界の主要な意思決定者をターゲットとして、Wazeがデジタルメディアミックスに欠かせないソリューションであるというポジショニングを行いました。
彼らのOwnable Conversationsを「活動的な消費者」として設定し、Wazeの1stPartyデータを分析した結果、彼らのビジネスと顧客に関連の深い「移動習慣」に関するデータを発見しました。そこで、Wazeがこれに着目すべき理由を明確化し、すべてが「活動的な消費者」というテーマに結びつく統合型のアプローチによって、コンテンツ、記事、トピック、ウェビナーのアイデア、インフォグラフィックスを提供したのです。

もう1つの事例は、K-12アセスメント(教育評価)会社のものです。この会社は、州や地区、学校の指導者に最適なガイドラインを提供するため、幼稚園児から高校生までの教育評価がどのように行われているのかを調査するレガシーブランドとして高い評価を得ています。

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コロナ禍以降、メンタルヘルスや不安、うつ病などへの対応が重要なトピックとなりましたが、同社はこの分野のエキスパートであることをアピールする取り組みをしていませんでした。ステークホルダーインタビュー、業界トレンド分析、競合トピックのレビューなど、戦略的なプロセスによって、彼らは信頼を獲得しており、すでに顧客サービスとして認知されていることがわかりましたが、他社との差別化のために独自性を打ち出す必要がありました。そこで、保護者と教師の関係を深め、教室におけるメンタルヘルスの正しい情報を提供し、学校管理者に、生徒と教師のメンタルヘルスの課題を解決するツールを提供することにしたのです。

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実際には、初期の戦略設計だけでなく、動画、ポッドキャスト、カスタムニュースレター、記事制作まで行い、それらが成果につながっていることを確かめましたが、すべてがOwnable Conversationsを完成させるために必要不可欠な要素でした。この教育企業に対するブランド認知をシフトさせるための手法は、B2B、B2Cを問わず多くの業界のブランド戦略設計に活用できると考えます。

まとめますと、オーディエンスが製品の購買決定を行ったり、信頼できるブランドと関係を築きたいと思っているのであれば、私たちのコンテンツによってそれを実現できるということです。「Ownable Conversations」フレームワークは、皆様のブランドにとって価値のあるものになることでしょう。


Ownable Conversationsのコンテンツ制作のためのサービス

渡邊隆尚(アマナ):ブランドが作る自社プロダクトやサービスの優位性を語るコンテンツと、ブランドのことを知らない潜在層のユーザーにも響くコンテンツ。この2つの課題を掛け合わせたものが、Ownable Conversationsのコンテンツとなります。
一方で、マーケティングのファネルでは、認知を獲得するのはサーチコンテンツやカスタマーコンテンツであり、最終的には自社製品やサービスを伝えるプロダクトコンテンツも必要です。その中でOwnable Conversationsのコンテンツは、ブランドに関する興味を深めてもらうソートリーダーシップコンテンツに相当します。
Ownable Conversationsのフレームワークを用いてコンテンツを制作していくにあたっては、IndustryDiveとの提携によりアマナが提供している、以下の3つのサービスをご利用いただければと思います。

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アドバイザリーサービスは、私たちがCMAS(コンテンツマーケティングアドバイザリーサービス)と呼んでいるものです。コンテンツマーケティングにおける「戦略立案」「コンテンツ配信」「継続的な運用」「UXデザイン」「効果測定」といった各ステップで専門性の高いスタッフがその実施をサポートいたします。 
コンテンツ提供サービスでは、国内外の主要な出版社と提携し、世界最大規模のマーケットプレイスの中から、様々なテーマやカテゴリーのライセンスドコンテンツを利活用することが可能です。自社の認知やファン化を促進するうえで重要な部分でもありますので、まずはユーザーの課題に寄り添うコンテンツや検索需要に対応するコンテンツとして、ライセンスドコンテンツをご活用いただければ幸いです。
ライセンスドコンテンツのメリットは4つあり、1つめがオリジナルコンテンツ開発のためのデータ取得、2つめがユーザーとのエンゲージメント強化、3つめがコンテンツ開発に関する時間とコストの削減、4つめリスク管理とコンプライアンスです。特にOwnable Conversationsとの関連では1つめが重要で、どのようなキーワードやテーマに流入が多いかがわかれば、オリジナルコンテンツを作る際の指針にもなります。

プラットフォーム提供サービスでは、一連のワークフローの一括管理を可能とし、効率的かつ効果的なマーケティングの実施をサポートする、コンテンツマーケティングプラットフォームのWelcome CMPをご提供します。キャンペーンの計測と実施、リソースの管理、コンテンツの制作と配信、デジタルアセットマネジメント、効果測定の5つの機能を持ち、充実した計測&分析機能を活用してコンテンツのROIの評価も可能です。アメリカの調査会社Gartnerが毎年出しているMagic Quadrantレポートでも、Welcome CMPは5年連続でリーダーとして選ばれています。
さらに詳しくお知りになりたい方は、ぜひアマナまでお問い合わせください。

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