セールスアクティべーションとブランド構築を両立するコンテンツ戦略フレームワーク

vol.99

成果を上げる、コンテンツの改善と管理・運用

Text by Kazutoshi Otani
Photo by Rai Matsumoto

オウンドメディアを継続的に運用し、コンテンツマーケティングの成果を上げていくためには、優れたコンテンツを揃えるだけでなく、顧客のニーズや市場トレンドの変化を捉え、内容の改善をしていくことが求められます。2023年1月25日にオンライン形式で開催されたセミナー「成果を上げる、コンテンツの改善と管理・運用」は、アマナの3名の専門スタッフがそれぞれの立場から、コンテンツ戦略のフレームワーク、コンテンツ開発のノウハウ、コンテンツの管理・共有の方法というテーマを深掘りした三部構成で行われました。まず、第一部としてNewsCred(コンテンツマーケティングプラットフォーム)プロダクトマネジャーの渡邊隆尚が登壇し、セールスアクティべーションとブランド構築を両立するためのコンテンツ戦略フレームワークについて解説しました。その内容をご紹介します。


コンテンツマーケティングの目的と意義

20230125report_1_1.jpg

アマナの渡邊隆尚

弊社は、撮影から始まり、それをビジュアルや記事などの様々なコンテンツとしてまとめ、さまざまな企業に提供していますが、私からは、そのコンテンツを活用してセールスアクティベーションとブランド構築を両立するコンテンツ戦略フレームワークについてお話しします。

20230125report_1_2.jpg

最初にコンテンツマーケティングを実施する目的ですが、1つは、ブランドの持つサービスやプロダクトの価値や認知度の向上させること。もう1つは、企業の収益に繋げることです。

たとえば、フォーカスビジョンという企業による2021年のデータでは、B2B企業の顧客が、実際にサービスやプロダクトの購入を決定するまでに、13個のコンテンツを消費するとの結果が出ています。13個のうち、8個はベンダー、つまりB2B企業自体が発信するもの、残りの5個がWeb上の比較サイトなどをはじめとした外部情報を意味するサードパーティによるものです。
13個のコンテンツの取得元は、1番がB2B企業のWebサイト、2番がGoogleやYahoo!などのオーガニック検索、3番目がソーシャルメディアですが、総合すると、ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディアといった、いわゆるトリプルメディアを通じて検索や情報取得を行う人が多いことが明らかとなりました。

20230125report_1_3.jpg

コンテンツ戦略で押さえるべきポイント

2週間から6週間で購買の意思決定がなされていくカスタマージャーニーのステップを簡略化すると、認知、検討、評価、再来訪という4つの段階に分かれます。

認知段階では、購買に結びつく認知度を獲得するためのコンテンツが必要です。
検討段階では、企業やプロダクト、サービスに共感を持っていただくためのコンテンツを提供します。
評価段階は、実際のコンバージョンのCTA(Call to Action:行動喚起)に関わってくるステップです。

そして、再来訪というのは、有益なコンテンツを提供し続けることによって、アップセルやクロスセルを実現するということです。それにより、顧客と長期的な関係を維持しLTV(ライフタイムバリュー)の向上につながるようにします。

ここでのポイントは、顧客のエンゲージメントを高めるコンテンツが、企業の信頼を高めるコンテンツと同義ではなく、それぞれをバランスよく発信していくことが重要となります。この観点から弊社が提唱しているものが、企業のコンテンツ戦略のベースとなるBrand to Demandプログラムです。

20230125report_1_4.jpg

「ブランド」はオーディエンスを獲得するためのものですが、ブランドイメージの醸成には時間がかかるため、中長期で取り組むことになります。一方、「デマンド」は顧客を獲得するためのものであり、いかにコンバージョンを実現するかを重視する短期的な概念です。Brand to Demandプログラムでは、この両方のバランスをを意識したマーケティングを重視します。

