制作ワークフローにおけるコンテンツ管理・共有の方法

vol.101

成果を上げる、コンテンツの改善と管理・運用

Text by Kazutoshi Otani
Photo by Rai Matsumoto

コンテンツマーケティングで成果を上げていくために、欠かすことのできない視点と知見を共有する三部構成のセミナー「成果を上げる、コンテンツの改善と管理・運用」。2023年1月25日にオンライン形式で開催され、アマナの3名の専門スタッフが登壇しました。締めくくりとなる第三部では、クラウド型コンテンツ管理サービス「shelf」セクションマネジャー宗 正哉が登壇し、「制作ワークフローにおける効率的なコンテンツ管理と共有の方法」について、「データのライフサイクルに適したデジタルアセット管理(DAM)」という切り口で解説しました。

第一部:セールスアクティべーションとブランド構築を両立するコンテンツ戦略フレームワーク
第二部:インターナルコミュニケーションに求められる浸透ツールの役割と、コンテンツ開発のノウハウ


コンテンツ制作のワークフローとは?

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アマナの宗正哉。

このセッションでは、コンテンツ制作のワークフローを分解・分析して、「効率的なコンテンツ管理や共有の方法」についてお話しします。その目的は、コンテンツの2次、3次利用を可能にして、「つくる」、「ためる」、「つかう」のサイクルを回す仕組みを確立するということにあります。

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コンテンツ制作のワークフローは大まかに、「企画」、「制作」、「管理」、「活用」に分かれますが、「活用」部分に注目すると、成果物を当初の目的で一度利用すると、あとは社内で何となく保管されて終わるケースが多いのではないでしょうか。しかし、完成後のコンテンツを上手に管理してきちんと共有できれば、何倍にも活用する道を開けるのです。

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このワークフローを成果物(コンテンツ)のライフサイクルで表わすと、「制作後」である「管理」の仕方が分かれ道となります。成果物が他の誰とも共有されない場合、活用範囲が限られ、他目的に応用できるコンテンツが足りない先細りの状態になります。(赤点線)逆に、コンテンツ活用が上手な組織では、制作完了の段階で、共有や応用を前提とした管理と保存が行われ、そのポイントは、「一元化」、「検索」、「利用判断」の3点になります。
情報の「一元化」と「検索」に関しては、ほとんどの組織である程度、行われています。しかし、一番重要なのは、必要なコンテンツを探している人が「目的に沿った利用ができるかを判断」するための情報が、そこに付与できているか否かです。それが「利用判断」の情報です。

「企画・制作」と「管理・活用」で異なる共有・管理のあり方

次に、ワークフローを大きく「企画・制作」と「管理・活用」の2つに分解し、それぞれの「共有・管理」方法についてお話ししましょう。成果物が完成するまでの共有が前者、コンテンツ制作後に2次、3次利用するための共有が後者にあたります。前者で共有される内容は、完成データ以外に、制作途中段階の過程データや企画書、カンプイメージ、マル秘の関連資料などになります。

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「企画・制作」段階の共有メンバーは、複数のプロジェクトに属している可能性があり、その構成も自由な組み合わせやプロジェクト途中で増減ができることが必要ですし、メンバー同士の双方向のデータのやり取りや、編集後のデータの共有フォルダへの再登録、リアルタイムでの修正の書き込みなどをサポートする仕組みも求められます。

一方、データを「管理・活用」していく段階では、社員や営業スタッフなど、ある組織のユーザーで構成され、2次、3次利用を考えると中長期的な運用が前提となります。扱われるコンテンツも、最終的な成果物主体となり、そこにはコンテンツマーケティングなどで使われる動画や写真、ドキュメントのような単体の素材、そして、それらの属性を説明するキャプション情報なども含まれます。また、その利用方法もサイト管理者が多数いるユーザーに対して一方向的にコンテンツを配信し、それぞれ自由に検索してコンテンツや素材を取っていくようなイメージになり、当然、ユーザーのコンテンツや素材の理解度に応じて、多元的な検索機能も必要になります。

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データの共有・管理におけるクラウドストレージとDAMの使い分け

アマナでも、「企画・制作」段階ではクラウドストレージを使ってプロジェクト(案件)を運用しています。年間2万件ほどの案件がある内、その半分以上がクラウドストレージの中でフォルダ分けをしてジョブを進行しており、当然、守秘義務に基づいて、情報共有も制作関係者のみとなります。

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実際にアマナではプロジェクト管理のためのクラウドストレージとしてBoxを使っており、社内外の制作関係者やクリエイター、協力パートナーとの共有や最終的な成果物のクライアントへの納品もBoxを使っています。

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Boxでは、フォルダ形式でデータを扱い、フォルダごとのアクセス制御を非常に細かく行うことで共有管理をしています。

ジョブ単位で受託制作したコンテンツは、普通、完成し、納品して終わりですが、アマナではこれを集約・整理して、デジタルアセット管理のシステムに登録することで活用につなげています。このクリエイティブの成果物を共有するデータベースの運用は、弊社が提供している「shelf」で行っており、数名のサイト管理者がユーザーである社員に対してナレッジ情報を共有する仕組みです。

DAMとクラウドストレージの違い

ここで、「DAM」デジタルアセットマネジメントシステムとクラウドストレージとの違いについて補足しておきます。

「デジタル資産管理」と訳される「DAM」は、デジタルフォトやアニメーション、ビデオ、音源などのデジタル資産を一元化して集め、注釈付けをしてカタログ化を行い、カテゴリー別にストレージに保存したうえで、簡単に検索・活用ができる仕組みです。

