印刷には、
──FLAT LABOでも行っているオンデマンド印刷とは、そもそもどういうものなのですか?
髙橋一禎(以下、髙橋):オンデマンド印刷とひと口に言っても、印刷機によってその品質や特徴はさまざまです。ただ共通して言えるのは、版を作る必要がなく、パソコンから印刷機にデータを送って出力する方式なので、100部くらいまでの小ロット印刷に向いています。
また、同じものを何部も印刷するのではなく、たとえば、冊子を作るにしても、“ページによっては入れる文字や写真をそれぞれ変えたい”といった細かいオーダーに対応できるというのが、オンデマンド印刷のいいところですね。
──印刷機によってクオリティーや特徴が違うんですね。となると、印刷を依頼する際はどこに気をつけたらいいのでしょう?
髙橋:実はオンデマンド印刷に対して、低コスト低品質をイメージされる方がまだまだ多いのですが、印刷機の種類や設定によって品質が決まるので、中には美術館などで飾られるような高品質な仕上がりが叶うものもあります。なので、印刷する内容や目的などによって印刷機や印刷会社を使い分けることが大事です。
たとえば、“アート作品をプリントしたい”“写真を美しく見せたい”“変わった素材にプリントしたい”といった場合は、そのニーズに対応できる印刷機や技術を持った会社を選ぶことが必要です。
そのためにも、ある程度オンデマンド印刷の種類を知っておくといいですね。下の表に、代表的なオンデマンド印刷の方式種類と特徴をまとめてみました。この表を参考にしながら、印刷を依頼する前にどの方式で行っているのか確認してみるのもおすすめです。
──写真向きとか印刷できる素材の幅が広いとか、印刷方式によってさまざまな特徴があるんですね。ちなみにFLAT LABOではどれを採用しているんですか?
髙橋:液体インク、水性インクジェット、UV インクジェット方式の3種です。FLAT LABOでは最新技術が詰まったUVインクジェット方式のプリンター“swissQprint”を導入していて、布やアクリルなどのちょっと変わった素材にも精細にプリントできます。また、写真を美しく見せることにこだわってプリンターに搭載するインクをセレクト。写真やアート作品を引き立てる高品質なプリントを得意とし、“ビジュアルで魅せる”ことを大切にしています。
肝心の仕上がりは、印刷機や印刷会社によって大きく変わります。いつもお願いしているところに何となく依頼するのではなく、その都度目的に合った印刷会社や印刷方式を選ぶと、より満足度の高い仕上がりになると思います。
──実際にオンデマンド印刷を依頼するときは、どういう流れを踏み、どういう点に気をつけたらいいのでしょうか?
髙橋:まず印刷会社をWebサイトなどでリサーチし、扱っている機械や印刷方式を電話やメールで問い合わせてみましょう。その中から、目的に合いそうな印刷会社に部数やプリントする素材、サイズ、納期期限などを伝えて見積もりを依頼。
もし見積もり金額が予算オーバーだったら、値段交渉をしてみるのもありです。そして予算やスケジュールに納得したら発注します。データを印刷会社に渡し、文字や色校正を経て、印刷→納品という流れに。
そもそもの“目的”がイメージしにくい場合は、下記を参考にしてみてください。目的は大きくわけると、5パターン考えられます。
1.品質よりもコストを重視
2.テキスト主体で、ディテールや色は特にこだわらない
3.イラストや写真があるけれども、ディテールや色にはあまりこだわらない
4.イラストや写真主体で、ディテールや色にこだわる
5.全てのディテールや色に強いこだわりがあるアート系
目的が4、5に該当する場合は、データを送るときに色見本をつけるのがベストです。なかなか思うような仕上がりが得られず何度も出力して色校正をすると、校正プリントを出すたびにお金も時間もかかってしまう可能性が。スムーズに思い通りの仕上がりにするためには、色見本を用意するのがポイントです。
事前のリサーチや色見本などの準備は大切ですが、細かいオーダーにも対応できるオンデマンド印刷は、オリジナリティーや品質を重視したいときにも向いています。
今回取り上げたオンデマンド印刷は、思った以上に奥深い世界です。品質も、アートの複写が叶うほど高い技術を持つところもあるので、何を、どういう目的のために印刷したいのかを見極めて印刷会社を選ぶのがいいでしょう。
テキスト:木林奈緒子 撮影:猪飼ひより(amanaphotography)