20230125report_1_5.jpg

「ブランド」によってオーディエンスを獲得するためには、幅広い層へのリーチや、優れたCX、つまり顧客体験の実現が必要です。そのうえで、先ほどのカスタマージャーニーのどの段階でブランドイメージを確立し、必要な情報を伝えるかといった、中長期の視点を持ってコミュニケーションを行っていきます。これに対して、顧客の獲得では、ターゲット層に対する適切なタイミングや内容のコンテンツ提供やプロモーションを基本に、展示会への出展やリアルなプロモーション活動などの獲得系施策も含めて、認知してもらうための施策を考えなくてなりません。

たとえば「ブランド」だけが強く、広く認知されていない状態でコンバージョンが進んでも、顧客の母数が不足していくため継続的な成長は難しくなります。逆に、「デマンド」だけが強いと、需要はあっても自社にとっては忠実な顧客ではないため、有効なコンバージョンにつながりません。そのため、両者のバランスをとり、需要水準とコンバージョンをどちらも良好な状態に保つ必要があります。

20230125report_1_6.jpg

企業が発信したいコンテンツと、顧客が欲しいコンテンツを2つの円で表すとすれば、両者が重なるポイントを見つけ出してコンテンツを作ることがとても重要です。そのうえで、変化する状況に合わせて長期的な展望と当面の見通しを調整しつつ、「ブランド」と「デマンド」の獲得サイクルを回していくことが必要となります。

コンテンツ戦略策定のポイント

これまでコンテンツ戦略にはピラー、つまり柱となる要素が重要とされてきました。しかし、ピラーありきのコンテンツ戦略では、すぐに個々のコンテンツを考え始める短絡的な流れに陥りがちです。これを防ぐためには、最初に、企業が解決できること、ユーザーの解決したいこと、そして業界の動向やトレンド、という大きな3つの視点を持ってください。そこに、先ほどの企業が発信したいコンテンツと、顧客が欲しいコンテンツからなる2つの円を重ね合わせることで、あるべきコンテンツポートフォリオの姿が見えてきます。

20230125report_1_7.jpg

加えて、そのようなコンテンツを自ら作るには、社内のエディターやマーケターが持っている知見や業界内の知識のリサーチも必要です。一方で、ユーザーが解決したいことや欲しいコンテンツは、アナリティクスのデータからのアクセスにつながる検索キーワードや、サードパーティのGoogleトレンドデータからのキーワードなどをトレンド調査で見つけ出し、そこから発想していきます。さらには、ユーザーアンケートからインサイトを導き出してコンテンツ制作に生かす形で、自分たちが作れるコンテンツが何かを事前に把握しておくことも非常に重要です。

ミッションステートメントと配信場所の重要性

続いて、コンテンツのミッションステートメントを決めていきますが、弊社のオウンドメディアである『amana INSIGHTS』の例で説明しましょう。

そのミッションステートメントは「クリエイターの思考方法で、課題の本質を照らす」ということです。そして、『amana INSIGHTS』では、「イノベーターへのインタビューや先進事例を紹介するほか、アマナがこれまでに培ってきたクリエイティブナレッジを活かして課題解決した事例から、得られたインサイトやノウハウを共有することで、企業コミュニケーションにおける新しい視点やアイデアを触発していきます」とも書かれています。これが、コンテンツを作る際の原点になるわけです。このようなミッションステートメントを軸にすれば、ブレずにピラーやトピック、キーワードを決めていけるので、とても重要なステップといえます。

20230125report_1_8.jpg

もう1つ大切なのは、オウンド、アーンド、ペイドのトリプルメディアのどこで情報発信するかということです。特にコンテンツマーケティングの初期では、オウンドメディアへの来訪者がおらず、記事が読まれない傾向が見られます。そこで、流入チャネルを意識して、検索需要向けのクエリを意識したコンテンツを用意するのか、ブランド認知のためにペイドメディア向けのコンテンツにするのかなど、配信場所も考慮する必要があるわけです。