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まさに私が担当している「shelf」が「DAMサービス」なのですが、クラウドストレージとの違いは、注釈付けが簡単にできるか否かにあります。注釈付けはメタ付けともいいますが、これはメタデータ、つまり「データの意味について記述した情報」を付けるという意味です。

クラウドストレージでもタグなどの情報を付けられるものの、それらがかなり簡易的なものであるのに対して、「DAM」では、文字やタグだけでなく、チェックボックスやプルダウンで付加する情報や日付を選んだりと、多元的な検索対象項目を簡単に付与できる仕組みが用意されています。これによって、コンテンツのことをよく理解しているベテラン社員はもちろん、そうではない新入社員も的確なメタを使っての検索ができ、わかりやすいデジタル資産が作られ利用も促進される点が、「DAM」の大きな特徴なのです。

企業の競争力強化につながるコンテンツの適切な共有・管理

アマナでは、納品したコンテンツを再整理し、「shelf」を使って、ナレッジデータベースを運用しています。毎月700~800件の制作事例が掲載され、約800名の社員が作例を検索・閲覧しています。完成したコンテンツだけでなく、そこに含まれる素材(写真や動画)やWeb画面の完パケデータなどもこの中で閲覧することができます。

こうしたナレッジデータベースの目的は、社員がナレッジを共有し活用することによって、会社の多数ある業務(ソリューション)内容を知り、そこで動いている人や役割などを知ってもらうということにあり、サイトを検索・閲覧をすると、アマナがどんな業種・業態の仕事をしていて、自分が担当しているクライアントについての知識や過去に制作された作例、どのようなコミュニケーションを行ってきたかも知ることができるわけです。このように「社員1人1人の競争力を上げることが、新たな受注の創出や会社全体の競争力の強化につながる」という点に注目して下さい。

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また、社内向けシステムなので、*シングルサインオンがサポートされていたり、社内システムとの連携などがされているのは当然のこと、クライアント名やクリエイター名、プロデューサー名などのスタッフ情報や、あるいはジャンルなどでもチェックボックス形式で検索でき、初めて使うユーザーでも利用しやすくなっています。

*シングルサインオン:IDとパスワードを一度入力するだけで、アクセスが許可されたすべてのアプリケーションサービスを利用できるシステム

また、成果物がWebサイトであれば、そのURLやインナーマーケティングのサイトへのリンクも張られていて、他のサイトと双方で行き来しながら、知りたい情報を細かく、詳しく知ることができるようになっています。

導入してすでに8年が経ち、サイトを導入するだけでなく、継続して、コンテンツを更新し続けるため、サイト管理者を中心に「社内ルールの整備」や利用促進する「社内啓蒙・教育」などの地道な努力が必要であり、継続しながら、少しずつ変化し、進化を続けています。

DAMサービスの最新トレンド

最後に、直近の企業の中で起きている「DAM」における2つのトレンドを共有しておきます。

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その1つがコンテンツオーナー制です。

企業では、課題になっているサイロ化された複数のサイトを統廃合して1つのサイトに集約している傾向があります。一方コンテンツオーナー制というのは、集約した1つのサイトに複数のコンテンツメニューを設け、それぞれのコンテンツの管理を担当した部門がオーナーとして運用していくものです。ユーザーは1つのサイトで製品情報や技術情報、導入事例など、あらゆるコンテンツや情報を取得でき、コンテンツと他のコンテンツ同志を連結させるなどして、ワンストップで入手できるようになっています。コンテンツオーナーは、自部門が担当するコンテンツを登録するだけでなく、他部門が登録したコンテンツと連結し、ユーザーが入手しやすいように設定します。

国内の企業では、メーカーなどで製品と販促物などを連結させるなど、導入が徐々に進んでおり、海外の販社や拠点にも同様のことを展開するケースも増えています。

そして、もう1つがシステム連携によるデータのシームレス化の例です。

人事マスターと連携したり、商品マスター(PIMなど)から取得した画像や製品データを、DAMシステムからWEBサイトのCMSなどへ連携するような例は以前から多く見られます。が、そのような例ではなく、BoxやGoogle Driveなどのクラウドストレージとの連携の引合が増えています。

コンテンツマーケティングなどで大量のコンテンツを管理することや、動画コンテンツなどの大容量データの使用でストレージ容量が圧迫されるため、無制限に使えるクラウドストレージをマスターデータ管理に利用し、その検索性の弱さをDAMサービスで補うような使い方が増えている印象です。

ワークフローにおける「企画・制作」「管理・活用」各段階でのコンテンツ管理・共有や社内にある古くなったDAMシステムのリプレイス、また、新たに販売パートナーや海外拠点など社外関係者とのコンテンツ管理・共有などで課題やお悩みがありましたら、弊社までお気軽にご相談下さい。

DAM導入の専門スタッフが、サイト構築から導入、運用までを伴走しながら、サポート致します。

SOLUTION

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次々と増え続ける写真、動画、ドキュメントなど。企業にとって大切なコンテンツを分かりやすく可視化し、データ共有や検索機能を使って効率的にストレスなく管理できるコンテンツマネジメントサービスです。クラウドサービスなので時間と場所を選ばず、離れた拠点との情報共有やデータのやりとりがスムーズ。リモートでも安心・安全なコンテンツ共有。コンテンツ資産の積極活用を支えます。

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