どこからはじめる? 最新事例から学ぶメタバースのビジネス活用

vol.95

どこからはじめる? 最新事例から学ぶメタバースのビジネス活用

Text by Mitsuhiro Wakayama
Photo by Ayumu Sadasue

「メタバース」がバズワードになる一方、自社でどのように取り入れていけるのか、具体的に想像がついていないという方も多いのではないでしょうか。数年後には、4人に1人が1日1時間以上をメタバースで過ごすとの予測も出ており、黎明期から普及期へと移ってきています。先行する企業は、どのように取り組みを進めているのでしょうか。

世界中のマーケット潮流をリサーチ・レポートするイノベーションアドバイザリー「STYLUS」の秋元陸氏より、最新のメタバース事例をご紹介いただき、30年以上にわたり3DCGを活用したビジュアルコミュニケーションやバーチャルでの世界観構築に携わってきたアマナの知見から、メタバースでのビジネス展開をはじめるうえで検討すべきポイントや、具体的なステップを解説しました。アマナからはデジタル上での施策に関わる岡本崇志が登壇。また、ファシリテーターは正体不明のアバターYが務めました。
※本イベントはアマナの『deepLIVE™️』スタジオからリアルタイムで配信を行いました。

メタバース活用、その前に「知っておくべきこと」とは?

秋元陸(スタイラス ジャパン/以下、秋元):あるグローバルなリサーチ結果によれば、およそ51%の人々が「メタバースに参加することに興味がある」と回答しています。メタバースにはすでに一定のマーケット、生活者のニーズがあるということです。

アバターY:スタイラスではメタバースに関するさまざまな情報・トレンドを発信しているわけですが、スタイラスの利用者からはどのような問い合わせが多いですか?

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(左から)アバター Y、スタイラス ジャパンの秋元陸、アマナの岡本崇志。

秋元:大きく分けると2つですね。1つは「そもそもメタバースで何が出来るの?」というWhatに関する質問。もう1つは、メタバースのHowに関する質問ですね。例えば「Decentraland(ディセントラランド)とROBLOX(ロブロックス)はどのように使い分けるべきか?」といったような質問は増えてきています。

アバターY:最近ではさまざまな業界でメタバースを活用したビジネスが見られるようになりましたね。国内でもそういった事例は増えましたか?

秋元:そうですね、だいぶ増えてきています。

岡本崇志(アマナ/以下、岡本):メタバースをビジネスに活用したいという企業は少なくないと思いますが、どのようにスタートさせるべきなのか、今はまだその情報収集の段階だと思います。そこで今回のセッションでは、メタバースのビジネス活用のポイントについてお話ししていきたいと思っています。

まず、冒頭に結論を申し上げておきます。メタバースはまだまだ黎明期にあり、短期的に利益を得られるものではありません。テクノロジーの進化や法整備がこれから進むことを念頭に、中長期的な目線で取り組んでいくことが大前提になります。その上で「情報収集をいかに定期的に行い、知識や認識をアップデートしていくか、その仕組みをいかに構築していくか」が非常に大きなポイントになってきます。そして実験と思考を繰り返していくことが重要です。では、より具体的なプロセスについてお話ししていきましょう。

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岡本:ここに紹介しているのは「メタバースにおけるバリューチェーン」です。7つのレイヤーで構成されていますが、これはメタバースにおける7つの役割・ビジネスポジションを表しています。最も外側にある「Experience(体験)」はモノづくりを行う役割あるいはメタバース上でサービスを提供する役割を指します。「Discovery(発見)」「Decentralization(非中央集権化)」「Human Interface(インターフェイス)」「Infrastructure(インフラ)」は、メタバースの基盤を作る役割。そして「Creator Economy(クリエイターエコノミー)」「Spatial Computing(空間コンピューティング)」は、モノづくりをサポートする役割を指しています。

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岡本:さらに、各ビジネスポジションの収益とコストが、黎明期から普及期・定着期にかけてどのように変化していくのかも明らかにされています。この表で示される通り、黎明期においては短期的に収益を得ることは難しいとされています。メタバースをビジネスに活用していく場合は、このバリューチェーンにおけるポジションを理解して、自分達はどの役割に取り組んでいくのかクリアにしていくことが大事だと思います。

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岡本:自分たちのポジションを明らかにしていく上で大切な3つの視点があります。まず1つは「取り組むべき課題を考える」という視点。自社のミッション/バリュープロポジションを改めて見直す必要があるでしょう。その上で、2つ目の「メタバースでやるべきことを考える」という視点に至ります。自社のミッションに照らして、メタバースで解決できること・メタバースならではの提供価値とは何なのかを明らかにします。そして3つ目に「あるべき姿へのロードマップを描く」という視点が大切になってきます。この3つの視点・ポイントをロードマップ上に置いて、きちんとマイルストーンを設定してから事業をスタートさせることが重要になってくると思います。

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何からはじめるべきか、進め方や検討プロセス

岡本:私たちアマナでは「ビジネスメタバース」というチームを立ち上げまして、さまざまな企業の伴走者としてメタバース導入のサポートをしています。先に挙げた3つの視点をセッション形式で、あるいはワークショップ形式で達成していく予定です。

アバターY:プロジェクトのマイルストーン設定から現状の課題抽出まで、どれくらいの期間を要するのでしょうか?

