AI × Creativeにおいて人間は不要なのか? ー AI Creative Studioが実践する、人とAIの制作プロセス

vol.189

AI × Creativeにおいて人間は不要なのか?

生成AIは、映像やビジュアル制作の生産性を大きく押し上げました。誰もが速く、それなりに整った表現を生み出せる時代です。しかし、クオリティの判断基準と責任の所在が、生成AIを用いた制作プロセスの中で見えにくくなっているのも事実です。

本ウェビナーでは、アマナのAI専門組織「A³」からプロデューサーの石丸将太と、プランナー/プロデューサーの高橋みずきが登壇。A³が制作したVISION MOVIEを題材に、AIの出力に違和感が生じる工程において、ブランドとして看過できないズレを人がどう見極めたかを解説しました。さらに、一枚のコアビジュアルを複数チャネルへ展開する「Image to Multichannel」を通じて、制作プロセスに「人の判断」をどう組み込むかの実践を紹介しています。

AIの進化を、美意識の進化へ

高橋みずき(以下、高橋):A³(amana AI architects)は2025年11月末に立ち上げた、アマナのAI専門組織です。アマナは社員の半数以上がクリエイターという会社ですが、そのクリエイターたちがAIを手にしたとき、表現の可能性はどこまで広がるのか、そこを出発点に活動を始めました。ステートメントは「AIの進化を、美意識の進化へ」。単なる効率化ではなく、人間の美意識を拡張するための手段として、AIを捉えています。

A³が開催した前回のウェビナー(2026年1月)では、AIの得意と不得意を整理しました。発散・発想・定着・展開の4つはAIが得意とする領域である一方で、一貫性の欠如、表現の均質化、物理・論理の破綻、AIバイアスによる炎上リスクは依然として苦手な部分です。

AIが抱える4つの弱点と向き合い方

高橋:こうした得意・不得意を踏まえると、生成AIは「描く」のではなく「埋める」道具だと考えて使っていくことが重要です。人間がしっかりと枠を作り、AIがその中を圧倒的な速度で埋め、はみ出した部分を人間が仕上げていく。そのプロセスこそが、AIと人間の共創の本質だと考えます。

A³ VISION MOVIEから見る、AIと人間の役割分担を設計した共創の実践

石丸将太(以下、石丸):2026年2月に、A³はVISION MOVIEをリリースしました。これは、AIと人間の共創を映像として体現することを目的に制作しています。コンセプトは「透明な卵」で、AIによる生成物が世の中に溢れる中で、アマナの美意識という異質なものが有機的に「生まれる」瞬間を描いています。

VISION MOVIE

石丸:制作に関わったスタッフは、プロデューサー、ディレクター、カメラマン、レタッチャー、CGチーム、AIクリエイター、音楽プロダクション、編集プロダクションと多岐にわたります。一見多く見えるかもしれませんが、通常の動画制作に比べれば随分と少人数です。これがAIを活用することの一つの重要なポイントだと思っています。

VISION MOVIEの制作スタッフ

石丸:制作フローは、企画・画像生成・撮影・レタッチ・CG/動画生成・編集という段階で構成されており、各工程でAIツールと既存の制作ツールを組み合わせています。

制作フロー:企画・画像生成・撮影・レタッチ・CG/動画生成・編集(各工程でAIツールと既存の制作ツールを組み合わせています)

石丸:この映像制作で人間がどう関わったかを、4つのフェーズに沿って解説します。

【プランニング】 AIの特性を理解して企画する

【プランニング】 AIの特性を理解して企画する

石丸:企画段階でまず重要なのは、AIの特性を踏まえた上でコンセプトを言語化することです。テクノロジーと美意識の交差をミニマルに映像化するために、「透明な卵」というモチーフを選びました。企画が固まったら、AIを使ってイメージをすぐに生成します。

高橋:企画の後にすぐVコンテのようなものが出てきて、みんなの作りたいイメージがその場で共有できました。これはAIならではの力だと感じています。

石丸:ゴールイメージを早い段階で可視化・共有できることで、承認フローの無駄が減り、制作全体のスピードと精度が上がります。

【撮影】人物の一貫性と、人間にしかできない動きを捉える

石丸:AIが苦手とするのが「人物の一貫性の保持」です。シーンをまたいでも同じ人物に見せるには、実際に撮影した素材をベースにする必要があります。

ダンサーの躍動的な動きや、人間同士の距離感から生まれる臨場感も、AIの指示だけでは再現が難しい。そのためグリーンバックでダンサーを撮影し、その素材をAIと組み合わせるという手法をとりました。