そして、常に分析を怠らず、知見・リサーチから配信に至るサイクルの最適化や改善を図り、継続的に回していくという流れになります。

コンテンツマーケティングにおける成果の可視化

コンテンツマーケティングのROI、つまり費用対効果を向上させるには、分析と改善という作業が欠かせません。

まず、「成果を把握するための準備」ですが、ゴールデンKPIとサポート計測指標という2つの要素に着目します。ゴールデンKPIは、ブランド、信頼、需要のそれぞれの軸でKPIを定めていくもので、マーケティング目標やビジネス全体の目標を達成するための唯一かつ最も影響力のある指標です。しかし、それだけで指標を計りづらければ、別表(Brand to Demandの指標一覧)から付加的にサポート計測指標を追加します。また、全体の目標設定に関してですが、企業としてのビジネスの大きな目標からマーケティングの目標が導かれ、そこからBrand to Demandの目標が決まってくるので、上位の目標から落とし込んでいってください。

20230125report_1_9.jpg

そして、ゴールデンKPIについては…
1. マーケティングチームの目標
2. チームが定常的に確認している指標
3. その中で特にチームが気にかけている3つの指標
4. 同じくビジネスリーダーが気にかけている3つの指標
5. 選んだ指標内でマーケティングやビジネス全体の目標を推進するうえで最も影響力のあるKPI
…という5つの要素を洗い出していくと、発見することができます。この5つの質問を、ブランド、信頼、需要のそれぞれのゴールデンKPIにたどり着くまで繰り返し、必要があればサポート計測指標を追加します。

次に「成果計測のためのフレームワーク構築」ですが、まず自社の過去のパフォーマンスデータから指定期間におけるゴールデンKPIとサポート計測指標の平均値を算出してください。これが、初期のベンチマークです。続いて、マーケティング施策ごとにゴールデンKPIとサポート計測指標を注視して、パフォーマンスを正しく評価していきます。そして、計測とレポートのサイクルを決定し、計測期間のデータとベンチマークデータの差分を見ることで、検証と最適化を行うわけです。こうした成果計測のためのブランクのテンプレートと説明資料も用意しましたので、ぜひご活用ください。

20230125report_1_10.jpg

最終的なキャンペーンの成功のためには「成果の分析と解釈」が必須です。その際には、個々のパフォーマンスだけでなく、ブランド、信頼、需要のKPIへの貢献度合いを示すことで、各キャンペーンのゴールデンKPI達成への近さや再評価の必要性が特定できます。

そのための「成果の読み解き方」ですが、ゴールデンKPIが増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのか、あるいは不規則や横ばいなのかを、パターンマッチングによって判断します。これは、四半期ごとの短期的な成果とともに、販売サイクルを通してプログラム全体を振り返り、長期的な視点で見ることも大切です。その結果、プログラムが成功していないようなら、目標設定やマーケティング手法を見直す必要があります。

いずれにしても、コンテンツマーケティングの取り組みは、長期的に捉え、定期的に内容を見直して成果につなげることが必要です。そのあたりはアマナが得意とする部分でもありますので、弊社のコンテンツマーケティングソリューションも参考にしながら、私たちと一緒に取り組んでいただければと思います。


アマナのユニークなコンテンツマーケティングサービスについての詳しい情報は、こちら

渡邊隆尚の最新記事はこちらからご覧いただけます。

SOLUTION

amana Content Marketing

amana Content Marketing

コンテンツマーケティングの本場であるアメリカで、業界を牽引するリーディングカンパニーであるIndustry Dive。国内唯一の独占パートナーであるアマナがその集合知を活用し、成果へと繋がるコンテンツマーケティングをサポートします。
企業が抱える課題に沿って、戦略策定からチーム構築、コンテンツ制作、効果測定まで、コンテンツマーケティングの運用をトータルで支援します。

KEYWORDキーワード

本サイトではユーザーの利便性向上のためCookieを使用してサービスを提供しています。詳しくはCookieポリシーをご覧ください。

閉じる