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アバターYの正体はアマナの佐藤勇太でした。リアルタイムで体の動きが連動される仕組み。

岡本:決まった期間があるわけではありませんが、最低でも半年くらいは時間をかけた方がいいでしょうね。まずはプロジェクトメンバー選びからはじめて、キックオフミーティングを行い、実際のメタバース体験を通じて理解を深めていく。そこから先に挙げた行程へと移っていきます。

自社のミッション/バリュープロポジションを整理し、自社がメタバースでやるべきこと/やらなくてもいいことを明らかにしながら、1つの「ビジョン」を描いていくことを大切にしています。それは単なる抽象的な概念ではなく、きちんと言語化され、ビジュアライズされた状態でなくてはいけません。ビジョンとは、社内の意識統一を図るためのものですので、限られた人々の間で通じるニュアンスではなく、より多くの社員に共有され得るものでなくてはいけない。ゆえにビジョンは明確に、視覚的に伝わる必要があるんです。

そして実際の取り組みをはじめていくにあたっては、社内のリソースをどのように動員・配置していくかを考えなくてはいけません。特にメタバースは一つの部署ではなく、社内横断で進めることが多い分野だと思いますので、この点はとても重要です。

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岡本:まず「自社のあるべき姿」を描き、そこからバックキャストしながら、今やるべきことは何か明確にしていきましょう、と各企業にはおすすめしています。言い換えれば「ロードマップを描いていきましょう」ということですね。メタバースはまだまだ発展の途上にあり、技術やインフラ、あらゆる部分がこれから整備されていきます。であれば、2030年や40年に自社はメタバースで何をやっているのか思い描いて、そこに向かって何を達成していかなければならないか考える。そうすると、今、何をしなければならないかが見えてくるはずです。

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岡本:今お話ししたようなプロセスも大切なのですが、もう1つ肝心なことがあります。それは、その時々に出来る範囲で、さまざまなトライを欠かさないということです。今あるリソース、今ある技術によって、どのような体験や価値が提供できるのか。それをトライ&エラーを通じて探っていくことこそ最も大事な姿勢だと言えるでしょう。メタバースの導入においては、プランニング面とテクニカル面、双方のサポートをしてくれる適切なパートナーを選び、彼らと共に試行錯誤を繰り返していくことが重要だと思います。そして何より、自分がまずメタバースのさまざまなプラットフォームに飛び込み、体験すること。新しい価値はそこから生まれてくるのでは無いでしょうか。

秋元:いま岡本さんがおっしゃったことは、どれも非常に重要ですよね。私は、特に3つ目の「あるべき姿を描く」という視点に意識を向けるべきだと思いますね。やる/やらないは別にして、あるべき姿を社内で決めることは意味のあることだと思います。なぜかというと、まだ「やりたいけど出来ないこと」はたくさんあるからです。同時接続やWeb3.0における所有権の問題とか、解決されてない技術的・制度的課題がある以上、やりたいことが必ず出来るとは限りません。しかし、それでもやりたいことを明確にしておくことの意義は、「いまはやらない」という選択肢を持てることです。基準を明確にして意思決定をしておく。メタバースが社内のホットワードになっている企業ならば、今、岡本さんが言った3つの視点・3つのセッションは必ず議論しておいた方が良いと思いますね。

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岡本:冒頭にもお話ししたように、メタバースをビジネスに活用していくにあたっては、短期的な成果を求めず中長期的な視点で取り組んでいく必要があります。メタバース活用を考えている企業は、まず、その期間を共にする伴走パートナーを選定することからはじめましょう。プロジェクトのメンバーが決まったら、次に行うのがビジネス目的の整理。つまりビジネスゴール、ビジョン、ロードマップの設定です。そしてそこに向けた情報収集、情報活用の仕組みの構築を欠かさないこと。これにはスタイラスのような企業のサポートを受けるのが良いでしょう。メタバースの活用には、何をおいてもまずは自ら体験することが大切です。それによって思考と実験のサイクルが出来上がってきます。そうした経験の先に、自社/ブランドを体現する世界観が自ずと見えてくるはずです。

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deepLIVEは、リアルタイムCGと最新鋭のバーチャル・プロダクションシステムを備えた自社スタジオの活⽤により、 企業やブランド固有のニーズに即した企画立案〜リアルとバーチャルの垣根を超え共感を生む深い(ディープな)体験構築が可能、新たな体験創出でデジタルコミュニケーションにおける様々な企業課題の解決をサポートします。

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