【撮影】人物の一貫性と、人間にしかできない動きを捉える

【レタッチ】ハルシネーションの修正と、素材の合成

石丸:AIが生成した画像には、卵の形状が安定しない、背景に不自然な人物が写り込むといったハルシネーションが生じます。これをそのまま動画化すると問題がそのまま動いてしまうため、動画生成の前に人間の手でレタッチを行います。撮影したダンサーとAI生成の背景を自然に合成する作業も、この工程で担います。

【レタッチ】ハルシネーションの修正と、素材の合成

高橋:金魚と水の泡が一部ハルシネーションを起こしていたシーンがありましたが、それを違和感として検知できるのは、やはり人間のアートディレクションの力だと感じました。

【CG+PreVisualization】再現性を担保する

【CG+PreVisualization】再現性を担保する

石丸:グリーンバックで撮影したダンサーに背景を合成する際、撮影時のカメラデータと背景のCGが合っていなければ、どれほど品質の高いAI生成画像を用意しても違和感が残ります。CGチームが持つ豊富なアセットと、撮影データに合わせたCGのプリビジュアライゼーションを活用することで、AIと実写の整合性が高まり、再現性が担保されました。

人とAIの共創。技術を「思想」へと昇華させる編集力。|A³|VISION MOVIE BEHIND THE SCENES

石丸:ここまでお話しした4つのフェーズは、アマナの社内でできることです。ただ、アマナの社内だけでは足りないポイントもたくさんあります。

アマナでは「集合知」という言葉をよく使いますが、人間一人でできることはかなり限られていて、人が集まっていろんな知識やアイデアを持ち寄ることではじめていろんなことができる。今回のVISION MOVIEでいえば、AIクリエイター、音楽プロダクション、編集プロダクションといった社外のクリエイターネットワークがまさにそれです。アマナという歴史のある会社と、そこにいる人たちのつながりを最大限に生かせることが、A³の強みの一つでもあります。

アマナの「集合知」

石丸:AIを使えば安く早くできるというイメージが先行しがちですが、そこだけがねじ曲がって伝わってしまうことが多い。メリットは確かにあります。ただ、どう使うかという判断こそが、人間の役割だと考えます。

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Image to Multichannel:コアビジュアルを起点に、ブランド表現を持続的に展開する

高橋:我々A³は、2026年2月に新たなソリューション「Image to Multichannel(I2M)」をリリースしました。

皆さんも実感があるところだと思いますが、コンテンツの制作量は確実に増えています。

Image to Multichannel:コアビジュアルを起点に、ブランド表現を持続的に展開する

高橋:Adobeのレポートでは、今後2年でチャネルによっては5〜20倍という数字も出ています。もう一つの問題は、その量を前提にした制作フローになっていないということです。IAB(Interactive Advertising Bureau)の調査でも、AIは導入しているものの、制作や運用のフローの中でしっかり機能していない企業が多い。制作フローの改革が必要だというのが、私たちのご提案です。

多くの制作現場で「ワンソース・マルチユース」という考え方は導入されています。しかし実際には、サイズ変更やトリミング、文言の差し替えといった表層的な流用にとどまり、チャネルごとにクリエイティブを最適化するまでには至っていないのが現状です。

これまでの現場のワンソース・マルチユースという考え方

高橋:施策の立ち上がりにはどうしてもタイムラグが生まれますし、複数チャネルを横断して一貫したイメージを保つのも簡単ではありません。さらにベンダーが分散すると、クライアント側のマネジメント負荷も大きくなります。媒体が増え続ける現在では、必要なリソースやコストも指数関数的に膨らんでいきます。

だからこそ私たちは、「AIを前提にしたワークフロー」を設計する必要があると考えました。これが私たちの出発点です。

ブランド表現の持続的な展開「Image to Multichannel(i2m)」

高橋:今回のソリューション「Image to Multichannel(I2M)」は、「ブランド表現の持続的な展開」を目指しています。表現のバリエーションを増やし、チャネルを広げ、かつ一貫性を保ったまま展開できるというのが、I2Mの良いところです。

一つのコアイメージを起点に多様なバリエーション(Multisource)を生成し、さらにそれを店頭でもデジタルでも、あらゆるシーンに最適化して展開していく。シーンを変える、印象を変える、人を変える、前後の流れを生成するといった部分では、AIの圧倒的な生成力が発揮できます。

一つのコアイメージを起点に多様なバリエーション(Multisource)を生成

人間の審美眼×AIの生成力にチャレンジするI2Mの実践

高橋:実験的な取り組みとして、アパレルを想定した架空ブランドで制作プロセスを検証しました。AIによる多様なシミュレーションを重ねながら、アートディレクターを起点に最適なビジュアルを探っていきます。

人物とプロダクトは撮影を前提とし、グレーバックで撮影。レタッチと背景生成を加えながら仕上げていきます。

一つのコアイメージを起点に多様なバリエーション(Multisource)を生成

高橋:ここから、Multisourceとして展開していきます。ロケーションやプロダクト、人物、アングルを変えながらバリエーションを生成します。AIの生成力を感じる工程ですが、ビジュアルとして成立しているかどうかは人の審美眼が欠かせません。

今回もアパレルに精通したアートディレクターが加わり、商品が美しく見えているかなどを細かく確認しながら仕上げました。

Multisourceとして多様な展開:ロケーションを変える、プロダクトを変える、男性・女性・アングルを変える

石丸:キービジュアルを作るための撮影では、選ばれなかった多くの素材が生まれます。これまでそれらは日の目を見ることが少なかった。でも、それをコアビジュアルを生成するためのAIの材料として使うことで活用できるというのが、Image to Multichannelの良いところだと思っています。

お客様の素材やストックは財産です。それをAIを使っていかに多くのチャネルへ展開していけるか、そのソリューションを提案できることに可能性を感じています。

高橋:さらに3つのカットをつなぎ合わせて短尺動画を作ることにもチャレンジしました。

3つのカットをつなぎ合わせて短尺動画を作る

高橋:前後関係やシーンカットを差し込みながら、静止画から動画へという対応もできます。最終的にこれらのアセットがマルチチャネルとしていろんなところに出ていくわけですが、チャネル最適化の部分はまだ人間の手が必要です。

店頭やOOHといったフィジカルな展開では、距離や環境、動線を意識しながらクリエイターがしっかりアセットを作っていく。ワンデーの撮影を起点にここまで展開できるというのは、すごい可能性を感じています。

店頭やOOHといったフィジカルな展開では、距離や環境、動線を意識しながらクリエイターがしっかりアセットを作っていく

高橋:今回はアパレルを例にしていますが、発売タイミングと素材撮影のタイミングにずれが生じやすいという特徴があります。

例えば雪山でのロケーション撮影を行う場合、ロケハンやアングル確認、天候チェック、予備日確保など、多くの工数とコストが発生します。こうした撮影難易度の高いシーンこそ、AIによって大きく効率化できる領域です。単に「早く安く」という話ではありませんが、AIが力を発揮する領域は確実にあると考えています。

石丸:生成AIをどこまで使うかは、商品の本質はどこで、それをどういう表現で世の中に伝えていきたいのかというコミュニケーション次第だと思っています。本質を伝えるためには撮影がなくてもいいという判断であれば、AIを使うことが一つの正解になる。逆に撮影した方が早いというケースも多くあります。AIか撮影かの判断ができるプロデューサーがまだ世の中に少ない中で、それができるのがA³です。

AI×Creativeにおいて、人間は不要か?実践から得た答えとは

石丸:「AI × Creativeにおいて人間は不要なのか」という問いに対する回答として、我々は「不要ではなく、不可欠」だと思っています。AIに任せるだけでは、人間の思い通りのアウトプットは作り出せません。伝えたい思いを映像に載せることは、現状ではまだAIだけでは難しい。AIの可能性を活かすためには、その特性を深く理解した上で企画し、役割分担を設計できる人間が必要です。

人とAIの共創という時の「人」には、制作会社や外部パートナーだけでなく、依頼いただくクライアントも含まれると思っています。AIをどう使えばいいか、まだ先が見えない中で、皆さんと一緒にチャレンジしていけるという状況に身を置けることを、楽しく感じています。

高橋:最初に人間が枠を描いて、AIが埋めて、最後に人間が仕上げる。そのプロセスに、人間がしっかりと審美眼を持って向き合うことが大事だと思っています。

AIが当たり前になりつつある今、問われているのは「どれだけAIを使えるか」ではなく、「AIをどう使いこなすか」ということではないでしょうか。


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A³|amana AI Architectsは、「AIの進化を、美意識の進化へ」というビジョンのもと、生成AIを“ブランドに最適化する”ソリューション「AI Creative Architecture」を核に、企業のブランド表現を次世代の制作基準へアップデートするプロフェッショナル集団です。

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